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コンパクトSUV市場の活性化に期待! 「ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ」はここがスゴい

2019.11.25 デイリーコラム 堀田 剛資

今季ギョーカイ随一の注目車種

月日が流れるのは早いもので、当コラムを書くうえで東京モーターショー2019の記事を見返してみたら、日付がまさかの1カ月前だった。まじかよ。

で、なんでわざわざ当時の記事を見返そうと思ったかというと、今回のコラムのお題がコンパクトSUV「ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ」だから。ご記憶の方もおられるだろうが、ダイハツ・ロッキーは今回のショーで“サプライズ発表”されたのだ。事前告知ナシにダイハツが新型車をお披露目するなんて、記者の記憶の限りでは(メモリの容量はだいたい256MBくらい)これまでなかったことではないか。

かように衝撃的演出がなされたデビューに加え、ロッキー&ライズはその絶妙なポジション取りでも大いにギョーカイの注目を集めている。ちゃんとヨンクも用意された、全長4mを切るコンパクトSUV。ありそうでなかったクルマじゃないかと。

……なんて書くと、「いやいや、待て、待て」と言われることでしょう。「あるじゃないの。そういうクルマ」と。その通り、あるのです。その名も「スズキ・クロスビー」。ダイハツにとって永遠のライバルである浜松の雄は、豊富にそろえた小さなSUV商品群が自慢。このかいわいにも「イグニス」「クロスビー」「エスクード」と、実に3車種もモデルを用意している。ただし、個々のモデルを見てみると、イグニスは後席も荷室もミニマムなクーペSUVといった趣で、クロスビーのデザインはSUVというよりコンパクトハイトワゴンのクロスオーバー(どちらも、そこが魅力なんだけどね)。エスクードは文句のつけようがない本格SUVだが、セグメントがひとつ上のBセグとなる。要するに、ロッキー&ライズよりちょいとデカいのだ。

ちゃんとSUVらしいデザインをまとい、SUVならではの多用途性を備えた最小単位のクルマとして、ロッキー&ライズは注目されているのである。

東京モーターショー2019で“サプライズ発表”された「ダイハツ・ロッキー」。当時はまだ車名は発表されておらず、パネルには「新型コンパクトSUV」とだけ書かれていた。
東京モーターショー2019で“サプライズ発表”された「ダイハツ・ロッキー」。当時はまだ車名は発表されておらず、パネルには「新型コンパクトSUV」とだけ書かれていた。拡大
兄弟車「ダイハツ・ロッキー」「トヨタ・ライズ」のツーショット。せっかくなので、トヨタ版は「ブリザード」という名前にしてほしかった……。
兄弟車「ダイハツ・ロッキー」「トヨタ・ライズ」のツーショット。せっかくなので、トヨタ版は「ブリザード」という名前にしてほしかった……。拡大
スズキがラインナップするAセグメントのコンパクトSUV「クロスビー」。ポップなデザインをはじめとしたユニークなキャラクター、機能的に使える車内空間が魅力。
スズキがラインナップするAセグメントのコンパクトSUV「クロスビー」。ポップなデザインをはじめとしたユニークなキャラクター、機能的に使える車内空間が魅力。拡大
「スズキ・エスクード」はBセグメントの中でも比較的コンパクトなモデル。「スイフトスポーツ」ゆずりのパワフルなエンジンと、「ロックモード」付きのタフな4WDシステムが自慢だ。
「スズキ・エスクード」はBセグメントの中でも比較的コンパクトなモデル。「スイフトスポーツ」ゆずりのパワフルなエンジンと、「ロックモード」付きのタフな4WDシステムが自慢だ。拡大
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“上のクルマ”とも“下のクルマ”とも戦うために

そんなコンパクトSUVの期待株ロッキー&ライズだが、相手は土俵に3つも車種をそろえるスズキ軍団。単騎の不利をはね返すべく、このクルマは“後出しじゃんけん”のアドバンテージをフルに生かし、徹底的に市場とライバルを研究してつくり込みがなされている……と思う。

なんでわざわざ「思う」なんて書いたかというと、別にダイハツがそう言っているわけではないから。モーターショーや商品説明会、試乗会と取材してきた記者の勝手な印象なのだ。勝手ついでに言わせてもらうと、キモは上のライバルとも下のライバルとも渡り合える、パッケージング&ポジショニングにあると見た。どうです? ダイハツさん。

例えば、ロッキー&ライズはスズキ3兄弟の次男坊クロスビーと比べると、ボディーがひとまわり大きく、車内空間も広く、SUV的デザインの立派さもあって、車格的にはちょいと上に位置している。よそのメーカーさんのうたい文句だが、「隣のクルマが小さく見えます」というやつだ。それでいて、エンジンはともに1リッター直3ターボなので、自動車税の区分は同じ。FF車なら重量税の区分も同じ。燃費はむしろ21.2~23.4km/リッター(JC08モード)と、こちらのほうがちょっとだけいい。

