日産ノート オーラGレザーエディション(FF)/ノート オーラG FOURレザーエディション(4WD)
かみ合った歯車 2021.06.15 試乗記 「日産ノート」ベースのプレミアムコンパクト「ノート オーラ」が登場。パワーアップした「e-POWER」や3ナンバー化された専用ワイドボディー、上級路線を目指したというこだわりの内装や装備など、注目すべきポイントの仕上がりを、テストコースで確かめた。大人のたたずまい
ルノーと共同開発された新世代のプラットフォームを採用し、搭載パワーユニットはやはり各部が刷新された“第2世代”がうたわれるシリーズ式ハイブリッドシステムe-POWERに限定。もちろんデザインも一新したことで、まさに「名前以外はすべてが新しい」と紹介できる大胆なモデルチェンジを遂げたのが、日産の新型ノート。2020年末の登場でまだ新鮮さが漂うそんなモデルに、新たなバリエーションが加えられた。
「オーラ」を名乗るこのモデルは、単なる充実装備が施された上級グレードなどにはとどまらない、ちょっと気になる内容の持ち主である。そのポイントの第一は、専用のボディーが与えられたこと。具体的には「より魅力的なスタイリングを実現する」という目的から、フロントのフェンダーまわりがさらに自然なフレア形状へと変更・拡幅されたことを筆頭に、ドアやフード、ルーフ以外に専用造形を採用。結果、全幅は40mm増してベース車両の5ナンバー枠を外れ、“3ナンバー枠”へと踏み込んでいるのだ。
フロントグリルにはより凝ったメッシュデザインが採用され、ランプ類も新たなグラフィックを採り入れたうえでフルLED化。全体のたたずまいが少し大人になったように見えるのは、最大でも16インチだった標準車に対して17インチのシューズが標準化され、しかも樹脂加飾付きで凝ったデザインのアルミホイールを採用するという“足元のオシャレ”の効果も大きいはずだ。
そんなノート オーラのエクステリアデザインは、新たな日産のフラッグシップとして近々デビューが予定されているピュアEV「アリア」との強い血縁関係をほうふつとさせるテイスト。そしてもちろん、それは当初から狙った戦略でもあるに違いない。
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細かなポイントも入念につくり込む
インテリアに身を委ねても、このモデルが“まやかしの上級グレード”などではないことを実感させられる。
ドライバー席のドアを開いた際に真っ先に目に飛び込んでくるメーターパネルは、センターディスプレイと段差を介して連続するノート独特のデザインを踏襲しながらも、より大型化。表示されるグラフィックやコンテンツも専用のデザインだ。
ノートの特徴である高くフラットなセンターコンソールを筆頭に、ダッシュボードやドアトリム部分が、木目の凹凸までを表現したパネルやツイード調表皮に覆われるなど、ベースモデルとは一線を画した丁寧な仕上げが施されるのもオーラならでは。シートはツイード調のファブリックと合皮によるコンビネーション表皮が標準で、「レザーセレクション」を選択すると、「30mmのソフト層を採用する高級車並みの3層構造」がうたわれる本革シートとなる。
細かい部分では、ベース車で気になったガタンと開くグローブボックスが、ダンパー付きのものへと改められていたことにも感心。一方、ちょっと残念に思えたのはカップホルダー。せっかくスッキリとシンプルな造形のダッシュボード両端に煩雑な見切り線を増やすのみならず、なんとも商用車ライクな使用時の所作が、日本車では稀有(けう)な“上級コンパクト”というコンセプト自体にも、水を差すことになっていると思えてしまうからだ。
活発な加速力
ところで、そんなノート オーラの気合の入りようを端的に示すのはデザインや装備面にとどまらず、動力性能面でもベース車両との間に、明確な差異化が図られている点だ。
具体的には、フロントモーターの最高出力がベース車両の116PS(85kW)に対して136PS(100kW)、最大トルクが280N・mに対して300N・mと向上。モーターやバッテリー、組み合わされる1.2リッターエンジンなどのハードウエアには一切の変更は行っていないというから、これは「ソフトウエア変更で、フロントモーターに対してより大電力を送り込めるようになった結果の向上」と理解できる。駆動方式は前述のスペックを有するFWDモデルと、そこに後輪駆動用に最高出力68PS(50kW)のモーターを追加した4WDモデルが用意されている。
今回テストドライブを行ったのは、“日本最古の国産乗用車工場”と紹介しても過言ではない、横須賀市の日産・追浜工場に併設された「GRANDRIVE(グランドライブ)」。かつてのテストコースをベースに、現在ではイベント用へと改修された施設だ。コーナーがきついうえに路面のバリエーションも限られ、さらに時間もごく短い……と制約が続いたものの、発売前でナンバーも付かない状況では、それもやむなしだった。
