アウディA4 2.0 TFSI(FF/CVT)【試乗記】
好みを言わせていただけば 2011.06.14 試乗記 アウディA4 2.0 TFSI(FF/CVT)……546万円
「アウディA4」シリーズに新たに加わったエントリーグレードに乗りながら、アウディらしさについて考えた。
かなりのおトク感あり
「アウディA4」シリーズに新たに加わった「A4 2.0 TFSI」を紹介する前に、簡単におさらい。
2008年春に、4代目となるアウディA4が日本でデビューした。この時のラインナップは2グレード。ひとつが1.8リッターターボを搭載したFF(前輪駆動)モデル「1.8 TFSI」で、もうひとつが3.2リッターV6を積んだ四駆の「3.2 FSIクワトロ」だ。ちなみに2つのグレードの価格差は200万円以上と、かなり大きな開きがあった。
1年後の2009年、このギャップを埋めるように2リッターターボ搭載の四駆モデル、「2.0 TFSIクワトロ」が投入される。2010年1月には3.2 FSIクワトロがラインナップから外れ、同年冬には「アウディA4オールロードクワトロ」が250台限定で販売された。
そして2011年春に、1.8 TFSIに代わって2リッターターボを積むFFモデル「2.0 TFSI」がラインナップされる。これがアウディA4シリーズの新しいベーシックグレードということになる。つまり2リッターターボ搭載のFFと四駆、そして「S4」の3モデルで現在のA4シリーズを構成する。
2.0 TFSIの2リッターターボエンジンの最高出力は従来型1.8リッターの160psから180psへとパワフルになっている一方で、自動車取得税と自動車重量税が50%減税されるエコカー減税対象車となっている。
しかも、これだけの“武器”を得ながら1.8 TFSIより5万円しか高くなっていない440万円だから、かなりお買い得感あり。2010年に日本で販売されたアウディA4シリーズは約5500台で、販売台数の3割以上を占めるという。このグレードの登場で、さらに間口が広がることが期待できる。
ただの“おしゃれブランド”にあらず
ベーシックなグレードといえども、運転席に座ってステアリングホイールを握れば「2.0 TFSI」はいかにもアウディらしいアウディだ。個人的に考える「アウディらしさ」とは、ドライブしていると自分が繊細な感覚を持った人間であると思えてくる点だ。錯覚かもしれないけれど、勘違いさせてくれるくらい造り込まれているということでもある。
低い位置のシートに収まり、手応えのしっかりしたステアリングホイールを操作すると、2.0 TFSIは機敏な身のこなしを見せる。市街地ではもう少ししっとりした乗り心地のほうが好みであるけれど、能動的に運転を楽しむセダンであるという狙いは明確に伝わってくる。
このクラスのセダンの中では、乗り心地ははっきりと辛口。特にタウンスピードでは路面の凸凹がかなりダイレクトに伝わってくる。それが不快に感じないのは、前述したようにステアリングホイールの入力に対して、あるいはアクセルペダルやブレーキペダルの操作に対してピュアな反応を見せるからだ。
だから、なんとな〜く移動するような乗り方には向いていない。自分はスポーティなドライビングが好きで、真剣に操縦したいという明確なイメージを持つ人に向いている。
「アウディ=おしゃれ」というイメージがあって、外観はもちろん、インテリアの造形や色づかい、隙のない仕上げもお洒落だ。けれども、それだけではこのクルマの一面しか味わえない。
高速コーナーの入口で進入速度とステアリングホイールを切る量が正確に決まると、ピタッときれいなフォームで駆け抜ける。ブレのない、やわらかい軌跡を描くことができる。ヘアピンの脱出でアクセルペダルを踏む量とタイミングが正確に決まると、なんの抵抗も感じさせずに加速していく。
丁寧に運転すればそれに応えてくれるから、自分が繊細な感覚を持っているように思えてくるのだ。アウディ自慢のクワトロ(四駆)ではなくFFモデルであっても、ドライバーとクルマの関係が透き通っているという美点に違いはない。
一点だけ曇りあり
「2.0 TFSI」でひとつ「ん?」と思ったのは、CVTだ。「2.0 TFSIクワトロ」のトランスミッションには7段Sトロニックが採用されるが、FFモデルのこちらにはマルチトロニックトランスミッション(CVT)が組み合わされる。
具体的には、微妙なアクセル操作でスピードをコントロールするような場面での反応が物足りない。ドライバーのわずかな入力に対して寸分違わぬ反応をするアウディらしさ、繊細さがやや失われた印象だ。奥歯にモノがはさまった感あり。
最高出力180psと最大トルク32.6kgmの2リッターTFSIエンジンは、2.0 TFSIクワトロの211psと35.7kgmに比べるとチューンが低い。具体的には、燃費を稼ぐためにターボチャージャーの過給圧を下げている。けれども、車重が140kg軽いこともあってか、力不足は感じない。低回転域からしっかり力を発揮する一方で、上まで回してもドラマが起こらないという性格も共通。
また、このパワートレインの採用によってA4シリーズとして初となる、エコカー減税対象車(50%減税)となっている。だから「間口を広げる」という任務は問題なく果たすだろう。
ただし、手触りというかフィーリングの部分で、CVTに一点だけ曇りあり。アウディジャパンによればスポーティなクワトロにはSトロニック、温和なFFには効率のよい回転域を使えるCVTというすみ分けになっているという。トランスミッションを使い分ける理由についてはなるほどと思うし、実用にはまったく問題はない。だから、好みの問題だということもできる。
でもアウディは実用を越えたところ、手触りやフィーリングを五感で味わうクルマだと思っているので、自分だったらなんとか78万円の価格差を工面して2.0 TFSIクワトロを選びたい。繰り返しになるけれど、アウディはただのおしゃれなブランドではなく、技術の鬼、クルマ作りの職人だと思っているので。
(文=サトータケシ/写真=郡大二郎)
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サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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