国内デビューがみえてきた! 新型「スバル・アウトバック」はここに注目
2021.04.19 デイリーコラム盛り上がるのは海外ばかり?
先日、スバルが発表した新型「アウトバック」の派生車種ともいえる追加モデル「アウトバック ウィルダネス」が登場したのを受けて、日本国内のスバルファンはざわついている。
新型アウトバックが北米市場で先行デビューしたのは2019年の春。ニューヨークオートショーでワールドプレミアとなり、同年の夏から生産が開始された。初代「レガシィ」にはクロスオーバー車が設定されなかったので、アウトバックとしては6代目にあたる。なお、北米市場ではセダン版の「B4」も販売されており、レガシィシリーズとしては7世代目だ。
その後、日本市場への導入がなかなか実現されないまま、スバルは2021年1月にオーストラリア仕様の新型アウトバックを発表。同年3月に発売するとしたうえで、今回は北米市場で派生車種、アウトバック ウィルダネスの発表である。新型アウトバックの国内仕様の発売を待ち焦がれるスバルファンは、一連の報道にやきもきしているのだ。
今回発表されたアウトバック ウィルダネスの仕様は、内外装や車高、駆動系の制御にいたるまでアウトバックのものを変更するという踏み込んだ内容で、全域にわたりタフなオフローダーらしさを強めている。アウトバックもラダーフレームをもたないフルモノコック車としては最強レベルの悪路走破性能を備えているが、さらに屈強なオフローダーに仕立てられた。悪路走破性能とユーティリティーに特化した姿は、オフロード走行も可能な乗用車のパイオニアである「レオーネ」時代に原点回帰したようにも映る。
決して見かけ倒しじゃない
1980年代に北米市場を開拓して以来、レオーネ時代からスバルは、北米市場でも降雪量の多い地域や内陸部での販売比率が高かった。そのなかで大躍進を遂げたのが、1994年に登場した2代目レガシィをベースとしたクロスオーバー車、初代アウトバックだった。1990年代以降に登場するスバル車は、セダンやステーションワゴンでも雪道や泥濘(でいねい)路に高い次元で対応できるAWDシステムを備えており、最低地上高を拡大するだけでも悪路走破性能を劇的に向上させることができた。
現在のスバル車は、トヨタとのアライアンスで生まれたFRスポーツカー「BRZ」を除いた全車で金属チェーン駆動式CVT「リニアトロニック」を採用。CVT特有の変速フィールを嫌う声もあるが、スバルのCVTはソフトウエアの変更でオフローダー向けのローギアとすることが比較的容易であるなど、スバル車の強みや個性を発揮させやすいトランスミッションといえる。高度な電子制御AWDとの相性も良いため、制御の変更次第で本格クロカンSUVに匹敵する悪路走破性を実現できるのだ。
アウトバック ウィルダネスは、CVTのリニアトロニックと、悪路走破性を高める電子デバイスである「X-MODE」の制御を変更することで、かつてはスバルでも主流だった副変速機付きの四輪駆動システムに匹敵、あるいはそれ以上の悪路走破性能を得た。最新のX-MODEは低μ路での発進をアシストするだけでなく、40km/hまでの速度域でのトラクションを最大限に確保する機能も磨かれているので、アウトバック ウィルダネスもまた、雪上などでは誰もがラリーカーのようにアグレッシブなドライブが楽しめることだろう。
そんなアウトバック ウィルダネスは、ぜひ日本国内市場にも導入してほしいところだ。その一方で、いまだ国内市場での販売が実現していない“標準の新型アウトバック”は、ついに2021年中に発売される見込みとなり、こちらに対する期待感が高まっている。
よりタフに さらに上質に
新型アウトバックは北米市場で先行発売されたのち、実は日本国内でも非公式ながらその姿をスバルファンの前に現している。2020年2月には「ゲレンデタクシー」と呼ばれるイベントが開催された長野県内のスキー場の駐車場に北米仕様車がサプライズ展示され、現場に居合わせたスバルファンを仰天させた。開発責任者の堀 陽一プロジェクトゼネラルマネジャー自ら簡単な車両解説を行い、「新型アウトバックはスバルのラインナップのフラッグシップに位置づけられるだけに、日本市場でも大いに期待してほしい」などとアピールした。
