レクサスES300h“バージョンL”(FF/CVT)
驚きの二面性 2019.02.11 試乗記 7代目にして初めて日本に導入されたレクサスのFFセダン「ES」に試乗。テスト車は話題の新装備「デジタルアウターミラー」が装着された最上級グレード“バージョンL”。夜明け前から日暮れまでの長いドライブで浮き彫りになった、同車の秘めた二面性とは!?FFレイアウトならではの広々感
2018年の10月に、日本ではブランニューモデルとして新発売されたレクサスES。しかし、意外なことに海外のマーケットでは、フラッグシップセダン「LS」と並んで、実は「レクサスで最も歴史の長い一台」でもある。
もっとも日本でもレクサスブランドの展開以前に「トヨタ・ウィンダム」として販売され、一定の支持を獲得した実績もある。日本では初めてのESの発売は、すなわち「ウィンダムの復活」とも紹介ができるわけだ。
かくして、日本へと“里帰り”したこのモデルは、まずは思いのほか堂々としたたたずまいが印象的なセダンでもある。
何しろ、全長4975mmにして全幅が1865mmというボディーサイズは「クラウン」をも上回る。それを受け、特にリアシートへと腰を降ろした際に実感できる足元空間の広々感は、ランニングコンポーネンツの大半をボディーのフロントセクションに集約できる、FFレイアウトの持ち主ならではだ。
一方で、前後オーバーハングが大きめのプロポーションは、前輪位置を前に出すことでフロントドアと前輪間の空間で伸びやかさを演出できるFRレイアウトのプレミアムセダンに比べると、優雅さという点でちょっとばかりのハンディを背負っている感が否めない。実際、ホイールベースは前出のクラウンに対してマイナス50mmと、こちらは逆転されている。
アメリカを中心とした海外マーケットでは、まだまだガソリンエンジン車が主役のESだが、日本では新開発の2.5リッター4気筒ガソリンエンジンとモーターとの組み合わせによりシステム最高出力218psを発生するユニットのみを搭載した“ハイブリッド専用車”という位置づけ。ちなみにこのパワーパックは、先行発売されている現行「カムリ」のもの(同211ps)とほぼ同様のアイテムだ。
新世代のドアミラーの出来栄えは!?
今回テストドライブしたのは、世界初をうたう話題のオプション「デジタルアウターミラー」をラインナップ中で唯一選択可能なトップグレード“バージョンL”。ちなみに、取材当日の天候は早朝から本格的な雨模様。時間の限られた試乗会ではかなわなかった、市街路から高速道路に至るまでのさまざまな状況下で、最新アイテムの実力をくまなくチェックできたのはラッキーだった。
サイドガラスを通して見る従来のドアミラーに比べると、視線移動量が少なく斜め前方の視界も劇的に改善される一方で、近くのモニターへと目を運ぶため“焦点合わせ”では不利になることなどを筆頭に、功罪が入り交じるデジタルアウターミラー。
まだ暗い中を出発して明白だったのは、闇の中では普通のドアミラーよりも対象物がずっと明るく映し出されるということ。これを大きなメリットだと実感できる人は少なくないはずだ。
しかし、予想外に困惑させられたのは、雨の降る早朝に、複数車線を備えた高速道路を走った際の使用感だった。
日本ではヘッドライトのロービームの照射角が「左寄り下向き」に設定されるため、右車線を走る後続車のヘッドライトビームが直接カメラに入って画面がハレーションを起こしてしまい、とても見づらい状況に。こうなるとぬれた路面の白線がほとんど読み取れないため、モニター内の車両が右隣の車線にいるのか、さらに右の車線にいるのかが判別しづらくなる。
端的に言って、この現象に遭遇した時点で「このシステムはまだ時期尚早だナ」と判断せざるを得なかった。現時点でのメリットや高い将来性を理解した上でも「まだ古典的なミラーを選んだ方がいい」というのが筆者の回答である。
ハイブリッドシステムの滑らかさは文句ナシ
モーターパワーのみで静々とスタートする、トヨタの2モーター式ハイブリッドならではの特徴的な加速感は、何よりも“上質なセダン”を目指したであろうESのキャラクターと、よくマッチしている。
1.7t強と決して軽くはないボディーを最高出力120psと最大トルク202Nmのモーターが担当して、ほぼ“無音”のままゼロ発進。速度が高まると加速力の主役はエンジンへと受け継がれるが、こちらも低回転域では静粛性がすこぶる高く、またモーターからエンジンへとバトンタッチする瞬間の滑らかさも文句ナシの仕上がりだ。
