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第31回:三菱デリカD:5(前編)

2019.04.24 カーデザイナー明照寺彰の直言
三菱デリカD:5
三菱デリカD:5拡大

箱型オフローダーからオラオラ系のミニバンに変身!? そのデザインが物議を醸しつつも、なんだかんだいって販売好調な「三菱デリカD:5」。劇的に変化したフロントマスクを、現役の自動車デザイナー明照寺彰はどう評価するのか?

ミニバンの車内空間とSUVの悪路走破性能を併せ持つ「三菱デリカD:5」。発売は2007年1月31日なので、モデルライフは今年で実に12年(!)を数える。
ミニバンの車内空間とSUVの悪路走破性能を併せ持つ「三菱デリカD:5」。発売は2007年1月31日なので、モデルライフは今年で実に12年(!)を数える。拡大
従来モデルから大幅に意匠が変更されたインストゥルメントパネルまわり。各部の質感も改善されている。
従来モデルから大幅に意匠が変更されたインストゥルメントパネルまわり。各部の質感も改善されている。拡大
従来モデルの「デリカD:5」のフロントマスク。
従来モデルの「デリカD:5」のフロントマスク。拡大
マイナーチェンジを受けた「デリカD:5」のフロントマスク。「ダイナミックシールド」と呼ばれる三菱最新のデザインコンセプトを取り入れたもので、斬新なフロントグリルの意匠から、一部のかいわいでは「電気シェーバー」というあだ名で呼ばれている。
マイナーチェンジを受けた「デリカD:5」のフロントマスク。「ダイナミックシールド」と呼ばれる三菱最新のデザインコンセプトを取り入れたもので、斬新なフロントグリルの意匠から、一部のかいわいでは「電気シェーバー」というあだ名で呼ばれている。拡大
フロントほどではないが、リアまわりについてもデザインに手が加えられている。
フロントほどではないが、リアまわりについてもデザインに手が加えられている。拡大

衝撃のフェイスリフト

明照寺彰:デリカD:5、これはマイナーチェンジですよね。ある意味衝撃的なマイナーチェンジじゃないでしょうか。

永福:実に衝撃的です!

明照寺:そもそも、ミニバンなんだけどSUV的な要素が非常に濃いクルマっていうのは、デリカしかなかったと思うんですよ。

ほった:ないですね。

明照寺:スライドドアで7人乗りのSUVというふうに捉えても、孤高の存在じゃないかと思います。

永福:えっ、「デリカD:5はSUV」っていう解釈ですか?

明照寺:“「パジェロ」のミニバン版”みたいなものというふうに捉えています。かなりオフロードを意識していますよね。それが非常にカッコいい。SUVとミニバンという、売れ線の要素をふたつ組み合わせているわけですし。なぜ他のメーカーも、このカテゴリーに参戦しないのか不思議ですよ。

永福:そっちから来ますか……。さすがデザイナーって浮世離れしてるなぁ(笑)。

明照寺:そうですか?

永福:デリカD:5の場合、今回話題なのはとにかくこの“顔”ですよね。非常に賛否が分かれていて、話題が沸騰しているわけで。まぁ、クルマ好きの間ではほとんど否ですけど(笑)。

ほった:発表直後は炎上状態でしたよね。

永福:三菱側も、「これだけ非難の声が集まって、本当に大丈夫?」って心配したらしいですが、フタを開けたら受注好調。僕は最初から、この顔、とてもいいと思ってるんですよ。とても斬新なオラオラ顔じゃないですか。いま、ミニバンってみんな「トヨタ・アルファード/ヴェルファイア」の後を追ってますけど、これは明らかに違う。なにしろ電気シェーバーですから(笑)。

ほった:いままでの三菱の「ダイナミックシールド」ともかなり色合いが違いますよね。

永福:明らかに違う、見たことのない威圧感ですよね、これ。

三菱 デリカD:5 の中古車

SUV的になった? ミニバン的になった?

明照寺:僕の個人的な捉え方としては、以前のデリカD:5は、ミニバンながらもオフロード感とか、ギア感が強かったと思うんです。ところが今回のマイナーチェンジで、かなりミニバン寄りになったと思います。

永福:明照寺さんはそっちの印象なんですか!

明照寺:これだけ顔を厚くしたっていうのは、SUV的な要素を捨てて、威圧的なミニバン方向に傾いたってことですよね。営業の要望が強かったんじゃないかと思います。ただ、それで販売が好調なら、結果的によかったんでしょうけど。

永福:なにしろ登場から12年たっていて、“死に体”に近かったモデルを再生させたわけですから。

明照寺:ただ、私の意見としては、ダイナミックシールドって言われる新しい三菱のモチーフを使ったとしても、もっとSUVらしくできたはずだと思うんですよ。だけど実際には、乗用車的な“押し出し”を取ったわけで、これまで培ってきた三菱の強み、デリカの強みを考えたら、ちぐはぐじゃないかなと。

永福:もともとは、もっとSUV寄りだったのが、ミニバン寄りになったということですね?

