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第37回:三菱eKクロス(前編)

2019.06.19 カーデザイナー明照寺彰の直言 明照寺 彰
三菱eKクロス
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三菱最新のデザインコンセプト「ダイナミックシールド」の採用により、当代きっての“ド迫力マスク”を手に入れた「三菱eKクロス」。そのデザインのキモに、兄弟車「日産デイズ」や同門のミニバン「三菱デリカD:5」との比較を通して迫る。

「eKクロス」は、日産・三菱連合が送り出した軽ハイトワゴン4兄弟の1台。現行型から設定された「三菱eK」シリーズの新顔で、SUV風のデザインが特徴となっている。
「eKクロス」は、日産・三菱連合が送り出した軽ハイトワゴン4兄弟の1台。現行型から設定された「三菱eK」シリーズの新顔で、SUV風のデザインが特徴となっている。拡大
明照寺:「今回の主役は『eKクロス』なんですね。標準車の『eKワゴン』じゃなくて」
永福:というか、『eKワゴン』のデザインって憶えてます?
ほった:こんなデザイン(写真参照)ですよ。
明照寺:「今回の主役は『eKクロス』なんですね。標準車の『eKワゴン』じゃなくて」
	永福:というか、『eKワゴン』のデザインって憶えてます?
	ほった:こんなデザイン(写真参照)ですよ。拡大
上から順に、「三菱eKクロス」「ダイハツ・ムーヴ カスタム」「スズキ・ワゴンR」「ホンダN-WGNカスタム」。
ほった:「『eKクロス』だけ写真だったり、『ワゴンR』だけカスタム仕様じゃないことはご容赦ください」
上から順に、「三菱eKクロス」「ダイハツ・ムーヴ カスタム」「スズキ・ワゴンR」「ホンダN-WGNカスタム」。
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サイドビューに見るライバルとの違い

明照寺彰(以下、明照寺):今回は「eKワゴン」ではなく、eKクロスがテーマなんですよね?

ほった:はい。そっちのほうが盛り上がりそうなので(笑)。

永福ランプ(以下、永福):いやぁ、eKクロスはデザイン界の台風の目ですから!

明照寺:まあそうですよね(笑)。それぐらいeKクロスのインパクトが強いってことなんでしょうけど。

永福:超強烈です!

明照寺:このクルマが属する軽ハイトワゴンは、トールワゴンと並ぶ“軽の王道”で、各社が製品を投入していますよね。そこでライバルを横向きに並べてみたんですが……。

永福:うわっ、真横から見ると、どれがどれだかわからない。

ほった:そうですか? これが「ダイハツ・ムーヴ」で、これが「スズキ・ワゴンR」、これが「ホンダN-WGN」でしょ? N-WGNはもうすぐ新型になっちゃいますが。

永福:ほった君すごい! さすがはモテないカーマニア!

明照寺:まずは顔まわりではなく全体のフォルムの話をしますけど、このセグメントの中では、日産デイズとeKクロスは、結構スポーティーだというのが第一印象です。

永福:走りそうなフォルムですよね。

明照寺:デイズとeKシリーズにはクオーターガラスがない。それだけでスポーティーな印象になりますし、ムーヴやワゴンRに比べると、全体に豊かな形状をしています。特にリアフェンダーまわりは、このクラスの軽らしからぬ質感が出ています。でもリアシートのスライド量はすごくありますし、室内を非常に広く使える。造形と室内空間のバランスの取れた、優れたパッケージなんじゃないでしょうか。

ほった:なるほど。

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日産版のほうが完成度は高いが……

明照寺:ただ、上質ではあるけれどコンサバなイメージも強いんですよ。個人的には、もう少し軽らしいオリジナリティーがあったほうがよかったのかなと思います。

永福:オリジナリティーは顔で(笑)。

明照寺:たぶん、開発はデイズが先行していたんでしょうね。

ほった:今回の開発担当は日産ですからねぇ。

明照寺:デイズのほうが、より上級感とかスポーティー感を目指してたんじゃないかな。eKはそれをベースにしたわけですし、今回は同じ車体で4つのモデルをつくらないといけなかったので、フォルムのオリジナリティーについては仕方ないと思います。それに、競合車を見ても、軽らしいオリジナリティーを狙ってはいるけれど、どれもあまり魅力的とは言えないんですよ。

