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第36回:シトロエンを総括する

2019.06.05 カーデザイナー明照寺彰の直言 明照寺 彰
シトロエンを象徴する“ダブルシェブロン”のマーク。今はフロントグリルと一体化したデザインとなっている。
シトロエンを象徴する“ダブルシェブロン”のマーク。今はフロントグリルと一体化したデザインとなっている。拡大

一昔前まで自動車デザインの先頭をひた走っていたシトロエン。起死回生を果たすべく、SUVに傾注する同ブランドのラインナップは、現役のカーデザイナーの目にどう映るのか? 明照寺彰と永福ランプが“ダブルシェブロン”のデザインを総括する。

現在、日本で正規販売される数少ないシトロエンの一台「C3」。デザインの上では、踏ん張りの利いたスタンスとユニークなフロントマスク、SUVチックなディテールが特徴となっている。
現在、日本で正規販売される数少ないシトロエンの一台「C3」。デザインの上では、踏ん張りの利いたスタンスとユニークなフロントマスク、SUVチックなディテールが特徴となっている。拡大
3列シートミニバンの「グランドC4スペースツアラー」。かつては「グランドC4ピカソ」という車名だったモデルだ。
3列シートミニバンの「グランドC4スペースツアラー」。かつては「グランドC4ピカソ」という車名だったモデルだ。拡大
2010年から2018年にかけて販売された、2代目「C4」。「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のライバルにあたる、Cセグメントハッチバックだった。
2010年から2018年にかけて販売された、2代目「C4」。「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のライバルにあたる、Cセグメントハッチバックだった。拡大
フロントノーズを飾る“ダブルシェブロン”のマークと、DSのバッジに注目。DSがシトロエンから独立してひとつのブランドとなったのは、2014年のことだった。
フロントノーズを飾る“ダブルシェブロン”のマークと、DSのバッジに注目。DSがシトロエンから独立してひとつのブランドとなったのは、2014年のことだった。拡大
 
第36回:シトロエンを総括するの画像拡大

売れないクルマはもういらん!

ほった:……えー。本来であれば、前回に続きまして「シトロエンC3(後編)」をお届けする予定でしたが、明照寺氏、永福氏両人の意向により、急きょ番組内容を「シトロエン大総括!」に変更してお届けしております。

明照寺彰(以下、明照寺):説明ありがとうございます(笑)。で、早速なんですけど、いま日本で売られているシトロエンは2モデルしかないんですよね。C3と「グランドC4スペースツアラー」と。(※取材後、2019年5月28日に「C5エアクロスSUV」が発売されました。当記事公開時点では3車種になります)

永福ランプ(以下、永福):なんだか三菱車っぽい車名だねぇ、スペースツアラー。ただの「C4」はどうなったの?

明照寺:こないだディーラー行ったら、2つの車種しかないと言われたんですけど(笑)。

ほった:オフィシャルサイトにもないですね。

永福:となると、ただのC4は消えたかぁ。

明照寺:DSが別ブランドとして独立したじゃないですか。そのあおりで、シトロエンはモデル数がガクっと減りましたよね。

ほった:そのうえ、DSとは無関係に消えたクルマもありますからねえ。

永福:売れないものはもういらないってことでしょう。

ほった:シトロエン単体で減っても、「DSと合わせてトントン以上ならヨシ」って算段だったんでしょうかね?

永福:でもDSって、ディーラー数が日本全国にまだ20店もないんだよ。わが家には「DS 3」がいるんだけど、「車検どうしようか……」と思ってたら、シトロエンのディーラーでやってくれるっていうんでホッとしたよ。

ほった:ラインナップは補完できても、販売台数はムリっぽそうですね。今のままだと。

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頼みの綱は(やっぱり)SUV

ほった:シトロエンのラインナップ、本国でもCセグメントから上のセダン、ワゴン、ハッチバックは軒並みアデューな感じですね。その代わりに伸(の)してきてるのが、まぁ、やっぱりSUVです。日本でも「C3エアクロス」と「C5エアクロス」が間もなくですよ。(※クドいですけど、取材後の2019年5月28日に、C5エアクロスがC5エアクロスSUVという車名で発売されました)

明照寺:デザイン的に見て、C3よりC3エアクロスのほうがもっといいですよ。

永福:「C4カクタス」も、カタログモデルで日本に入れてくれればよかったのになぁ。限定で終わってしまった。

明照寺:C4カクタスは、日本に来たやつはサイドに大きなエアバンプが付いてましたけど、その後、本国モデルはマイナーチェンジを受けて、エアバンプが小さくなったうえに下に追いやられたんですよ。やっぱりディテール過多だと思ったのかな。

