フォルクスワーゲン・トゥアレグハイブリッド(4WD/8AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・トゥアレグハイブリッド(4WD/8AT) 2011.04.07 試乗記 ……921万1000円総合評価……★★★★
新型「フォルクスワーゲン・トゥアレグ」に加わった、ハイブリッドモデルに試乗。高級SUVはハイブリッドシステムを得てどう変わったか? 街なかを、山道を走った。
高級サルーンもかくや
8年ぶりのフルモデルチェンジとなる「トゥアレグ」。そのハイブリッド仕様は、フォルクスワーゲンの量産車としては初めてのハイブリッドモデルであり、従来型に設定されていた4.2リッターV8エンジン搭載車の後継モデルと位置付けられている。パワーユニットは3リッターV6直噴スーパーチャージャーエンジンに交流同期モーターを組み合わせたパラレル方式を採用し、システム出力としては379psを得ている。バッテリーはオーソドックスなニッケル水素(三洋電機製、288V)で、ラゲッジフロア下に搭載する。なお、この構成自体は「ポルシェ・カイエン」も同じだが、あちらは200万円高価な価格設定となっている(1098万円)。
このハイブリッドシステムは、エンジンと8段ATの間にデカップリングクラッチ(通常の乾式単板と同等のもの)を持つのが特徴だ。ATの出力側にある湿式多板クラッチも“1クラッチ”と数えるなら、見方によっては「日産フーガハイブリッド」の「1モーター2クラッチ方式」に近い構成をとっている。しかし両者の最大の違いは、トルクコンバーターの有無。フォルクスワーゲングループのシステムにはトルコンが残されており、この方式で生じがちなトランスミッション内の振動に対し慎重を期しているように見える。もっとも重量増加や出力の伝達効率低下を考えればトルコンはないほうがベターのはず。重量級のハイパワーSUVだから許された構成といえそうだ。
その加速感はとてもパワフルである。4.2リッターV8モデルの後継として十分な迫力を備えている。またモーターとエンジンの連携が見事で、街乗りではドライブトレインの滑らかさが印象的だ。これにしなやかな乗り心地が加わって、高級サルーンもかくやの洗練された快適な走りを披露する。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「フォルクスワーゲン・トゥアレグ」は2002年に初代がデビューした、大型のSUV。2010年3月のジュネーブショーで2代目が発表され、日本には2011年1月に上陸した。
先代同様「ポルシェ・カイエン」と基本骨格を共用する新型のエンジンは、3.6リッターV6に加えて、フォルクスワーゲン量産車初となるハイブリッドシステム、すなわちスーパーチャージャー付き3リッター直噴V6エンジンとモーターを組み合わせたパワートレインも用意される。いずれも8段ATが組み合わされる。
サスペンションは4輪ダブルウィッシュボーン式。車高調節可能なCDCエアサスペンションはハイブリッドに標準、V6にはオプションで用意される。
(グレード概要)
軽量化を含めて燃費向上をテーマに掲げた新型トゥアレグに加わったのが、ハイブリッドモデルだ。10・15モード燃費は、V6モデルの9.5km/リッターを上回る13.8km/リッターを達成した。
CDC(コンティニュアス・ダンピング・コントロール)エアサスペンションは標準装備。4WDシステムは、フルタイム4WDシステムの「4MOTION」が採用される。
トゥアレグでは最上級グレード、さらに日本市場ではフォルクスワーゲンの最高級車となるため、上級装備は充実。レザーシートや前席シートヒーター、パワーテールゲートなどの快適装備が標準となるほか、前車追従機能付きのアダプティブクルーズコントロールやレーンキープアシストシステムなどの安全装備も与えられている。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
アルミとウッドのパネルをあしらったスクエアでクセのないデザインのダッシュボード、車高調整と4WDモードの2つの丸いコントロールスイッチを対象的に配置した幅の広いセンターコンソールなど、基本的な造形は従来型に近いイメージでまとめられている。しかし質感が一段と高められた。まるで高級サルーンのようだ。メーターの視認性は良好。スイッチの操作性も不満なし。
レーダーセンサーで前車を検知する「アダプティブクルーズコントロール」、車線の逸脱をステアリングの振動等で伝える「レーンキープアシストシステム」、ドアミラーに内蔵されたインジケーターで側面の車両接近を伝える「レーンチェンジアシストシステム」、さらには前後左右のカメラを使って車両の俯瞰(ふかん)画像を表示する「アラウンドビューカメラ」など、はやりの安全装備がひととおり標準装備されており、“今どきの高級車”が体感できる。4WDシステムは走破性がやや劣る4MOTIONになるが(V6は副変速機とセンターデフロックが付く4XMOTION)、使用実態をかんがみれば不足ではないはず。
(前席)……★★★★
室内幅が広く、乗員同士が比較的離れて座るため、互いに開放感が保たれる。シートは作りが大ぶり。体格の大きな乗員でも快適に過ごせるだろう。サルーンに比べれば着座位置は高く、周囲を見下ろす感じになるが、いわゆるクロカン四駆のコマンドポジションほどの“高台”ではない。またトランスファーは構造的に運転席側に張り出しているはずだが、ドライバーの左足の置き場はごく普通に確保されている。右ハンドル化の弊害は特に見当たらない。
(後席)……★★★★