永福:総じて凡庸ですよね。このクラスは全体に沈滞してる気がします。

明照寺:そんな中で見ると、やっぱりeKは頑張ってる。「もう少しオリジナリティーを」なんて言っておいてなんですが、やっぱりいいんじゃないでしょうか。

永福:同感です。ライバルを見比べたら、断然デザインに質感があります。

明照寺:多分、デザインについてもデイズの「ハイウェイスター」を中心につくったんじゃないかな。デイズのほうがeKよりはるかに一体感があるんです。立体の面質やボリューム感に関しても、フロントまわりが他の部分としっかり合っています。だけど、やっぱりeKクロスに比べると、物足りなく見えちゃう。

永福:なんと! プロの目からもそう見えますか!

明照寺:eKクロスを見てしまうと、デイズが「あれ?」って感じてしまう。それくらいeKクロスは強いですね。4モデルの中でも、とりわけ際立ってます。

軽自動車ならではの豊富なカラーバリエーションも「eKクロス」の魅力。ルーフやドアミラーを塗り分けたツートンカラー仕様も含め、全11種類のバリエーションが用意される。
軽自動車ならではの豊富なカラーバリエーションも「eKクロス」の魅力。ルーフやドアミラーを塗り分けたツートンカラー仕様も含め、全11種類のバリエーションが用意される。拡大
明照寺:「『eKクロス」のサイドビューはちょっとコンサバなんですけど、同じ車体で4つもクルマをつくらなきゃいけなかったから、それは仕方ないでしょうね」
明照寺:「『eKクロス」のサイドビューはちょっとコンサバなんですけど、同じ車体で4つもクルマをつくらなきゃいけなかったから、それは仕方ないでしょうね」拡大
兄弟車の「日産デイズ ハイウェイスター」。きらびやかなメッキのグリル装飾やシックなカラーバリエーションの展開など、「eKクロス」より高級感やスポーティー感をねらったエクステリアとなっている。
兄弟車の「日産デイズ ハイウェイスター」。きらびやかなメッキのグリル装飾やシックなカラーバリエーションの展開など、「eKクロス」より高級感やスポーティー感をねらったエクステリアとなっている。拡大
永福:「エントリーグレードだとホイールがスチールになるんだね」
ほった:「どうせならホイールキャップなんてナシにしちゃえばいいのに。鉄チンむき出しのほうが、らしくていいと思いますよ。昔の『ハイラックスサーフ アメリカンバージョン』みたいに」
永福:「例えが古い!」
永福:「エントリーグレードだとホイールがスチールになるんだね」
	ほった:「どうせならホイールキャップなんてナシにしちゃえばいいのに。鉄チンむき出しのほうが、らしくていいと思いますよ。昔の『ハイラックスサーフ アメリカンバージョン』みたいに」
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クルマ選びにつながる“SUV”という付加価値

永福:確かに、eKクロスはもう間違いなく際立ってますけど。ただね、実車を見たらデイズ ハイウェイスターのデザインのまとまりも魅力的だったんですよ。すべての日産車の中で、Vモーショングリルが一番似合ってると感じたんです。非常に全体のバランスがいい。で、自分がeKクロスとデイズ ハイウェイスター、どっちか買わなきゃならなかったらどっちにするか、自問自答してみたんです。確かにeKクロスのインパクトは強烈だけど、「自分は本当にコレを買う勇気があるか? この顔と10年付き合えるのか?」って(笑)。この究極の選択を、カーマニアみんなに聞いてみたい。

ほった:わたしゃ断然、eKクロスの4WDですね。ちょっとワクワクするし、面白いじゃないですか。夢がありますよ。

永福:下克上な感じ?

