第36回:シトロエンを総括する
2019.06.05 カーデザイナー明照寺彰の直言 拡大 |
一昔前まで自動車デザインの先頭をひた走っていたシトロエン。起死回生を果たすべく、SUVに傾注する同ブランドのラインナップは、現役のカーデザイナーの目にどう映るのか? 明照寺彰と永福ランプが“ダブルシェブロン”のデザインを総括する。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
売れないクルマはもういらん!
ほった:……えー。本来であれば、前回に続きまして「シトロエンC3(後編)」をお届けする予定でしたが、明照寺氏、永福氏両人の意向により、急きょ番組内容を「シトロエン大総括!」に変更してお届けしております。
明照寺彰(以下、明照寺):説明ありがとうございます(笑)。で、早速なんですけど、いま日本で売られているシトロエンは2モデルしかないんですよね。C3と「グランドC4スペースツアラー」と。(※取材後、2019年5月28日に「C5エアクロスSUV」が発売されました。当記事公開時点では3車種になります)
永福ランプ(以下、永福):なんだか三菱車っぽい車名だねぇ、スペースツアラー。ただの「C4」はどうなったの?
明照寺:こないだディーラー行ったら、2つの車種しかないと言われたんですけど(笑)。
ほった:オフィシャルサイトにもないですね。
永福:となると、ただのC4は消えたかぁ。
明照寺:DSが別ブランドとして独立したじゃないですか。そのあおりで、シトロエンはモデル数がガクっと減りましたよね。
ほった:そのうえ、DSとは無関係に消えたクルマもありますからねえ。
永福:売れないものはもういらないってことでしょう。
ほった:シトロエン単体で減っても、「DSと合わせてトントン以上ならヨシ」って算段だったんでしょうかね?
永福:でもDSって、ディーラー数が日本全国にまだ20店もないんだよ。わが家には「DS 3」がいるんだけど、「車検どうしようか……」と思ってたら、シトロエンのディーラーでやってくれるっていうんでホッとしたよ。
ほった:ラインナップは補完できても、販売台数はムリっぽそうですね。今のままだと。
頼みの綱は(やっぱり)SUV
ほった:シトロエンのラインナップ、本国でもCセグメントから上のセダン、ワゴン、ハッチバックは軒並みアデューな感じですね。その代わりに伸(の)してきてるのが、まぁ、やっぱりSUVです。日本でも「C3エアクロス」と「C5エアクロス」が間もなくですよ。(※クドいですけど、取材後の2019年5月28日に、C5エアクロスがC5エアクロスSUVという車名で発売されました)
明照寺:デザイン的に見て、C3よりC3エアクロスのほうがもっといいですよ。
永福:「C4カクタス」も、カタログモデルで日本に入れてくれればよかったのになぁ。限定で終わってしまった。
明照寺:C4カクタスは、日本に来たやつはサイドに大きなエアバンプが付いてましたけど、その後、本国モデルはマイナーチェンジを受けて、エアバンプが小さくなったうえに下に追いやられたんですよ。やっぱりディテール過多だと思ったのかな。
永福:そうなんですか!? 知らなかった。日本ではディテール過多くらいのほうが売れると思いますが……。シトロエンは極めて特殊なクルマという一般認識なので。
ほった:(写真を見せつつ)これがいまのC4カクタスですね。
永福:えっ、ずいぶん変わったね。
ほった:これも日本に入ればいいのに。
明照寺:そうですね、これはこれでカッコイイじゃないですか。すごくディテールにも凝ってる。ドアハンドルのところとか、細かいところまでデザインを統一させようというこだわりはすごいですね。
あの頃アナタは輝いていた
明照寺:シトロエンは少し前まで、カーデザイン界をリードしていたようなところがありましたよね。コンセプトカーでしたけど、「C-カクタス」なんか衝撃的じゃなかったですか?
永福:あー。これにはシトロエンらしい、ブッ飛んだ未来を感じました!
