トヨタ・スープラ プロトタイプ(FR/8AT)
新章の幕開け 2018.12.15 試乗記 トヨタがBMWとのコラボレーションによって復活させた高性能スポーツカー「スープラ」。雨の袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗したそのプロトタイプは、既存のトヨタ車とは一味違う“ハンドリングマシン”となっていた。初代、2代目とは異なるコンセプト
日本市場にとってのスープラの歴史は、1986年に登場したA70系にさかのぼる。トヨタは7M型3リッターターボを搭載したそれをCM上で “トヨタ3000GT”と銘打ち、かの「2000GT」との連続性を意識させた。バブルが膨らみ始めた時世も相まってか、当時のステータスシンボルだった「ソアラ」とともに順調にセールスを伸ばしていった。
その当時からスペシャリティー系のソアラに対してスポーティーなキャラ付けはなされていたものの、その志向がより端的になったのはグループAホモロゲーション用に500台限定で発売された「ターボA」の登場だろう。次いで1990年には、それこそトヨタ2000GTから20年以上続いたM系6気筒の歴史に終止符を打ち、最新設計のJZ系へとエンジンをスイッチしたことによりハイパワー化への素地(そじ)も整ったわけだ。
そして1993年に登場したA80系スープラは、バブルがはじけた頃ではありながら、財布のひもを緩めるに十分な説得力を見るからに備えていた。曲面的に抑揚の効いたボディーは、それこそバブル期の積極的設備投資のたまものだ。誰もがあぜんとさせられた後部にそびえ立つウイングは、米国からの規制緩和の圧力をバネに国内認可を取り付けた、トヨタならではのパワープレーの結果だろう。
パワーといえば、エンジンも2.5リッターの1JZから3リッターの2JZにスイッチされる。持ち前のブロックやタービンの頑丈さ、大容量インジェクターの採用など、その仕様が“おあつらえ”だったこともあり、A80系スープラはチューニングのベース車両としても人気を博した。僕自身、試乗歴の中で最も強力なパワーを持つクルマは、今もって某ショップの手がけたA80系スープラだ。“テストベンチで880ps”というそれは、真のターボパワーとはどういうものなのかをゾッとするほど味わわせてくれた。
そんなスープラは、かれこれ16年以上ぶりの復活にあたり、ボディー形状こそ2ドアハッチバックを継承しながらそのコンセプトを違えている。それすなわち、ハンドリング>パワーということだ。