第568回:日本の自動車文化の奥深さを満喫
2019年の「オートモビル カウンシル」を振り返る
2019.04.09
エディターから一言
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前回より1割ほど来場者が増えるなど、今回も成功裏に終わった「オートモビル カウンシル」。年を追うごとに存在感を増していくこのイベントだが、今年の会場は例年とはちょっと違う雰囲気に包まれていた。“懐かしさ”に満ちたイベントの様子を振り返る。
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思い出を刺激する“懐かしの名車”たち
今年で4回目となる、クラシックカーを中心とした自動車イベント「オートモビル カウンシル」が、2019年4月5日~7日の3日間、千葉・幕張メッセにて開催された。今年の3日間の来場者数は3万4692人。昨年(2018年)実績と比べて約1割増しとなる集客を記録しており、自動車イベントとしての認知度が高まっていることを感じさせる。
往年の名車たちと出会うことができるのが魅力の同イベントには、今回も多くのクラシックカー専門店の出展に加え、トヨタ、日産、ホンダ、マツダの国産自動車メーカー4社が独自ブースを展開。輸入車に目をやると、英国のスーパーカーメーカーであるマクラーレン・オートモーティブが初参加。さらにアトランテックカーズは、間もなく正規導入が発表されるダラーラのロードモデル「ストラダーレ」を紹介した。
中でも趣深い内容となっていたのが、国産メーカーの出展だった。アゴが外れるような名車や希少車が並んでいたわけではない。いずれのブースも、“リアル”に懐かしさを感じられるモデルがあふれていたからだ。平成最後のオートモビル カウンシルにふさわしい、昭和から平成へと時代が変わった80年代にスポットを当てた共同企画展示「百花繚乱(りょうらん) 80’s」に加え、トヨタ、ホンダ、マツダのブースにも、80年代に送り出されたエポックメイキングなクルマが並べられていた。
特に「百花繚乱80’s」には、自社ブースを構えるメーカー/ブランドだけでなく、スバルやレクサスも参加。国内初の最高出力280psを実現した「日産フェアレディZ 300ZXツインターボ」や、近代スバルの原点となった初代「レガシィツーリングワゴン」、あのメルセデス・ベンツに危機感を覚えさせたという初代「レクサスLS400」など、展示車はいずれもジャパンパワーを世界に知らしめた名車と言っても過言ではない。また、個人的に懐かしかったのが初代「カリーナED」である。昨今の4ドアクーペの原点ともいえるスペシャルティーカーで、当時の日本でも多くのフォロワーを生んだことが思い出された。
国産メーカーの展示はまさに“タイムカプセル”
各メーカーのブースを見ていくと、トヨタは新型「スープラ」を並べるも、そこはオートモビル カウンシル。注目を集めたのはやはり2代目「ソアラ エアロキャビン」、5代目「マークII 4ドアハードトップ グランデ24」、2代目「スープラ3.0 GTターボ」の3台だった。これらは“ハイソカーブーム”の中で主役を演じたモデルばかり。来場者の多くが、身近な誰かが乗っていたことや憧れの存在だったことなどを思い出し、昔話に花を咲かせたに違いない。
一方マツダは、今年誕生30周年を迎えた「ロードスター」にフィーチャー。30周年記念車の日本初公開に加え、ロードスターと縁の深いOBらによるトークショーも開催し、そのブースは初日から多くの人でにぎわっていた。また、ブース内にはロードスターの歴史の原点となったプロトタイプや、1989年の米国シカゴオートショーで初披露されたコンセプトカー「クラブレーサー」など、貴重なロードスターも展示。クラブレーサーにいたっては、30年目にして今回がなんと本邦初公開であった。
ホンダは、小さいボディーと広い車内の両立を図る「M・M思想」を体現した初代「シティ」が主役である。ブース内にはイエローの標準ボディー車「E」と共に、「シティとセット販売されていた」というウワサもある、愛嬌(あいきょう)たっぷりのミニバイク「モトコンポ」も展示。さらに隣接する共同展示には、グリーンの「シティ カブリオレ」が鎮座していた。さらに、テーブルには商用仕様の「プロ」からホットハッチの「ブルドック」まで全ラインナップのカタログを並べ、巨大な壁面では年表でもってシティの歴史を紹介する徹底ぶり。「さすがにラインナップ全車を並べることはできないが……」という、ホンダ側の心意気が感じられた。
このように、国産各メーカーのブースは、日本人の心をわしづかみにする“タイムカプセル”となっていたのである。
魅力あふれる専門店の出展車両
クラシックカーの販売やメンテナンスを手がける専門店の展示にも、今回はユニークなモデルが多数見られた。「ルノー・ドーフィン1600レーシング」や「フィアット500Cトッポリーノ ベルベデーレ」「フィアット・ヌオーヴァ500ジャルデニエラ(アウトビアンキ)」「シムカ1000ラリー2」「BMW 700カブリオレ」などは、「日本にもこんなクルマが上陸していたのか!」と驚かされるとともに、昔の小さなクルマが持つ、温かみやわんぱくなデザインにうっとりとさせられた。
もちろん、(参考出展のものを除けば)それらのモデルは実際に買うことができるのだが、やはりプライスはそれなりに張る。それでも会場を巡れば、身近なヒストリックカーに出会えるのだ。実際、今回は個人的にも心引かれたクルマがいくつかあった。例えば、スピニングガレージの2代目「フォルクスワーゲン・ジェッタCi」。なんと99万8000円での出品である。これも懐かしいボルボ・クラシックガレージの「940クラシック エステート」も、138万円と現実的。どちらも、いわゆる“ビカモノ”というわけではなかったが、前オーナーの愛情を感じさせる状態のよさが魅力的だった。
このように、幅広い世代の来場者に懐かしさを感じさせたオートモビル カウンシル2019。ヘリテージカーとなると、どうしても歴史的価値のあるものにばかり目を奪われがちだが、今回は“価値”という言葉では表現し切れない、日本の自動車文化が持つ奥深さを強く感じることができた。今後も、圧倒的な存在感を放つスーパーカーや歴史的名車はもちろんのこと、私たちの思い出を刺激する温かみのあるクルマにも、しっかりスポットを当てていってほしい。
(文=大音安弘/写真=webCG/編集=堀田剛資)
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