大フランス車時代到来の予感!? プジョー&シトロエン躍進の背景に迫る
2021.05.05 デイリーコラム驚異的な伸び率を記録
先日の「3008」と「リフター」の試乗記でも少し書かせていただいたのだが、最近プジョー、そしてシトロエンにまつわる景気のいい話をよく聞く。
実際、これら2ブランドはわが日本市場でも絶好調である。現在、プジョーとシトロエンにDSを加えた3ブランドを国内展開するグループPSAジャパンによると、2021年の第1四半期(1~3月)において、同社の総販売台数が過去最高を記録したのだ。
もう少し細かく説明すると、3月のプジョーの国内販売台数は1911台。これは前年同月比で+50%以上(!)という記録的な数字で、プジョーの単月販売台数としては過去10年で最高、過去20年でも歴代2位(歴代1位は2003年3月の1973台)にあたる記録という。さらにいうと、2021年第1四半期のプジョー単独の国内販売台数は3907台であり、これも過去最高なのだそうだ。その理由は「208」や「2008」といった台数が稼げるコンパクトカーの2020年来の好調に加えて、年初に3008と「5008」のマイナーチェンジモデルが上陸した新車効果があったと思われる。
また、シトロエンもプジョーに負けず劣らず……というか、ある意味でそれ以上に勢いがある。シトロエンは2021年3月に国内で944台(前年同月比+69.2%)を売り上げたが、これもシトロエンの単月記録では過去最高。そして、この第1四半期の1705台もシトロエンとしては過去最高記録という。グループPSAジャパンによると、シトロエンの今回の好調の背景には、昨2020年に本格上陸した「ベルランゴ」の人気がシトロエンそのものの注目度やディーラー集客力の向上につながって、シトロエン全体の販売増に波及したのだという。
このように日本では今プジョーとシトロエンが絶好調なのだが、もうひとつのDSが足を引っ張っては、冒頭のように“総販売台数”で過去最高を記録するのはむずかしい。実際、DSの国内販売台数は過去最高とまではいかなくても、3月の114台は前年同月比で+46.2%、1~3月の累計(=第1四半期)でも前年同期比+22.8%と、これまた好調なのだ。
スキのないニューモデル攻勢
もっとも、日本におけるプジョーとシトロエンの好調は、最近にかぎった瞬間風速の話ではない。
プジョーの場合は、2010年代前半はほぼ横ばいだった国内販売が、2016年から3年連続で前年比2ケタ%増の急成長を記録して、2019年も+7%強という勢いを維持した。そして昨2020年も多くのブランドが前年比割れするなかで、わずかながらも前年比プラスを記録。というわけで、プジョーの国内販売は急成長する前年の2015年から2020年まで6年連続で右肩上がりとなっている。
シトロエンは2013~2015年に3年連続で-2ケタ%の前年割れとなる大不振の後、2016年にプラスに転じると、2017年に前年比+56.9%と“再ブレーク”ともいえる大幅回復を果たす。その後は昨2020年まで4年連続2ケタ%増……と、ここのところの成長の勢いはプジョー以上だ。
プジョーの国内販売の再成長前夜ともいえる2014年末には「308」がモデルチェンジして地ならしをした後、前年比2ケタ増となった2016年にはクリーンディーゼル各車が、翌2017年には今やプジョーの国内販売の2割を占めるSUVの3008が発売されている。あくまで数字の推移を見るに“ディーゼル導入とSUV戦略”が、日本におけるプジョー再成長のエンジンだったと見ていいだろう。
いっぽうのシトロエンが下げ止まった2016年も、やはりディーゼル車が導入された年だ。そして本格的な再ブレークとなった翌2017年には、フランス車としては近年まれに見る(?)ヒット作といえる現行「C3」が国内発売。そして、その勢いが落ち着いてきた2019年になると、今度は「C3エアクロスSUV」と「C5エアクロスSUV」による“SUV戦略”をしかけたかと思えば、翌2020年には待望のベルランゴを投入している。それはまさに、一分のスキもない計画的なニューモデル攻勢といっていい。
営業利益率でも優等生
ちなみに、2014年6月にシトロエンからスピンアウトする形で独立したDSは、現状ではよくも悪くも「売れ筋の『DS 3』しだい」というほかない。先代にあたるDS 3(ハッチバック)がモデル末期にさしかかった2017~2018年にはDS全体の販売台数も落ち込んで、事実上の後継機種である「DS 3クロスバック」が上陸した2019年には前年比で+20%以上の回復をしている。ただ、本格的なブランドとしてのDSの真価が問われるのは、今の日本ではやはり新型「DS 4」や「DS 9」が上陸して、フルラインに近い商品群がそろってからだろう。
……と、プジョーとシトロエンは、極東の日本でも、ここ4~5年の積極戦略と急成長が印象的で、しかもここ1~2年の勢いがすごい。そんな彼らの躍進は日本にかぎったことではなく、地元欧州を含めたグローバルに共通するものでもある。
たとえば、昨2020年のグループPSA(この場合はオペル/ボクスホールを含む)の欧州全域(主要30カ国)における販売は、台数こそ新型コロナウイルスの影響で前年比マイナスとなったものの、シェアではついに宿敵ルノーグループをぬいて2位となった(1位はフォルクスワーゲングループ)。さらには、同年の自動車部門の営業利益率で7.1%を記録している。
完成車メーカーの営業利益率は優秀といわれるボーダーラインが5%とされており、日本の乗用車メーカーの2020年度決算でそれをクリアすると見込まれる(=2020年末時点での業績予想)のは、トヨタとスズキくらいといわれている。まして、日本より新型コロナウイルスの影響が甚大だった2020年の欧州メーカーにおいて、7.1%という営業利益率は率直にいって超優秀である。
偉大なるカルロス・タバレスCEO
グループPSAの長年の不振から躍進への転機となったのは、このwebCGでも何度も書かせていただいているが、旧ルノーのカルロス・タバレス氏が同グループのCEOに就任したことだろう。
タバレスCEOの就任は2014年だが、その時点で、中国東風汽車とフランス政府からの資金援助も含めた大規模なリストラ計画や、プジョーやシトロエン、DSの新型車プロジェクトの多くはすでに進行中だったという。そんななかでのタバレスCEOの功績のひとつは、そこにキャッシュフローと営業利益率の明確な目標を掲げて、これらの改革をより強力に推し進めたことだ。そしてもうひとつの功績は“業界きってのカーガイ”の定評にたがわず、各ブランドの商品ラインナップを分かりやすく魅力的に整理・拡充したことだろう。その際のコンセプトは「プジョーのより明確なキャラクターづけ、シトロエンの継続的なテコ入れ、DSのプレミアムブランドへの独立」だった。
実際、タバレス以後のプジョーとシトロエン、DSは、主要ハードウエアを大胆に共通化しつつも、デザインや乗り味はブランドごとに明確にちがっている(各ブランドのステアリングホイール径のちがいなど、その典型にして象徴だ)。いっぽうで「SUVと電動化」という今どきのクルマが注力すべきポイントは、各ブランドとも例外なく強力に推し進められたのだ。
というわけで、グループPSAを見事に復活させ、新型コロナ禍にも負けない強靭化に成功したタバレスCEOは、グループPSAに続いて、ステランティスとして旧FCA系ブランドのテコ入れにも着手する。今度はどんな手を打ってくれるだろうか?
(文=佐野弘宗/写真=グループPSAジャパン、ステランティス/編集=藤沢 勝)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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