明照寺:そうです。

永福:自分のイメージとしては逆のような気がします。以前からデリカD:5は、明らかにミニバンだった。それが今回のマイナーチェンジで、SUVになったとは言わないですけど、見た目の強さがぐっと増したじゃないですか。オフロードでは試乗してませんけど、走りも非常によくなってる。もともと四駆性能はほかのミニバンに比べたら断然本格的だったけど、ボディーのしっかり感もすごく増したんですよ。実際にボディーを強化したわけじゃなくて、サスペンションの改良でそう感じさせてるらしいですけど。ディーゼルエンジンが搭載されてるのもSUV的じゃないですか。ミニバン唯一のディーゼルです。ちょっとメカに引きずられての評価ですけど、デリカは本物になった。これだったらSUVって言ってもいいな、という認識です。

ほった:先生、落ち着いてください。ヨンクもディーゼルも、改良前からあるデリカの特徴ですよ。

従来モデルでは、動力性能の追求はもちろん、デザインの面でもギア感、オフロード感を前面に押し出していた。
従来モデルでは、動力性能の追求はもちろん、デザインの面でもギア感、オフロード感を前面に押し出していた。拡大
オフロードのイメージが強い「デリカD:5」だが、従来モデルでは「ローデスト」、マイナーチェンジモデルでは「アーバンギア」(写真)と、オンロードに特化したエアロパーツ装着車もラインナップされている。
オフロードのイメージが強い「デリカD:5」だが、従来モデルでは「ローデスト」、マイナーチェンジモデルでは「アーバンギア」(写真)と、オンロードに特化したエアロパーツ装着車もラインナップされている。拡大
「ダイナミックシールド」とは、三菱が2015年に登場した「アウトランダー」のマイナーチェンジモデルから導入を進めているデザインコンセプト。フロントグリルを左右からぎゅっと挟んだようなデザインが特徴だ。
「ダイナミックシールド」とは、三菱が2015年に登場した「アウトランダー」のマイナーチェンジモデルから導入を進めているデザインコンセプト。フロントグリルを左右からぎゅっと挟んだようなデザインが特徴だ。拡大
「デリカD:5」の標準車(左)と「アーバンギア」(右)。
「デリカD:5」の標準車(左)と「アーバンギア」(右)。拡大

SUVらしさと押しの強さは両立できる

明照寺:私はまったく逆です。なぜかというと、地上高が小さくなったと感じるからです。アプローチアングルやデパーチャーアングルも、実際の数値はわからないですけど、乗用車的になっているはずです。特にアプローチアングルは確実に小さくなってる。やっぱり顔がデカすぎる……て言っちゃなんですけど(笑)。デザイン面で評価すれば、SUV的な軽さがなくなっている。

永福:まあ確かに、マイチェン前よりアゴは出っ張りましたよね。それでも個人的には、このデカい顔で悪路もオラオラオラ! って突き進むイメージなんですけど。

ほった:顔で悪路は走破できませんよ。

明照寺:別にオラオラだから悪いというわけじゃないんですよ。(タブレットで写真を示しつつ)これ、インドネシアで三菱が生産を始めた「エクスパンダー」なんですけど、この顔だったらSUVっぽい感じがするんですよ。強さと軽さの両立という意味で。

永福:うーん、ものすごいブヒブヒ顔ですね、コレ……。

ほった:確かに。イノシシっぽいというか、なんというか(笑)。

永福:これだったらデリカD:5のほうが上品じゃ……。

ほった:上品かどうかはさておいて、エクスパンダーのほうがフロントアンダーガードがちゃんと効いてる感じはします。デリカにも付いてますけど、「これ、ガードうんぬんの前に(地面に)当たっちゃうだろ!」って感じですもんね。実際にはそんなことないんでしょうけど。

明照寺:デリカD:5に関しては、変わった顔と、変わっていないその他の部分とのマッチングもよくないですよね。マイナーチェンジって結構難しいんですよ。デリカの場合、顔とその他の部分では、面質も線質もかなり違ってます。顔だけ、面も線もちょっと硬いですよね。他の部分に比べて。

永福:確かにそういう面があるのは否めませんが……。

(文=永福ランプ<清水草一>)

改良型「デリカD:5」の3アングルは、アプローチアングルが21.0°、デパーチャーアングルが23.0°、ランプグレークオーバーアングルが16.5°、最低地上高は185mmと公称されている。ちなみに従来モデルでは、アプローチアングルが23.5°、デパーチャーアングルが22.5°、ランプブレークオーバーアングルが18.0°、最低地上高が210mm。
改良型「デリカD:5」の3アングルは、アプローチアングルが21.0°、デパーチャーアングルが23.0°、ランプグレークオーバーアングルが16.5°、最低地上高は185mmと公称されている。ちなみに従来モデルでは、アプローチアングルが23.5°、デパーチャーアングルが22.5°、ランプブレークオーバーアングルが18.0°、最低地上高が210mm。拡大
三菱が東南アジアで生産・販売している3列7人乗りのクロスオーバーSUV「エクスパンダー」。
三菱が東南アジアで生産・販売している3列7人乗りのクロスオーバーSUV「エクスパンダー」。拡大
明照寺:「新しい『デリカD:5』は、バンパー下部が前に突き出ているんですね」
ほった:「まあ、減ったとはいえアプローチアングルが21.0°もあるから、実際にはなんの問題にもならないんでしょうけど」
明照寺:「新しい『デリカD:5』は、バンパー下部が前に突き出ているんですね」
	ほった:「まあ、減ったとはいえアプローチアングルが21.0°もあるから、実際にはなんの問題にもならないんでしょうけど」拡大
 
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明照寺 彰(めいしょうじ あきら)

明照寺 彰(めいしょうじ あきら)

さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。

永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。

webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。

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