日本導入は2020年10月! 新型「ルノー・ルーテシア」はどんなクルマ?
2020.07.20 デイリーコラム欧州No.1のBセグメントコンパクト
ルノー・ジャポンは通算5代目となる新型「ルーテシア」の日本導入予定について、2020年10月ごろになると、あらためて発表した。
2020年7月というこの時期に、ルノー・ジャポンがあえて10月導入を予告した最大の理由は、昨年秋の東京モーターショーにおける大極 司ルノー・ジャポン社長の発言だろう。新型ルーテシア日本初公開の場となった同ショーで、大極社長はその国内発売予定を「2020年前半には……」と語っていた。欧州では2019年夏から販売されている新型ルーテシアの日本発売が当時の見込みから遅れた最大の理由は、新型コロナウイルスの影響と見て間違いないが、今回の発表はその社長発言の訂正の意味もあるわけだ。
今回ルノー・ジャポンが出したプレスリリースには「ヨーロッパ販売台数No.1のルノー・ルーテシア」と誇らしげに書かれている。4代目だった先代ルーテシア(現地名クリオ)は欧州で大成功した。欧州販売ランキングにおいて、乗用車全体で「フォルクスワーゲン・ゴルフ」に次ぐ2位、Bセグメントで1位という順位を、2018年のモデル末期までキープし続けた。さらに、新旧の“切り替えイヤー”となった昨2019年の欧州市場でも、全体2位、Bセグ1位という定位置を守ったことが、ルノー・ジャポンがルーテシアをヨーロッパ販売台数No.1と形容する直接的な根拠である。
全面刷新された“中身”に高まる期待
新型ルーテシアの基本プロポーションは先代とよく似る。それを包み込むエクステリアも、Cシェイプモチーフのフロントランプやグリルデザインなどにルノーの最新共用意匠が取り入れられた以外は、私たちの見慣れたルーテシアそのものだ。ホイールベースは新旧ほぼ同じで、外寸も新型がわずかに長く、幅広く、低くなっているくらいで、車体ディメンションも先代と大きくは変わらない。このルーテシアの車体サイズ感は今や「フォルクスワーゲン・ポロ」や新型「プジョー208」も追従しており、欧州Bセグの基準となっている。つまり、新型ルーテシアは大成功した先代の正常進化版ということだ。
このように、見た目に新味はあまりない新型ルーテシアだが、中身はほぼすべて新しい。基本骨格となる「CMF-B」は、今後のルノー・日産・三菱が出すコンパクトカーに共通で使われる予定の新開発プラットフォームモジュールで、ルノー主導で設計開発されたという。
さすが欧州ベストセラーの一角だけに、現地でのパワートレインの選択肢も多種多様。デビュー時に用意されたものだけでも、ガソリンが65PS/75PSの1リッター3気筒自然吸気(変速機は5段MTのみ)、100PSの1リッター3気筒ターボ(5段MTとCVT)、そして130PSを発生する新開発の1.3リッターターボ(7段DCTのみ)、ディーゼルが85PS/115PSの1.5リッターターボ(6段MTのみ)……と、4エンジン7バリエーションにおよんでいた。そして、最近ではさらに、1.6リッターガソリンのハイブリッドも追加されている。
充実したADASはまさに隔世の感
新型ルーテシアで先代から大きく変わったのは、インテリアデザインと先進安全運転支援システム(ADAS)の充実だ。
インテリアデザインはタブレット風の大型ディスプレイ(これがそのままに日本仕様にも使われるかは不明)と、(ルノーとしては)立派なセンターコンソールがとても新鮮である。しかも、それ以外の仕立てでも随所にメッキが丹念にあしらわれるなど、質感が大きく向上しているのは写真だけでも分かる。
ADASについても、本国資料によるとアダプティブクルーズコントロール(ACC)に車線逸脱警告/車線維持アシスト、自動緊急ブレーキ(夜間歩行者対応)、ブラインドスポットモニター、道路標識認識機能、オートマチックハイビーム……と、現時点で思いつくものはほぼすべてそろう。ACCについても全車速対応+渋滞追従機能付きのフルスペックで、ADAS関連装備が見事なまでに皆無(!)だった先代からは別物の充実ぶりである。
さらに、欧州では「360°カメラ」も競合にはない新型ルーテシアの大きなセリングポイントとしている。ご想像のとおり、これは日産でいう「アラウンドビューモニター」そのものと考えていいが、ルノーの広報資料でわざわざ「アライアンスでもすでによく知られている……」と紹介しているところにも、なんとなく時代の変化を感じてしまう。