明照寺:この頃のシトロエンはすごかったじゃないですか、「C6」とか。C6ってリアゲートのガラスがインバースしてるんですよ。「ここまでやるか!」っていうくらい衝撃的でした。
永福:C6もメチャメチャ憧れました。結局手が届かなかったけど、あのデザインは本当にすごかった。
明照寺:最近はフランス車にしても、コストをかけたがらないんでしょうね。あまりヘンなことしなくなった。イタリア車もそうですけど、“優等生”になっちゃってます。もちろんビジネスですから仕方ない面もありますけど、こちらとしてはもっと極端なものを期待してしまう。
永福:C3なんかは、ディテールで個性を出してきたということですよね。エアバンプとかライト形状で。日本人はそれにしっかり反応して、売れている。
明照寺:「DS 5」は市販化されましたけど、ショーカーが出たのは2005年なんですよ。これが出てきたときも衝撃でした。単純にカッコイイし、次世代な感じがした。
永福:いやー、DS 5が消えたのは本当に残念だったなぁ……。
明照寺:この頃の勢いに比べると、「DS 7クロスバック」なんかを見ると、小手先感がありますよね。アウディをちょっとフランスっぽくしたぐらいにしか見えない。DS 5はシルエットからして全然違ってた。
永福:まったく同感です。DS 7クロスバックは、完全に小物で勝負に出てますね。
ほった:回転する時計とか。
永福:ああいうのもステキだけど、フォルムが普通すぎるよね~。それをキラキラしたメッキでカバーしてる。DS 5は死ぬまでに欲しいけど、DS 7クロスバックはそうでもないなぁ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
今はプジョーのほうがガンバってる
明照寺:ありていに言って、シトロエンがデザインリーダーだったのは10年ぐらい前までという感じでしょうか。シトロエンってプジョーと同じPSAグループですけど、いまはプジョーのほうが、デザインをすごく頑張ってます。カッコイイ路線に変わったじゃないですか、ちょっと前に比べて。
永福:プジョーは一時、顔ばっかりすごくてフォルムがまるでダメでしたよね。「207」とか「307」、初代「308」あたりかな。あれは暗黒時代でした。
明照寺:ものすごい猫みたいな顔だったのが(笑)、いまは精悍(せいかん)になって、シンプルだけど個性的になってます。
ほった:「508」の評判がいいですね。
永福:508はちょっとレトロな香りがして、特に中高年はそそられるね。新型「208」もモダンに先祖返りしてる。
明照寺:あとは内装ですね。あの内装を見ると、やっぱりすごいと思います。いまフランス車のデザインをけん引してるのは、間違いなくプジョーです。
永福:つまり、シトロエンのデザインが元気な時はプジョーが落ちて、プジョーが上がってくるとシトロエンが……というパターンなのかな?
ほった:社内で人材が偏るんですかねぇ。ダメだから片方にテコ入れすると、もう片方がダメになるという。
明照寺:どうなんですかねぇ(笑)。とにかく、いまプジョーはいいですよ。
ほった:これは、そのうちプジョーも取り上げないとイカンですね。
(文=永福ランプ<清水草一>)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

明照寺 彰
さまざまな自動車のデザインにおいて辣腕を振るう、現役のカーデザイナー。理想のデザインのクルマは「ポルシェ911(901型)」。
永福ランプ(えいふく らんぷ)
大乗フェラーリ教の教祖にして、今日の自動車デザインに心を痛める憂国の士。その美を最も愛するクルマは「フェラーリ328」。
webCGほった(うぇぶしーじー ほった)
当連載の茶々入れ&編集担当。デザインに関してはとんと疎いが、とりあえず憧れのクルマは「シェルビー・コブラ デイトナクーペ」。
-
第41回:ジャガーIペース(後編) 2019.7.17 他のどんなクルマにも似ていないデザインで登場した、ジャガー初の電気自動車「Iペース」。このモデルが提案する“新しいクルマのカタチ”は、EV時代のメインストリームとなりうるのか? 明照寺彰と永福ランプ、webCGほったが激論を交わす。
-
第40回:ジャガーIペース(前編) 2019.7.10 ジャガーからブランド初の100%電気自動車(EV)「Iペース」が登場。SUVのようにも、ハッチバックのようにも見える400psの快速EV。そのデザインに込められた意図とは? EVデザインのトレンドを踏まえつつ、現役の自動車デザイナー明照寺彰が語る。
-
第39回:アウディA6 2019.7.3 アウディ伝統のEセグメントモデル「A6」が、5代目にモデルチェンジ。新世代のシャシーやパワートレインの採用など、その“中身”が話題を呼んでいる新型だが、“外見”=デザインの出来栄えはどうなのか? 現役のカーデザイナー明照寺彰が斬る。
-
第38回:三菱eKクロス(後編) 2019.6.26 この“顔”はスポーツカーにもよく似合う!? SUV風のデザインが目を引く、三菱の新しい軽乗用車「eKクロス」。迫力満点のフロントマスク「ダイナミックシールド」の特徴とアドバンテージを、現役の自動車デザイナー明照寺彰が語る。
-
第37回:三菱eKクロス(前編) 2019.6.19 三菱最新のデザインコンセプト「ダイナミックシールド」の採用により、当代きっての“ド迫力マスク”を手に入れた「三菱eKクロス」。そのデザインのキモに、兄弟車「日産デイズ」や同門のミニバン「三菱デリカD:5」との比較を通して迫る。
-
NEW
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
NEW
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。 -
NEW
第115回:メイク・アメリカ・グレート・アゲイン!(後編) ―デザインもサイズも規格外! 魅惑のアメリカ車はなぜ“主役”になれないのか?―
2026.6.3カーデザイン曼荼羅トヨタ&ホンダが発表した、米国生産車の日本導入計画。しかしアメリカには、規格外に面白いクルマがまだたくさんあるのだ! カーデザインの識者とともに魅惑の日本“未”導入車を探すとともに、魅力的なアメリカ車が、それでも主役になれない理由を考えた。 -
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。
















