まず外観は、基本的にはキープコンセプトで、クロスオーバーらしさがさらに強調されている。ふくよかさを増したフェンダーには、マウンテンシューズのソールをイメージしたプロテクターが装着され、見た目の屈強さがアップ。タフギア感を強めている。ちなみに、六連星のエンブレムは歴代スバル車のなかで最も大きいものを採用している(北米で販売される大型SUV「アセント」も同じサイズ)。
内装は、インストゥルメントパネルの上から3層それぞれに違う素材を使用し、立体感や連続性を演出しているのが印象的だ。実車で確かめると、ドアの開閉フィールなど、高級車に求められる細部のクオリティー向上には相当こだわったことがわかる。細かいところでは、フロントドアのヒンジ取り付け角度の変更により、ドアの開閉回転軸を垂直に近づけ、開閉によって変化していた操作力を極力一定とすることで自然な操作フィールを実現した。さらに、ウェザーストリップの断面積拡大と隔壁の追加により遮音性が向上。ドアを閉めた際の密封度も増している。
そのほか、電動テールゲートの開閉速度は40%も速くなり、駆動ユニットをモーター内蔵のゲートステーとすることで省スペース化が図られている。2代目「レヴォーグ」でもみられる「六連星エンブレムに手をかざすとテールゲートが開く機能」は、新型アウトバックが先に採用していた。これは北米で大好評とのこと。トノカバーには収納しやすくなる工夫があり、テールゲートのリアガラスの下端はDセグメントのハッチバック車のなかでは最も低い部類となっている。「フォレスター」など他のスバル車でもみられる、後方視界をしっかり確保するための工夫だ。
期待はやっぱりターボエンジン
気になる乗り味については、第2世代へと進んだスバルの新世代のプラットフォーム「スバルグローバルプラットフォーム(SGP)」がもたらす動的質感の高さが魅力だ。
アンダーボディーにアッパーボディーのインナー骨格をあらかじめ集成するフルインナーフレーム構造の採用や、構造用接着剤の塗布範囲拡大、高張力鋼板の適用拡大などにより、強くてしなやかなボディーを実現。スバルが特にこだわったのは「剛性不連続部位の改善」と「結合部構造の改善」で、これが2代目レヴォーグでも好評な“動的質感の高さ”をもたらす秘訣(ひけつ)だという。
ステアリングからの入力をムラなく均一に両輪に伝達できるボディーは、極めて自然で心地よいハンドリングを与えてくれるはず。さらに、旧世代のプラットフォーム車でも世界トップレベルにあった衝突安全性能も全方位で向上している。
気になるのは搭載されるエンジンだ。北米仕様の上級グレードに積まれるFA24型2.4リッター直噴ターボエンジンは、これまでの6気筒に代わるフラッグシップユニットにふさわしいトルク特性と高級感が味わえるユニットで、しかもレギュラーガス対応だ。話題のアウトバック ウィルダネスもこれを搭載している。
2020年2月に長野でサプライズ登場したときも、現場に居合わせたスバルファンは、エンジンルーム内にインタークーラーが設置されている様子を見て感嘆の声を漏らした。車格やキャラが変わったとはいえ、レガシィの直系モデルにはターボエンジンの搭載を望むファンが多いのだ。果たしてこれが日本仕様でも選べるようになるのか、一部のファンは大いに期待している。
北米仕様の新型アウトバックの内容をみると、日本仕様への期待は膨らむばかり。デビュー後すでに2年が経過し、各部は熟成も進むことから完成度や品質がより高くなってからの導入となれば、新型アウトバックをずっと待っていた人も、待ったかいがあるというものだ。
(文=マリオ高野/写真=スバル/編集=関 顕也)
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