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ホンダCB400スーパーフォア(6MT)

日本の至宝 2021.08.15 試乗記 後藤 武 ここ最近、テスターの周囲で話題となっているのは、「ホンダCB400スーパーフォア」がいよいよ次の排ガス規制でファイナルになりそうだという話。そして皆が「あのバイクはなくしてはいけないのではないか」と意見を述べる。一体、なにがそんなに素晴らしいのか。現行モデルのインプレッションを含め、CB400スーパーフォアというマシンのことを説明してみたいと思う。

30年近く続くヒストリー

初代CB400スーパーフォア(以下スーパーフォア)が登場したのは1992年のこと。カワサキの「ゼファー」によってネイキッドブームが盛り上がりつつあった頃だ。水冷4気筒DOHCエンジンを搭載し、完成度の高さから発売されるや瞬く間にクラスナンバーワンの座を奪取。その後、エンジンに可変バルブ機構「ハイパーVTEC」を採用し、厳しさを増す排ガス規制に対応するべく吸気系をキャブからPGM-FIに変更。さらにハイパーVTECを改良して環境性能と動力性能、走る楽しさを高いレベルでバランスさせるなどの進化を遂げてきた。現在では、400ccクラス唯一の直列4気筒エンジン搭載マシンとなっている。

教習車にも採用されるなど、扱いやすいことで知られているスーパーフォアだが、大きな魅力のひとつがスポーツ性の高さだ。1990年代、ネイキッドマシンによるレースが盛り上がっていた頃には無敵ともいうべき速さを披露。上位入賞車の多くをスーパーフォアが占めていたほどだ。エンジンがノーマルだったにもかかわらず、サーキットによってはGP250クラスのレーシングマシンに匹敵するほどのタイムをたたき出していたのである。

当時のライダーたちが語っていた長所のひとつがコーナリング性能。サーキット用にセットアップされたマシンは、ライダーの意のままに動き、タイムを削り取ることが可能だった。そして、その車体性能は現行モデルにもそっくりそのまま受け継がれている。ノーマルではストリート向けに安定性や乗りやすさをバランスさせた設定になっているが、スポーツバイク顔負けの高いポテンシャルを秘めているのである。

1992年の誕生以来、何度もの改良を経て今日も販売されている「CB400スーパーフォア」。今や400ccクラスでは唯一の4気筒モデルである。
1992年の誕生以来、何度もの改良を経て今日も販売されている「CB400スーパーフォア」。今や400ccクラスでは唯一の4気筒モデルである。拡大
ヘッドランプは古式ゆかしき丸目の単眼だが、その中身は視認性/被視認性に配慮したLED式となっている。
ヘッドランプは古式ゆかしき丸目の単眼だが、その中身は視認性/被視認性に配慮したLED式となっている。拡大
メーターはクラシックな2眼の機械式。中央部には走行距離や残燃料、外気温などを表示するインフォメーションディスプレイが備わる。
メーターはクラシックな2眼の機械式。中央部には走行距離や残燃料、外気温などを表示するインフォメーションディスプレイが備わる。拡大
扱いやすさに加え、コーナリング性能の高さにも定評のあった「CB400スーパーフォア」。一時期はサーキットでも活躍をみせていた。
扱いやすさに加え、コーナリング性能の高さにも定評のあった「CB400スーパーフォア」。一時期はサーキットでも活躍をみせていた。拡大
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スポーティーなフィーリングはいまだ健在

エンジンを始動してすぐ耳に飛び込んできたのは、4気筒らしい排気音だ。以前のモデルに比べるとずいぶん勇ましくなっていて、高回転ではアフターマーケット製のマフラーにも劣らない快音を奏でる(もちろん音量は抑えられているが)。

400ccの4気筒ということもあり、3000rpm付近までのトルクはさほど大きくはないが、もたつくことはなく、スムーズなスタートが可能。中回転では十分なトルクがあるので市街地でも走りやすい。

低回転では2バルブだけを動かして低速トルクと燃費を稼ぎ、高回転では4バルブになってパワーを発揮するハイパーVTECの効果は素晴らしい。回転が上がっていくと6400rpm付近で4バルブが作動。排気音が甲高くなり、パワーがグーンと増して元気に加速していく。この回転域をキープしているときの楽しさは他のマシンでは味わえない。こういったメカニズムは、ビッグマシンの場合、作動する速度域が速すぎて宝の持ち腐れになってしまいがちだが、400ccの排気量なら、ストリートでもこの領域を思う存分使うことができる。

ホンダが初めて可変バルブを採用した「CBR400F」は、過激に特性が変わるため、面白い反面パワーの変動が大きすぎて乗りにくいこともあったが、最新のハイパーVTECはそんな心配もない。スロットル開度などによって作動回転数が変化したりと、改良が進んでいるためだ。試しにゆっくりと回転を上げていくと、作動したことが分からないくらい滑らかに“つながって”いく。エンジンのパフォーマンスを引き出すだけでなく、扱いやすさと回す楽しさの両面でとても洗練された印象を受ける。

ストリートで唯一気になったのは、中速域で発生する微振動。5000rpm近辺でシート裏がビリビリと震えるのだ。スロットルを戻したときには振動が若干強くなるような印象があり、減速時にブレーキやクラッチに手を当てていると、レバーがビリビリと震えている。一気にエンジンを回すときはこの振動域を一瞬で飛び越えてしまうため、ほとんど体感できないのだが、ツーリングなどで長時間ライディングをするときは、この回転域を外したところで走りたくなる。

