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ベントレー・コンチネンタルGT V8コンバーチブル(4WD/8AT)

三位一体の味わい 2020.04.20 試乗記 山崎 元裕 日本上陸を目前に控えた「ベントレー・コンチネンタルGT V8コンバーチブル」に初試乗。最高出力550PSの4リッターV8ツインターボエンジンと最新「MSB」プラットフォームとのマッチングは? そしてW12との違いはどこにあるのか? 英国より報告する。

4リッターV8モデルが盛況な理由

2020年モデルで新たに追加された、ベントレー・コンチネンタルGTシリーズのV8モデルに英国で試乗した。もちろんこれまでのW12を搭載するモデルは、今後もコンチネンタルGTのラインナップに残ることになるが、W12の最高出力635PS、最大トルク900N・mに対しV8は同550PS、同770N・mと、2リッターの排気量差があることを考えれば見劣りはしない。むしろ燃費性能を考えればV8の魅力は大きいともいえる。

そしてもうひとつ触れておかなければならないのが、このV8エンジンの4リッターという排気量だ。ここ最近、やたらと4リッターのV8エンジンがプレミアムブランドで増えたような気がするというのは、実は正しい印象である。これは、各社が最も大きな輸出市場として位置づけている中国市場の税制によるもの。中国では輸入車に対して、その価格の25%の関税と17%の付加価値税が課され、さらに排気量に応じた税金が新たに課されるようになった。

排気量別の課税は4リッター未満では12%だが、4リッター以上になると一気に40%に跳ね上がる。したがって多くのメーカーは4リッター以上の12気筒モデルと同時に、正確には4リッターにわずかに届かない排気量の8気筒モデルをラインナップするという戦略をとっているのだ。これはベントレーに関しても、もちろん同様である。

4リッターのV8エンジンがベントレーをはじめとするプレミアムブランドに新たなカスタマーを呼び込み、そしてその世界を楽しませてくれる新たな原動力となった……という背景を思い出しながら今回試乗したV8モデルは、コンチネンタルGTのラインナップでもよりラグジュアリーな姿を印象づけるコンバーチブル。4.1秒の0-100km/h加速タイムと318km/hの最高速度を可能にするというその走りは、果たしてどれほどのものなのか。さっそく試乗を始めることにしよう。

4リッターV8エンジン搭載の「コンチネンタルGT V8コンバーチブル」は、2019年9月にクーペの「コンチネンタルGT V8」とともに日本導入がアナウンスされた。
4リッターV8エンジン搭載の「コンチネンタルGT V8コンバーチブル」は、2019年9月にクーペの「コンチネンタルGT V8」とともに日本導入がアナウンスされた。拡大
新開発の4リッターV8ツインターボエンジンは最高出力550PS、最大トルク770N・mを発生。低負荷時に燃費を向上させる4気筒休止システムを搭載している。
新開発の4リッターV8ツインターボエンジンは最高出力550PS、最大トルク770N・mを発生。低負荷時に燃費を向上させる4気筒休止システムを搭載している。拡大
V8モデルでは、フロントフェンダー左右に小さな「V8」エンブレムが付く。反対に、W12モデルには搭載エンジンを示すエンブレム類は装着されない。
V8モデルでは、フロントフェンダー左右に小さな「V8」エンブレムが付く。反対に、W12モデルには搭載エンジンを示すエンブレム類は装着されない。拡大
左右デュアルの4本出しテールフィニッシャーを採用。こちらもV8モデル専用のアイテムとなるが、エクステリア上において、W12モデルとV8モデルを簡単に識別できるポイントはさほど多くない。
左右デュアルの4本出しテールフィニッシャーを採用。こちらもV8モデル専用のアイテムとなるが、エクステリア上において、W12モデルとV8モデルを簡単に識別できるポイントはさほど多くない。拡大
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コンバーチブルはより優雅

