メルセデス・ベンツC200 4MATICステーションワゴン アバンギャルド(4WD/9AT)
これぞメルセデス 2019.05.13 試乗記 大幅な改良を受けた「メルセデス・ベンツCクラス」において、フラッグシップモデルとなるのが「C200 4MATICステーションワゴン アバンギャルド」。新たなマイルドハイブリッド機構が搭載されたパワートレインは、どんな走りをもたらしたのか?メルセデス・ベンツの大黒柱
前からうわさは流れていたのだが、やはり「トヨタ・マークX」が今年いっぱいで生産中止になるという。カタログ落ちするモデルを正式に発表するのはトヨタにしては珍しいことだが、「トヨペット・コロナ マークII」までさかのぼれば半世紀以上の歴史を持つ看板車種だけに、きちんと区切りをつけたかったのかもしれない。
国内市場ではセダンおよびステーションワゴンの凋落(ちょうらく)が著しいのは事実だ。マークXの昨2018年の販売台数は年間4000台ちょっと、ひと月あたりではわずか300台程度である。かつて1980年代後半には、兄弟車の「チェイサー/クレスタ」と合わせて月に4~5万台(年間ではなくて月間!)も売れていたのがまさしく夢のようである。
そのいっぽうで、ジャーマンプレミアム勢の売れ行きは悪くない。特にメルセデスCクラスは昨年1万8000台以上を売り、モデル別でも「MINI」「フォルクスワーゲン・ゴルフ」に次いで輸入車ランキング3位と堅調だ(メルセデス・ベンツ全体では6万7531台で輸入車トップ)。クーペ、カブリオレまでバリエーションも豊富であり、現行W205型Cクラスはこれまでに国内で7万台近くを売り上げているという。セダン/ワゴンといえば輸入車、と考える人が多いのも当然である。
ご存じのようにメルセデス・ベンツ日本は、近年新世代のコンパクトモデル群を強力に推しており、モデルチェンジしたばかりの新型「Aクラス」も話題になってはいるけれど、Cクラスに乗ると、やはりメルセデスの神髄はセダンに、それもCクラス以上の後輪駆動モデルにあるとあらためて実感する。一番売れているというだけでなく、中身もメルセデスの名にふさわしいものだからだ。
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1.5リッター4気筒ターボ+モーター=C200
C200ワゴンの4MATIC(4WD)は、昨年、変更点が6500カ所にも及ぶという大がかりなマイナーチェンジを受けたメルセデスCクラスのいわばフラッグシップモデルである。613万円の本体価格は、「C43」や「C63」などのAMGモデルを除けばシリーズの最高価格だ。メルセデス初のコンパクトモデル「190E」に端を発するCクラスには、400万円を切る価格を押し出したモデルもあったのだが、今や受注生産のベーシックグレードでも400万円後半である。
「C220d」用ディーゼルターボエンジンが、「Eクラス」で登場した最新世代のOM654型に切り替わったこともトピックだが、注目はやはりガソリン1.5リッター4気筒ターボのM264型だろう。この4気筒エンジンは、ほぼ20年ぶりに復活した直列6気筒のM256型と基本設計を共有するモジュラーユニットだが、「C180」の1.6リッター直噴ターボよりも小さい排気量ながら、これを積むモデルがC200となっているのは、BSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)を備えたマイルドハイブリッドパワートレインであることが理由だ。
48V電源のBSGはその名の通り、クランクシャフトとベルトで結ばれたスターター兼ジェネレーターを指す。トランスミッションケースに一体化された6気筒用のISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)との違いは、既存ユニットに大きな改造を施すことなく追加できることだという。
エンジン単体の最高出力は184ps/5800-6100rpm、最大トルクは280Nm/3000-4000rpmとこれだけでも十分以上。最大トルクの発生回転数は3000-4000rpmと現代のダウンサイジングターボとしてはかなり高いところにあるが、それは14psと38Nmを生み出す電気モーターが低回転域をカバーしてくれるからである。事実、常用域ではその排気量をまるで感じさせないほど余裕たっぷり。洗練された9段ATは極めて滑らかに変速するうえに、BSGがサポートするのでコースティングする際、あるいはアイドリングストップ時のエンジン停止/再始動もほぼ無振動と言っていい。
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アシストが強すぎる?