一方でBセグメントのエスクードと比べると、ロッキー&ライズのほうが外寸は小さいにもかかわらず、室内長はほぼ互角(ロッキー&ライズ:1955mm、エスクード:1960mm)。荷室容量もあちらの375リッターに対してこちらは369リッターと意外にその差は小さく(エスクードはラゲッジボード取り外し時の、ロッキー&ライズはラゲッジボード下段使用時の数値)、しかもこちらには、FF車で80リッター、4WD車で38リッターの床下収納が備わる。思えばエスクードのプラットフォームは、スズキ最新の「ハーテクト」ではなく一世代前のもの。対してロッキー&ライズはDNGA世代の登録車第1号だ。プラットフォームの世代というか、その時代に求められていた要件の差が、パッケージにも表れているのだろう。

言ってみれば、より小柄なライバルと比べても経済性は損なわれておらず、格上のライバルと比べても、あちらにできてこちらにできないことはない。それがロッキー&ライズのスゴいところなのだ。

2017年の東京モーターショーに出展された「ダイハツDNトレック」。「ロッキー」の元となったとされるコンセプトモデルだ。
2017年の東京モーターショーに出展された「ダイハツDNトレック」。「ロッキー」の元となったとされるコンセプトモデルだ。拡大
商品説明会の会場に展示された「ダイハツ・ロッキー」の車台。ロッキーは「タント」に続く、DNGA世代の第2弾モデルとなる。
商品説明会の会場に展示された「ダイハツ・ロッキー」の車台。ロッキーは「タント」に続く、DNGA世代の第2弾モデルとなる。拡大
2019年の東京モーターショーにて「ダイハツ・ロッキー」(と後に呼ばれるようになるクルマ)のサイドビュー。ボディーサイズは全長×全幅×全高=3995×1695×1620mm。
2019年の東京モーターショーにて「ダイハツ・ロッキー」(と後に呼ばれるようになるクルマ)のサイドビュー。ボディーサイズは全長×全幅×全高=3995×1695×1620mm。拡大
Bセグメントの「スズキ・エスクード」とほぼ同じ室内長を備えた「ダイハツ・ロッキー」。室内幅ではさすがに差がつくものの、そのパッケージの効率の高さは疑いようがない。
Bセグメントの「スズキ・エスクード」とほぼ同じ室内長を備えた「ダイハツ・ロッキー」。室内幅ではさすがに差がつくものの、そのパッケージの効率の高さは疑いようがない。拡大
FF車の荷室のフロアボードを外したところ。80リッターの床下収納スペースは魅力的だが、ここにバッテリーを積んで「ロッキー/ライズ ハイブリッド」なんていかがでしょう?
FF車の荷室のフロアボードを外したところ。80リッターの床下収納スペースは魅力的だが、ここにバッテリーを積んで「ロッキー/ライズ ハイブリッド」なんていかがでしょう?拡大

走りの装備に見るダイハツとスズキの“違い”

グレード構成も、山村の公用車にも似合いそうな「L」から、上質なファブリック×合皮シートの「プレミアム」まで4種類と、2グレードしかないクロスビーや今ではモノグレードのエスクードと比べてずっと豊富。価格も下は170万5000円から上は242万2200円と幅広く、単一車種でできるだけ多くのニーズに応えようという、ダイハツの意図が見て取れる。

もちろん、全方位的にロッキー&ライズが万能というわけではなく、戦略的な割り切りも見られる。分かりやすいのが走りに関する装備類で、例えばクロスビーでは全車標準となるパドルシフトは、こちらではどのグレードにも設定がない。

また4WD車の駆動制御システムについても、クロスビーには「スポーツ」「スノー」といった走行モードや、ぬかるみなどからの脱出を支援する「グリップコントロール」、下り坂で車速を一定に保つ「ヒルディセントコントロール」などの機能が備わるが、ロッキー&ライズにはこうした機能はナシだ。もっとも、このあたりはロッキー&ライズがおろそかにしているというより、クロスビーの充実ぶりがAセグメントの枠を超えていると言ったほうがいい。クロスビーはクロスビーで、実はスゴいクルマなのである。

それに、ロッキー&ライズの四駆システム「ダイナミックトルクコントロール4WD」そのものの性能については、ダイハツも相当に自信を持っている。エンジンやトランスミッション、パワーステアリング、姿勢制御装置、メーター、そしてボディーのコントロールユニットから情報を収集し、路面状況を早期に判断。リアの多板クラッチ式電子制御カップリングで最適な前後トルク配分を実現するというもので、ダイハツでは公式サイトに専用のムービーを掲載するほどの自慢の品だ。その出来栄えについては、ぜひ4WD車の試乗を通して紹介したい。