コンチネンタルGT V8コンバーチブルの一番の魅力は、やはりそのエクステリアとインテリアのフィニッシュにある。とりわけファブリックルーフを開け放ち、それまでキャビンの部分で感じていた重量感がなくなったときの美しさと仕上げは格別だ。ちなみにこのソフトトップは、コックピット内のスイッチ操作のみで、50km/h以下ならば19秒でオープン&クローズがそれぞれ可能である。

今回の試乗の舞台は、ベントレーの本社があるイングランドのクルーを中心としたルートだったのだが、一日の中に四季があるとさえ例えられる天気において、このファブリックルーフの利便性にはたびたび満足させられることになった。ただし車両はこうした試乗や撮影などに用いられるプリプロダクションモデルだったのだろうか、クローズ時の遮音性などに不満を感じる場面も何回かあった。ちなみにベントレーでは、ツイード生地を用いたオプションを含む全7タイプのファブリックルーフを用意している。

クーペに対して、このコンバーチブルがさらに優雅なモデルに見えるのは、前で触れたように、前後に美しく流れるウエストラインが、軽さというものを巧みに演出してくれるからだ。それによってリアフェンダーの力強さはさらに際立ち、ただ単に美しいだけのクルマではないことを主張。必要とあれば、一瞬でスーパースポーツ並みのパフォーマンスが引き出せる潜在能力を秘めたモデルであることを視覚的に訴えてくる。

ファブリックルーフを閉めた時のスタイルも、クーペボディーを巧みに再現していて違和感がない。ボディーサイドのボトムを走るプレスライン、20インチから22インチまで合計9タイプが用意されるホイールも、フットワークの力強さを演出する、実に効果的でシンボリックなデザインとなっている。ちなみにベントレーがこのコンチネンタルGT V8コンバーチブルに用意するボディーカラーはスタンダードで合計66色もある。

ファブリックルーフは電動式。開閉それぞれの動作が約19秒で完了する。走行中でも50km/hまでなら開閉が可能だ。
ファブリックルーフは電動式。開閉それぞれの動作が約19秒で完了する。走行中でも50km/hまでなら開閉が可能だ。拡大
日本では2020年夏ごろにデリバリー開始を予定しているが、試乗車は2019年に生産されたモデルで、ベントレー100周年記念の「センテナリーゴールド」エンブレムを装着していた。
日本では2020年夏ごろにデリバリー開始を予定しているが、試乗車は2019年に生産されたモデルで、ベントレー100周年記念の「センテナリーゴールド」エンブレムを装着していた。拡大
試乗車にはオプションの「ブラックラインスペシフィケーション」21インチホイールが装着されていた(標準サイズは20インチ)。こちらにも「センテナリーゴールド」エンブレムが組み込まれている。
試乗車にはオプションの「ブラックラインスペシフィケーション」21インチホイールが装着されていた(標準サイズは20インチ)。こちらにも「センテナリーゴールド」エンブレムが組み込まれている。拡大
テールランプは楕円(だえん)をモチーフにデザインされている。試乗車では「コンチネンタル・ブラックラインスペシフィケーション」が選択されており、ベゼル部分(標準はメッキ仕様)がハイグロスブラック仕上げになっていた。
テールランプは楕円(だえん)をモチーフにデザインされている。試乗車では「コンチネンタル・ブラックラインスペシフィケーション」が選択されており、ベゼル部分(標準はメッキ仕様)がハイグロスブラック仕上げになっていた。拡大
 
