ランドローバー・ディフェンダー110(4WD/8AT)/ディフェンダー110 S(4WD/8AT)
まごうかたなきオフローダー 2020.09.12 試乗記 伝統ある従来モデルとはまったく異なる姿で登場した新型「ランドローバー・ディフェンダー」。モノコックボディー+4輪独立懸架に懐疑的なアンチに対し、ランドローバーが用意した答えとは? 注目の新型オフローダーの出来栄えをチェックした。従来型から全面刷新
ランドローバーブランドを代表する銘柄……というよりも、それそのものがブランドの発祥と言っても過言ではない「ランドローバー シリーズ1」。1948年に登場したこのモデルは、「シリーズ3」へと進化する過程で、さまざまなユーザーから業務や目的を遂行するための道具として、なくてはならないものとして扱われるようになった。その中には公的機関や団体、警察や軍などの治安をつかさどる組織からの需要もあったのはご存じの通りだ。
その長寿と並行して、“ザ・ランドローバー”が持つ機能や、まとう機能美をよりライトに使いたいという民需がじわじわと増えていったことは想像に難くない。1990年にはモダナイズされたクロスカントリーモデルの「ディスカバリー」が追加されたことを契機にディフェンダーというペットネームが初めて与えられ、ランドローバーのラインナップの一員という連帯感が高められた。
そのディフェンダーが、各種法規対応がいよいよ難しくなったということで、70年近くにわたる生産を終えたのは2015年末のこと。それから4年近くのブランクを経た2019年のフランクフルトモーターショーで発表されたのが、この2代目ディフェンダーということになる。当然ながら完膚なきまでの刷新で、メカニズム側から追えば先代から継承されたものは一点もない。ラダーフレームに前後リジッドアクスルのシャシーワークは、アルミモノコックの4輪独立懸架に改められ、パワートレインの電動化にも対応できるという。
“モノコック+4輪独立懸架”に見る狙い
ディフェンダーは「ジープ・ラングラー」や「メルセデス・ベンツGクラス」にも増して、守旧的なファンが多くいるモデルだ。そのカリスマのこの刷新ぶりに、彼らの間で賛否が渦巻いていることは間違いない。それに対してランドローバーが新しいディフェンダーで示した答えは、悪路に対峙(たいじ)し続けてきたからこそわかる数々の知見と最新テクノロジーとを結集しての、圧倒的な走行性能だ。
恐らくランドローバーとしては、先代のニーズのすべてをこの新型で代替できるとは思っていないだろう。一方で、従来のディフェンダーは長きにわたりつくり続けられたこともあり、本当にそれを要する場所には行き届いていることも間違いない。もちろんリペアビリティーについても中古流通やストックパーツで十分に確保できる。だとすれば、新型ディフェンダーは現代的な使用環境においてのヘビーデューティーニーズを徹底的に満たすクルマに仕上げるべきだろう。と、そういうシナリオに基づいて企画されたのではないかというのは、僕の勝手な読みだ。
スロバキアの新工場で生産される新型ディフェンダーは、ロックダウンの嵐吹く春のヨーロッパにあって、大きくスケジュールを狂わせることなく日本への上陸を果たした。当面は5ドアボディーの「110」のみの展開となり、遅れて3ドアの「90」が上陸する見込みだ。エンジンのバリエーションは最高出力300PS、最大トルク400N・mを発生する2リッター4気筒直噴ガソリンターボのみ。直4ディーゼルや直6マイルドハイブリッドなどの搭載もアナウンスされるが、現状ではこれらの日本市場での展開はまったく未定だという。組み合わせられるトランスミッションは8段ATとなり、副変速機は標準装備。車名は110ながらホイールベースは120インチくらいある5ドアボディーについては、最安グレードからエアサスも標準装備となり、最低地上高291mm、渡河深度900mmの能力を実装する。
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センスが光る内外装のデザイン
今回主に試乗したのはまさにその最安グレードで、価格は589万円だ。とはいえ色も「フジホワイト」を除きすべて有償。3列目シートや3ゾーンエアコンやADASパッケージなどを加えていくとそれなりの値段にはなるが、走行性能面では19インチアルミホイール&タイヤ以外、ツルシの状態ということになる。ちなみに標準の18インチスチールホイール&タイヤは先代のイメージを継承した、むしろ積極的に選びたいアイテムだ。そこにADASや電制デフ、「テレインレスポンス2」など個人的嗜好(しこう)で最低限のオプションを拾っていきながらウェブサイトのコンフィギュレーターをイジってみると、670万円くらいに収まった。ランドローバーのモデル群では値ごろ感も意識していることは間違いなさそうだ。
