ランドローバー・ディフェンダー110 SE(4WD/8AT)/ジープ・ラングラー アンリミテッド サハラ2.0L(4WD/8AT)
覚悟はあるか 2020.11.24 試乗記 “これぞジープ”の味を守り続ける「ラングラー」と、新世代のオフローダーへと大胆な変身を遂げた「ランドローバー・ディフェンダー」。後半ではメカニズムの違いがもたらす走破性や乗り味の違いを考えながら、林道を奥へ奥へと進んでみた。オフロード走行の鉄則
(前編からの続き)
新型ディフェンダーのオンロードでの文句なしの走りっぷりは既に他の試乗記で報告されているから、今回は2台でちょっとした林道に分け入ってみた。
スキー場のゲレンデや特設コースは、現実の悪路とはまったく違う。それでも無論、無理はしない範囲でのこと、ディフェンダーやラングラーの真の実力を試せるような場所は日本にはめったにない。ちなみにオフ走行のルールNO.1は単独行はしないというもの。林道ツーリングなども同様だ。NO.2はちょっとでも心配ならば最初に自分で歩いてみろ、これはランドローバーやジープのスタッフから教わったことでもある。
ラフロードではゆっくりとはうように走れるかどうかが重要だ。砂漠などではある程度の勢いが必要な場合もあるけれど、ルートや路面状態を確かめながら走らなければならないことがずっと多い。その点は2台ともさすがに問題なかったが、より微妙なコントロールを受け付けるのはディフェンダーのほうだった。
もはやレンジローバー並み
70年ぶりのモデルチェンジというのはちょっと盛りすぎだが、1990年にディフェンダーという名を与えられてから初めてのフルチェンジであることは確かだ。ご存じのように新しく加わった「ディスカバリー」と区別するためで、それまでは単にランドローバー、あるいは「シリーズI」とか「II」と呼ばれてきた。そこから一変、ファニーなアニメ顔に大変身したのが新型ディフェンダーである。外観には従来型のモチーフを残しているが、何よりもアルミモノコックボディーに一新されたのが大ニュース、インターフェイスや操作系も一足飛びに新しくなって、インパネを眺める限り「レンジローバー」各車と変わらない。
今のところエンジンは300PS/5500rpmと400N・m/1500-4000rpmを生み出すインジニウムと称する2リッター4気筒直噴ターボのみ、変速機は8段ATで、ランドローバーの他のモデル同様、ローレンジの切り替えもすべてモダンなスイッチで操作するのが新しい。電子制御エアサスペンションと可変ダンパーは「110」には標準装備されるが、かつてのディフェンダーを知る人にはびっくりするほど乗り心地が静かで滑らか。これはもうちょっと前の昔のレンジローバー並みと言っていいほどだ。本格クロカンカテゴリー(というものがあるかどうかは知らないが)では随一の乗り心地と直進安定性を持っている。
自慢の「テレインレスポンス」(これにも各種仕様あり)を適切に切り替えれば、車高もシフトもセンター&リアデフのロック具合も自動制御で深く轍(わだち)掘れした林道を苦もなく上る。路面が木くずや落ち葉で柔らかい急坂で止まったら、そこからの再発進はできなかったが、できることではなくできないことを確かめるのが大切だ。サーキットのドライビングレッスンなどと同じく、限界を知ってこそ能力を理解できるものだが、メーカー/インポーターが主催する試乗会の特設コースではそれを試せない。確実にクリアできる舞台しか用意されないからである。
ジープはそもそもワークブーツである
ラングラーは相変わらずジープの背骨というか精神的支柱というか、オリジナルを最も忠実に受け継いでいる特別なモデルだ。2年前にモデルチェンジした現行JL型はラングラーとなってからは4代目に当たる。外観はあまり変わらず、というよりむしろ先祖返りしたかのようにジープの特徴を守っているが、中身は一気に現代化されている。
エンジンは自然吸気の3.6リッターV6と2リッター4気筒直噴ターボエンジンの2種類が設定されているが、どちらも8段ATと組み合わされる。5ドアの「アンリミテッド」の上級グレードである「サハラ2.0L」に積まれる4気筒ターボは272PS/5200rpmと400N・m/3000rpmを生み出す。ちなみにこのエンジンは、「アルファ・ロメオ・ジュリア」などにも搭載されFCAグループ内で広く使われているグローバルユニットである。パワーもトルクもV6にまったく引けを取らないばかりか、多段ATとの組み合わせのおかげで、ゆっくり走る際の扱いやすさも心配無用。なるほど人気が高いわけである。
とはいえ依然としてボディーオンフレーム、前後ともにリジッドアクスルといった基本構造は変わらないので、以前よりは格段に真っすぐ走るとはいえ、他のSUVなどと比較すれば相変わらずの“ジープ”である。フレームシャシー特有の揺れやレスポンスのわずかな遅れを気にする人もいるだろう。あくまで分かっている人が乗るクルマなのである。
もう一度スタックしたい
現行ラングラーの4WDシステムは「フルタイムオンデマンド4×4」というらしい。いったいどっちなんだよ、と言いたくなるが、従来通り「2H」と、「4H」および「4L」(この2モードではセンターデフがロックされる)が切り替え可能な上に、その間に「4WDオート」というオンデマンドモードが加えられたことが特徴である。切り替えはレバー式だが、昔ながらに渋く重く、思わず苦笑した。ラングラーは地上高が意外に大きくない(200mm)が、トランスファーケースも一緒に動くリジッドアクスルを生かして岩場を乗り越えるのが得意。「ルビコン」には前後デフロックも装備されている。
自慢の脱着式ハードトップである「フリーダムトップ」の建て付けもずいぶんとしっかりしたが、どこからかわずかに隙間風が入ってくるようだし、ロールケージのようなフレームが入っているので、あまり広々とした感じがしないのも従来通りである。したがってラングラーに乗るのにある種の覚悟が必要だということには変わりはない。八方すべて丸く収まるような自動車などは存在しない。あるとすれば、それは大変高価なものになる。それが世の中の道理である。だが、それをひいきの引き倒しで自分に納得させてしまうのがクルマ好きであることも事実、その外れっぷりが若者の心を捉えているのだろうが、未経験者はぜひともちゃんと試乗すべきだ。