「コンチネンタルGT V8コンバーチブル」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4850×2187(ミラー含む)×1399mm、ホイールベース=2849mm。(欧州仕様車の参考値)
「コンチネンタルGT V8コンバーチブル」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4850×2187(ミラー含む)×1399mm、ホイールベース=2849mm。(欧州仕様車の参考値)拡大
インストゥルメントパネルのデザインはW12モデルと基本的に同一。ダッシュボード中央に備わる回転式のセンターディスプレイは、機械式の3連メーター(写真)とナビなどが表示される液晶画面、ウッドパネルの3パターンに切り替えが可能だ。
インストゥルメントパネルのデザインはW12モデルと基本的に同一。ダッシュボード中央に備わる回転式のセンターディスプレイは、機械式の3連メーター(写真)とナビなどが表示される液晶画面、ウッドパネルの3パターンに切り替えが可能だ。拡大
試乗車は「フロントシート・コンフォートスペシフィケーション」と呼ばれるオプションを装備。ヒーター付き電動シートやヘッドレスト下部から温風が出るネックウオーマー、ベンチレーション&マッサージ機能などがセットになっている。
試乗車は「フロントシート・コンフォートスペシフィケーション」と呼ばれるオプションを装備。ヒーター付き電動シートやヘッドレスト下部から温風が出るネックウオーマー、ベンチレーション&マッサージ機能などがセットになっている。拡大
センターコンソールに配置されたアナログ時計。文字盤にはベントレーのエンブレムと、同社の創立が1919年であることを示す文字が入れられている。
センターコンソールに配置されたアナログ時計。文字盤にはベントレーのエンブレムと、同社の創立が1919年であることを示す文字が入れられている。拡大
ローレット加工が施されたドライブモード切り替え用ダイヤルの中に、エンジンの始動スイッチが配置されている。
ローレット加工が施されたドライブモード切り替え用ダイヤルの中に、エンジンの始動スイッチが配置されている。拡大

キャビンに巻き込む風は最小レベル

エクステリアと同様に、いやそれ以上に魅力的なフィニッシュを見せるのはインテリアだ。基本的なデザインはクーペのコンチネンタルGT V8とも、あるいはW12モデルとも大きく変わるところはないが、デザインや質感、選ばれた素材などにはベントレーならではの世界観が映し出されている。

センターコンソールには例によってローテーションディスプレイが備えられ、クラシカルな3連アナログメーターを選択するか、ナビゲーションなどの現代的な画面を選択するかはドライバーの自由。メーターパネルの中央にも簡易型ながらナビゲーションの表示ができるから、個人的にはクラシカルなディスプレイでも機能的にはさほど問題はないように感じた。

まずはファブリックルーフを閉じて試乗を始める。今回のルートは一部、日本の高速道路に相当するM号線を含むものの、ほとんどは一級国道にあたるA号線。しかも走り進めると、ルート上でこのAに続く数字は2桁から3桁、4桁へと徐々に大きくなっていく。つまりどんどん道幅が狭くなる田舎のルートを、ミラー含む全幅が2187mmというサイズの車両でドライブしなければならないわけだ。けれどもそのプレッシャーをはねのけてくれたのは、正確なステアリングとそれが生み出すサスペンションの動きで、あたかもボディーサイズが小さくなったかのように自然で狙ったとおりの動きが、このコンチネンタルGT V8コンバーチブルでは体験することができるのだ。

W12ツインターボとV8ツインターボという搭載エンジンの違いも、このようなシチュエーションでは感じるはずもない。それは後にドライブすることになったM(モーターウェイ)でも同様であった。むしろV8モデルのノーズの軽さゆえのコーナリング時におけるターンインのナチュラルな感覚や乗り心地、あるいは前述した燃料コストなどは、V8のアドバンテージといえるだろう。W12モデルはカスタマーに究極のラグジュアリーを提供してくれる。いっぽうV8は、ラグジュアリーとパフォーマンス、そしてエコノミーが三位一体となったバランスが見事に実現されたモデルだと感じる。

オープンエアでドライブしたコンチネンタルGT V8コンバーチブルは、とても快適なモデルだった。サイドウィンドウを上げてしまえば、キャビンに巻き込む風は最小レベルに抑えられるし、さらにシートヒーターやネックウオーマー、アームウオーマーなどによって、全身は常に温かく保たれる。それらの操作がオーソドックスなスイッチで、直感的に行えるのもドライバーとしてはうれしい。

