BMW X3 M40d(4WD/8AT)/BMWアルピナXD3(4WD/8AT)
じっくり待ちたい一台 2020.08.07 試乗記 「BMW X3 M40d」に続いて試乗したのは、アルピナの高性能SUV「XD3」。その走りは、スポーティーさを前面に押し出すX3 M40dとは一味違う、アルピナらしい上質感にあふれたものだった。アルピナでもSUVの時代
玄人好みの端正で控えめな高性能セダンで知られるアルピナだが、最近はSUVにも力を入れており、つい先日には「BMW X7」をベースにした新型車「XB7」を発表している。アルピナ初のSUVモデルは先代F25型「X3」をベースにした「XD3ビターボ」というが、それは2013年の発売以来、世界中で1000台以上が販売されたヒット作になったという。その程度でヒット作? と首をかしげるかもしれないが、多少の上下はあるもののアルピナの年間生産台数は現在も1600台程度だ。ニューモデルを投入する場合には既存モデルの生産を抑えなければならないアルピナにすれば、これはかなりの数なのである。ちなみにこだわりエンスーが多い日本市場は、そのおよそ2割が上陸するお得意さまである。
読者の皆さんのほとんどにとっては釈迦(しゃか)に説法であることを承知のうえで、念のためもう一度ざっくりと背景を復習しておこう。
2015年に創立50周年を祝ったアルピナ(正式社名は創業者の名前を冠した「アルピナ・ブルクハルト・ボーフェンジーペンGmbH+Co.KG」)は、「BMW 1500」用のキャブレターの開発からスタートし、歴代のBMW各車をベースに極めて端正で高品質、そして高性能なセダンとクーペ(最近ではSUVラインナップも拡充中)をつくり続けてきたユニークな自動車メーカーである。今もチューニングショップと誤解している人もいるが、れっきとしたマニュファクチュアラーとして認められているうえに、BMW Mや、メルセデス・ベンツのブランドのひとつとしてグループ企業となっているメルセデスAMGとは対照的に、現在に至るまでアルピナはBMW本体との資本関係を持たない。それでいながらBMWとの深い協力関係を維持しているという実に珍しい位置を守り続けている。
特別なモデルと歩んだ40年
E12型「5シリーズ」をベースにした「B7ターボ」が初めて日本に上陸してから昨年(2019年)でちょうど40年。日本はアルピナにとって有数のマーケットであり、根強いファンも多いのだが、実際のところ、その名は聞いたことがあっても詳しいことはよく知らないという方が大半ではないだろうか。他人から尋ねられても、簡単なキャッチフレーズでは説明するのが難しいクルマの筆頭がアルピナである。
台数が少ないせいで実際に見て乗った経験のある人は少なく、また普通の自動車メーカーのようにCMなどで声高に自己主張しないので、いまだにしょせんBMWのチューニングカーだろう、というような不正確な捉え方をしている人も少なくないが、そんないい加減な発言に対しても、表立った反論をしないのがアルピナの流儀である。分かる人にだけ分かればそれで十分、と考えているのはBMWアルピナ全車に装着されるプレートに“エクスクルーシブ”とうたってあることからもうかがえる。
いっぽう、モータースポーツ用車両や特殊なモデルの開発・生産を目的に、小回りがきく子会社としてBMWモータースポーツ社(BMW Motorsport GmbH)が設立されたのは1972年のこと(「3.0 CSL」の時代だ)。Mの文字を冠した最初の市販モデルは1978年のあの「M1」だった。その後1993年からはBMW M社(BMW M GmbH)と名称を変更、BMW本体のモデルをベースにしたスペシャルモデルを送り出してきた。近年はモデルラインナップの拡充が著しく、Mブランドの年間生産台数は13万台以上に達している。ちなみにライバルのメルセデスAMGも同じく13万台以上、BMWアルピナとは二桁違う。これが最大の相違点といえるだろう。
実は高性能ディーゼルの先駆者
ガソリンターボで名声を博したアルピナだが、日本ではまだ新世代ディーゼルが注目されていなかった1999年には「D10ビターボ」という当時世界最速のディーゼルセダンを発表、以来高性能ディーゼルモデルも送り出してきたことは案外知られていない。
ちなみにこの「D10」は従来のアルピナのモデルネーミング法を変えるきっかけとなったクルマだ。かつては、Aは4気筒エンジンシリーズ、BはM30型6気筒、CはM20型スモールシックスベースのエンジンを表し、その後ろの数字はチューニングのレベルを指していたが、現在では「B」はベンズィンでガソリンエンジン、「D」はディーゼル、その後ろの数字はBMW同様モデルシリーズを表すようになっており、4気筒モデルの設定はない。
現行のXD3は「ビターボ」の名称は省かれたものの、変わらずツインターボの4WDである。エンジンはBMWのB57型3リッター直6ディーゼルターボをベースとしながらも、例によって独自の冷却系やインテークシステム、ターボを採用したもので、シーケンシャル2ステージターボを搭載するツインターボである。
グランドツアラーとしての性能を重視するアルピナは、実は昔から高性能ディーゼルエンジン車に積極的であり、現在はXD3のほかにセダンの「D3ビターボ」や「D5S」などもラインナップしている。6気筒ディーゼルターボそのものにも何種類かの仕様があり、市場別に使い分けている。XD3の3リッターツインターボディーゼルは333PS(245kW)/4000-4600rpmと700N・m(71.4kgf・m)/1750-2500rpmを生み出すが、新型「XD4」に搭載されるエンジンはVGT(可変ジオメトリー)付き2ステージターボをダブルで装着するクワッドターボ仕様で、さらに強力な388PS(285kW)/4000-5000rpm、770N・m(78.5kgf・m)/1750-3000rpmを発生する。
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アルピナには珍しく硬めの乗り心地