ディフェンダーはそのサイズさえ承知の上ならば覚悟は必要ないだろう。しかもラグジュアリーに大変身したにもかかわらず、5ドアの110でもスタート価格が600万円を切ると聞いて驚いた。現場のプロのためには、もっと簡素なワークホース仕様がまた別に開発されているはずだ。もちろん各種オプションパックが豊富に用意されており、今回の試乗車には合計200万円余りが乗っかっていたが、素の状態でも性能に直接かかわる主要メカニズムが落とされているようなことはない。ただし、大きなルーフキャリアが走行中に振動するのは何とかすべきだ。ディフェンダーは今一番気になるニューモデルだ。これでもう一度スタックしたい、いや、そういう場所に踏み入れてみたい。でも、やっぱり大きいなあ。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ランドローバー・ディフェンダー110 SE
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4945×1995×1970mm
ホイールベース:3020mm
車重:2320kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:300PS(221kW)/5500rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1500-4000rpm
タイヤ:(前)255/60R20 113H M+S/(後)255/60R20 113H M+S(グッドイヤー・ラングラー オールテレインアドベンチャー)
燃費:8.3km/リッター(WLTCモード)
価格:732万円/テスト車=956万1920円
オプション装備:ボディーカラー<タスマンブルー>(9万5000円)/コントラストルーフ<ホワイト>(12万9000円)/ドライバーアシストパック(6万3000円)/3ゾーンクライメートコントロール<リアクーリングアシスト付き>(21万円)/エアクオリティーセンサー(8000円)/空気イオン化テクノロジー(1万9000円)/プライバシーガラス(7万3000円)/コールドクライメートパック(10万9000円)/アドバンスドオフロードケイパビリティーパック(20万1000円)/オフロードパック(21万3000円)/ルーフレール<ブラック>(4万6000円)/カーペットマット(1万8000円)/ラゲッジスペースストレージレール(2万3000円)/12ウェイ電動フロントシート<ヒーター&クーラー+メモリー機能+2ウェイマニュアルヘッドレスト付き>(21万円)/40:20:40分割可倒式リアシート<ヒーター+センターアームレスト付き>(5万8000円) ※以下、販売店オプション エクスプローラーパック(55万4840円)/フィックスドサイドステップ(17万2810円)/プレミアムカーペットマット(3万9270円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:6690km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:261.1km
使用燃料:42.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.2km/リッター(満タン法)/7.0km/リッター(車載燃費計計測値)
ジープ・ラングラー アンリミテッド サハラ2.0L
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4870×1895×1845mm
ホイールベース:3010mm
車重:2050kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:272PS(200kW)/5250rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/4100rpm
タイヤ:(前)LT255/70R18 117/114S M+S/(後)LT255/75R17 111/108Q M+S(BFグッドリッチ・オールテレインT/A KO2)
燃費:11.5km/リッター(JC08モード)
価格:599万円/テスト車=618万9584円
オプション装備:BFグッドリッチ・オールテレインT/A KO2タイヤ(23万0400円)/フロアマット<プレミアム>(4万8600円)/ショートアンテナ<カーボン>(1万0584円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:1万5951km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:302.1km
使用燃料:34.9リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:8.7km/リッター(満タン法)/8.7km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
メルセデスAMG GLC53 4MATIC+(4WD/9AT)【海外試乗記】 2026.5.27 「メルセデス・ベンツGLC」にスポーティーな「メルセデスAMG GLC53 4MATIC+」が仲間入り。「43」と「63」の中間、AMGとしては松竹梅の竹にあたるモデルだが、今後はそのポジションの重要性がさらに増すことになるという。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。
-
NEW
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
NEW
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。 -
NEW
第115回:メイク・アメリカ・グレート・アゲイン!(後編) ―デザインもサイズも規格外! 魅惑のアメリカ車はなぜ“主役”になれないのか?―
2026.6.3カーデザイン曼荼羅トヨタ&ホンダが発表した、米国生産車の日本導入計画。しかしアメリカには、規格外に面白いクルマがまだたくさんあるのだ! カーデザインの識者とともに魅惑の日本“未”導入車を探すとともに、魅力的なアメリカ車が、それでも主役になれない理由を考えた。 -
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。


















































