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TOM’SレクサスLC500コンバーチブル(FR/10AT)

YAZAWAはなんて言うかな 2021.10.01 試乗記 トムスから新たなコンプリートカー「TOM’SレクサスLC500コンバーチブル」が登場。レクサスのラグジュアリーオープンを“レーシングテクノロジーで研ぎ澄ませた”とうたう、その実力やいかに!?

開いててヨカッタ

トヨタ系名門レーシングチーム&オフィシャルチューナー、トムスが開発した「レクサスLC500コンバーチブル」ベースのコンプリートカーである。前後オーバーフェンダーとエアロパーツで武装したそのいでたちは、う~む、プリンセス転じて、もののけ姫という感じでしょうか。こういうのがお好きな方にはたまらん魅力を放っている。

21インチのホイール、前245/40、後ろ275/35という超極太・超偏平タイヤは、レクサスLC500コンバーチブルのオプションにもあるサイズだけれど、全幅が50mm張り出していることにより、ただならぬ雰囲気を醸し出している。正直、このクルマが隣に来たらコワイです。

ただし、そのコワモテな外観はこけおどしではない。「レクサスLC500」(クーペ)で2017年のSUPER GTのチャンピオンを獲得している名門トムスが、レースで培ったテクノロジーをロードカーに転用したものなのだから。

トムスは2018年にLCクーペ用にエアロパーツとサスペンションキットを発売しており、コンバーチブルにもこれらを流用していると思われる。エアロパーツに関してはコンバーチブルのリアはクーペとは形状が異なるため、専用の控えめなスポイラーが装着されている。すべてドライカーボン製なのはレース屋なればこそ、だろう。

量産車だと、ダクトが設けられていても、樹脂でフタがしてある場合があるけれど、トムスのダクトは、前後オーバーフェンダーの後方も含めて、ちゃんと空気が流れるようになっている。流れなければ、リフトを抑えてダウンフォースを発生させることはできないのだから、当然である。

ところが、例えばフェンダーの後ろにダクトがあると、タイヤハウス内側の泥等がボディーを汚してしまい、きれい好きのオーナーさんから嫌われることになる。だから、量産車ではフタを外す/外さない、の選択権を与えている。

という話を某国産スポーツカーの試乗会で小耳にはさみ、以来、ダクトがちゃんと開いているのか、あるいはダクト風のデザインにしているだけなのか、筆者はそれによって、そのクルマのつくり手の本気度を計る目安にしているのですけれど、トムスのダクトはコンビニの往年のCMのように、開いててヨカッタ。

2021年7月30日に受注が開始された「TOM’SレクサスLC500コンバーチブル」。トムスのコンプリートカーはベース車の現行ラインナップのさらに上に位置する「架空の最上級グレード」を意識して開発されているという(「LC500コンバーチブル」自体はモノグレード)。
2021年7月30日に受注が開始された「TOM’SレクサスLC500コンバーチブル」。トムスのコンプリートカーはベース車の現行ラインナップのさらに上に位置する「架空の最上級グレード」を意識して開発されているという(「LC500コンバーチブル」自体はモノグレード)。拡大
エクステリアにはドライカーボン製の空力パーツが追加されている。写真はフロントディフューザー。
エクステリアにはドライカーボン製の空力パーツが追加されている。写真はフロントディフューザー。拡大
フロントディフューザーの両サイドはフィン形状になっている。
フロントディフューザーの両サイドはフィン形状になっている。拡大
サイドディフューザーには「TOM’S」のバッジがあしらわれる。幅があるので乗降時に足を乗せないように注意したい。
サイドディフューザーには「TOM’S」のバッジがあしらわれる。幅があるので乗降時に足を乗せないように注意したい。拡大
前後のオーバーフェンダーによってベース車よりも全幅が50mm拡大している(1970mm)。アーチ上部のエアダクトがリフトフォースを低減する。
前後のオーバーフェンダーによってベース車よりも全幅が50mm拡大している(1970mm)。アーチ上部のエアダクトがリフトフォースを低減する。拡大

爪の先は丸めてある

ボディー剛性を補強すべく、コンバーチブル専用パーツが開発されてもいる。これまたすでに発売されているクーペ用とはまったく異なる形状で、フロントのパフォーマンスロッドも、フロントサスペンションの左右の付け根を渡す単純なものではなくて、それぞれの付け根からフロントに向かって剛性を得られるようなロッドが渡してある。車体下部の補強も、長尺物のブレースがそれぞれセンターからボディーサイドにダイアゴナル(斜め)に渡してあって、文章で書いていてもなんのこっちゃですけれど、要は、なるほどこれはボディーのねじれに効きそうだ、と思われる補強がしてある。

さて、もののけ姫に乗り込む。内装やパワートレインには手が入っておらず、乗り込んでしまうと、レクサスLC500コンバーチブルのゴージャスな世界が迎えてくれる。スターターボタンを押す。V8が目覚めると同時に、がおおっと咆哮(ほうこう)をあげ、いざ走り始める。

あいにくの雨模様で、キャンバスのトップを開けることはできない。乗り心地はそうとう硬い。“TOM’S Racing”サスペンションキットの効用だろう。バネ下の巨大な21インチのタイヤ&ホイールが暴れたがっている気配が伝わってくる。