強い加速を欲してアクセルを踏み込むと、エンジンの“4気筒ノイズ”に興覚めになってしまうのは事実。同時に、エンジンの回転上昇に速度アップが追い付かない“ラバーバンド感”も、急激に意識させられる。
ただし、日常シーンでそうした領域に踏み込むことはめったにないはず。「実はレース用エンジンの開発で得られたノウハウも盛り込まれている」とうたわれる高効率エンジンとモーターからなる最新のハイブリッドシステムは、通常走行であれば、エンジンを高回転まで回す必要はまずないという余力を備えた心臓部だ。
マルチメディアコントローラーにモノ申す!
滑らかな路面で味わえる「真円度の高い車輪が滑らかに転がっていく」というフットワークのテイストは、“いいクルマに乗っている”という実感に直結。前述したエンジンの軽負荷領域における高い静粛性と、こうした良路での乗り味の良さは、ESならではの得意技のひとつだ。
一方で、エンジンの高負荷領域に踏み込んだり、ばね下のブルブル感が目立つような荒れた路面を走ったりすると、好印象からの落差を大きく感じた。こうした厳しい場面を何食わぬ顔でやり過ごしてくれれば“いいクルマ”感はがぜんアップするに違いない。
また、細かい点ではマルチメディアコントローラーの使い勝手の悪さも、昨今のレクサス車に共通のウイークポイントとして挙げなくてはならない。
画面上のアイコンを注視しながら、センターコンソール上のタッチパッドを指でなぞってコマンドを入力するという現在の方式は、肝心のアイコンに“命中”させるのが何とも難しく、「使いづらさは天下一品」と言うしかない仕上がり。ジョイスティック風のつまみで操作できた1世代前のものから、はっきり“改悪”されており、大いに残念なポイントなのだ。
内外装の質感も走ってみてのテイストも、第一印象では「なかなかいいじゃない!」と、多くの人にそう思わせられると思う。しかし、繰り返しになるものの、厳しい場面ではその好印象が急降下……。夜明け前から日没後までさまざまなシーンでドライブしつつ、最後にはそんな思いに至ったレクサスESなのである。
(文=河村康彦/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
レクサスES300h“バージョンL”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4975×1865×1445mm
ホイールベース:2870mm
車重:1730kg
駆動方式:FF
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:178ps(131kW)/5700rpm
エンジン最大トルク:221Nm(22.5kgm)/3600-5200rpm
モーター最高出力:120ps(88kW)
モーター最大トルク:202Nm(20.6kgm)
システム最高出力:218ps
タイヤ:(前)235/45R18 94Y/(後)235/45R18 94Y(ダンロップSP SPORT MAXX 050)
燃費:23.4km/リッター(JC08モード)/20.6km/リッター(WLTCモード)
価格:698万円/テスト車=757万8320円
オプション装備:デジタルアウターミラー(21万6000円)/デジタルインナーミラー(10万8000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(23万8680円)/おくだけ充電(2万3760円)/寒冷地仕様<LEDリアフォグランプ等>(1万1880円)
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:2816km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:269.7km
使用燃料:14.5リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:18.6km/リッター(満タン法)/18.7km/リッター(車載燃費計計測値)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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