もはやスーパースポーツ並みの強大なトルクのおかげで、ほんのわずか右足に力をこめるだけで、車重2.1tあまり(パノラマガラスサンルーフなどの豊富なオプションのせいかXD3のほうが100kgあまり重い)のボディーはいかなる時も瞬時に反応してくれる。さらに8段ATをキックダウンさせるほど踏めば、ヘッドアップディスプレイが壊れているのではないかと思うぐらいの勢いで数字が増えていく。それにも増して、ちょっと踏んでも踏んだ分だけシュルッと応える繊細なレスポンスが上質感にあふれている。M40dの直6と比べると、中間域でのトルクの盛り上がり方が明確でターボ感はやや強いといえるだろう。またこれはM40dも同様だが、再始動の瞬間を除けば、ディーゼルエンジンらしい振動やノイズを感じさせることもなく、快適にクルーズできる。ちなみに0-100km/h加速はM40dと同じ4.9秒、最高巡航速度は254km/hを誇るという。
よく尋ねられることだが、アルピナと「M」との最大の違いは、瞬間的な速さよりもグランドツーリング性能を重視しているアルピナがよりラグジュアリーで洗練されていることだ。高性能車はガッチリ硬い足まわりが当たり前と考えている人も少なくないと思うが、実はアルピナ各車はまったくスパルタンな感じはしない。そのためにアルピナは巨大な専用タイヤ(ピレリとの共同開発品でALPのロゴ付き)とサスペンションのマッチングにこだわってきた。
ところが、このXD3(XD4もそうだった)はかつてなかったことだが、日本の平均的なスピードでは場合によっては明確な突き上げを伝えてくることもあり、若干とげとげしい硬さと感じた。とはいえM40dよりははっきりとしなやかではあるが、日本舞踊の達人のように腰の位置が動かず、路面をなめるように疾走するアルピナらしい足さばきをSUVでも再現するのは彼らにとっても難しいのかもしれない。例によって繊細な20本スポークの鍛造22インチホイールは確かにクールで美しいが、標準装着品でも20インチなのだから悩ましいところだ。
パワートレインでは甲乙つけがたい。となれば内装や細めのステアリングホイールを含めてよりラグジュアリーで洗練されたアルピナか、はっきりスポーティーなM40dかというところだろう。ただし、どちらも店に入ってそのまま着て帰るといった“つるし”の商品ではない。思い通りの仕様を望むなら、じっくりと待つべきクルマである。
(文=高平高輝/写真=荒川正幸/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
BMWアルピナXD3
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4720×1895×1675mm
ホイールベース:2865mm
車重:2120kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:333PS(245kW)/4000-4600rpm
最大トルク:700N・m(71.4kgf・m)/1750-2500rpm
タイヤ:(前)255/35ZR22 99Y/(後)285/30ZR22 103Y(ピレリPゼロ)
燃費:12.6km/リッター(JC08モード)
価格:1115万円/テスト車=1302万9000円
オプション装備:ボディーカラー<ソフィスト・グレー・ブリリアント・エフェクト>(9万5000円)/インテリア<メリノ・タルトゥーフォ>(15万8000円)/ステアリングホイールヒーティング(4万9000円)/電動ガラスパノラマサンルーフ(20万6000円)/シートバックレストアジャストメント(2万1000円)/ランバーサポート(5万3000円)/ドライビングアシストプラス(18万4000円)/テレビチューナー(13万8000円)/ヘッドアップディスプレイ(15万6000円)/harman/kardonサラウンドサウンドシステム(9万6000円)/BMW Individualインテリアトリム<ピアノブラック>(10万円)/ヘッドレストにアルピナ文字<型押し>(9万4000円)/ガルバニック・フィニッシュ(2万9000円)/ALPINA CLASSIC 22インチホイール&タイヤセット(50万円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:1万5246km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:282.9km
使用燃料:27.5リッター(軽油)
参考燃費:10.3km/リッター(満タン法)/10.6km/リッター(車載燃費計計測値)
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BMW X3 M40d
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4725×1895×1675mm
ホイールベース:2865mm
車重:1980kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ディーゼル ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:326PS(240kW)/4400rpm
最大トルク:680N・m(69.3kgf・m)/1750-2750rpm
タイヤ:(前)245/40R21 100Y/(後)275/35R21 103Y(ブリヂストン・アレンザ)
燃費:14.9km/リッター(JC08モード)
価格:901万円/テスト車=901万円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:9370km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:203.4km
使用燃料:18.8リッター(軽油)
参考燃費:10.8km/リッター(満タン法)/10.8km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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