「レンジローバー イヴォーク」で新しいモードを示し、2010年代のSUVトレンドを引っ張ってきたジェリー・マクガバンとランドローバーのデザインチームは、このディフェンダーでも類いまれなセンスをみせてくれた。各仕向け地の法規をクリアしながらディフェンダーらしさを伝えるリアコンビランプの形状や配置、グラブバーとトリムを一体化したダッシュボードなどには、「巧(うま)いなぁ」とうならされる。
ベースグレードの樹脂やトリム類などは素材単位の質感こそ高くはないが、それも道具感と割り切れるいい意味での粗さと言えなくもない。ちなみにオプションでレザーものを採り入れることもできるが、個人的にはまったく必要性を感じなかった。こういうクルマは飾り立てるよりも、できるだけシンプルにまとめるに越したことはないと思う。
クロカンとは思えぬ快適さと静かさ
19インチのオールテレインタイヤを履く試乗車は、日常的な速度域で走るに、路面凹凸などで時折りドライな突き上げを感じるところもあれど、総じての乗り心地は上手に調律できている。意外だったのはメカノイズやロードノイズの小ささで、その静粛性はGクラスやラングラーを上回り、普通のSUVと比べられるレベルに達していた。足を延ばして遠くに行く機会の多いこの手のクルマでは、中~高速移動時の音環境が走り疲れの要因になりがちだが、この点、新型ディフェンダーは心配なさそうだ。標準の18インチホイールとエアサスの組み合わせも大いに期待できそうである。
距離を走るうえで気になるのが燃費だが、今回の試乗距離では結論は出せないものの、平均燃費計を駆使してみるに10km/リッター超えの壁は相当高いというのが偽らざる印象だった。多段ATで巡航回転域は相対的に下げられているが、いかんせん2.2t超えの車重に本格クロカンとして相応の転がり抵抗と空気抵抗が加わるわけで、致し方ないところでもある。
一方、パフォーマンス的にはオフロードカーにとって重要となる極低回転域からしっかりトルクが立ち上がってくれて、歩むような速度からのコントロール性はきれいに整っていた。ブン回せばこの巨体を0-100km/h加速8秒余りで走らせるほどのパワーの持ち主であることを鑑みれば、望外の柔軟性である。個人的にはまだ見ぬディーゼルへの思いは強いが、もし燃費は二の次というのであれば、現状のガソリン仕様もじゅうぶん検討に値する。
優れたオフローダーは優れた実用車である
試乗ではオフロードコースのちょっとしたセクションも体験できた。「もっといけるだろう」的な意味で走破性自体に驚きはなかったが、バネ下のストローク量やタイヤの接地感、操舵インフォメーションなどはさすがにオフローダーとしての素質にきちんと配慮がなされているだけのことはある。視界はさすがに先代のように“あけすけ”というわけにはいかないが、それを補えるバーチャルアングルのモニター機能などをきちんと採り入れているところが、時代なりの進化ということになるだろうか。ブレーキがややオーバーサーボ気味で低ミュー路でロックしやすいクセは気になったが、これが初出であることを鑑みれば微小な立ち上がり領域の出来は日毎に改善されるだろう。
日々是冒険でもあるまいに、日本の日常を託するには大げさに過ぎるのではないかという見方もあるかもしれないが、ディフェンダーはその車格や乗降性、燃費を除けば、ファミリーカーとしての資質はすこぶる高い。余計な加飾も過剰なもてなしもないが、視界はクリーンで空間は健康的、乗り心地よろしく操作に対するクルマの動きも穏やか……と、もろもろの仕立てには文句のつけようがない。優れたオフローダーは優れた実用車足り得るというのは個人的定説だが、今回もランドローバーはそこをしっかり守ってくれたと思う。
(文=渡辺敏史/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ランドローバー・ディフェンダー110
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4945×1995×1970mm
ホイールベース:3020mm
車重:2240kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:300PS(221kW)/5500rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1500-4000rpm