後席は前後に約16cmスライドさせることができ、最後端で固定すればニールームに十分な余裕が生まれる。ヘッドルームにも不満はない。またセンタートンネルの張り出しが小さく、その点も居住性の改善に寄与している。シートの掛け心地については、前席に比べればクッション、背もたれとも作りが平板で、そのぶん劣る。しかしリクライニング機構(3段階調整)が備わっているおかげで、着座姿勢に変化を付けられて良い。オプションの大きなサンルーフを選べば開放感がかなり改善される。
(荷室)……★★★
フロア下にバッテリーが収納されているが、パッと見ただけではそうとはわからない。ラゲッジルームの容量も減っているようには思えないが、VDA法ではハイブリッドが493リッター、V6ガソリンは580リッターと差がついている。荷室側のスイッチによってワンタッチで後席背もたれを倒せるなど、工夫も抜かりなし。それにもかかわらず評価が平凡なのは、全長が4.8mもあるクルマにしては絶対的な荷室容量が広くないため。最大で1555リッターというのは「パサート・バリアント」より少ない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
まず最初に知っておくべきは、このクルマには4つの走行モードがあるということ。その4つとは、「ガソリンエンジンによる走行モード」のほか、50km/h以下でおとなしく走るかセンターコンソールの“E-MODE”ボタンを押すことで可能となるモーターのみの「EV走行モード」、ドライバーがスロットルペダルを離した瞬間にクラッチが切れて移行する「コースティングモード」(160km/hまで可能。コースティング時はモーターは室内装備に給電し、制動した瞬間から回生が始まる)、そしてスロットル全開時に現れる「ブーストモード」である。
ごく普通に走ると、都内のような平均速度の遅い地域ではほとんどモーター走行となるばかり。あるいはもうちょっと流れの速い環境だと、モーターのみで動き出す→50km/hを超えたところでエンジンにバトンタッチ→スピードが乗ってきてスロットルオフでコースティングモード→制動に入り回生、などというパターンの繰り返しとなり、エンジンとモーターの駆動力がミックスされる機会はほとんどない。なぜなら“ミックス”はブーストモードでしか現れないからだ。これはエンジンとモーターの駆動力をちょこちょこ混ぜながら走る日本のハイブリッド車とは、制御の思想が最も異なる部分である。
だからモーターアシストによるV8に匹敵するトルクを体感したければパートスロットルではダメで、フルスロットルを与えるしかない。日常的にはあまり恩恵に浴せない特性なのである。
3リッターV6スーパーチャージャーユニットは単体で十分なパワーがあるし、モーターとの橋渡しの際のパワーフローもシームレスで違和感がないし、パワートレインの“動的な質感”は非常に高い。遮音が優れているため、低速走行時はタコメーターを見なければ、今エンジンなのかモーターなのかわからないこともある。
トランスミッションについては、トルコンが介在しているために、いかにもAT的になめらかでスムーズな走行フィールである。乾式クラッチだけで出力をコントロールしているフーガ・ハイブリッドの方式のほうがダイレクト感は高い。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
乗り心地の良さは、ハイブリッド仕様に限らずエアサスペンションを装着したトゥアレグ最良の点のひとつである。サスペンションの動きがとにかく滑らかで、突起を乗り越えた時の“当たり”は非常にしなやか。それでいて微小域からダンピングがきっちり効いており、姿勢は気持ちがいいほどフラットに保たれる。265/50R19サイズという大きなタイヤを装着しているが、SUVにありがちなバネ下の重さをほとんど感じさせない。高級サルーンのような洗練された乗り心地である。センターコンソールにはダンピングレートのモードセレクターがあって、「NORMAL」のほか「COMFORT」と「SPORT」が選べるようになっているが、「NORMAL」モードですでに相当にコンフォートである。
「SPORT」を選べば足まわりが引き締まり、気持ちのいいターンインが可能になる。ロール剛性が高く、SUVとは思えない軽い身のこなしが印象的だが、この状態とてハーシュネスはまったくといっていいほど気にならない。
ひとつ気になった点を挙げるとすれば、制動時のブレーキフィールにやや不自然さを感じることがあった。狙ったポイントをオーバーランしてしまうのではなく、制動力が思いのほか高く、少し手前で止まってしまうことがあった。ヒステリシス(抵抗感)の演出はかなりいい線いっているので、ぜひもうひと磨きしてほしいところである。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:竹下元太郎
テスト日:2011年3月10日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2011年
テスト車の走行距離:3834km
タイヤ:(前)265/50R19(後)同じ(いずれも、ブリヂストン・デューラー H/P スポーツ)
オプション装備:電動パノラマスライディングルーフ(23万1000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(6):山岳路(2)
テスト距離:296.1km
使用燃料:33.8リッター
参考燃費:8.8km/リッター

竹下 元太郎
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