第29回:アルファ・ロメオ・ステルヴィオ(後編)
2019.04.03 カーデザイナー明照寺彰の直言 拡大 |
平均的なプレミアムSUVのスタイルに“アルファ・ロメオの顔”をくっつけただけ? アルファ初のSUV「ステルヴィオ」の意匠を通し、現役の自動車デザイナー明照寺彰が、グローバル化時代におけるカーデザインの難しさを語る。
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ジュリアの顔を縦に伸ばしただけでは?
明照寺彰(以下、明照寺):ところでステルヴィオですけれど、乗った感じはどうなんですか?
ほった:サスペンションがカッチカチです。
永福ランプ(以下、永福):ガッチガチだよね~。「SUVなのにロール角をこれだけ抑えました!」ってプレゼンテーションで自慢してたくらい。
ほった:ホントにサスペンション付いてんの? って感じでした。
明照寺:なるほど。しかし、そんなにハードなクルマのキャラクターだったら、やっぱり“この形”ではない気がしますね。
永福:形は、わりと万人受けですからね。
明照寺:もうひとつの疑問は、ステルヴィオの顔を見ると、「ジュリア」の顔を縦変倍しただけのように見えることです。
永福:ですねー。
明照寺:SUVなら、なにか“強さ”が欲しいわけですよ。アンダーガードを付けろというわけではないんですが、これだとただ単純に乗用車を縦に引き伸ばしたのと変わらない。グリルを思い切って変えてみたらどうだったのかなと思うんですけど、それは禁断の領域で、なかなか踏み込めないんでしょうかね。
ほった:グリルの形をガラッと変えちゃうってことですか?
明照寺:ほかのプレミアムブランドも、グリルの輪郭は決まってますけど、ボリュームなんかは車格によってそれぞれ変えてますよね。ステルヴィオもそういうことを考えてもよかったんじゃないか? でもそこに手は付けられなかったのかな、と。
“盾形グリル”をSUVに使う難しさ
永福:ジュリアとステルヴィオでアメリカ市場に復帰、という戦略だったので、「この2台は顔をそろえて、アメリカ人に覚えてもらおう」っていう狙いがあったんじゃないでしょうか。
明照寺:じゃあなにか、ほかに強さを感じさせるようなところが欲しいですね。実車を見ても、リアまわりはそれなりに強いんですけど、フロントだけが軽すぎる気がしました。SUVとしてはもう少し強さが必要かなと。
ほった:強さも何も、なにしろジュリアそのまんまですもんね。
明照寺:ホント、ジュリアを縦に1.25倍ぐらいするとステルヴィオの顔になっちゃうんですよ!
ほった:ほかになにか、やりようがなかったのかと。
明照寺:アルファ・ロメオって、デザインしてる人は本当に大変なんでしょうけどねぇ……。この縦長グリルで“強さ”を出すのも難しいでしょうし。
永福:今回のジュリアとステルヴィオは、グリルがかなり縦長の盾形になりましたよね。ちょっと前は、もう少し横長だったけど。
明照寺:そうでしたよね。かなり昔には、ステルヴィオみたいなグリル形状だった時期もありますけど。
ほった:個人的には横長っていうか、昔のアルファの盾グリルって、もっと小さかったかった気がします。「156」の後期型で「うわ、デカくなったな!」って思った記憶があるので。今どきのアルファのグリル形状は、1950年代へのオマージュなんじゃないでしょうか。実際盾形グリルにもいろいろあったんですよね。三角形の格子の横もグリルになってたり。
永福:通常の横長グリルの中に、盾形グリルが申し訳程度にあるというタイプも、かなり主流だったよね。それだとずいぶん違和感が薄らいで万人向けになるけど。
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顔だけに頼っているから無理がある
永福:逆にさ、盾形グリルを独立させると、ものすごいおちょぼ口みたいに見えるでしょ? アルファに免疫のないアメリカ人は「うげぇっ」ってなりやすいだろうから、これだけで十分インパクトの強さはあると思えるんですよ。実際私も、若い頃はアルファの盾形グリルって「変すぎる!」って思ってましたから。
ほった:今のアルファの顔は、アメリカ人にイッパツで覚えてもらうための“インパクト狙い”ってことですか?
明照寺:盾形グリルだけを強調しようとしている部分は確かにあると思います。でも、両方ともマイナーチェンジで顔を変えてくるんじゃないでしょうか? わかりませんけど(笑)。
永福:マセラティのブーメラン型テールランプみたいに(笑)。
ほった:ありましたねぇ。マセのブーメラン型テールランプ。アメリカで不評だったもんで、次期モデルでは平凡な形状に変わっちゃいましたけど、個人的には大好きでした。でも、同じイタリアの奇抜系でもステルヴィオの顔はカッコいいとは思わないんですよね。
明照寺:繰り返しになりますけど、やっぱり顔だけでアルファを表現しようとしてるから違和感があるんですよ。
永福:顔だけに頼ってますね。
明照寺:例えば、80年、90年代とかのアルファのトガったクルマ、「155」とか「GTV」とか、いろいろあったじゃないですか。やっぱり全身で個性が際立っていたと思うんです。いまはフランス車もなかなか個性を出しづらい時代ですけど、イタリアのアルファには、どうしても期待してしまう。もっと個性を出してほしいんですよ。
永福:そうですね~。アルファって聞くと、どうしても期待が大きくなりすぎる。個人的には156とか「166」のあたりが一番刺さったなぁ。「これぞアルファ・ロメオのルネサンス!」という感じで。
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個性を強調できないグローバル化の弊害
ほった:明照寺さんはどのあたりのアルファがお好きですか?
明照寺:自分は155とか、その前の「75」あたりの直線的なデザインが好きなんです。アルファの異端児的な感じが。あとはザガートの「SZ」系とかですね。そこらへんの、ちょっと破綻していて主張が強いところが好きでした。
永福:SZは全身強烈でしたね。もうクラクラするような。そして155!
ほった:DTMで大活躍しましたね。ベンツを打ち負かしたりして。
永福:あれも本当にカッコよく思えたなぁ……。155は新車で買ってしまったくらいだから。ところが156が出てイタリア人に話を聞いたら、イタリアでは155は「棺おけみたいな形」って言われてまったく人気がなくて、パトカーくらいしか走ってなかったよ、って。156になって本当によかったって聞いたんです。
ほった:ガーン! ですね。
永福:ガーン! だったよ。俺たち日本人が大好きなアルファは棺おけだったのか! って。
明照寺:そうなんですか!? (笑)
永福:明照寺さんもそれは意外ですか?
明照寺:意外ですねぇ。直線的なアルファ、大好きですから。
永福:そのあたりの感覚、われわれとイタリア人で全然違うんでしょうね。もちろん、アメリカ人とも中国人とも。
ほった:だからデザインに個性が出せなくなってきてるんでしょうか?
明照寺:グローバルで売ろうと思ったら、どうしてもそうなっちゃう面はあります。
ほった:自動車デザインに見る、グローバル化の弊害ですね。
(文=永福ランプ<清水草一>)
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明照寺 彰
さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。
永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。
webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。
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