この種の装備が日本仕様でもすべて設定されるかは不明だが、ルノー・ジャポンによる今回の予告プレスリリースにも、「快適性を兼ね備え、360°カメラを始めとする先進の運転支援システム(ADAS)を装備した、新型ルーテシア」と表記されている。となると、大半の機能はそのまま日本仕様にも受け継がれる……と期待したいところだ。
「ルノースポール」の設定はないものの……
新型ルーテシアでは、これまでのようにエンジンもシャシーも特別専用仕立ての「ルノースポール(R.S.)」の開発予定がないことは、すでに公言されている。かわりに、内外装デザインなどをR.S.が担当した「R.S.ライン」が最初から用意されている。
R.S.ラインは欧州では複数のエンジンで選べるので、従来でいう「GTライン」に近い存在と考えていい。もっとも、新しいR.S.ラインでは、サーキットレースやラリー、ラリークロスといったワンメイク競技用コンバージョンキット(しかも、キットを入れ替えれば、複数カテゴリーに1台で参加可能)も企画されているので、これまでのGTラインよりはクルマの内容もより本格的ではある。
というわけで、あと数カ月での日本上陸が予告された新型ルーテシア。これまでの例で考えると、まずは1.3リッターターボでスタートしつつ、それほど間を置かずに1リッターターボを追加……というスケジュールになると考えられる。そして、昨年の東京モーターショーにも持ち込まれたR.S.ラインが、当初の「推し」のグレードになる可能性が高い。
(文=佐野弘宗/写真=ルノー/編集=堀田剛資)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
-
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える 2025.10.20 “ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る!
-
スバルのBEV戦略を大解剖! 4台の次世代モデルの全容と日本導入予定を解説する 2025.10.17 改良型「ソルテラ」に新型車「トレイルシーカー」と、ジャパンモビリティショーに2台の電気自動車(BEV)を出展すると発表したスバル。しかし、彼らの次世代BEVはこれだけではない。4台を数える将来のラインナップと、日本導入予定モデルの概要を解説する。
-
ミシュランもオールシーズンタイヤに本腰 全天候型タイヤは次代のスタンダードになるか? 2025.10.16 季節や天候を問わず、多くの道を走れるオールシーズンタイヤ。かつての「雪道も走れる」から、いまや快適性や低燃費性能がセリングポイントになるほどに進化を遂げている。注目のニューフェイスとオールシーズンタイヤの最新トレンドをリポートする。
-
マイルドハイブリッドとストロングハイブリッドはどこが違うのか? 2025.10.15 ハイブリッド車の多様化が進んでいる。システムは大きく「ストロングハイブリッド」と「マイルドハイブリッド」に分けられるわけだが、具体的にどんな違いがあり、機能的にはどんな差があるのだろうか。線引きできるポイントを考える。
-
ただいま鋭意開発中!? 次期「ダイハツ・コペン」を予想する 2025.10.13 ダイハツが軽スポーツカー「コペン」の生産終了を宣言。しかしその一方で、新たなコペンの開発にも取り組んでいるという。実現した際には、どんなクルマになるだろうか? 同モデルに詳しい工藤貴宏は、こう考える。
-
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
NEW
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。 -
NEW
トヨタ車はすべて“この顔”に!? 新定番「ハンマーヘッドデザイン」を考える
2025.10.20デイリーコラム“ハンマーヘッド”と呼ばれる特徴的なフロントデザインのトヨタ車が増えている。どうしてこのカタチが選ばれたのか? いずれはトヨタの全車種がこの顔になってしまうのか? 衝撃を受けた識者が、新たな定番デザインについて語る! -
NEW
BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ(FR/8AT)【試乗記】
2025.10.20試乗記「BMW 525LiエクスクルーシブMスポーツ」と聞いて「ほほう」と思われた方はかなりのカーマニアに違いない。その正体は「5シリーズ セダン」のロングホイールベースモデル。ニッチなこと極まりない商品なのだ。期待と不安の両方を胸にドライブした。