タイヤ:(前)255/65R19 114H M+S/(後)255/65R19 114H M+S(グッドイヤー・ラングラー オールテレインアドベンチャー)
燃費:8.3km/リッター(WLTCモード)
価格:589万円/テスト車=816万2880円
オプション装備:ボディーカラー<パンゲアグリーン>(9万5000円)/コントラストルーフ<ホワイト>(12万9000円)/ドライバーアシストパック(14万1000円)/3ゾーンクライメートコントロール<リアクーリングアシスト付き>(21万円)/エアクオリティーセンサー(8000円)/空気イオン化テクノロジー(1万9000円)/19インチフルサイズスペアホイール(1万1000円)/ClearSightインテリアリアビューミラー(10万4000円)/ホイール<19インチ“スタイル6010”6スポーク[グロススパークルシルバーフィニッシュ]>(20万5000円)/ステアリングホイール<レザーラップド、ポリウレタンエアバッグカバー>(7000円)/マニュアル3列目シート(26万2000円)/センターコンソール<アームレスト付き>(3万円)/キーレスエントリー(13万6000円)/コールドクライメートパック(10万9000円)/ルーフレール<ブラック>(4万6000円)/カーペットマット(1万8000円)/ギアシフト<レザー>(3万円)/8Wayセミ電動フロントシート<ヒーター付き>(5万8000円)/60:40ラゲッジスルーマニュアルスライディング&リクライニングリアシート(5000円) ※以下、販売店オプション アドベンチャーパック(37万0040円)/クロスバー(4万5210円)/フィックスドサイドステップ(17万2810円)/ディープサイドラバーマット(2万7940円)/ラゲッジスペースラバーマット(3万3880円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:3762km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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ランドローバー・ディフェンダー110 S
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4945×1995×1970mm
ホイールベース:3020mm
車重:2240kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:300PS(221kW)/5500rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1500-4000rpm
タイヤ:(前)255/65R19 114H M+S/(後)255/65R19 114H M+S(グッドイヤー・ラングラー オールテレインアドベンチャー)
燃費:8.3km/リッター(WLTCモード)
価格:663万円/テスト車=843万4000円
オプション装備:ボディーカラー<タスマンブルー>(9万5000円)/コントラストルーフ<ホワイト>(12万9000円)/ドライバーアシストパック(14万1000円)/3ゾーンクライメートコントロール<リアクーリングアシスト付き>(21万円)/エアクオリティーセンサー(8000円)/空気イオン化テクノロジー(1万9000円)/ClearSightインテリアリアビューミラー(10万4000円)/マニュアル3列目シート(26万2000円)/プライバシーガラス(7万3000円)/キーレスエントリー(13万6000円)/コールドクライメートパック(10万9000円)/アドバンスドオフロードケイパビリティーパック(20万1000円)/オフロードパック(21万3000円)/ルーフレール<ブラック>(4万6000円)/カーペットマット(1万8000円)/クロスカービーム<ホワイトパウダーコートブラッシュドフィニッシュ>(3万5000円)/60:40ラゲッジスルーマニュアルスライディング&リクライニングリアシート(5000円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:4577km
テスト形態:オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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