スポーツ性ならクーペに軍配

それではこのコンチネンタルGT V8コンバーチブルのベースとなったクーペスタイルの「GT V8」と比較した場合はどうか。これはカスタマーがコンチネンタルというモデルに何を求めるかによって、その評価は異なってくるだろう。コンチネンタル=大陸というネーミングは、そもそも1952年に誕生したベントレーの世界最高級であり、また最高性能のグランドツアラーを祖とする由緒正しきもの。大陸をストレスなく高速で、そして美しく走り切ることこそが、コンチネンタルに課された使命であったことは当然の話である。

それから70年近くの時を経て現代のコンチネンタルGTは、やはり高性能で美しいモデルとして存在している。GT V8とGT V8コンバーチブルの両車がそのセールスのコアとなるモデルだが、やはりスポーツ性を重視するのならばチョイスすべきはクーペのGT V8ということになるだろう。

ボディー剛性はクーペ並み、もしくはクーペと同等とは報告できるものの、やはり路面のキャップを越えた瞬間の振動やそこからの収まりといった点では、完全にクーペに等しいとはいえない。今回はGT V8と直接乗り比べることはできなかったのだが、W12のクーペとコンバーチブルの比較でもそうであるように、明らかにコンバーチブルはオープン時の剛性にわずかだが不満が残るのだ。

4ドアサルーンの「フライングスパー」を含め、これから続々と新世代モデルが日本の道を走り始めるベントレー。そろそろSUV「ベンテイガ」の次期モデルのうわさも聞こえ始めており、プレミアムブランドの中で2020年もベントレーは注目される存在であり続けるはずだ。

(文=山崎元裕/写真=ベントレー モーターズ/編集=櫻井健一)

複雑でシャープなカットによってダイヤモンドのような輝きを放つという「LEDマトリクスヘッドライト」を装備。
複雑でシャープなカットによってダイヤモンドのような輝きを放つという「LEDマトリクスヘッドライト」を装備。拡大
英国の一級国道で「コンチネンタルGT V8コンバーチブル」のステアリングを握る筆者。試乗日は春先の肌寒い日だったが、シートヒーターやネックウオーマーのおかげで快適だった。
英国の一級国道で「コンチネンタルGT V8コンバーチブル」のステアリングを握る筆者。試乗日は春先の肌寒い日だったが、シートヒーターやネックウオーマーのおかげで快適だった。拡大
「コンチネンタルGT V8コンバーチブル」のサイドシルプレート。「Hand crafted by BENTLEY MOTORS LTD」のに続き、本社工場の所在地を示すCREWE,ENGLANDの文字が見える。
「コンチネンタルGT V8コンバーチブル」のサイドシルプレート。「Hand crafted by BENTLEY MOTORS LTD」のに続き、本社工場の所在地を示すCREWE,ENGLANDの文字が見える。拡大
ファブリックルーフを閉じた様子。トップはブラック(写真)やツイード生地素材のものを含む、全7タイプが用意されている。
ファブリックルーフを閉じた様子。トップはブラック(写真)やツイード生地素材のものを含む、全7タイプが用意されている。拡大

テスト車のデータ

ベントレー・コンチネンタルGT V8コンバーチブル

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4850×2187(ミラー含む)×1399mm
ホイールベース:2849mm
車重:2335kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:550PS(404kW)/6000rpm
最大トルク:700N・m(71.4kgf・m)/2000-4000rpm
タイヤ:(前)265/40R21 105W M+S/(後)305/35R21 109W M+S(ピレリ・ソットゼロ3)
燃費:12.1リッター/100km(約8.2km/リッター、WLTPモード)
価格:2736万8000円/テスト車=--円
オプション装備:--
※価格は日本仕様のもの。数値はすべて欧州仕様車の参考値。

テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

ベントレー・コンチネンタルGT V8コンバーチブル
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