第200回:【Movie】ベルギーとクルマの意外な関係 大矢アキオ、捨て身の路上調査員「ブリュッセル編」
2011.07.01 マッキナ あらモーダ!第200回:【Movie】ベルギーとクルマの意外な関係大矢アキオ、捨て身の路上調査員「ブリュッセル編」
拡大 |
拡大 |
ベルギーといえば……
日本といえば、1にレ・ゲイシェ(イタリアにおける芸者の複数形)、2にスモウ(相撲)、3にカラキリ(『Harakiri』のイタリア語読み)というイタリア人はいまだ多い。そのたび「まいっちんぐ!」と昔のアニメのセリフを心の中で叫んでいるボクである。しかし、ベルギーに関していえば、ボクはイタリア人を笑えなかった。
ボクにとって過去のベルギー上陸はその昔、英国からカートレインでユーロトンネルを越えたあと、フランスを目指すのにちょっと“かすった”ときだ。ボコボコした石畳を伝統的にベルジャンロード(ベルギーの道)というが、ベルギーのオートルートはそんなことと無縁なばかりか、街路灯が隣国フランスに比べて整備されているのに驚いた。しかしその他のベルギー知識といえば、「ワッフル」「ゴディバのチョコ」「EU」という貧弱なものだ。
ということで、今回本連載が200回を迎えたのを勝手に盛りあげるため、ベルギーの首都ブリュッセルを訪れてみることにした。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
意外に深い!?
調べてみると、ベルギーとクルマは意外にも関係が深い。まず、欧州自動車工業会(ACEA)はブリュッセルに本部を置いている。
さらにこの国にはボルボ(『S40』など。以下カッコ内は現在の代表的生産車種)、フォード(『モンデオ』)、アウディ(『A1』)の乗用車工場が長年にわたり稼動していて、2010年には計約59万3000台の国内生産を記録している。さらに欧州各国で知られるバスメーカー、ヴァンホールもベルギーを本拠としている。
いっぽうで生産規模縮小の際、ベルギーの自動車工場は真っ先に候補に上がることも現実だ。事実1990年代中盤にはルノーが労働界の猛烈な抗議にもかかわらず工場を閉鎖。昨2010年には「オペル・アストラ」などを生産していたアントワープのGMオペル/ヴォクスホール工場も閉鎖された。ボルボも近年「ベルギー工場閉鎖?」との憶測報道が流れたことがある。
それはさておき、久々に「ホントに街を走っているクルマ調査」を、今回はブリュッセル市内で実施してみた。
曜日は日曜、場所はフラジェーという有名なマルシェ(市場)周辺である。郊外から仕事で流入する自動車が少ないので、より地元の人が乗っているクルマがわかると考えたからである。ブリュッセロワ(ブリュッセル人)たちに怪しい目で見られながらも、ノートに「正」のしるしを付けて30分計測した結果は、以下のとおりである。
(動画撮影とは別の場所・時間帯に計測しているため、登場車種が違います)
・プジョー:12台
・フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ:各10台
・ルノー:9台
・シトロエン:8台
・トヨタ:7台
・フォード:6台
・アウディ:4台
・オペル:3台
・ボルボ、BMW、シュコダ:各2台
・日産、三菱、ボルボ、セアト、BMW MINI、ヒュンダイ、スマート、マツダ、GMDATシボレー:各1台
|
販売台数が如実に反映され、フランスおよびドイツ系メーカーはよく目にはいる。動画には懐かしい「プジョー505」まで写っている。
いっぽう見かける機会が極めて少なかったのはイタリア車だ。しかし「アルファ・ロメオ アルファ159」や「ブレラ」など、本国で一般ユーザーにあまりウケなかったモデルをきれいにして乗っているのを目にするたび、ベルギー人のイタリア車ファンの熱さを感じたのも事実だ。
|
ワッフルと並ぶ名物とは
ところでブリュッセルには、ワッフルと並ぶ「名物」があるようだ。欧州ナンバーワンシェアの簡易カーナビメーカー「Tomtom」の最新統計によると、ブリュッセル市内全道路のうち、毎日渋滞している道の割合は38.9%に達し、ワルシャワ(38.1%)やロンドン(34.5%)を抜いて、欧州ワーストという。
市街の比較的穏やかな地域に滞在していて「そんなわけないだろう」と思っていたボクに一撃を食らわせたのは最終日、空港に向かうバスだった。
車内にはスーツを着た、日本でいう厚生年金加入者っぽい人が多い。国民年金な風体の人物はボクひとりだ。
街からわずか15kmの近さにもかかわらず所要時間40分と書いてある。ふたたび「そんなわけないだろう」と思ったら、大渋滞にはまりっぱなし。みるみるうちに40分を超えた。平均時速にすると22.5kmである。さきほどの厚生年金な人たちがドドーッと降りたのでボクも一緒に降りたら、空港のひとつ前のバス停だった。「NATO前」と書いてあった。空港直通バスかと思ったら、「空港が終点の路線バス」だったのだのだ。
泣く子も黙る北大西洋条約機構本部の職員も、渋滞に泣かされながらバス通勤しているのか。思わず同情してしまったボクであった。
