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ハーレーダビッドソン・ストリートボブ114(6MT)

不良の気分で楽しみたい 2021.06.04 試乗記 田村 十七男 シンプルで伸びやかな“チョッパースタイル”を特徴とする、ハーレーのクルーザー「ストリートボブ」。従来型を上回る1868ccの特大エンジンが搭載された、最新2021年モデルの走りやいかに?

「ハーレーに乗ってる感」に満たされる

ハーレーに試乗するたび感じ入るのは、「オレ今、ハーレーに乗ってる」という“圧倒的な納得”だ。「そんなの当然だろう」とツッこまれるのを承知したうえでの発言なので、別の言い方をしてみる。

不思議なことにハーレーにまたがると、モーターサイクルに乗っている感覚が湧いてこない。その感覚は、かつて「スポーツスター」と呼ばれ、今は「ストリート」と称するラインナップの、最大1202㏄エンジンを搭載する半ば前のめりのモデルよりも、全長が長くシートが低く、おおむね反り返った姿勢で正面からの風を真っ向から受けることをむしろ望んでいる大型モデル群でより高まるのだが、本質として重要なのはこういうことだ。

この世にあまたある工業製品の中で、ハーレーほど固有の世界観を有しているものは稀(まれ)ゆえ、他の何者でもない「ハーレーに乗ってる感」に包まれてしまうということ……。

まだ伝わらないか? よりかみ砕けば、やっぱり革ジャンを着たくなるとか、ヘルメットはジェットタイプが気分だろうとか、そうしたファッション的な側面だけでなく、信号待ちで止まったら自然とガニマタになってしまうとか、走りだしても慌てて先頭に出るよりはドロドロと湧いてくるトルクに任せて気がつけばすべてを後方に追いやるような余裕ある走り方がふさわしいとか……。

要するに、ハーレーが無言で提示してくる(あるいは固定観念がひねり出した縛りと同義に思えるような)世界観にあらがえなくなることで、モーターサイクルではなくハーレーに乗っているという、独特で特別な感情に支配されるのだ。

え~と、ご託を並べているようにしか聞こえないだろうという自覚はあります。ただ、書き手として単純に「ハーレー、すごい」で済ませたくなくて、こんなに文字を費やしてしまいました。そしてこれが前半戦の結論ですが、2021年モデルのストリートボブもハーレーのすごさに満ちておりました。試乗とはいえ革ジャンを用意しなかったことを悔やむほどに、それは満々と、煌々(こうこう)と、淡々と。

余計な外装をはぎ取ったかのような“ボバースタイル”が特徴の「ストリートボブ」。2021年モデルは排気量アップを反映し「ストリートボブ114」を名乗る。
余計な外装をはぎ取ったかのような“ボバースタイル”が特徴の「ストリートボブ」。2021年モデルは排気量アップを反映し「ストリートボブ114」を名乗る。拡大
ハーレー伝統の空冷V型2気筒エンジン。そのすぐ横にペダルがある通り、乗車姿勢はひざを直角に曲げる“殿様乗り”になる。
ハーレー伝統の空冷V型2気筒エンジン。そのすぐ横にペダルがある通り、乗車姿勢はひざを直角に曲げる“殿様乗り”になる。拡大
ドラッグレーサーを思わせる、ろ紙むき出しのエアフィルター。誇らしげな「114」の数字は、排気量が114キュービックインチ(1868cc)であることを示す。
ドラッグレーサーを思わせる、ろ紙むき出しのエアフィルター。誇らしげな「114」の数字は、排気量が114キュービックインチ(1868cc)であることを示す。拡大
マフラーエンドはスラリと伸びた2本出し。大排気量車である割にスリムなデザインが印象的だ。
マフラーエンドはスラリと伸びた2本出し。大排気量車である割にスリムなデザインが印象的だ。拡大
バイクの顔たるヘッドランプも、小ぶりなものが採用されている。
バイクの顔たるヘッドランプも、小ぶりなものが採用されている。拡大
「1」の字をあしらったフューエルタンクは容量13.2リッター。色は、試乗車のオレンジのほか、緑、白、黒系の3色が選べる。
「1」の字をあしらったフューエルタンクは容量13.2リッター。色は、試乗車のオレンジのほか、緑、白、黒系の3色が選べる。拡大
カスタムバイクの世界でも多く見られる、エイプハンガー(猿つるし)スタイルのハンドルバー。ライダーは両手を前方に突き出すかたちで乗車する。
カスタムバイクの世界でも多く見られる、エイプハンガー(猿つるし)スタイルのハンドルバー。ライダーは両手を前方に突き出すかたちで乗車する。拡大
シンプルデザインを身上とするチョッパーゆえ「ストリートボブ114」は計器類を持たない……わけはなく、ハンドルクランプ一体型の液晶メーターが備わる。
シンプルデザインを身上とするチョッパーゆえ「ストリートボブ114」は計器類を持たない……わけはなく、ハンドルクランプ一体型の液晶メーターが備わる。拡大
300kgに迫る車重をものともせず、ロケット並みの加速を味わわせてくれる「ストリートボブ114」。低速で流すだけでも最高に気持ちいい。
300kgに迫る車重をものともせず、ロケット並みの加速を味わわせてくれる「ストリートボブ114」。低速で流すだけでも最高に気持ちいい。拡大
シートの下には、水平近くにまで寝かされたモノショックがおさまる。乗車スタイルに合わせて、プリロードが調節できる。
シートの下には、水平近くにまで寝かされたモノショックがおさまる。乗車スタイルに合わせて、プリロードが調節できる。拡大
多くのバイクがチェーン駆動であるのに対して、メンテナンス性と静粛性の観点からハーレーではベルトドライブを採用している。
多くのバイクがチェーン駆動であるのに対して、メンテナンス性と静粛性の観点からハーレーではベルトドライブを採用している。拡大

