日産スカイラインGT Type SP(ハイブリッド)(FR/7AT)
雲にかすむスカイライン 2019.10.22 試乗記 市販車として初めて、同一車線内“ハンズオフ”走行を実現する運転支援システム「プロパイロット2.0」が搭載された「日産スカイライン」。長距離ドライブに連れ出し、実際の交通環境の中で手放し運転機能の使い勝手や走りの実力を確かめてみた。今度は“日産”スカイライン
製品とは直接関係のない出来事ばかりが取りざたされている中で、ニューモデルを取り上げるのは正直言ってやりにくいし残念だ。ブランドの姿勢は最終的には製品に表れるものだし、プロダクトこそがカスタマーに対するメッセージだと思うが、真摯(しんし)にそれに向き合っているとは言い難いのが現状だ。せっかくビッグマイナーチェンジを受けたというのに、まずエンブレムが“日産”に戻ったことに注目が集まるのでは、何とももったいない限りだ。
逆風の中で登場した日産スカイラインに2種類のVR型3リッターV6ツインターボエンジンを搭載したこともスカイラインとしては新しいが(既にインフィニティ用には導入されていた)、注目は何といってもハンズオフ走行を可能とするプロパイロット2.0の投入だろう。
このシステムが装備されるのはハイブリッドモデルのみであり、さらに作動にはさまざまな条件が付くものの、日産では世界初の先進運転支援技術をうたい、「技術の日産の象徴」と主張している。いやいや、この間まではインフィニティだったじゃないか、と突っ込みたくなるのは私も同じ。今や日産随一の長い歴史を持つ代表的モデルとは言いながら、会社の都合で、いやその時々の経営陣の都合であっちへ行ったりこっちへ戻ったり、何だか大切にされていない感じがするスカイラインが不憫(ふびん)である。
日産のファミリーフェイスである「Vモーショングリル」に看板を掛け替え、“伝統”の丸目4灯リアコンビネーションランプを採用したスカイラインではあるが、新鮮な印象はあまりない。2014年の現行型(V37)デビュー以来基本形が変わっていないのだから、それも当然。インテリアについても従来型との違いはほとんど感じられない。
コックピットは囲まれ感が強いうえに、インストゥルメントパネルはスイッチ類の数が多く、整理されていない煩雑な仕立てが何となく建て増し感というか、古臭い設計を無理に新しく見せようとしている雰囲気が漂う。致し方ないところではあるが、600万円クラスのスポーツセダンとしては明らかに時代遅れである。
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なかなか試す場所がない
プロパイロット2.0のハンズオフ走行の作動にはいろいろと条件がある。しかもそれが少なくない。「世界初の先進運転支援技術」と例によって宣伝文句は勇ましいが、ちょっと前までの同一車線内自動運転ではなく、今回はあくまで「運転支援システム」を強調していることにも注意。
言葉尻を捕らえるつもりはないけれど、言葉がユーザーに誤解を与える可能性があるなら、そこははっきりさせておかなければ信頼度に関わってくる。プロパイロット2.0は極めて限定された条件下における運転支援システムであり、カーナビをセットしてボタンを押せば自動的に目的地に連れていってくれるような類いのものではないことを念のため繰り返しておく。
同システムでは高速道路を走行中、ドライバーが設定した速度以下(制限速度プラス10km/hまで設定可能)で、ドライバーが常に前方に注意し、必要な場合は直ちにステアリングを確実に操作できる状態にある限りにおいてハンズオフが可能になるという。
ただし高速道路上であっても対面通行やトンネル、工事区間、カーブ、料金所、合流・車線減少地点ではハンズオフは利用できない。さらに高速道路上の開けた場所を走行中にも2度、なぜかは分からないけれど「高精度地図データが取得できません」と表示され、勝手にハンズオフ走行が停止したこともあった。
今回は都内から山梨・河口湖を往復する中央自動車道で試乗したが、首都圏の主要高速道路は上記のような“障害区間”が多く、ハンズオフを試すチャンスがなかなか見つけられなかった。
渋滞の中ではそれなりに
ようやくメーターパネル内表示がブルーに変わり、ハンズオフ走行を開始しても、交通量が多く、比較的流れが速い中央道のような高速道路ではそのメリットを実感できるような場面はあまりなかった。
何しろこちらは基本的に制限速度走行であるのに対して、他の車両は現実にはもっと速く流れているから、遅いクルマに追いついてシステムから追い越しを提案されても、そのすき間を見つけることが難しい。さらに、さまざまな理由からポンポン警報音が流れて頻繁にハンズオフ走行が中断されてしまうのだ。
