堂々と見せるように

ところがどうだ。近年、リブを堂々と使用したモデルが増えてきた。

それには、3つの背景が考えられる。

第1はSUVやクロスオーバーの流行だ。ルーフ面積が大きなこのタイプは、強度を確保するためにはリブを刻むのが手っ取り早い。太いルーフラック(ルーフレール)が普及したおかげで、相対的にリブが目立たなくなったこともある。

第2はそのSUVの流行による波及効果だ。人気車種が採用しているならファミリーカーに採用してもおかしくないだろう、というわけである。2015年の2代目「フィアット・ティーポ」が好例である。

第3は、リモワのスーツケースの人気と関わりがあると筆者は考える。往年のユンカース機に範をとったサーフェスデザインは、リブを堂々と見せることのクールさにつながった。

繰り返しになるが、集合住宅の3階部分から眺める自動車からは、いやがうえにもリブを見せつけられる。

それまで隠すのが常識だったものが、白日の下にさらされる。娘の「見せブラ」に眉をひそめる母親の心境を想像した。

自動車を上から眺めることに関連していえば、イタリアに住み始めて以来、上層階の賃貸住宅からクルマを観察し続けてきた筆者からすると、日本ブランドの自動車は、概して上から見たカタチに「締まり」がない。唯一評価できるのは、フランス・ニースのデザインスタジオが手がけた初代「トヨタ・ヤリス(日本では「ヴィッツ」)」くらいである。

対して、ヨーロッパ系ブランドのデザインは、上部から見てもマス(塊)感を伴ったものが少なくない。

これは、大都市の旧市街で集合住宅、もしくはオフィスから眼下の道を見下ろすチャンスが多かった欧州のデザイナーと、日本の低層家屋からの視点で自動車を見ることに慣れている日本のデザイナーとの違いであると考える。

ただし、リブ部分のデザインのみに焦点を当てれば、欧州ブランドでも、注意を払っているクルマと、そうでないクルマの双方を識別することができる。

日本では歩行中でも運転中でも、またショールームでもなかなか眺められない角度だが、ヨーロッパでは建物の中からクルマのルーフを見る機会があるため、リブのプレス形状は、そのクルマの印象に少なからず作用する。

2015年にイタリアで発売された「フィアット・ティーポ セダン」。フロントフードから連続するイメージのリブがルーフに走っている。
2015年にイタリアで発売された「フィアット・ティーポ セダン」。フロントフードから連続するイメージのリブがルーフに走っている。拡大
リモワのスーツケースも、リブの市民権獲得に貢献したに違いない。
リモワのスーツケースも、リブの市民権獲得に貢献したに違いない。拡大
シエナにて。「スズキ・ワゴンRプラス」の姉妹車である「オペル・アジラ(アギーラ)」(写真左)と、2代目「フィアット・パンダ」(同右)。
シエナにて。「スズキ・ワゴンRプラス」の姉妹車である「オペル・アジラ(アギーラ)」(写真左)と、2代目「フィアット・パンダ」(同右)。拡大
3代目ジープ・チェロキー
3代目ジープ・チェロキー拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

あなたにおすすめの記事
新着記事