そもそも、街乗りシーンではベース車両でも加速力に全く不満のないノートだが、オーラではさらに活発な加速力が明白。テスト当日は快晴下のドライ路面で、FWDモデルでもトラクション能力に不足は感じなかったが、これが雨天の上り坂であったりしたら、「やはり4WDが有利」と印象は変わっていたかもしれない。後輪用モーターの出力に変更はないが、そもそもが従来型ノートの4WDモデルよりもはるかに強力なリアモーターを採用する新型。それゆえ、タイトなターンからの脱出時などには、4WDモデルの「後輪もしっかり大地を蹴っている感」がなかなか新鮮だ。
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オーディオもプレミアム
ところでオプション扱いではあるものの、このモデルでもうひとつ開発陣が見どころと強調していたのが、オーラ専用に開発を行ってきたというプレミアムなオーディオシステム。フロントシートのヘッドレスト内蔵ユニットを含めた8つのスピーカーを用い、これまでコンパクトカーでは不可能だった臨場感や車室を超える広い音場を実現したとうたわれる、BOSE製の「パーソナルプラスサウンドシステム」である。
コンパクトカーでは分不相応とも思えるそんなシステムの設定に至ったのは、「車格を超えた」ともいえそうな、新型ノートの静粛性の高さも理由に挙げられるはずだ。
エンジンの稼働を、ロードノイズなど走行時の暗騒音発生時に集中。その存在感を巧みにオブラートに包み、実際にコンパクトカーのなかでは際立つ静粛性を実感させられた新型ノートだが、オーラの場合にはフロントドアに遮音ガラスを採用し、ルーフパネルに遮音材を追加することなどで、さらなる静粛性の向上を図っている。
いずれにしても、車両の企画とそこに採用すべきアイテム、そして完成されたモデルが有していたわかりやすいキャラクターと、いくつもの歯車が見事にかみ合ったと思えるのがこの一台。「ちょっとくらい高価でも、これなら欲しくなる」と感じる、久々の“やったね、日産!”だと思う。
(文=河村康彦/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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テスト車のデータ
日産ノート オーラGレザーエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4045×1735×1525mm
ホイールベース:2580mm
車重:1260kg
駆動方式:FWD
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:82PS(60kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:103N・m(10.5kgf・m)/4800rpm
モーター最高出力:136PS(100kW)/3183-8500rpm
モーター最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/0-3183rpm
タイヤ:(前)205/50R17 89V/(後)205/50R17 89V(ブリヂストン・トランザT005 A)
燃費:27.2km/リッター(WLTCモード)
価格:269万9400円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:760km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
日産ノート オーラG FOURレザーエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4045×1735×1525mm
ホイールベース:2580mm
車重:1370kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:82PS(60kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:103N・m(10.5kgf・m)/4800rpm
フロントモーター最高出力:136PS(100kW)/3183-8500rpm
フロントモーター最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/0-3183rpm
リアモーター最高出力:68PS(50kW)/4775-1万0024rpm
リアモーター最大トルク:100N・m(10.2kgf・m)/0-4775rpm
タイヤ:(前)205/50R17 89V/(後)205/50R17 89V(ブリヂストン・トランザT005 A)
燃費:22.7km/リッター(WLTCモード)
価格:295万7900円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:1190km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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