ルノー・キャプチャー インテンス テックパック(FF/7AT)
好事家だけのものじゃない 2021.03.16 試乗記 ルノーのコンパクトSUV「キャプチャー」がフルモデルチェンジ。ヨーロッパでSUV販売台数トップの座を獲得したその人気の秘密を確かめるべく、充実装備が自慢の上級グレード「インテンス テックパック」を郊外に連れ出した。見て楽しめるデザイン
ここ1〜2年ほど、フランス車の波がきている。「プジョー508」の完成度の高さはドイツ御三家と遜色がなかったし、同じくプジョーの「208」や「2008」は見ても乗っても楽しいコンパクトカーだった。プジョー208のガチンコのライバルとなる「ルノー・ルーテシア」で京都まで日帰りで往復したことがあるけれど、あれは小さなグランドツアラーで、身長が190cmぐらいある人を乗せるのでなければ、このサイズで十分ではないかとしみじみ感じた。
で、なんで最近のフランス車はこんなに出来がいいのかと感じていたところに、“2020年にヨーロッパで一番売れたSUV”という派手な触れ込みとともに、ルノー・キャプチャーが日本にやってきた。その完成度の高さに感心したルーテシアと基本骨格を共用するわけだから、おのずと期待は高まる。
見た瞬間、「うまいな」と感じる。なにがうまいのかといえば、SUVのヘビーデューティーな雰囲気と、しゃれた感じが両立しているからだ。彫りの深いラインでパキッとした強さを表現しつつ、やわらかい面の造形でしなやかさも感じさせる。もうひとつのポイントはルーフだ。ボディーカラーとツートンになっていることと、きれいな弧を描いていることで、デザイン家電ならぬデザインSUVになっている。
ヘッドランプまわりとリアのコンビネーションランプに「Cシェイプ」と呼ぶ形状のLEDを採用したことで、ボディーがワイドに見えると同時にモダンなプロダクトという印象も与える。保守的なSUVのスタイルとはひと味違う新鮮味を出しつつ、ぶっ飛びすぎてもいないという絶妙なさじ加減が、「うまい」と感じる理由だ。
インテリアも同様で、派手な色使いや斬新な造形はないものの、それでも上質な素材感を出しつつメーターやスイッチをシンプルに配置することで、スタイリッシュな空間に仕上がっている。
「万人受けするデザイン」というと、退屈なものを想像する。けれどもルノー・キャプチャーは、多くの人が好感を持つことと、見て楽しめる意匠にチャレンジすることを、上手に両立している。もう一度、「うまい」と言わせてください。
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ルーテシアよりもパワフル
アクセルペダルを踏み込んで「おっ!」と思うのは、想像していたよりはるかに加速が力強いからだ。加速が力強いというより、速いという表現のほうがしっくりくるぐらいのトルク感だ。
ルノーと日産、そして三菱が共同開発した1.3リッター直列4気筒ターボエンジンの最高出力は154PS、最大トルクは270N・m。ルーテシアに積まれる同じ型式のエンジンより強化されており、出力が23PS、トルクが30N・m増しとなっている。
試乗前に資料を眺めた時点では、ルーテシアよりもキャプチャーがエンジンスペックで勝るものの、同程度の装備のモデルを比較するとキャプチャーのほうが100kgほど重くなっているので、パワーとトルクの増強分は相殺されるかと思っていた。
けれども車重の増量分にかかわらず、やはりキャプチャーのほうが発進加速に余裕があるし、高速道路の合流でのダッシュも鋭い。ルーテシアの動力性能にもまったく不満を感じなかったけれど、やはりたくさんの人や荷物を積んで遠くへ出かけるというSUVらしい用途で使うならば、これくらいパワフルなほうがありがたい。
キャプチャーの加速感が力強いのに洗練されていると感じるのは、ツインクラッチ式の7段ATのお手柄だろう。市街地を走るシチュエーションでは、ス、ス、ス、とショックを感じさせることなく早め早めのタイミングでシフトアップする。そして加速が必要な時にアクセルペダルを踏み込むと、素早く、シームレスにギアを落としてエンジン回転数を上げる。
よくできた執事さんのように、常に先回り先回り、仕事をしたと感じさせないように仕事をするからその存在を忘れがちであるけれど、気配りが行き届いたATだ。存在感を消すことができるのが、優秀な執事とATの共通点だ。
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SUVに合わせたシャシーチューニング
乗り心地は独特だ。昔のフランス車のように、ふわふわというわけではない。一方で、ビシッと引き締まっているわけでもない。
