東京モーターショー2019

ナノセルロースヴィークル:このクルマは世界を救う(かも)

2019.10.25 自動車ニュース 今尾 直樹
ナノセルロースヴィークル
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今尾直樹は今回の東京モーターショーで、妙なたたずまいの一台に目を留めた。低く構えたスタイルに、跳ね上げ式のドア。一見、ハイパワーエンジンを積むスーパーカーのようだが……。

 
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手に持っているのが、植物由来の素材「セルロースナノファイバー」。
手に持っているのが、植物由来の素材「セルロースナノファイバー」。拡大
こちらは、展示ブースに添えられた説明板。自動車の場合、多くの箇所に活用できる。
こちらは、展示ブースに添えられた説明板。自動車の場合、多くの箇所に活用できる。拡大

軽くて 強くて 何度も使える

木クズを敷き詰めたところに展示されている、その意味ではたぶん世界初のスーパーカー。なんで?

エンジンその他があるのかは聞きそこねたけれど、注目は「セルロースナノファイバー(CNF)」という新素材でボンネットやドアなどのボディー外板とフロアの一部ができていること。

京都大学が代表事業者を務める環境省の産学協同プロジェクトの集大成としてつくられたもので、この場におられた矢野浩之・京都大学教授によると、CNFというのは要するに植物繊維をものすご~く小さくして、ギュッと固めて乾かしたもの。カーボンほどではないけれど、鉄の5分の1の軽さで5倍の強度がある。

植物なら何からでもできるけれど、毎年1500万t増え続けているスギやヒノキ等の木材を使っているところがミソ。日本が使うプラスチックの量は年間1000万tで、その1.5倍の資源が実はわが国にはある。しかも、毎年増えているのだから、いわば無尽蔵。スギやヒノキはCO2を吸って成長するから、マイナスCO2から事業を始められる。さらにリサイクルも可能で、塗装をきれいに剝がすことができれば、再利用時も劣化しない。

未来は明るいよ~、とグレタ・トゥーンベリさんに教えてあげたい(もちろん、これだけで環境問題は解決しませんが)。なお、矢野教授が開発したCNFはアシックスのGEL-KAYANOというシリーズのソールにも使われていて、去年100万足売れた。でも特許料は全部大学に入るそうな……。

(文と写真=今尾直樹/編集=関 顕也)

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