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トヨタ・マークX“GRMN”(FR/6MT)

こだわりのスポーツセダン 2019.01.14 試乗記 渡辺 敏史 トヨタのFRセダン「マークX」をベースに、TOYOTA GAZOO Racingが開発した「マークX“GRMN”」。モータースポーツで得た知見が惜しみなく注がれたコンプリートカーは、走りにこだわるドライバーにこそ試してほしいスポーツセダンに仕上がっていた。

GRシリーズの頂点に立つGRMN

トヨタのモータースポーツ活動を統括するTOYOTA GAZOO Racing。その大きな目標は、実戦で得たさまざまなノウハウをドライビングプレジャーというかたちで市販車のセットアップにフィードバックすることだという。

その知見をもとに味付けされたのが「GRスポーツ」や「GR」といったカスタマイズモデルになるわけだが、とりわけエンジンを含む車両の隅々にまで手が加えられた究極のコンプリートとされるのが「GRMN」だ。今までにその名が与えられたモデルは、「iQ GRMN」と「ヴィッツGRMN」「86 GRMN」といったところ。加えて、2015年に発売されたマークX版のGRMNは、100台の限定数が瞬時に完売している。ちなみにGRMNの“MN”はマイスター・オブ・ニュルブルクリンクの略。市販車開発やレース活動を通じてのドイツ・ニュルブルクリンクへの敬意を、そのグレード名に込めているということだろう。

そのマークX“GRMN”がこの1月に復活を遂げる。2代目のベースは初代と同じ車両にみえつつも、2016年のマイナーチェンジでスポット打点の追加や構造接着剤の採用で結合部剛性を強化、合わせてサスペンションチューニングの変更を受けたものだ。そこからさらに元町工場で252カ所に及ぶスポットの増し打ちが施され、ブレース類で開口部を固めることでボディー剛性の強化が図られている。

このボディーを基に専用チューニングが施されたサスペンションには、「レクサスES」などに用いられるKYB製のスイングバルブ式ダンパーを新たに採用。微小入力域から減衰力を素早く立ち上げ、低速域での動的質感を向上させたという。

TOYOTA GAZOO Racingが手がけた「マークX“GRMN”」。マークXの最上級グレード「350RDS」をベースに開発されたコンプリートカーだ。
TOYOTA GAZOO Racingが手がけた「マークX“GRMN”」。マークXの最上級グレード「350RDS」をベースに開発されたコンプリートカーだ。拡大
「マークX」にGRMNが設定されるのはこれが2度目。2015年に登場した最初のモデルでは販売台数は100台だったが、今回は350台に増やされている。
「マークX」にGRMNが設定されるのはこれが2度目。2015年に登場した最初のモデルでは販売台数は100台だったが、今回は350台に増やされている。拡大
各所に施されたピアノブラックとカーボン調の装飾が目を引くインストゥルメントパネルまわり。
各所に施されたピアノブラックとカーボン調の装飾が目を引くインストゥルメントパネルまわり。拡大
「GRMN」とは、スポーティーなチューニングが施されたGRシリーズの中でも、最も広範にわたり改良が加えられたモデルとなっている。
「GRMN」とは、スポーティーなチューニングが施されたGRシリーズの中でも、最も広範にわたり改良が加えられたモデルとなっている。拡大
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大排気量NAを積極的に楽しむために

搭載されるエンジンはトヨタのスポーツユニットとして長らく奮闘してきた「2GR-FSE」型、すなわち直噴&ポート噴射のデュアルインジェクター式3.5リッターV6である。専用のエキゾーストシステムを採用するも、そのパワーやトルクは318ps&380Nmと多くのカタログモデルと同じになっている。

マークX“GRMN”は、今や絶滅種となりつつあるこのショートストローク型自然吸気(NA)ユニットを味わい尽くすこともプレジャーのひとつと考えており、トランスミッションには初代と同じ6段MTを採用。ただしギア比はファイナルが初代よりもハイギアード化され、3.615と大排気量を生かせるセットアップとなった。それに合わせて、実はECUのマップも最適化されたというところに、このクルマのこだわりがみてとれるだろう。併せてデフケースをフィン付きにするなど、クーリングにも先代からのフィードバックがみてとれる。