最高出力56PS、最大トルク39N・mを発生するNC42E型エンジン。排気量が小さいぶん、1万回転を優に超す高回転を気兼ねなく楽しめるのもうれしい。
最高出力56PS、最大トルク39N・mを発生するNC42E型エンジン。排気量が小さいぶん、1万回転を優に超す高回転を気兼ねなく楽しめるのもうれしい。拡大
1999年に採用された「ハイパーVTEC」。当初は6750rpmで稼働するバルブ数が切り替わる仕組みだったが、現在ではスロットル開度に応じて、6300-6750rpmの間で切り替わる「ハイパーVTEC Revo」に進化している(ギアが6速の場合のみ6750rpmで固定)。
1999年に採用された「ハイパーVTEC」。当初は6750rpmで稼働するバルブ数が切り替わる仕組みだったが、現在ではスロットル開度に応じて、6300-6750rpmの間で切り替わる「ハイパーVTEC Revo」に進化している(ギアが6速の場合のみ6750rpmで固定)。拡大
1気筒につき4つある吸排気バルブのうち、低回転域では2つのバルブのみを稼働。トルクを高めるとともに、燃料消費を抑制する。
1気筒につき4つある吸排気バルブのうち、低回転域では2つのバルブのみを稼働。トルクを高めるとともに、燃料消費を抑制する。拡大
迫力のあるサウンドを放つマフラー。存在感のシンプルな円筒形のデザインも特徴で、“磨きがい”がありそうだ。
迫力のあるサウンドを放つマフラー。存在感のシンプルな円筒形のデザインも特徴で、“磨きがい”がありそうだ。拡大
フロントブレーキにはφ296mmのフローティングディスクをダブルで装備。4ポッドキャリパーを組み合わせている。
フロントブレーキにはφ296mmのフローティングディスクをダブルで装備。4ポッドキャリパーを組み合わせている。拡大
フロントサスペンションは無段階調整式のプリロードアジャスターを備えた正立フォーク。リアはリザーバータンク付きのツインショックで、こちらも5段階調節のプリロードアジャスターが備わる。
フロントサスペンションは無段階調整式のプリロードアジャスターを備えた正立フォーク。リアはリザーバータンク付きのツインショックで、こちらも5段階調節のプリロードアジャスターが備わる。拡大
今どきのネイキッドモデルには珍しい、大きめのシートとリアカウル。シートは高密度ウレタンフォームでできており、その下には小物をしまえるスペースが備わっている。
今どきのネイキッドモデルには珍しい、大きめのシートとリアカウル。シートは高密度ウレタンフォームでできており、その下には小物をしまえるスペースが備わっている。拡大
気持ちよく回るエンジンと、バイクとの一体感を覚えさせるコーナリングが魅力の「CB400スーパーフォア」。願わくは、これからもつくり続けてほしいと思わせるバイクだった。
気持ちよく回るエンジンと、バイクとの一体感を覚えさせるコーナリングが魅力の「CB400スーパーフォア」。願わくは、これからもつくり続けてほしいと思わせるバイクだった。拡大

ライダーを夢中にさせるハンドリング

ハンドリングも相変わらず素晴らしい。素直で乗りやすいマシンはたくさんあるが、どんな操作をしても従順で扱いやすいマシンは、ある意味でダル。ライダーが乗り方を変えても反応が変化しない場合もあり、こうなってしまうと走りを追求しようとする人にとっては面白くない。

しかしスーパーフォアは、エキスパートが高いレベルの操作をすれば、それに的確に反応してくれる。体重をイン側に落としてコーナーに深く進入しながらブレーキをリリースすれば、高い旋回性能を発揮させられる。ライダーが荷重移動で積極的に攻めの走りをすれば、それにマシンが応えてくれる。サーキットで無敵を誇った頃の走りが、ストリートでもよみがえってくるのだ。

また、そうして“攻めた”ときにマシンとの一体感が強く感じられるのも、このマシンの気持ちのいいところ。ポジションやサスの動き、車体から感じられるインフォメーションなどによって、コーナーを攻めているとマシンとライダーが一体化して走っているような感覚になってくる。このフィーリングを知ってしまうと、スーパーフォアから離れられなくなってしまうのである。

400ccは中型免許制度で誕生した日本固有のクラスだが、道路事情や日本人の体格などを考えると、この国に最も適したサイズだという意見もある。日本のマーケットのために生まれ、日本のライダーのために進化してきたスーパーフォアに乗ると、この「400最高論」の話が頭をよぎる。願わくは将来のライダーのために、これからも残していってほしいモデルだと思う。

(文=後藤 武/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資)

ホンダCB400スーパーフォア
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ホンダCB400スーパーフォア(6MT)【レビュー】の画像拡大

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2080×745×1080mm
ホイールベース:1410mm
シート高:755mm
重量:201kg
エンジン:399cc 水冷4ストローク直列4気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:56PS(41kW)/1万1000rpm
最大トルク:39N・m(4.0kgf・m)/9500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:21.2km/リッター(WMTCモード)/31.0km/リッター(国土交通省届出値)
価格:88万4400円~92万8400円

後藤 武

後藤 武

ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。

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