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ベントレー・コンチネンタルGT V8 Sコンバーチブル(4WD/8AT)

最もエレガントなベントレー 2017.06.01 試乗記 高平 高輝 高級車市場において、かつて考えられなかったほど多くの支持を集める、現代のベントレー。最高出力528psのオープンモデル「コンチネンタルGT V8 Sコンバーチブル」に試乗し、人気の理由や今後の課題について考えた。

ベントレーといえば……

都内ではごく普通にコンチネンタルGTを見かけるが、それを当たり前のように感じているのだから時代は変わったものである。少なくとも15年前までは考えられなかった風景だ。すれ違った後に思うのは、もしコンチネンタルGTが生まれなかったら、自動車史の中でもまれにみるベントレーの復活はなかったはず、ということだ。マーケットを創り出すというのはまさしくこのようなことを言う。あるいは、すでに存在していたけれど、ほとんどの自動車メーカーが気づかなかった顧客の漠然とした欲求を見事に形にしたのである。自動車に限らず、そうやって顧客の心をわしづかみにした製品だけが新たな世界を切り開くのである。それまでのベントレーは歴史も品格も、ついでに固定客も持ってはいたが、あくまでごく限られた人々のためだけの特殊な趣味のクルマであり、ビジネスユースにも耐える実用性と信頼性を万全に備えているとは言えなかった。それゆえ年間1000台足らずを文字通りのハンドメイドでほそぼそと作り続けていたのである。

ところが20世紀末にフォルクスワーゲン傘下入りすると、「メルセデス・ベンツSクラス」と「BMW 7シリーズ」、それにジャガーぐらいと見なされていた高級車セグメントのさらに上に、特別なハレの日だけではなく、日常的にも使えるスーパーラグジュアリーカーのマーケットが存在すると看破し、世の中の疑いの目を物ともせずに果敢に送り出したのが超弩級(どきゅう)クーペであるコンチネンタルGTとサルーンの「フライングスパー」である。結果、ベントレーは1万台以上の量産メーカーへと変身を遂げ、今やベントレーといえばコンチネンタルGTシリーズである。もちろん量産とはいえ昨年の生産台数はおよそ1万1000台にすぎないが、それまでとはまさしくけた違いである。

2013年のフランクフルトモーターショーでデビューした「コンチネンタルGT V8 Sコンバーチブル」。日本では2014年に発売された。以後これまでに、エクステリアの小変更が施されている。
2013年のフランクフルトモーターショーでデビューした「コンチネンタルGT V8 Sコンバーチブル」。日本では2014年に発売された。以後これまでに、エクステリアの小変更が施されている。拡大
鮮やかなツートンカラーの室内。テスト車のフロントシートには、オプションのマッサージ機能が備わっていた。
鮮やかなツートンカラーの室内。テスト車のフロントシートには、オプションのマッサージ機能が備わっていた。拡大
コックピットの様子。シートと同様に塗り分けられた、3本スポークのスポーツステアリングホイールが目を引く。
コックピットの様子。シートと同様に塗り分けられた、3本スポークのスポーツステアリングホイールが目を引く。拡大
テスト車のボディーカラーは、バイオレット。75万9400円のオプショナルカラーとして用意される。
テスト車のボディーカラーは、バイオレット。75万9400円のオプショナルカラーとして用意される。拡大
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ベントレーにも悩みはある

新興国マーケットの拡大を見通して、未開の沃野(よくや)を開拓したコンチネンタルGTもデビューからほぼ15年が経過(2代目にモデルチェンジしてからでも6年)すると、さすがに新鮮味も薄れてくるし、何よりも競合相手がベントレーの成功を目にしていつまでも手をこまねいているはずがない。最近はやりの言葉で言えば“ブルーオーシャン”が豊かな海であればあるほど、たちまち競争相手も殺到してくるのが世の習いである。