扱いやすくも冗談みたいなエンジン

そんなわけで、ようやく各論です。コロナ禍の影響を受け、例年より半年遅れで発表された2021年モデルの目玉商品的に紹介されたのが、ハーレーが呼ぶところの“Number One”グラフィックを前面に押し出したストリートボブだ。

車名に使用された「ボブ」は、「短く切る」を意味する点で女性のヘアスタイルにも通じるが、二輪界では主に外装部品を可能な限り外したりカットしたりするカスタマイズのジャンルを指す。となるとストリートボブが備えているチョッパーハンドル(ハーレーの呼称は「ミニエイプバー」)は追加品じゃないかと疑問が湧くが、これが名称を受け継ぎながら発展してきたこのモデルの様式である。

最新ストリートボブで伝えておくべきは、2020年までの「ミルウォーキーエイト107」から、同名の「114」エンジンに積み替えられたこと。114はキュービックインチによる排気量表示で、なじみの単位に換算すると1868ccになる。107エンジンと比較すると、排気量で100㏄以上拡大。トルクは11N・m増量の155N・m。107も十分にパワフルだが、114の加速はロケット並みだ。なめてかかると自分だけその場に置き去りにされかねない。

しかし強大なエンジンに対しては、自重する意識があれば次第に慣れてくると思う。その威力を存分に味わいたければしかるべき場所に行けばいいし。そしてまた、トルクを生かしながら低い回転数で連続するカーブを走ると、意外にも滑らかにこなしていく心地よさを感じるだろう。チョッパー、いやミニエイプバーも(身長175cmの筆者の体格なら)わりと自然な位置にグリップがくるようにセッティングされていて、操作性に支障を感じなかった。

なんのかんの、最近のハーレーは扱いやすい。これは総論。エンジンの排気量は冗談みたいだが、乗り手すら振り落としそうなかつての振動はほぼ解消されている。そんなエンハンスを絶やさず、ストリートボブのような華やかな新型を毎年必ず発表する実直さもみせ、なおかつ他の何者でもない「乗ってる感」を製品に与え続けるなんて、こんなにすごいメーカーはほかにないとさえ思わされる。それはすべて、週に一度くらいは不良の気分を楽しみたい大人たちの期待を裏切らないための務めなのだろう。

つくづく後悔しているのは、ジェットヘルと革ジャンでストリートボブにまたがった姿を撮ってもらわなかったことだ。「オレ、ダサく乗ってない?」と気がかりでならない。

(文=田村十七男/写真=向後一宏/編集=関 顕也)

ハーレーダビッドソン・ストリートボブ114
ハーレーダビッドソン・ストリートボブ114拡大
短いフェンダーと大径19インチのスポークホイールのおかげで、フロントまわりはスッキリとした印象だ。
短いフェンダーと大径19インチのスポークホイールのおかげで、フロントまわりはスッキリとした印象だ。拡大

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2320×--×--mm
ホイールベース:1630mm
シート高:680mm
重量:297kg
エンジン:1868cc 空冷4ストロークV型2気筒 OHV 4バルブ
最高出力:--PS(--kW)/--rpm
最大トルク:155N・m(15.8kgf・m)/3250rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:--km/リッター
価格:199万6500円

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