永福:そうなんですか!? 知らなかった。日本ではディテール過多くらいのほうが売れると思いますが……。シトロエンは極めて特殊なクルマという一般認識なので。

ほった:(写真を見せつつ)これがいまのC4カクタスですね。

永福:えっ、ずいぶん変わったね。

ほった:これも日本に入ればいいのに。

明照寺:そうですね、これはこれでカッコイイじゃないですか。すごくディテールにも凝ってる。ドアハンドルのところとか、細かいところまでデザインを統一させようというこだわりはすごいですね。

既存のモデルに代わって拡充が図られているのは、ご多分にもれずSUVやクロスオーバーである。写真は間もなく日本でも発売となる「C3エアクロス」。
既存のモデルに代わって拡充が図られているのは、ご多分にもれずSUVやクロスオーバーである。写真は間もなく日本でも発売となる「C3エアクロス」。拡大
ミドルクラスSUVの「C5エアクロス」。日本では「C5エアクロスSUV」という車名で発売された。
ミドルクラスSUVの「C5エアクロス」。日本では「C5エアクロスSUV」という車名で発売された。拡大
日本にも台数限定で導入された「C4カクタス」。斬新なスタイリングで人気を博し、たちまちのうちに“完売御礼”となった。
日本にも台数限定で導入された「C4カクタス」。斬新なスタイリングで人気を博し、たちまちのうちに“完売御礼”となった。拡大
現在(2019年6月時点)の「C4カクタス」。シトロエン独自のサスペンション技術「プログレッシブハイドローリッククッション(PHC)」をいち早く取り入れるなど、気合いの入ったマイナーチェンジが施された。
現在(2019年6月時点)の「C4カクタス」。シトロエン独自のサスペンション技術「プログレッシブハイドローリッククッション(PHC)」をいち早く取り入れるなど、気合いの入ったマイナーチェンジが施された。拡大

あの頃アナタは輝いていた

明照寺:シトロエンは少し前まで、カーデザイン界をリードしていたようなところがありましたよね。コンセプトカーでしたけど、「C-カクタス」なんか衝撃的じゃなかったですか?

永福:あー。これにはシトロエンらしい、ブッ飛んだ未来を感じました!

明照寺:この頃のシトロエンはすごかったじゃないですか、「C6」とか。C6ってリアゲートのガラスがインバースしてるんですよ。「ここまでやるか!」っていうくらい衝撃的でした。

永福:C6もメチャメチャ憧れました。結局手が届かなかったけど、あのデザインは本当にすごかった。

明照寺:最近はフランス車にしても、コストをかけたがらないんでしょうね。あまりヘンなことしなくなった。イタリア車もそうですけど、“優等生”になっちゃってます。もちろんビジネスですから仕方ない面もありますけど、こちらとしてはもっと極端なものを期待してしまう。

永福:C3なんかは、ディテールで個性を出してきたということですよね。エアバンプとかライト形状で。日本人はそれにしっかり反応して、売れている。

明照寺:「DS 5」は市販化されましたけど、ショーカーが出たのは2005年なんですよ。これが出てきたときも衝撃でした。単純にカッコイイし、次世代な感じがした。

永福:いやー、DS 5が消えたのは本当に残念だったなぁ……。

明照寺:この頃の勢いに比べると、「DS 7クロスバック」なんかを見ると、小手先感がありますよね。アウディをちょっとフランスっぽくしたぐらいにしか見えない。DS 5はシルエットからして全然違ってた。

永福:まったく同感です。DS 7クロスバックは、完全に小物で勝負に出てますね。

ほった:回転する時計とか。

永福:ああいうのもステキだけど、フォルムが普通すぎるよね~。それをキラキラしたメッキでカバーしてる。DS 5は死ぬまでに欲しいけど、DS 7クロスバックはそうでもないなぁ。