(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)
【Movie】大矢アキオ、捨て身の路上調査員「ブリュッセル編」(その1)
【Movie】大矢アキオ、捨て身の路上調査員「ブリュッセル編」(その2)
(撮影・編集=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
-
第957回:伝説のベルトーネが復活 新経営陣が目指すブランドの未来 2026.4.16 イタリアを代表するカロッツェリア&デザイン開発会社だったベルトーネ。新たな資本のもとで再起を図る彼らが見据えたビジネスと、新生ベルトーネのクルマの特色とは? 温故知新で未来に臨む名門の取り組みを、イタリア在住の大矢アキオがリポートする。
-
第956回:どうする“(ほぼ)ランク外”のランチア 営業マンの吐露する真情とともに 2026.4.9 鳴り物入りで復活を遂げたはずのランチアが、まさかの大不振! 新型「イプシロン」が空振りした理由とは? 1906年創業の名門が、歴史を重んじる欧州でここまで苦戦する理由とは? 営業マンの声とともに、現地在住の大矢アキオがリポートする。
-
第955回:イタリアでは事情が違う? ニュースにおける高級外車の“実名報道”を考える 2026.4.2 目立つから仕方ない? ベントレーやランボルギーニといった高級輸入車だけが、事故を起こすたびに“実名報道”されてしまう理由とは? この現象は日本固有のものなのか? イタリア在住の大矢アキオが、日本の事故報道におけるふとした疑問を掘り下げる。
-
第954回:イタリア式「走ったぶんだけ保険」奮闘記 2026.3.26 イタリア在住の大矢アキオが、マイカーの維持費を節約するべく走行距離連動型の自動車保険に挑戦! そこに待ち受けていた予想外のトラブルの数々とは? 保険にみるイタリアのお国柄と、2カ国生活者ならではの“あるある”な騒動をリポートする。
-
第953回:「黄金のGT-R」と宅配便ドライバーになりかけた話 2026.3.19 イタリア在住のコラムニスト、大矢アキオが1年ぶりに日本を訪問。久々の東京に感じた世相の変化とは? 廃止されたKK線に、街を駆けるクルマの様相、百貨店のイベント。さまざまな景色を通じて、「中からは気づけないこの国の変化」をつづる。
-
NEW
「洗車でボディーにキズがつく」って本当ですか?
2026.4.21あの多田哲哉のクルマQ&Aマイカーは常にきれいな状態で維持したいものの、クルマ好きの間では「洗車することでボディーにキズがつく」「洗いすぎは害になる」という意見もある。実際のところ、どうなのか? 元トヨタの多田哲哉さんに聞いてみた。 -
ディフェンダー110 X-DYNAMIC HSE P300e(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.20試乗記本格クロスカントリービークルの「ディフェンダー」にプラグインハイブリッド車の「P300e」が登場。電気の力を借りて2リッターターボとしては格段にパワフルになった一方で、カタログ燃費はなかなか悲観的な数値を示している。果たしてその仕上がりは? -
ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン社長に聞く 日本での展望とスポーツカーの未来
2026.4.20デイリーコラム2025年8月に着任した、ポルシェジャパンのイモー・ブッシュマン新社長。彼の目に日本はどう映り、またどのような戦略を考えているのか? 難しい局面にあるスポーツカーや電気自動車の在り方に対する考えを含め、日本における新しいリーダーに話を聞いた。 -
スバル・ソルテラET-HS(前編)
2026.4.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバル&STIでクルマを鍛えてきた辰己英治さんが、“古巣”スバルの手になる電気自動車「ソルテラ」に試乗。パワートレインの電動化以外にも、さまざまな試みが取り入れられた一台を、ミスター・スバルはどう評価するのか? -
第57回:スズキはなぜインドに賭ける? 変わらず牛が闊歩するインドの最新工場を小沢コージが直撃
2026.4.18小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ小沢コージがインドへ。日本の自動車ファンにとってインドといえばスズキのイメージだが、実はスズキは現在、インドへの大型投資の真っ最中だ。なぜスズキはインドでこれほどまでに愛されるのか。最新工場を見学して考えた。 -
ボルボXC90ウルトラT8 AWDプラグインハイブリッド(4WD/8AT)【試乗記】
2026.4.18試乗記2016年に上陸した2代目となるボルボのフラッグシップSUV「XC90」の最新アップデートモデルに試乗。パワフルなプラグインハイブリッドシステムを採用する3列シートSUVの走りを、先にステアリングを握った「V60」や「XC60」との比較を交えながら報告する。