ベーシックモデルでも2000万円を超えるモデルが日本ではこれほど走っているのだからご同慶と思いきや、ベントレー モーターズ ジャパンの目下の気がかりはオーナーの平均所有年数が思ったよりも短いことだという。平均でおよそ3年、コンバーチブルモデルはその半分ぐらいだという。気になったクルマに次々に買い替えるのは、何というかちょっと昔のバブル風だが、要するにベントレーに長く乗り続ける固定ユーザーが少ないということ。ブランドロイヤリティーを上げたいと考えているらしいが、いまさら若いカスタマーに、かつてルマン24時間レースで5度優勝したという過去の栄光を喧伝(けんでん)してもまったく響かないだろう。何しろそれは1920年代のこと、第2次大戦前の大昔の話である。正確には2003年にもう一度優勝(計6勝)しているが、その際はアウディをベースとしたプロトタイプマシンだったので、ベントレー自身もかつてのベントレーボーイズ時代の勝利と同列に扱うのは気が引けるだろう。かといって凝ったウッドパネルとレザー仕立てのクラシックな内装で売るのも限界があるし、強大なパワーも今やベントレーだけのものではない。SUVセグメントへの進出やGT3カテゴリーのレースへの挑戦などは、まさしくその辺りを考慮しての試みに違いない。

最新デザインのロワグリルが与えられたフロントまわり。テスト車には、オプションの「ダークティントフロントランプ」が装着されている。
最新デザインのロワグリルが与えられたフロントまわり。テスト車には、オプションの「ダークティントフロントランプ」が装着されている。拡大
ステアリングホイールのスポーク部には、クルーズコントロール機能やオーディオの操作スイッチが備わる。
ステアリングホイールのスポーク部には、クルーズコントロール機能やオーディオの操作スイッチが備わる。拡大
各席のヘッドレストには、ベントレーのロゴマークが刺しゅうされている。背もたれや座面のキルティング加工は、ドレスアップのセットオプション「Mullinerドライビングスペック」に含まれる。
各席のヘッドレストには、ベントレーのロゴマークが刺しゅうされている。背もたれや座面のキルティング加工は、ドレスアップのセットオプション「Mullinerドライビングスペック」に含まれる。拡大
トランクルームの容量は260リッター。長尺物を積み込むためのトランクスルー機構が備わる。
トランクルームの容量は260リッター。長尺物を積み込むためのトランクスルー機構が備わる。拡大

クールでスマートなV8ユニット

コンチネンタルGTコンバーチブルのV8 Sに搭載される4リッターV8エンジンは「アウディS8」などにも搭載されるEA824型と同じもの。2基のターボチャージャーは両バンク内に詰め込まれ、軽負荷巡航時には半分のシリンダーを休止させる気筒休止機構も備えた最新仕様である。最高出力および最大トルクは、528ps/6000rpmと680Nm/1700rpmと、Sが付かないV8モデル(507ps、660Nm)より若干パワフルで、いっぽう590psと720Nmを生み出すW12ツインターボ搭載モデルよりはおとなしい、という具合にシリーズ内の序列を律義に守っている。とはいえもちろんこのぐらいのレベルになれば、パワーが足りないとかトルクが細いとかの話ではない。エンジンのスペックによる多少の燃費や加速性能の違いなどは本来重要な論点ではないけれど、常に改良改善を加えているという姿勢の表明が大切なのである。

もともとクールで緻密で潔癖症なアウディ用の最新V8であるからには、とにかく洗練されており、隙のない優等生的ユニットだ。野蛮なほどのたくましさがDNAに刻まれているはずのベントレーには本来そぐわないのかもしれないが、現実的にはこのV8ツインターボが日常使用には最も扱いやすくエレガントなエンジンである。

最高出力528psを発生する4リッターV8エンジン。燃費向上に貢献する気筒休止システムが備わる。
最高出力528psを発生する4リッターV8エンジン。燃費向上に貢献する気筒休止システムが備わる。拡大
足まわりは前後とも、車高調節機能付きのエアサスペンションが採用されている。
足まわりは前後とも、車高調節機能付きのエアサスペンションが採用されている。拡大
「8」を横にした意匠のマフラーエンド。V8エンジン搭載車であることのアピールを兼ねたディテールである。
「8」を横にした意匠のマフラーエンド。V8エンジン搭載車であることのアピールを兼ねたディテールである。拡大

2.5tでも走りは軽やか

「軽快」という言葉が車重2.5tを超える豪勢なコンバーチブルにふさわしいかどうかは別にして、事実、高速道路でも峠道でもまったく気負うことなく軽やかに走ることができる。W12搭載のクーペ「GTスピード」に比べて200kgも重い2560kgもの車重にもかかわらず、ずっと軽快に感じるのは、鼻先が軽いだけではなくV8エンジンの回転フィーリングが極めてスムーズできめ細かいせいでもある。

