ランドローバー・レンジローバー イヴォーク ファーストエディションP250(4WD/9AT)
漂う“いいモノ感” 2019.08.07 試乗記 2代目に進化したランドローバーのコンパクトSUV「レンジローバー イヴォーク」。そのスタイルはキープコンセプトだが、中身は新型プラットフォームの採用により刷新されているという。導入記念モデル「ファーストエディションP250」を軽井沢に連れ出し、実力を確かめてみた。新型イヴォークはカメラマン泣かせ!?
実車を見るのはこれが初めてだが、ひと目でイヴォークとわかるのは、薄いグリーンハウスや、勾配が大きなショルダーラインなど、初代の特徴を色濃く受け継いでいるからだろう。一方、先代よりも丸みを帯びたからか、以前に比べて優雅さが増したように思える。ただ、どちらが個性的かと聞かれると、先代のほうがキャラクターは際立っていたかなぁ……というのが、新型イヴォークの私の感想。それでも、第一印象は悪くない。
ドアロックを解除すると、自動的にせり出してくるドアハンドル(デプロイアブルドアハンドル)も、個人的には好きな演出だ。しかし、立場が変わると印象も変わるようで、撮影を担当するカメラマンにとっては、これがなかなかのくせ者だ。
たとえば、クルマの“置き”(停車状態の外観)を撮るために、カメラマンの指示どおりにクルマを動かし、エンジンを切っていざクルマを降りようとすると、ドアハンドルが出てきてしまう。それじゃあ絵にならないとドアハンドルを引っ込めるためにロックするとドアミラーが格納されて、これはこれで困る。仕方がないので、エンジンを切ったあと、ドライバーがそのまま車内に残り、カメラに写らないよう身を隠すことになるのだ。
室内の写真を撮るにしても、センターコンソールに配置される上下のタッチスクリーンや、ステアリングホイールのスイッチが黒の光沢仕上げということで、気をつけないとカメラマンが写り込んでしまう。「いつも以上に手間がかかるよ」とKカメラマン。新型イヴォークは、実にカメラマン泣かせのクルマだったのである。
“クーペ”の弱点は解消
運転する立場からも、素手で触れれば指紋が残るパネルに気を遣うものの、見た目の美しさには抗しがたい魅力がある。きれい好きの日本人にはスマートフォンのように、液晶保護フィルムが必須かもしれない。
それはさておき、新型イヴォークのコックピットも、美しさが際立っている。この試乗車では、シートに加えてダッシュボードも白と黒のツートーンで、白のソフトパッド、黒のダッシュボードともにとても質感が高く、シンプルなデザインも手伝って、居心地の良い空間に仕立て上げられている。
先代の弱点といわれていた後席のスペースも、しっかりと見直されており、ホイールベースが20mm延長されたこともあって、大人が座っても十分なニールームとヘッドルームが確保されている。ラゲッジスペースもボディーサイズ相応の容量で、クーペスタイルの弱点はほぼ解消されたといっていいだろう。
運転席に戻り、イグニッションをオンにすると、ブラックアウトされていたメーターパネルやモニターが始動し、上のタッチスクリーンがむくっと立ち上がった。
面白いのがステアリングホイール上のスイッチで、こちらも同じタイミングで表示がスタートするのだが、機能が変わるとそれに合わせて表示される内容も変わるという便利なもので、今後、追随するメーカーが続々と現れるに違いない。
使えるトップギア
最近では、SUVといっても、クロスオーバーとさほど変わらない、アイポイントが低いモデルが少なくないが、このイヴォークはコンパクトSUVとしては高めのアイポイントがむしろ新鮮だ。
そんなことを思いながら早速走りだすと、動き出しはスムーズで、エンジンも低回転から粘る印象だ。今回借り出したファーストエディションP250には、そのモデル名からもわかるように、“ほぼ”250psの2リッター直列4気筒エンジンが搭載されている。カタログ上は、わずか1200rpmから最大トルクの365Nmを発生するということだが、軽くアクセルペダルを踏む状況でも、その実力の一端が見て取れる。
アクセルペダルを踏み込むと4500rpmあたりまで力強い加速が続く。そこを超えると多少伸びが鈍る印象だが、1920kgのイヴォークをストレスなく走らせるには十分の実力である。
トルクコンバーター式の9段オートマチックも決して“宝の持ち腐れ”ではなく、日本の道でも十分使えるギア比が与えられている。実際、高速道路では、100km/hを9速、1500rpmで粛々と巡航することが可能。ただ、今回、主に高速道路を走行したときの燃費は10km/リッターには届かなかった。P250はマイルドハイブリッド(MHEV)が搭載されないが、MHEV搭載の「P300」とどちらの燃費が良いのか気になるところだ。
走りの洗練度は高い
本来、ファーストエディションP250では、ベース車両の「R-DYNAMIC SE」と同サイズの20インチホイールが装着されるが、この試乗車では1インチアップの21インチがおごられていた。スポーティーな見た目ということもあって、ある程度ハードな乗り心地を覚悟していたのだが、実際には拍子抜けするほど乗り心地はマイルド。オプション設定の電子制御ダンパー「アダプティブダイナミクス」が装着されており、その影響が大きいのかもしれないが、SUVとして挙動は落ち着いており、目地段差を越えたときのショックもさほど気にならない。コーナーでのロールもよく抑えられている。
高速道路では多少緩い上下動も見られるが、モードをダイナミックに切り替えればほぼ解消。硬めの設定でもゴツゴツしないのが、うれしいところだ。高速走行時の直進安定性も高い。タイヤがワイドな分、ロードノイズや路面とのコンタクトの硬さが多少気になったものの、オンロードでの走りの洗練度は高いレベルだ。
残念ながら今回は本格的なオフロード走行はできなかったが、わずかだが未舗装路に足を踏み入れる場面があった。そういったところで役に立ったのが「クリアサイトグラウンドビュー」を含む、360°サラウンドカメラで、コックピットから路面や周囲の確認がしやすいのが安心感につながった。
今回の試乗では、クルマとしての完成度の高さを感じることができたが、さらに魅力的なデザインや仕立ての良さ、数々の新機能などにより、そこかしこに“いいモノ感”が漂うクルマという印象を受けた。このクルマを手に入れたら、満足度はきっと高いだろうなぁ……。短時間の試乗でも、そんなことを思わせる新型イヴォークである。
(文=生方 聡/写真=向後一宏/編集=櫻井健一)
テスト車のデータ
ランドローバー・レンジローバー イヴォーク ファーストエディションP250
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4380×1905×1650mm
ホイールベース:2680mm
車重:1840kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:249ps(183kW)/5500rpm
最大トルク:365Nm(37.2kgm)/1500-4500rpm
タイヤ:(前)245/45R21 104W/(後)245/45R21 104W(グッドイヤー・イーグルF1 AT SUV 4×4)
燃費:--km/リッター
価格:799万円/テスト車=828万5000円
オプション装備:セキュアトラッカー(9万9000円)/アダプティブダイナミクス(12万9000円)/ヘッドアップディスプレイ(15万1000円)/21インチ“スタイル5078”5スプリットスポーク<グロスシルバーフィニッシュ>(3万2000円)/コンフィギュラブルダイナミクス(3万5000円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:3173km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:442.6km
使用燃料:46.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.6km/リッター(満タン法)/9.6km/リッター(車載燃費計計測値)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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