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2021年にカムバック! オペルは日本で成功できるのか?

2020.02.28 デイリーコラム 小川 フミオ

最新モデルへの期待はふくらむ

私にとってオペルはいろいろな思い出をつくってくれたクルマだ。最初の思い出は1980年代なかばに、独フランクフルト・アム・マインのそばにあるリュッセルスハイムの本社で「カデット セダン」を借りて、雪のなか、ジュネーブまで走ったことだ。

当時の私は、どうせアウトバーンを走るなら、BMWかポルシェに乗りたい、と思っていたので、いまひとつ、気分的には楽しめかった。生意気でぜいたくである。でもトランクが広大で、疲労も少なく、片道約600kmの道を往復できたのだから、たいしたクルマなのだなと後で思い返した。

フツウが実はすごい。というのは、フォルクスワーゲンを評するとき使うのがしっくりくるかもしれないけれど、私はそういうわけで、オペルで経験的に知ったのだ。

2021年夏ごろ日本に導入されるという3車種「コルサ」「コンボ ライフ」「グランドランドX」も、おそらく、オペルのイメージを裏切らないような気がする。

ベースになっているのはプジョー系のモデルで、プジョー車でいえば、コルサは「208」、コンボ ライフは日本での販売が始まった「リフター」、そしてグランドランドXは「3008」とプラットフォームを共用する。

ということは、おそらく、いいクルマだろう。最近とみに足まわりのセッティングのよさで評価が高いプジョー、シトロエン、DSといったブランド。その姉妹車だけに、フランクフルトとジュネーブを立て続けに2往復ぐらいできるかもしれない、と思ったりする。

日本市場への導入が決まっているコンパクトハッチバック「コルサ」。日本では1995年以降、2代目と3代目が「ヴィータ」の名前で販売された。最新型は2019年のフランクフルトモーターショーでデビューしており、6代目にあたる。
日本市場への導入が決まっているコンパクトハッチバック「コルサ」。日本では1995年以降、2代目と3代目が「ヴィータ」の名前で販売された。最新型は2019年のフランクフルトモーターショーでデビューしており、6代目にあたる。拡大
SUV「グランドランドX」もラインナップの一翼を担う。グループPSAとの業務提携により生まれたSUVで、「プジョー3008」と共通のEMP2プラットフォームが採用されている。
SUV「グランドランドX」もラインナップの一翼を担う。グループPSAとの業務提携により生まれたSUVで、「プジョー3008」と共通のEMP2プラットフォームが採用されている。拡大
7人乗りのハイルーフワゴン「コンボ ライフ」。海外では商用バージョン「コンボ」の需要も高いという。
7人乗りのハイルーフワゴン「コンボ ライフ」。海外では商用バージョン「コンボ」の需要も高いという。拡大
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やるべきことはたくさんある

カデット セダンは実用車だったが、オペルはその後、けっこう凝ったメカニズムの「ベクトラ」(1988年)、デザインのとんがった「ティグラ」(1994年)、コンセプトがユニークなマルチパーパスの「ザフィーラ」(1999年)、それにパッケージングにひいでた「シグナム」(2003年)と、意欲作を発表した。

それらは私の好きなモデルだ。フォルクスワーゲンが直球ど真ん中のモデルを開発するのに対して、オペルは、なにかを付け足したり、あえて少しひねったりと、企画力がおもしろかった。

まじめな面もある。印象に残っているのは本社工場を見学した1980年代に、環境負荷の低い水溶性塗料を大々的に採用したと説明されたときだ。ラインではプレミアムクラスの「オメガ」が塗られていた。あのクルマもスタイリングは特徴的だったなあ。

日本“再”上陸の記者発表会の会場で、グループPSAジャパンは、オペル車の価値はバリューフォーマネーとした。民族系メーカー(フォルクスワーゲンかな?)の製品と比べて、同等かそれ以上の内容を、より低い価格で提供する。それが販売側が考えるブランドバリューだ。

この記者会見の席上で再三繰り返された「オペルはドイツのブランドであること(でアピール力を持つ)」より、日本市場では、先述したモデルのように個性で勝負しないと、マーケットで地歩を築くにはかなりの労力が必要になるのでは、と私は感じる。

ディーラーを確保するのが先決として、加えてブランドの認知度を上げるための宣伝(webCGがいいかナ)や、ディーラーへの販売奨励金など、やることがたくさんあるだろう。安いクルマは利ざやが少ないから、数を売るかアフターサービスで収益性を上げなくてはならない。そこ、不得意そうだ。

