最善の方法は全裸?

VWは早くも新ブランドデザインを反映したバッジを、8代目「ゴルフ」や電気自動車の「ID.」シリーズに採用している。

対してBMWは「従来のロゴを補完するものであり、自動車および販売店の内外装には既存のロゴを引き続き用いる」としている。

なお、新ブランドデザインと同時に発表された「コンセプトi4」の内外装には新デザインのバッジが装着されているので、厳密には「市販車および販売店の内外装」と解釈するのが正しいと思われる。

筆者の個人的好みからいえば、BMWにはその斬新な新デザインのバッジを市販車にも導入してほしい。だが、それが難しい理由も想像できる。その理由とは「透明」であることだ。

透明プラスチックを操作パネルに使用した家電製品を思い出すといい。経年劣化により、本体と透明プラスチックとの間にほこりが侵入してしまうのである。

自動車は屋外に置かれることが多く、外気をふんだんに浴びて走行するものだ。新車時はともかく、年月を経るごとにバッジの透明部分に入るほこりの量は家電の比ではないだろう。雨水や泥も侵入する。

そもそも工場の艤装(ぎそう)工程で車体にバッジを貼り付ける時点でも、ほこりの混入に通常以上の注意が必要になる。

なぜそれに気づいたかといえば、少し前、東京・渋谷の家電量販店で、スマートフォンの画面に貼るガラス保護フィルムを購入したときの経験からだ。

店頭貼り付け代行サービスの標準料金は500円。対して、筆者の「iPhone11 Pro Max」の場合は、その3倍の1500円だという。画面の面積が広いから高いというのが理由だった。

自分で貼ることにした筆者は、店員に「素人がフィルムと本体との間にほこりを混入させない最善の方法は?」と聞いてみた。すると店員はひとこと「マッパです」と教えてくれた。一瞬「フォード・マスタング マッハ1」が頭に浮かんだが、そうではなくマッパとは真っ裸、つまり全裸のことだった。「ほこり侵入の大敵である服の繊維の飛散を防げる」のだという。

「この店のサービスコーナーでは店員が全裸で貼ってるのかよ」という突っ込みが喉まで出かかったが、ぐっとこらえた。そして宿泊先に帰ってから、入浴するわけでもないのに、インストラクションどおり“マッパ”になって貼り替えを敢行したのだった。

その苦労を味わった筆者ゆえ、BMWの艤装工程で働く人に、マッパでエンブレムを貼れとは到底言えない。

そのような戯言はともかく、今回はイタリア在住の筆者の視点で経年変化に「強いバッジ」と「弱いバッジ」を観察してみた。

BMWコンセプトi4
BMWコンセプトi4拡大
「BMWコンセプトi4」のダッシュボード。
「BMWコンセプトi4」のダッシュボード。拡大
「BMWコンセプトi4」のオフィシャル写真から。
「BMWコンセプトi4」のオフィシャル写真から。拡大
ミュンヘンにあるBMWミュージアムの展示より。BMWエンブレムの変遷。
ミュンヘンにあるBMWミュージアムの展示より。BMWエンブレムの変遷。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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