新型EV「ホンダe」のプロトタイプ発表!
ホンダが思い描く欧州での電動化戦略をリポート
2019.03.11
デイリーコラム
市場投入はまずヨーロッパから
ホンダは、2019年3月に開催されたジュネーブモーターショーで、新型電気自動車(EV)「ホンダe」のプロトタイプを世界初公開した。
今年のジュネーブモーターショーの話題はまさに電動化一色だった。フォルクスワーゲングループなど、欧州メーカーを筆頭にその本気度は一層増している。もちろんホンダとて無関係でいられるはずもなく、2025年までに欧州で発売するすべての四輪商品をハイブリッド車またはバッテリーEVなどの電動車両に置き換えることを目指すと発表。2モーターハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-MMD」を中心技術とし、電動車ラインナップの拡充を図っていくという。
日本メーカーのEVといえば、「三菱i-MiEV」や「日産リーフ」のイメージが強いが、ホンダも「クラリティEV」を販売してきた。ただし、それはアメリカ市場向けの商品であり、このホンダeは同社にとって欧州初の量販EVという位置づけになる。したがって、今夏より日本ではなく欧州にて先行予約を開始することがアナウンスされている。
ホンダeは、2017年のフランクフルトモーターショーで発表されたコンセプトモデル「ホンダ・アーバンEVコンセプト」をベースとし、市販に向けて進化させたモデルだ。エクステリアは、初代「シビック」や「N360」「シティ」などがモチーフといわれており、どこか懐かしさを感じさせる愛嬌(あいきょう)のあるデザイン。EV専用のプラットフォームが採用され、ボディーサイズは「フィット」よりもコンパクトに収められているという。空気抵抗を低減し電費をかせぐため、ドアハンドルを走行時はボディーと面一になるポップアップ式に、サイドミラーはカメラ方式で小型化されている。
モーターやバッテリーについての詳細はまだ発表されていないが、後輪駆動で一充電走行距離は200km以上(WLTPモード)、30分で80%まで充電が可能という、いわゆる都市型コミューターだ。欧州ではすでに「スマート・フォーツー エレクトリックドライブ」や「ルノーZOE」が先行しているカテゴリーに属する。
電動化が加速する欧州で生き残れるか?
またホンダは、このタイミングで欧州向けのエネルギーマネジメントへの取り組みに関しても発表した。これまで日本でも家庭でつくったエネルギーを家庭で消費する“エネルギーの家産家消”を目指し、実証実験などに取り組んできたが、今後は、欧州のEVユーザーと電力事業者を含めたエネルギーサービス事業者の双方に向けた商品およびサービスのポートフォリオを強化。電力系統と電気を融通しあうエネルギーマネジメント技術を、EV用充電ソリューションを提供するスイスのEVTEC社と共同開発中で、数年以内の事業化を予定する。さらに、スマートバッテリー事業で先行するイギリスのMoixa(モイクサ)や、都市部の路上充電において業界をリードするドイツのUbitricity(ユビトリシティ)といったベンチャー企業との提携も行っている。
ちなみに、今欧州では急ピッチで電動車の普及拡大に向けた取り組みが進んでいる。充電インフラに関しては、メーカーの垣根を越えてBMW、ダイムラー、フォルクスワーゲングループ、フォードモーターなどが共同で急速充電ネットワーク、イオニティ(IONITY)を設立。2020年までに欧州で超急速充電ステーションを400カ所設置する計画を掲げている。またフォルクスワーゲンは、2020年の市場投入が予定されている「ゴルフ」サイズの電動車用プラットフォーム「MEB」を他社に提供する計画を発表。要は“上モノ”を独自でデザインすれば、フォルクスワーゲン品質のEVができるということだ。
こうした流れの中で、果たしてホンダの電動化戦略が成功するのか否か、それはまだわからない。ただ言えることは、欧州の電動化の波は一過性のものではないということだ。ホンダeの市販モデルは、年内後半には生産開始が予定されている。
(文=藤野太一/写真=GIMS、フォルクスワーゲン、本田技研工業、ルノー/編集=堀田剛資)

藤野 太一
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