いっぽうで高回転域では急に伸びやかさを失ってしまうのが残念なところ。ダウンサイジングユニットにはありがちなことだが、4500rpmぐらいから上では詰まるような感覚があり、それ以下でのたくましいトルクや打てば響くレスポンスとは対照的だ。
とはいえ、普通に走る限り、いやかなり頑張って走っている場合でも、9段ATがサクサクとシフトアップしてくれるから中回転域より上が必要になることはない。巡航中のエンジン回転数は低く、9速100km/hはわずか1500rpmほどである。
高回転まで回しても突き抜けるような爽快感が得られないことに加えて、もうひとつ気になるのは、電気モーターのアシストが強力すぎるのか、あるいはブレーキとの協調制御がいまひとつなのか、発進の際と停止直前にいささか予想外の振る舞いを見せることだ。
たとえば停止からの再スタートでちょっとブレーキの踏力を緩めるとプンとエンジンが再始動、グイッと思ったよりも勢いよくクリープして前に出ようとする。またブレーキを踏みながら緩やかに減速すると、まだ走行中にエンジンが停止した際に、ガクッと速度が落ち、それに慌ててブレーキを緩めると再始動して、またクリープと言うには勢いが強すぎる加速を見せるのだ。
48Vシステムを採用するクルマでこのような挙動を見せるのはC200のみ。極低速でのアシストが強く、するり静かな停止/発進はなかなか難しいということを頭に入れておいたほうがいい。
高いがそれだけのことはある
前述のようにステーションワゴンの4MATICだから(そのうえ今やほぼすべてアバンギャルド仕様)、車両価格は600万円を超えるのだが、このクルマにはさらに「AMGライン」のパッケージオプション(37万7000円)が装着されており、タイヤとホイールが18インチになる上に、ダンパー減衰力だけでなく、エアチャンバーを切り替えることでスプリングレートも可変の「エアボディーコントロールサスペンション」も追加装備されていた。文句なしの安定性と乗り心地をもたらすエアサスペンションの効果は明らかながら、C200にもエアサスが装備される時代かと驚くばかりだ。
さらに「レーダーセーフティーパッケージ」(20万5000円)も、標準装備となるAMG各モデルを除いて、すべてのCクラスにオプション設定である。
したがってオプションを加えたこの試乗車の価格は、ほぼ700万円にも達する。繰り返しになるが、このレーダーセーフティーパッケージなしのCクラスなど見たことがないし、事実上全車に装着されているはずである。メルセデスたるもの、見かけの価格を(しかもほんの少し)抑えるための姑息(こそく)な方策など速やかに改めるべきだ。
ほぼ文句なしの万能ステーションワゴンだが、おいそれとは手が出ない値段であることも事実。だがその分、ADAS(先進安全運転支援システム)の機能ひとつとっても、レベルが違うことも事実である。“コスパ”好きといわれる若者には気の毒だが、安くて良いものは、たとえ存在したとしても、ごくまれである上に個人的な尺度で測るべきものだ。そもそも本来コスパは絶対的な安さを指すものではない。コスパに優れているものだけが、時代を超えてCクラスのような定番となるのである。
(文=高平高輝/写真=荒川正幸/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
メルセデス・ベンツC200 4MATICステーションワゴン アバンギャルド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4720×1810×1440mm
ホイールベース:2840mm
車重:1690kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:184ps(135kW)/5800-6100rpm
エンジン最大トルク:280Nm(28.6kgm)/3000-4000rpm
モーター最高出力:14ps(10kW)
モーター最大トルク:38Nm(3.9kgm)
タイヤ:(前)225/45R18 95Y XL/(後)245/40R18 97Y XL(ブリヂストン・ポテンザS001)
燃費:12.3km/リッター(WLTCモード)
価格:613万円/テスト車=698万2280円
オプション装備:スペシャルメタリックペイント<ブリリアントブルー>(19万9000円)/レーダーセーフティーパッケージ(20万5000円)/AMGライン(37万7000円) ※以下、販売店オプション フロアマット<プレミアム>(7万1280円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:563km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:342.8km
使用燃料:32.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.7km/リッター(満タン法)/10.8km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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