感覚的にはこんな感じ。路面の段差や不整を乗り越えて大きなショックをドスンと受けても、それが直接乗員に伝わってくるということはない。車体へのショックを一度、ボディーの一番強いところで受け止めて、衝撃を弱め角を丸くしてから車体の各部に散らし、その一部が乗員にも伝わるプロセスを経ていると感じる。だからふわふわしているわけではなく、しっかり感は体感しながらも、乗り心地はほどよくまろやかという、よそにはない乗り心地なのだ。
ルーテシアもこれに近い乗り心地だったけれど、どっしりしているのにマイルドという個性は、キャプチャーのほうがより強調されている。少しボディーが大きく重くなっていることもあるだろうし、SUVに合わせたチューニングを施したという面もあるだろう。
人間にたとえれば、足が速い人というよりも体幹がしっかりしている人という感じで、それはワインディングロードでさらに色濃く表れる。コーナーで負荷をかけてボディーにねじれるような力が加わっても、体幹が強いから姿勢が乱れない。姿勢がしっかりしているから、サスペンションが正しく伸び縮みして、結果としてタイヤが路面をしっかりとらえて踏ん張る。
これが懐の深い、安定して速いコーナリングにつながっている。ちなみに体幹が強いと感じる車体の基本構造も、ルノーと日産、三菱の共同開発である。
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間口が広くて奥深い
ACCなどの運転支援機能は、現代のクルマにあってほしいものは過不足なく備わっている。特筆すべきは、先行車両に追従している時に、一度止まっても再発進する機能が備わっていることだ。これが渋滞での疲労やストレスを低減してくれる。もうひとつ、直感で操作できる最新インターフェイスの採用も特徴で、この機能の恩恵に浴する頻度がほかのクルマよりも高かった。
最大で160mmスライドする後席は、大人2人がゆったりと座れるスペースがあるし、クラス最大の容量をうたう荷室は、広いだけでなく不要な出っ張りがないなど、使い勝手にも優れる。
エンジン、乗り心地、運転支援機能、そして居住空間といったさまざまなパラメーターをレーダーチャートに落とし込むと、ハイレベルでバランスのよい図形を描くことができる。ただし、だからといって無難な選択肢というわけではなく、デザインやハンドリング、独特のグルーブ感を覚える乗り心地は好事家も喜ばせるはずだ。
デザイン好き、クルマ好き、フランス好き、SUV好きなどなどを受け入れる間口の広さと奥深さを備えるルノー・キャプチャーは、なるほどベストセラーになるのが納得の一台だった。
(文=サトータケシ/写真=郡大二郎/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
ルノー・キャプチャー インテンス テックパック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4230×1795×1590mm
ホイールベース:2640mm
車重:1310kg
駆動方式:FF
エンジン:1.3リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:154PS(113kW)/5500rpm
最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)/1800rpm
タイヤ:(前)215/55R18 95H/(後)215/55R18 95H(グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンス)
燃費:17.0km/リッター(WLTCモード)
価格:319万円/テスト車=329万2300円
オプション装備:ボディーカラー<ブランナクレメタリック×ノワールエトワールメタリック>(4万4000円) ※以下、販売店オプション フロアマット(2万6400円)/エマージェンシーキット(3万1900円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2835km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:277.7km
使用燃料:17.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:15.8km/リッター(満タン法)/17.2km/リッター(車載燃費計計測値)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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