アウディA1スポーツバック40 TFSIエディション1(FF/6AT)
ほどよくヤンチャ わかりやすくスポーティー 2019.11.09 試乗記 新しくなった「アウディA1スポーツバック」の走りを試すべく本国ドイツへ出向いたところ、そこで待ち受けていたのは“日本未導入”の「40 TFSI」。やや複雑な心持ちで試乗に臨んだのだが、実際には、このグレードこそ新型A1のキャラクターを最もよく表したモデルだった。よりワイド&ローに よりマッシブに
2代目となるアウディA1スポーツバックは2019年11月1日に日本で発表された。間もなく国内でも試乗できることになるが、まずは1.5リッター直4ターボの「35 TFSI」が導入され、後に1リッター直3ターボの「25 TFSI」が追加されるという。コンパクトなA1スポーツバックならば35 TFSI や25 TFSIでも必要十分以上に走ってくれることだろうが、本国でラインナップされている2リッター直4ターボの40 TFSIの導入予定がないのが残念でならない。
というのも、新型A1スポーツバックは、先代の丸みを帯びた優しいスタイリングから一転、スポーティーさを全身でアピールしたコンパクトハッチバックに生まれ変わったからだ。ボディーサイズに対してやや過剰なスペックともいえる最高出力200PS、最大トルク320N・mの2リッター直4ターボを搭載した40 TFSIは、新型のキャラクターにぴたりとマッチしているのである。
新型A1は、プラットフォームが新たに「MQB A0」となったことでワイド&ローかつタイヤが四隅に配置されるスポーティーなフォルムを獲得。そのうえでショルダーラインは筋骨隆々といった感じに盛り上がり、アウディの象徴ともいえる「スポーツクワトロ」をデザインモチーフとした、ボンネット先端の3分割スリットなどのディテールが盛り込まれている。
今回用意された試乗車は、ターボブルーのボディーカラーにホワイトのホイールが鮮やかで、リアタイヤ前方にフォーリングスが入っているところがスポーツクワトロをほうふつとさせる。タイヤは標準では17インチだが、テスト車は18インチを装着していた。
“洗練されている”だけじゃない
デジタルメーターの「アウディバーチャルコックピット」が採用されたインテリアは、アウディらしい質感の高さも相まって実に洗練されているが、フラットボトムのステアリングやインストゥルメントパネルを運転席側に傾けたドライバーオリエンテッドな空間としているところに、どこか懐かしさも感じる。
この2リッター直4ターボはすでに「フォルクスワーゲン・ポロGTI」でも体験済みだが、A1スポーツバックでも同じように迫力がある。発進時にアクセルを深く踏み込めば、フロントタイヤを軋(きし)ませながらはじけるように加速。トルクがずぶといのでちょっとした路面の荒れでも瞬間的にホイールスピンしそうになるが、フロントタイヤは執拗(しつよう)に路面を捉えて前へ前へと突き進んでいく。エンジンは強力だが、A1スポーツバックのシャシーにはまだ余裕がありそうだ。
スポーティーなエンジンは最高出力を発生する6000rpmまでスムーズに回るが、それよりも印象的なのは太いトルクが幅広い回転域で生み出され、なおかつレスポンスがいいことだ。1500-2000rpm程度の低回転で巡航走行しているときでも、アクセルを踏み増せば即座に背中がシートバックに押しつけられ、小気味よく速度を増していく。シフトダウンするほど深くアクセルを踏み込んだときなどは、グワッとやや乱暴なほどの加速をみせるが、それがまたほどよくヤンチャ。最近のアウディは洗練されたモデルが多いが、A1スポーツバックははっきりとわかりやすくスポーティーで、ドライバーを熱くさせるのだ。
18インチタイヤを履いているからさぞかし乗り心地は硬めだろうと予想していたのだが、40 TFSIはアダプティブダンパーが標準装備されているため、想像するよりずっと快適だった。とはいえ、「A6」や「A8」のように極めて洗練されてスムーズというわけではなく、わずかながらトガった入力がある。ボディー剛性が高く、サスペンションもちょっと硬めで、いかにも超高速域で安心感がありそうな雰囲気。昔ながらのドイツ車のイメージなのだ。街中を走らせていると、早く高速道路やワインディングロードで走りを試してみたくなる。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
ぜひ日本導入を検討してほしい
アダプティブダンパーの減衰力は、当然のことながら「アウディドライブセレクト」にも連動している。アウトバーンで速度を上げていくと、走行モードが「コンフォート」のままでもボディーコントロールに特に不満はなかったが、やはり「ダイナミック」に切り替えたほうがよりフラットで落ち着いてくる。先代比で95mmもホイールベースが延びたこともあって高速走行は得意で、ひとクラス上のCセグメントのモデルに乗っているかのようだ。コンパクトなボディーながら、速度無制限区間の追い越し車線でも堂々としていられるのが痛快だった。
痛快といえば、ワインディングロードでの走りも痛快だ。フロントがワイドトレッドとなった効果が大きく、コーナーへ向けてステアリングを切り込んでいけばグイグイとノーズが入っていく。だからといって過敏すぎて疲れてしまうような特性ではなく、あくまでドライバーの意思に忠実に、いかにもフロントのグリップに余裕がある感覚を伴いながらターンインしていく。スタビリティーが高すぎてつまらないなんてこともなく、リアも穏やかながら振り出させられる。ホットハッチと呼ぶにふさわしいハンドリングなのだ。
A1スポーツバックはこれまでもアウディの販売台数増加に貢献してきたが、同クラスでわが物顔のMINIをやっつけるべく、新型ではスポーティーさを前面に押し出してきたのだろう。それがよく表れているのが40 TFSIなのだ。やや過剰なスペックのエンジンを搭載するから多少は荒々しさがあり、ノイズなどもそれなりに入ってくるが、洗練されすぎてないのがいい。これぐらいのわかりやすいヤンチャ感があるモデルは日本でも人気者になるだろう。ぜひとも導入を検討してもらいたいモデルなのだ。
(文=石井昌道/写真=アウディ/編集=堀田剛資)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
テスト車のデータ
アウディA1スポーツバック40 TFSIエディション1
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4029×1740×1433mm
ホイールベース:2563mm
車重:1260kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:200PS(147kW)/4400-6000rpm
最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/1500-4400rpm
タイヤ:(前)215/40R18 89Y/(後)215/40R18 89Y(ブリヂストン・トランザT005)
燃費:6.0リッター/100km(約16.7km/リッター、欧州複合モード)
価格:--円
オプション装備:--
※数値はいずれも欧州仕様
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費: --km /リッター
![]() |

石井 昌道
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。