19インチのBBS製鍛造ホイールに装着される「ポテンザRE050」などは先代と同様。そのスポークの奥にのぞくアドヴィックス製4ポッド対向モノブロックキャリパーは白く塗られ、フロントマスクの意匠も変更されて……という辺りが先代との外観的識別点ということになるが、正直なところ、その差をことさらに意識する人は少数だろう。加えてマークXはGRMNよりライトなチューニングが施されたGRスポーツというグレードが既に通年販売されており、それとの差別化はトヨタの物件としては珍しく消極的だったりもする。

つまるところ、GRMNであると見てくれで主張できる最大のディテールは、10kgの軽量化がかなえられるカーボンファイバー製のルーフということになるかもしれない。先代では標準装備だったそれは新型では27万円のオプション扱いとなっており、それを選択しての540万円という合計価格は先代と同じだ。販売は全国のGRガレージが担当し、注文受付は2019年9月30日までだが、その間に350台の限定数が成約に至れば期間内でも販売は終了となる。

エンジンは「2GR-FSE」型の3.5リッターV6 DOHC。スペック上の数値は標準車のエンジンと共通だが、マニュアルトランスミッションとのマッチングを図るため、出力制御特性などが変更されている。
エンジンは「2GR-FSE」型の3.5リッターV6 DOHC。スペック上の数値は標準車のエンジンと共通だが、マニュアルトランスミッションとのマッチングを図るため、出力制御特性などが変更されている。拡大
足元には19インチのBBS製鍛造アルミホイールを採用。タイヤサイズは前後で異なり、前:235/40R19 、後ろ:255/35R19となっている。
足元には19インチのBBS製鍛造アルミホイールを採用。タイヤサイズは前後で異なり、前:235/40R19 、後ろ:255/35R19となっている。拡大
「マークX“GRMN”」の大きな特徴である6段MTのシフトノブ。1速から3.791、2.104、1.524、1.185、1.000、0.816、リバースは3.466というギア比を含め、トランスミッションの中身は基本的に初代と同じだ。
「マークX“GRMN”」の大きな特徴である6段MTのシフトノブ。1速から3.791、2.104、1.524、1.185、1.000、0.816、リバースは3.466というギア比を含め、トランスミッションの中身は基本的に初代と同じだ。拡大
トランスミッションのギア比は初代と同じだが、ファイナルのギア比は3.615と、初代(4.083)よりハイギアードとなっている。
トランスミッションのギア比は初代と同じだが、ファイナルのギア比は3.615と、初代(4.083)よりハイギアードとなっている。拡大

乗れば分かるGRMNのねらい

袖ヶ浦フォレストレースウェイでの試乗は既報の「スープラ プロトタイプ」と同日に行われたため、路面コンディションは最悪。雨空を恨めしく思いながらコースインする。と、タイヤも温まらぬ最初のコーナーからちょっとただならぬ感触に留飲が下がった。

調律されたサスペンションの硬質感を抑えたしなやかな動きとリニアな姿勢変化、電動パワーステアリングのセットアップを変更したことによる前輪側からの情報密度の向上……と、標準のマークXとは大きく異なる動的質感は、GRMNの趣旨がなんたるかを語っている。それすなわち、サーキットでのコンマ1秒にこだわるのではなくストリートも気持ちよく走れ、そして普段遣いでの上質感にも配慮したコンプリートカーであり、だからこそニュルブルクリンク的なセットアップの知見が生かせると言いたいわけだ。

マークXのパッケージングは、FR車としては重量配分も寸法面もスポーツ性が重視されたものではないが、それは当日の荒天ではかえって都合が良かった。テールの滑り出しを一定量許容するよう調律されたVSCの介入を探りながら向きを変えていく、キワを使ったドライビングがとてもやさしい。車格的に挙動変化がゆっくりしていることや、アタマが重く前輪接地がしっかり出ていることがその一助となっている。