どうしても巨大なマスを意識せざるを得ないGTスピード クーペに比べ、コーナーへの進入でもスルリと狙ったポイントに自信をもって寄せられる。V8 Sは2014年に追加されたモデルで、足まわりもスタンダードよりかなり引き締められ、車高も10mm低くなっているはずだが、久しぶりに乗ってみるとまるで硬派な雰囲気は感じられず、乗り心地はとにかくマイルドで快適で落ち着いているが柔な印象もまるでない。分厚いソフトトップもロードノイズをきっちり遮断してくれる。欲を言えば、センターコンソールに並んだ小さなスイッチ類はいかにもグループ内の流用品的であり、こういった細部にもレザートリムと同じぐらいの配慮が欲しい気がする。

目いっぱい踏めば最高速308km/h、0-100km/h加速4.7秒というパフォーマンスを持ちながら、普段は穏やかに静かに走ることもできるV8 Sコンバーチブルは、いかにもベントレーらしい控えめなエレガンスを備えていると思う。サラリと乗りこなすのは難しそうだが、だからこそ本当の大人に似合うはずである。

(文=高平高輝/写真=荒川正幸/編集=関 顕也)

ワインディングロードを駆け抜ける。駆動方式は、ほかの「コンチネンタルGT」と同様に、4WDのみとなる。
ワインディングロードを駆け抜ける。駆動方式は、ほかの「コンチネンタルGT」と同様に、4WDのみとなる。拡大
メーターパネルは、アナログ表示の4眼式。中央の液晶モニターで、燃費をはじめとする車両情報が確認できる。
メーターパネルは、アナログ表示の4眼式。中央の液晶モニターで、燃費をはじめとする車両情報が確認できる。拡大
トランスミッションは8段AT。上部にローレット加工が施された「スポーツギアレバー」(写真右側)は、セットオプション「Mullinerドライビングスペック」の一部として用意される。
トランスミッションは8段AT。上部にローレット加工が施された「スポーツギアレバー」(写真右側)は、セットオプション「Mullinerドライビングスペック」の一部として用意される。拡大
「コンチネンタルGT」シリーズの中では後発となるV8モデルだが、いまではW12モデルよりも需要の多い人気車種になっている。
「コンチネンタルGT」シリーズの中では後発となるV8モデルだが、いまではW12モデルよりも需要の多い人気車種になっている。拡大

テスト車のデータ

ベントレー・コンチネンタルGT V8 Sコンバーチブル

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4820×1945×1400mm
ホイールベース:2745mm
車重:2380kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:528ps(389kW)/6000rpm
最大トルク:680Nm(69.3kgm)/1700rpm
タイヤ:(前)275/35ZR21 103Y/(後)275/35ZR21 103Y(ピレリPゼロ)
燃費:10.9リッター/100km(約9.2km/リッター。EUドライブサイクル 複合モード)
価格:2530万円/テスト車=2805万9500円
オプション装備:オプショナルペイント<バイオレット>(75万9400円)/オプショナルルーフカラー<ダークグレーメタリック>(29万3600円)/ダークティント フロント&リアランプ(23万9800円)/ツートンカラーフロントステアリング<3本スポーク>(6万0300円)/ベンチレーテッドフロントシート<マッサージ機能付き>(14万1900円)/リアビューカメラ(16万7900円)/Mullinerドライビングスペック<21インチホイール+ドリルドアロイスポーツフットペダル+キルティング仕上げ[シート、ドアパネル、リアクオーターパネル]+スポーツギアレバー>(109万6600円)

テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2290km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:405.0km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.6km/リッター(車載燃費計計測値)

ベントレー・コンチネンタルGT V8 Sコンバーチブル
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センターコンソールの上部には、ブライトリングのクロックが装着される。
センターコンソールの上部には、ブライトリングのクロックが装着される。拡大
「コンチネンタルGT V8 Sコンバーチブル」のホイールサイズは、標準で20インチ。テスト車には、オプションの21インチホイール(写真)が装着されていた。
「コンチネンタルGT V8 Sコンバーチブル」のホイールサイズは、標準で20インチ。テスト車には、オプションの21インチホイール(写真)が装着されていた。拡大
 
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