オペルオートモビルCEOおよびグループPSA執行役員のミヒャエル・ローシェラー氏。2020年2月18日に開かれた記者会見で日本市場への再上陸について説明し、「今度の復活後は日本から撤退しない」などとコメントした。
オペルオートモビルCEOおよびグループPSA執行役員のミヒャエル・ローシェラー氏。2020年2月18日に開かれた記者会見で日本市場への再上陸について説明し、「今度の復活後は日本から撤退しない」などとコメントした。拡大
オペルが過去に販売した個性派クーペ。写真は記者会見におけるスライド資料で、左から「オペルGT」「オペル・マンタ」「オペル・カリブラ」の3モデル。
オペルが過去に販売した個性派クーペ。写真は記者会見におけるスライド資料で、左から「オペルGT」「オペル・マンタ」「オペル・カリブラ」の3モデル。拡大
日本における販売店のイメージ。今後、東京や横浜をはじめとする主要都市でパートナーを募り、ディーラー網を整備するという。現在国内で4000台ほどが登録されている“古いオペル車”のアフターサービスについては、「(新ディーラーで引き継ぐなど)新たな展開が決まった場合は告知する」とのこと。
日本における販売店のイメージ。今後、東京や横浜をはじめとする主要都市でパートナーを募り、ディーラー網を整備するという。現在国内で4000台ほどが登録されている“古いオペル車”のアフターサービスについては、「(新ディーラーで引き継ぐなど)新たな展開が決まった場合は告知する」とのこと。拡大

「電動」と「個性」がキーになる?

オペルをなぜこの時期に? という疑問について、「オペルは現在グローバルな展開を考えています」と、このとき来日したオペルオートモビルCEOであり(オペルが傘下に入っている)グループPSA執行役員のミヒャエル・ローシェラー氏は説明していた。

「2019年のロシアを皮切りに、これから、中国、アフリカ、南米の市場を開拓する方針で、大きな市場を持つ日本もその一環です」ということだ。

目標は大きいほうがいい、と私たちは景気のいい時代に教わった。けれど、オペルが入ってこようとしている(はずの)300~400万円台の市場は、日本では空洞化がいわれて久しい。

となると、オペルはBEV(バッテリー駆動の電気自動車)を含めて電動車に特化したブランドとする手もあるかもしれない。オペル(とグループPSA)では20億ユーロを投資して、仏に本社を置くエネルギー会社のトタルとともに、ドイツとフランスにバッテリー工場を建設する予定。フル稼働すれば年に50万台ぶんの供給能力を有するそうだ。

グループPSAは2019年10月にFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)との経営統合に合意しており、その新会社が近未来のオペルの役割を電動車に割り振る可能性だってある。けれど、そうなるとしても、もう少し先の話である。

日本ではどんなニッチ(すきま)が残されているか。若いときに「ヴィータ」(コルサの日本名)や「アストラ」で“オペル体験”をしている、いまの40代にアピールする車種がそれに相当するだろうか。

その世代にウケているのは同じグループ内のジープなので、やっぱりトンガった個性が感じられるといいだろう。かつては同じゼネラルモーターズの傘下にあったスズキのような企画性のあるクルマをもう少し大型化してドイツのクオリティーで、という方向性はどうだろう。オペルの日本再上陸前夜に、空想が広がるのだった。

(文=小川フミオ/写真=オペルオートモビル、webCG/編集=関 顕也)

近年、ロシアや南米など取り扱い地域を拡大しつつあるオペル。日本については「世界3位にランクされる大きな自動車市場で、プレステージ性がある」と認識しているという。
近年、ロシアや南米など取り扱い地域を拡大しつつあるオペル。日本については「世界3位にランクされる大きな自動車市場で、プレステージ性がある」と認識しているという。拡大
「グランドランドX」について説明するローシェラー氏。同モデルについては、ハイブリッドバージョンも日本で販売される見込みだ。
「グランドランドX」について説明するローシェラー氏。同モデルについては、ハイブリッドバージョンも日本で販売される見込みだ。拡大
「ブリッツ(稲妻)」をモチーフにしたオペルブランドのエンブレム。最盛期には年間3万8000台以上を販売した日本で、ふたたび存在感を示せるか?
「ブリッツ(稲妻)」をモチーフにしたオペルブランドのエンブレム。最盛期には年間3万8000台以上を販売した日本で、ふたたび存在感を示せるか?拡大
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