webCGが取材した日の試乗会の様子。天候は雨で、コースのところどころに“川”ができるようなウエットコンディションでの試乗となった。(写真=荒川正幸)
webCGが取材した日の試乗会の様子。天候は雨で、コースのところどころに“川”ができるようなウエットコンディションでの試乗となった。(写真=荒川正幸)拡大
ボディーカラーは写真の「ホワイトパールクリスタルシャイン」(有償色)を含む全5色。基本的には「GRスポーツ」と同じだが、「トゥルーブルーマイカメタリック」だけは選ぶことができない。
ボディーカラーは写真の「ホワイトパールクリスタルシャイン」(有償色)を含む全5色。基本的には「GRスポーツ」と同じだが、「トゥルーブルーマイカメタリック」だけは選ぶことができない。拡大
外観では、専用デザインの前後バンパーや大型バッフルの4本出しマフラーなどが特徴。標準車とはひと目で区別がつくが、「GRスポーツ」と比べると、エンブレム類やホイールなどをつぶさに見ていかないと見分がつかない。
外観では、専用デザインの前後バンパーや大型バッフルの4本出しマフラーなどが特徴。標準車とはひと目で区別がつくが、「GRスポーツ」と比べると、エンブレム類やホイールなどをつぶさに見ていかないと見分がつかない。拡大

あらゆる意味で、いまや希少な存在

加えて、ブレーキは踏力や踏量をじわじわ反映してくれるし、クラッチのつながりにも唐突さはなく、スロットル開度との連携感もヘタなカタログモデルよりバランスが取れている。ショートストロークのシフトレバーは吸い込み感がやや渋めだが、これはアタリがつけば改善されるところでもあるだろう。せっかくのMTならもうひと声、パワーのノリを期待したいところだが、2GR-FSEも回転フィールそのものはNAのありがたみを感じさせてくれる。

マークX GRMNは、その成り立ちや設(しつら)えから察するよりもかなりまっとうなスポーツサルーンだと思う。「今や絶妙なボディーサイズに収まる大排気量NA+MT」という、他で探すのが難しい個性も備わっているし、内装からは古さがにじみ出るものの走りの質感は広範にわたってしっかりと磨かれている。価格的なライバルとなる日独米英うんぬんのプレミアムDセグメントサルーンと比較するお客さんも少ないだろうが、スポーツドライビングへのこだわりが強いドライバーにとって、肌なじみは悪くないはずだ。

(文=渡辺敏史/写真=トヨタ自動車/編集=堀田剛資)

ゴム製の滑り止めがスポーティーな雰囲気を漂わすABCペダル。細やかな操作にも忠実に反応するブレーキや、自然なつながりのクラッチも「マークX“GRMN”」の特徴だった。
ゴム製の滑り止めがスポーティーな雰囲気を漂わすABCペダル。細やかな操作にも忠実に反応するブレーキや、自然なつながりのクラッチも「マークX“GRMN”」の特徴だった。拡大
表皮に東レの「ウルトラスエード」を用いた専用のスポーツシート。ヘッドレスト一体型で、上部に「GR」のロゴがあしらわれている。
表皮に東レの「ウルトラスエード」を用いた専用のスポーツシート。ヘッドレスト一体型で、上部に「GR」のロゴがあしらわれている。拡大
走りに関するこだわりが随所に込められた「マークX“GRMN”」。大排気量のNAエンジンをMTで楽しめる、手ごろなサイズのFRセダンというだけでも、今となっては稀有(けう)な存在と言えるだろう。
走りに関するこだわりが随所に込められた「マークX“GRMN”」。大排気量のNAエンジンをMTで楽しめる、手ごろなサイズのFRセダンというだけでも、今となっては稀有(けう)な存在と言えるだろう。拡大

テスト車のデータ

トヨタ・マークX“GRMN”

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4795×1795×1420mm
ホイールベース:2850mm
車重:1560kg
駆動方式:FR
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:318ps(234kW)/6400rpm
最大トルク:380Nm(38.7kgm)/4800rpm
タイヤ:(前)235/40R19 92Y/(後)255/35R19 92Y(ブリヂストン・ポテンザRE050A)
燃費:--km/リッター
価格:513万円/テスト車=--円
オプション装備:--

テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:1491km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
 

トヨタ・マークX“GRMN”
トヨタ・マークX“GRMN”拡大
渡辺 敏史

渡辺 敏史

自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。

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