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【スペック】全長×全幅×全高=4935×1915×1345mm/ホイールベース=2940mm/車重=1770kg/駆動方式=FR/4.7リッターV8DOHC32バルブ(450ps/7000rpm、52.0kgm/4750rpm)(欧州仕様車)

マセラティ・グラントゥーリズモMCストラダーレ(FR/6AT)【海外試乗記】

コーナーで出会う快感 2011.06.30 試乗記 吉田 匠 マセラティ・グラントゥーリズモMCストラダーレ(FR/6AT)

「マセラティ・グラントゥーリズモ」に最速・最軽量をうたうロードカー「MCストラダーレ」が加わった。その走りの実力を中国・上海サーキットで試す。
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最速のマセラティ

4ドアサルーンの「クアトロポルテ」と2ドアクーペの「グラントゥーリズモ」(GT)。その基本2モデルを軸に、さまざまなバリエーション展開をしているマセラティから、またまた魅力的なクルマが登場した。それはGT系の最高性能版となる「グラントゥーリズモMCストラダーレ」で、マセラティのロードカーで最速の座に君臨するモデルだ。

とはいえそれは単に速いだけのクルマではない。「MC」がMaserati Corse(英語では「マセラティ・レーシング」)のイニシャルであることから想像できるように、コンペティションカーの血が注ぎ込まれたモデルで、ワンメイクレース用の「トロフェオ・グラントゥーリズモMC」と、GT4ヨーロピアンカップで勝利している「GT4レーシングモデル」のノウハウを採り入れている。しかもそれは、イタリア語でストリートを意味する「ストラダーレ」の名のとおり、公道で乗れるロードカーに仕上げられているところがポイントである。

具体的には、4.7リッターV8DOHC32バルブエンジンをスープアップし、「グラントゥーリズモS」よりパワーで10ps、トルクで2.0kgmアップの450psと52.0kgmに引き上げる一方、フロントシートをカーボンシェルの軽量バケットに替えると同時にリアシートを排して2シーターとしたほか、ブレーキをカーボンセラミック製ローターに替え、軽量なMCデザインの20インチホイールを履くなどして重量をグラントゥーリズモSから110kg削り取り、1770kgの車重を実現した。その結果MCストラダーレは、0-100km/h加速4.6秒、最高速度301km/hという、公道用マセラティで最速のパフォーマンスを手に入れることになった。


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ダッシュボード上に備わるドライビングモードセレクトは、「AUTO」「SPORT」の他、「RACE」モードも設定される。
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「MCストラダーレ」の乗車定員は2名で、後部座席は無い。ロールケージや4点式レーシングハーネスはオプションで用意される。
「MCストラダーレ」の乗車定員は2名で、後部座席は無い。ロールケージや4点式レーシングハーネスはオプションで用意される。 拡大
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タイトで上質なインテリア

このグラントゥーリズモMCストラダーレ、去年秋のパリサロンに初登場、今年4月に上海モーターショーでアジアデビューしたのに続いて6月下旬、上海インターナショナルサーキットを舞台にアジア太平洋地区で初のプレス試乗会が開かれた。僕もそこにジャーナリストの一人として参加したのだが、最初に結論を言ってしまえば、MCストラダーレは想像していた以上に気持ちいい、ドライビングプレジャーに満ちたクルマだった。

ピット前に並ぶMCストラダーレのエクステリアを見ると、フロントグリル両サイドに縦にうがたれたブレーキ冷却用エアインテークとグリル下のフロントスポイラーが目につくほか、トランクリッドにもリアスポイラーが備わるなど、独自のエアロパーツで武装しているのが分かる。それらはもちろんルックスのためだけの装備ではなく、200km/h走行時にフロントで25%、リアで50%もダウンフォースを増す効果を持っているという。

当然サスペンションにも手が入れられていて、スプリング、ダンパー、スタビライザーがすべて固められ、車高がグラントゥーリズモSより10mm低められている。そのちょっと低いボディから20インチ径のピレリPゼロコルサが踏ん張る姿が、実に精悍(せいかん)である。

当日の上海サーキットには現行マセラティのすべてのラインナップがそろえられていて、それらに順に試乗したのち、最後にいよいよMCストラダーレのコクピットに収まった。硬派系モデルとはいえそこはマセラティ、アルカンターラとレザーとカーボンでしつらえられた2座コクピットには、タイト感と適度なラグジュアリー感が違和感なく同居している。

一見で他のグレードとの違いがわかる、MCストラダーレ用のフロントバンパー。リアスポイラーなどと合わせ、エアロダイナミクス性能を最適化したものという。
一見で他のグレードとの違いがわかる、MCストラダーレ用のフロントバンパー。リアスポイラーなどと合わせ、エアロダイナミクス性能を最適化したものという。 拡大
搭載される4.7リッターV8エンジンは、「グラントゥーリズモS」より10psと2.0kgmアップの450psと52.0kgmを発生する。
搭載される4.7リッターV8エンジンは、「グラントゥーリズモS」より10psと2.0kgmアップの450psと52.0kgmを発生する。 拡大

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スイッチ一つで臨戦態勢

トランスアクスル配置の電子制御ツインクラッチ2ペダル6段MTをまずはオートに入れて、ピットロードに出る。サスペンションは硬めだが、乗り心地は断じて不快ではなく、公道で乗っても十分容認できるクルマに思えたのが、その第一印象だった。

最初は「SPORT」モードでコースに出るが、走れるのはたった2ラップしかない。そこでステアリングコラム固定式のカーボン製パドルを叩いてギアボックスをマニュアルに切り替えた後、ダッシュボードのボタンをプッシュしてマセラティではこのクルマにしかないという「RACE」モードを選んだら、MCストラダーレは即座に臨戦態勢に入った。

すると、エグゾーストバルブが回転を問わず解放されて艶(つや)っぽくも豪放な排気音が常に奏でられるとともに、ツインクラッチギアボックスの変速タイミングがさらに速くなって、シフトアップもダウンもパドル操作で瞬時に小気味よく決まる。だから直線を加速するだけでも十分楽しめるクルマだが、軽い踏力で制動力を立ち上げるカーボンセラミックブレーキでスピードを殺してコーナーに飛び込んだら、さらなる快感が待っていた。

意外と軽いけれど、路面感覚を十分に伝えるステアリングホイールを切り込むと、MCストラダーレはボディサイズを忘れさせる軽快さでターンイン。奥の深いコーナーを回り込みながらスロットルを閉じると一瞬テールがアウトに流れたが、再びスロットルを踏んだら挙動は即座に回復し、狙ったとおりにノーズがイン側に向かっていく。アペックスをすぎて2速でスロットルを徐々に開くと、今度はニュートラルな弧を描いてそこを脱出していく。

なんとコントローラブルなクルマなのだろう。グラントゥーリズモMCストラダーレ、コーナーを意のままに抜けるのが好きな男のための、硬派にしてすこぶる魅力的なマセラティである。

(文=吉田 匠/写真=マセラティ・ジャパン)


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ブレンボ社によって新たに開発されたカーボンセラミックブレーキがおごられる。
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