上質な車内空間と充実した運転支援システムが魅力の「プレミアム」は、“トヨタ版”にはない「ダイハツ・ロッキー」だけの最上級グレードだ。
上質な車内空間と充実した運転支援システムが魅力の「プレミアム」は、“トヨタ版”にはない「ダイハツ・ロッキー」だけの最上級グレードだ。拡大
AセグメントのコンパクトSUVでありながら、走行モードの切り替え機構や悪路向けのアシスト機能を備えた「スズキ・クロスビー」。メーカーのこだわりが感じられる部分だ。
AセグメントのコンパクトSUVでありながら、走行モードの切り替え機構や悪路向けのアシスト機能を備えた「スズキ・クロスビー」。メーカーのこだわりが感じられる部分だ。拡大
「ロッキー/ライズ」の4WDシステムには、「トヨタRAV4」の「G」や「X」のものと基本的に同じ、「ダイナミックトルクコントロール4WD」が採用されている。ちなみに、FFと4WDの販売比率は、7:3程度を想定しているとのこと。
「ロッキー/ライズ」の4WDシステムには、「トヨタRAV4」の「G」や「X」のものと基本的に同じ、「ダイナミックトルクコントロール4WD」が採用されている。ちなみに、FFと4WDの販売比率は、7:3程度を想定しているとのこと。拡大

コンパクトSUV万歳!

今回は話題のニューモデルをフックに、ちょいとAセグメント(……とBセグメントの小さいほう)のSUV事情をのぞいてみたのだが、つくづく思うのが、日本におけるコンパクトSUVの充実ぶりである。インポートカーを見ていただくと分かるでしょうが、「4WDの設定があるプレミアムじゃないコンパクトSUV」って、実は結構少ないのだ。車格の割に高額になってしまうので、商売にしづらいのだろう。そんな中で、これだけ豊富な車種がそろうニッポンの恵まれていることよ。

とはいえ、“軽自動車よりちょっと上”のSUV市場というのは、まだまだ日本でもニッチな存在だ。乗れば便利で面白い商品が並ぶだけに、ロッキー&ライズの登場を契機に、もっと注目されてほしいと思う。

思い出されるのは3年前、「スズキ・ソリオ」だけがぽつんといたコンパクトハイトワゴン市場に、「ダイハツ・トール」「トヨタ・タンク/ルーミー」「スバル・ジャスティ」の大軍団が乗り込んできたときのこと。当時は「トヨタひどい!」「スズキかわいそう」なんて声も聞かれたが、ダイハツ・トール シリーズが登録車でも屈指の人気モデルとなったことで、結果的にこういうジャンルがあることをメーカーもユーザーも認知するようになった。一方、ソリオはソリオで市場から駆逐されるなんてこともなく、今日でもコンスタントに売れ続けている。新規のライバルが現れたぐらいでグラつくほど、スズキ車の商品性はヤワではないのだ。

同じことがコンパクトSUV市場でも起きれば、きっとこのセグメントのクルマの選択肢は、もっと豊かになるはず。東京モーターショーでの展示も個人的には非常に楽しかったし、スズキとダイハツには、これからもどんどん日本のジドーシャかいわいを面白くしていってほしい。

ダイハツにおかれては、まずは来年のオートサロンに、どこかのカロッツェリアとコラボしたロッキーのコンセプトカーを出してみてはいかがでしょう? 車名は「フリークライマー」。なんつって。

(文=webCGほった/写真=CGアーカイブ、FCA、スズキ、ダイハツ工業、トヨタ自動車、本田技研工業、webCG/編集=堀田剛資)

輸入車における「4WDの設定があるコンパクトSUV」の一例である「ジープ・レネゲード」。「スズキ・エスクード」と同じBセグメントで、お値段387万円ナリ。
輸入車における「4WDの設定があるコンパクトSUV」の一例である「ジープ・レネゲード」。「スズキ・エスクード」と同じBセグメントで、お値段387万円ナリ。拡大
今年(2019年)販売好調な「ホンダ・ヴェゼル」(左上)と「トヨタRAV4」(右下)。小柄なヴェゼルでも全長は4.3m級と、SUVのメインストリームはまだ「ロッキー/ライズ」より“大きめ”のところにある。
今年(2019年)販売好調な「ホンダ・ヴェゼル」(左上)と「トヨタRAV4」(右下)。小柄なヴェゼルでも全長は4.3m級と、SUVのメインストリームはまだ「ロッキー/ライズ」より“大きめ”のところにある。拡大
コンパクトハイトワゴンの「スズキ・ソリオ」と「ダイハツ・トール」。
コンパクトハイトワゴンの「スズキ・ソリオ」と「ダイハツ・トール」。拡大
「ベルトーネ・フリークライマー」は、現行「ロッキー」のご先祖にあたるダイハツの小型クロカン「ラガー」をベースに、イタリアのカロッツェリア、ベルトーネが内外装をモディファイしたモデル。ベルトーネはもう存在しないので、今度はザガートあたりとコラボしてはいかがでしょう?
「ベルトーネ・フリークライマー」は、現行「ロッキー」のご先祖にあたるダイハツの小型クロカン「ラガー」をベースに、イタリアのカロッツェリア、ベルトーネが内外装をモディファイしたモデル。ベルトーネはもう存在しないので、今度はザガートあたりとコラボしてはいかがでしょう?拡大
堀田 剛資

堀田 剛資

猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。

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