マセラティ・グラントゥーリズモMCストラダーレ(FR/6AT)【海外試乗記】
コーナーで出会う快感 2011.06.30 試乗記 マセラティ・グラントゥーリズモMCストラダーレ(FR/6AT)「マセラティ・グラントゥーリズモ」に最速・最軽量をうたうロードカー「MCストラダーレ」が加わった。その走りの実力を中国・上海サーキットで試す。
最速のマセラティ
4ドアサルーンの「クアトロポルテ」と2ドアクーペの「グラントゥーリズモ」(GT)。その基本2モデルを軸に、さまざまなバリエーション展開をしているマセラティから、またまた魅力的なクルマが登場した。それはGT系の最高性能版となる「グラントゥーリズモMCストラダーレ」で、マセラティのロードカーで最速の座に君臨するモデルだ。
とはいえそれは単に速いだけのクルマではない。「MC」がMaserati Corse(英語では「マセラティ・レーシング」)のイニシャルであることから想像できるように、コンペティションカーの血が注ぎ込まれたモデルで、ワンメイクレース用の「トロフェオ・グラントゥーリズモMC」と、GT4ヨーロピアンカップで勝利している「GT4レーシングモデル」のノウハウを採り入れている。しかもそれは、イタリア語でストリートを意味する「ストラダーレ」の名のとおり、公道で乗れるロードカーに仕上げられているところがポイントである。
具体的には、4.7リッターV8DOHC32バルブエンジンをスープアップし、「グラントゥーリズモS」よりパワーで10ps、トルクで2.0kgmアップの450psと52.0kgmに引き上げる一方、フロントシートをカーボンシェルの軽量バケットに替えると同時にリアシートを排して2シーターとしたほか、ブレーキをカーボンセラミック製ローターに替え、軽量なMCデザインの20インチホイールを履くなどして重量をグラントゥーリズモSから110kg削り取り、1770kgの車重を実現した。その結果MCストラダーレは、0-100km/h加速4.6秒、最高速度301km/hという、公道用マセラティで最速のパフォーマンスを手に入れることになった。
タイトで上質なインテリア
このグラントゥーリズモMCストラダーレ、去年秋のパリサロンに初登場、今年4月に上海モーターショーでアジアデビューしたのに続いて6月下旬、上海インターナショナルサーキットを舞台にアジア太平洋地区で初のプレス試乗会が開かれた。僕もそこにジャーナリストの一人として参加したのだが、最初に結論を言ってしまえば、MCストラダーレは想像していた以上に気持ちいい、ドライビングプレジャーに満ちたクルマだった。
ピット前に並ぶMCストラダーレのエクステリアを見ると、フロントグリル両サイドに縦にうがたれたブレーキ冷却用エアインテークとグリル下のフロントスポイラーが目につくほか、トランクリッドにもリアスポイラーが備わるなど、独自のエアロパーツで武装しているのが分かる。それらはもちろんルックスのためだけの装備ではなく、200km/h走行時にフロントで25%、リアで50%もダウンフォースを増す効果を持っているという。
当然サスペンションにも手が入れられていて、スプリング、ダンパー、スタビライザーがすべて固められ、車高がグラントゥーリズモSより10mm低められている。そのちょっと低いボディから20インチ径のピレリPゼロコルサが踏ん張る姿が、実に精悍(せいかん)である。
当日の上海サーキットには現行マセラティのすべてのラインナップがそろえられていて、それらに順に試乗したのち、最後にいよいよMCストラダーレのコクピットに収まった。硬派系モデルとはいえそこはマセラティ、アルカンターラとレザーとカーボンでしつらえられた2座コクピットには、タイト感と適度なラグジュアリー感が違和感なく同居している。
スイッチ一つで臨戦態勢
トランスアクスル配置の電子制御ツインクラッチ2ペダル6段MTをまずはオートに入れて、ピットロードに出る。サスペンションは硬めだが、乗り心地は断じて不快ではなく、公道で乗っても十分容認できるクルマに思えたのが、その第一印象だった。
最初は「SPORT」モードでコースに出るが、走れるのはたった2ラップしかない。そこでステアリングコラム固定式のカーボン製パドルを叩いてギアボックスをマニュアルに切り替えた後、ダッシュボードのボタンをプッシュしてマセラティではこのクルマにしかないという「RACE」モードを選んだら、MCストラダーレは即座に臨戦態勢に入った。
すると、エグゾーストバルブが回転を問わず解放されて艶(つや)っぽくも豪放な排気音が常に奏でられるとともに、ツインクラッチギアボックスの変速タイミングがさらに速くなって、シフトアップもダウンもパドル操作で瞬時に小気味よく決まる。だから直線を加速するだけでも十分楽しめるクルマだが、軽い踏力で制動力を立ち上げるカーボンセラミックブレーキでスピードを殺してコーナーに飛び込んだら、さらなる快感が待っていた。
意外と軽いけれど、路面感覚を十分に伝えるステアリングホイールを切り込むと、MCストラダーレはボディサイズを忘れさせる軽快さでターンイン。奥の深いコーナーを回り込みながらスロットルを閉じると一瞬テールがアウトに流れたが、再びスロットルを踏んだら挙動は即座に回復し、狙ったとおりにノーズがイン側に向かっていく。アペックスをすぎて2速でスロットルを徐々に開くと、今度はニュートラルな弧を描いてそこを脱出していく。
なんとコントローラブルなクルマなのだろう。グラントゥーリズモMCストラダーレ、コーナーを意のままに抜けるのが好きな男のための、硬派にしてすこぶる魅力的なマセラティである。
(文=吉田 匠/写真=マセラティ・ジャパン)

吉田 匠
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.9.1 2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
NEW
ホンダがコンセプトモデル「アキュラ・ネクセラ ビジョン」を発表 次世代デザインを読み解く
2026.9.3デイリーコラム本田技研工業の米国現地法人アメリカン・ホンダモーターが、アキュラブランドの次世代デザインを示すというコンセプトモデル「ネクセラ ビジョン」を初公開した。バタフライドアを採用するこのスポーツカーは、次世代アキュラの何を表現しているのか。 -
NEW
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(後編)
2026.9.3あの多田哲哉の自動車放談ワインディングロードで新型「BMW iX3」のステアリングを握った多田哲哉さんは、その走りに感心した様子。どんなところが優れているのか、トヨタのエンジニアの視点で語ってもらおう。 -
NEW
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
NEW
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。





