以前のプロパイロットのように車線の中でフラフラするようなことはなく、ごく自然にレーンの中で落ち着いて走行するのは歓迎できるものの、それは他のACCのレーンキープアシストも同じこと。プロパイロット2.0が実際に役に立つのは、よほど空いた高速道路をのんびりと流す場合か、あるいは渋滞中のストップ&ゴーということになるだろう。
ドライバー監視カメラがある分、居眠り防止になるメリットもあるが、渋滞の中ではBMWのハンズオフシステム(60km/h以下限定)のほうがトンネルでもキャンセルされない利点がある。もっといろいろな条件下で試してみないと確実なことは言えないが、今のところは都市近郊で使うにはハードルが多すぎる印象だ。
スポーツセダンの片りんはある
前後245/40RF19サイズのランフラットタイヤの影響か、低速では強めの突き上げを感じることが多く、また同じく低速では微妙なスロットルペダルの操作に対するレスポンスが不自然で滑らかに走行するのに気を遣う。
いっぽうでペースが上がると、途端に生き生きとしてくるのがスカイラインの特徴だ。最高出力306PS(225kW)/6800rpmと最大トルク350N・m(35.7kgf・m)/5000rpmを生み出す自然吸気3.5リッターV6 DOHCエンジンに、最高出力68PS(50kW)、最大トルク290N・m(29.6kgf・m)のモーターを加えたハイブリッドシステム(システム合計出力364PS)は従来型からのキャリーオーバーだが、さすがにパワフルなうえに自然吸気らしく痛快に吹け上がるし、バイワイヤのDAS(ダイレクトアダプティプステアリング)もかつてとは見違えるほどリニアで自然なフィーリングを伝えてくれる。
とはいえ、新たに2種類の3リッターV6ツインターボエンジン搭載車が用意されており(従来型に搭載されていたダイムラー製2リッター4気筒直噴ターボは廃止)、そちらのほうがプロパイロット2.0付きハイブリッドより価格も安いから、いまだにスカイライン愛を失わないスポーツ派はV6ツインターボを選ばない理由はないだろう。稜線(りょうせん)が雲で覆われている山並みのように、遠くまで見通せないスカイラインである。
(文=高平高輝/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
テスト車のデータ
日産スカイラインGT Type SP(ハイブリッド)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4810×1820×1440mm
ホイールベース:2850mm
車重:1840kg
駆動方式:FR
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:306PS(225kW)/6800rpm
エンジン最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/5000rpm
モーター最高出力:68PS(50kW)
モーター最大トルク:290N・m(29.6kgf・m)
タイヤ:(前)245/40RF19 94W/(後)245/40RF19 94W(ダンロップSP SPORT MAXX 050 DSST CTT)
燃費:14.4km/リッター(JC08モード)
価格:616万8000円/テスト車=683万0682円
オプション装備:ボディーカラー<カーマインレッド>(14万3000円)/BOSEパフォーマンスシリーズサラウンドシステム(16スピーカー、サラウンドステージテクノロジー、オーディオパイロット、センターポイント2バーチャル・サラウンド機能、アドバンスト・ステージング・テクノロジー)+アンビエントライトシステム(22万3300円)/フィニッシャー<インストゥルメントパネル、センタークラスター、ドアトリム>本木目(7万7000円)/電動ガラスサンルーフ<ワンタッチスライド・チルトアップ、UVカット機能付きプライバシーガラス、挟み込み防止機能付き>(12万1000円) ※以下、販売店装着オプション ドライブレコーダー(3万8897円)/プレミアムフロアカーペット<消臭機能付き>(5万7200円)/ウィンドウ撥水(はっすい)12カ月<ウィンドウ1面+フロントドアガラス2面>(1万0285円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:2782km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:373.1km
使用燃料:32.2リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.6km/リッター(満タン法)/11.4km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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