2007年のフランクフルトモーターショーでお披露目された「C-カクタス」。「C4」のプラットフォームをベースに開発されたコンセプトカーだった。(写真は2009年のジュネーブショーのもの)
2007年のフランクフルトモーターショーでお披露目された「C-カクタス」。「C4」のプラットフォームをベースに開発されたコンセプトカーだった。(写真は2009年のジュネーブショーのもの)拡大
フランス大統領の公用車としても活躍した、シトロエンのフラッグシップモデル「C6」。凹面のリアウィンドウなど、なにもかもが斬新なクルマだった。
フランス大統領の公用車としても活躍した、シトロエンのフラッグシップモデル「C6」。凹面のリアウィンドウなど、なにもかもが斬新なクルマだった。拡大
現行型(左上)と先代(右下)の新旧「C3」。
永福:「こうして見ると、ぽっこりしたフォルムといい、デコッパチなフロントウィンドウといい、先代C3は個性的な格好のクルマだったんですね」
明照寺:「現行型も細部は非常に凝ってますけど、基本的な部分では、先代のほうが挑戦的だったと思います」
現行型(左上)と先代(右下)の新旧「C3」。
	永福:「こうして見ると、ぽっこりしたフォルムといい、デコッパチなフロントウィンドウといい、先代C3は個性的な格好のクルマだったんですね」
	明照寺:「現行型も細部は非常に凝ってますけど、基本的な部分では、先代のほうが挑戦的だったと思います」拡大
2012年から2018年まで販売された「DS 5」。ハッチバックともステーションワゴンとも異なるユニークなエクステリアデザインはもちろん、インテリアの意匠も非常に斬新だった。
2012年から2018年まで販売された「DS 5」。ハッチバックともステーションワゴンとも異なるユニークなエクステリアデザインはもちろん、インテリアの意匠も非常に斬新だった。拡大
「DS 5」のインテリア。センターコンソールと対をなすデザインのオーバーヘッドコンソールと、それによって左右に分断されたガラスルーフに注目。
「DS 5」のインテリア。センターコンソールと対をなすデザインのオーバーヘッドコンソールと、それによって左右に分断されたガラスルーフに注目。拡大

今はプジョーのほうがガンバってる

明照寺:ありていに言って、シトロエンがデザインリーダーだったのは10年ぐらい前までという感じでしょうか。シトロエンってプジョーと同じPSAグループですけど、いまはプジョーのほうが、デザインをすごく頑張ってます。カッコイイ路線に変わったじゃないですか、ちょっと前に比べて。

永福:プジョーは一時、顔ばっかりすごくてフォルムがまるでダメでしたよね。「207」とか「307」、初代「308」あたりかな。あれは暗黒時代でした。

明照寺:ものすごい猫みたいな顔だったのが(笑)、いまは精悍(せいかん)になって、シンプルだけど個性的になってます。

ほった:「508」の評判がいいですね。

永福:508はちょっとレトロな香りがして、特に中高年はそそられるね。新型「208」もモダンに先祖返りしてる。

明照寺:あとは内装ですね。あの内装を見ると、やっぱりすごいと思います。いまフランス車のデザインをけん引してるのは、間違いなくプジョーです。

永福:つまり、シトロエンのデザインが元気な時はプジョーが落ちて、プジョーが上がってくるとシトロエンが……というパターンなのかな?

ほった:社内で人材が偏るんですかねぇ。ダメだから片方にテコ入れすると、もう片方がダメになるという。

明照寺:どうなんですかねぇ(笑)。とにかく、いまプジョーはいいですよ。

ほった:これは、そのうちプジョーも取り上げないとイカンですね。

(文=永福ランプ<清水草一>)

先代モデルとはまったく異なるデザインで登場した、新型「プジョー508」。こんなナリしてハッチバック(ファストバック)という、既存のジャンルにとらわれないクルマの構造も、いかにもフランス車的だ。
先代モデルとはまったく異なるデザインで登場した、新型「プジョー508」。こんなナリしてハッチバック(ファストバック)という、既存のジャンルにとらわれないクルマの構造も、いかにもフランス車的だ。拡大
新型「508」のインテリア。ステアリングホイールの上からメーターを確認する、「i-Cockpit」のコンセプトにのっとったインストゥルメントパネルの設計が、非常にユニーク。
新型「508」のインテリア。ステアリングホイールの上からメーターを確認する、「i-Cockpit」のコンセプトにのっとったインストゥルメントパネルの設計が、非常にユニーク。拡大
ピアノの鍵盤を思わせるセンタークラスターのスイッチ。
ほった:「こんなデザイン、日本人もドイツ人もアメリカ人も思いつきませんよ」
ピアノの鍵盤を思わせるセンタークラスターのスイッチ。
	ほった:「こんなデザイン、日本人もドイツ人もアメリカ人も思いつきませんよ」拡大
永福:「シトロエンがテーマだったのに、いつのまにかプジョーの話になっちゃったね」
ほった:「これはプジョーのクルマも取り上げないといけませんね」
永福:「シトロエンがテーマだったのに、いつのまにかプジョーの話になっちゃったね」
	ほった:「これはプジョーのクルマも取り上げないといけませんね」拡大
明照寺 彰

明照寺 彰

さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。

永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。

webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。

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