ほった:というか、上とか下とか関係ない感じで。

明照寺:自分もそうですね。デイズだと“足グルマ”以上のことは想像できないんですよ。でもeKクロスはSUVじゃないですか。それだけで付加価値を感じますし。スズキの「スペーシア ギア」と同じですね。普通の「スペーシア」は買わないけれど、「スペーシア ギアだったら、ちょっといいかなぁ」って思ったりするじゃないですか。

永福:ありますね! それは絶対ある。

明照寺:このタイプの軽がどれだけきれいな形をしていても、ベーシックな実用車というイメージはぬぐえません。背も高いのでそんなにスポーティーにもなれっこない。「スズキ・アルト」くらいの全高だったらスポーティー路線もアリですし、「ホンダN-ONE」くらいキャラクターが立っていればそれもそれでアリです。デイズ ハイウェイスターは、形はキレイだけどキャラクター不足なんですよ。

顔まわりのインパクトで言えば、「eKクロス」は今日の軽自動車の中でもNo.1の迫力だ。
顔まわりのインパクトで言えば、「eKクロス」は今日の軽自動車の中でもNo.1の迫力だ。拡大
軽トールワゴンをSUV風にドレスアップした「スズキ・スペーシア ギア」。
軽トールワゴンをSUV風にドレスアップした「スズキ・スペーシア ギア」。拡大
スズキ伝統の軽ホットハッチ「アルト ワークス」(右)。ホンダの軽乗用車「N-ONE」(左)はハッチバック風のデザインと上質感が自慢の“プレミアム軽”だ。
スズキ伝統の軽ホットハッチ「アルト ワークス」(右)。ホンダの軽乗用車「N-ONE」(左)はハッチバック風のデザインと上質感が自慢の“プレミアム軽”だ。拡大
明照寺:「『日産デイズ ハイウェイスター』は非常によくできているのですが、結局は“普通の軽ハイトワゴン”で、その枠をブレイクスルーするほどの、強いキャラクターがないんです」
明照寺:「『日産デイズ ハイウェイスター』は非常によくできているのですが、結局は“普通の軽ハイトワゴン”で、その枠をブレイクスルーするほどの、強いキャラクターがないんです」拡大

買うには胆力が必要?

明照寺:eKクロスはデリカD:5同様、ダイナミックシールドを採用してますけど、デリカよりはるかに一体感があるんです。やっぱりシルエットに無理がないですから。デリカは鼻だけがどーんと出ているけれど、eKクロスはきれいに収まってます。

ほった:確かに。

明照寺:これでも、デリカと同じでフロントの線質はボディーのそれとは違うんですよ。でも、デリカと違って鼻を後付けしたわけではなく、ちゃんとボンネットのラインがボディーとつながってる。だからこちらのほうが、断然すんなり見られるんです。

永福:その統一感のせいか、デリカD:5と並んでいても、デリカより堂々と見えるくらい迫力がありました。

明照寺:すごい存在感ですよね。

永福:本当に圧倒されました。ただ、見た瞬間は「これはスバラシイ!」って感動したんだけど、本当に買う勇気があるかと自問自答したら、自信なくなってきて。

ほった:カーマニアならもっと元気を出してくださいよ(笑)!

(文=永福ランプ<清水草一>)

同じ「ダイナミックシールド」というコンセプトのもとに、フロントマスクがデザインされた「eKクロス」(右)と「デリカD:5」(左)。
同じ「ダイナミックシールド」というコンセプトのもとに、フロントマスクがデザインされた「eKクロス」(右)と「デリカD:5」(左)。拡大
「eKクロス」をやや俯瞰(ふかん)から見た図。Aピラーの付け根へつながるボンネット左右の峰や、ヘッドランプの“目尻”からガラスエリアの下端を通ってCピラーへと伸びるラインに注目。
「eKクロス」をやや俯瞰(ふかん)から見た図。Aピラーの付け根へつながるボンネット左右の峰や、ヘッドランプの“目尻”からガラスエリアの下端を通ってCピラーへと伸びるラインに注目。拡大
 
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明照寺 彰

明照寺 彰

さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。

永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。

webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。

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