ところが、路面がやや荒れたところでも意外と大丈夫で、ガツンという鋭い衝撃はこない。バネ下に潜んでいるイノシシみたいな怪物が、その存在を訴えてはくるものの、フロアを食い破って爪を立てるようなことはない。爪の先っちょはちゃんと丸めてある。前245/40、後275/35の、ともに21インチで、「ブリヂストン・ポテンザS001L」はランフラットだというのに……。

その秘密は、いや、公開されているけれど、“TOM’S Racing”サスペンションキットが富士スピードウェイのタイム短縮だけではなくて、日常での使用も意識していること、前述したボディーの補強に加えて、トムス特製の鍛造アルミホイールが効いているのだ、たぶん。「トムスVP-10」。2017年のSUPER GTのチャンピオンカー「KeePer TOM’S LC500」のホイールと同じ鍛造マシンを使用して製造しているものだそうで、標準の21インチホイールに対して、一本あたり、フロントで約1.5㎏、リアで約3.5㎏の軽量化を実現しているという。

前後のサスペンションメンバーまわりなど、フロア下に計4カ所のブレース補強が施されている。
前後のサスペンションメンバーまわりなど、フロア下に計4カ所のブレース補強が施されている。拡大
5リッターV8自然吸気エンジンを囲むようにパフォーマンスロッドによる補強が施される。エンジン自体のスペックはベースモデルと変わらない(最高出力477PS/最大トルク540N・m)。
5リッターV8自然吸気エンジンを囲むようにパフォーマンスロッドによる補強が施される。エンジン自体のスペックはベースモデルと変わらない(最高出力477PS/最大トルク540N・m)。拡大
ホイールは軽量・高剛性が自慢の「トムスVP-10」。マットブラックが足元を引き締める。
ホイールは軽量・高剛性が自慢の「トムスVP-10」。マットブラックが足元を引き締める。拡大
リアにも巨大なカーボンディフューザーを装備。4本出しのマフラーカッターは試乗車のチタンパイプに加えてカーボンパイプも選択可能。
リアにも巨大なカーボンディフューザーを装備。4本出しのマフラーカッターは試乗車のチタンパイプに加えてカーボンパイプも選択可能。拡大

永ちゃんが聴きたい

じつのところ、筆者は標準モデルのレクサスLC500コンバーチブルに試乗していないけれど、これだけボディーを補強していて、かつ軽量ホイールを履かせてバネ下を軽くしている。となると、オリジナルの21インチ仕様のLCコンバーチブルよりも、とりわけ高速域ではより快適な乗り心地に仕上がっている可能性もあるのではないか。

確実に言えるのは、トムスLCが高速になればなるほど、明瞭に安定性が増してくるということだ。これぞダウンフォースなのだろう。高速サーキットかアウトバーンの速度無制限区域で合法的に試してみたいものだ、と夢想する。首都高速湾岸線は一般道より路面がいいということもあるにせよ、乗り心地もがぜんしなやかにも感じられる。

鎌倉あたりまで走って横浜に戻ると、雨があがった。時は来た! シフトレバー後方のカバーを開いて、スイッチを押す。たった15秒でホロが格納され、オープンカー乗りにとって待望の空が現れる。みなとみらい入路から上がって、大黒埠頭(ふとう)方面へとごきげんな気分で走らせる。

4000rpmを超えるとグオーッという5リッターV8自然吸気ユニットが雄たけびをあげ、車重2t近くの物体を猛烈な勢いで加速させる。V8サウンドが、ホロを閉じていたときよりも豪快にとどろく。その危険な香りのするサウンドに脅かされ、ゆったり流すことにする。大排気量V8の余裕しゃくしゃくのトルクも、そういう気分にさせる。

屋根という「つっかえ」がなくなり、乗り心地にがぜんしなやかさが出ていることもある。オープンカーというのは基本的にオープンにしたときのほうが乗り心地がよくなる。それは、このラグジュアリーなスポーツカーのコンプリートモデルも例外ではない。V8のグルービーなサウンドに包まれ、矢沢永吉が聴きたい。と思ったのは、たぶん、横浜を走っていたこともあるし、なにより、筆者の気分がビッグになっていたからだろう。

1350mmの全高はベースモデルと変わらないが、エアロパーツの装着によって地上高が低下。それに合わせて足まわりもハードに固められている。
1350mmの全高はベースモデルと変わらないが、エアロパーツの装着によって地上高が低下。それに合わせて足まわりもハードに固められている。拡大
インテリアのつくりはベースモデルと変わらない。インテリアカラーは「オーカー」。ダッシュボードやドアパネル、センターコンソールなどにセミアニリン本革が惜しみなく使われる。
インテリアのつくりはベースモデルと変わらない。インテリアカラーは「オーカー」。ダッシュボードやドアパネル、センターコンソールなどにセミアニリン本革が惜しみなく使われる。拡大
シートにはヒーターとベンチレーションが標準装備。エアコンはオープン時とクローズ時とで自動で制御が切り替わるようになっている。
シートにはヒーターとベンチレーションが標準装備。エアコンはオープン時とクローズ時とで自動で制御が切り替わるようになっている。拡大
トランスミッションはトルコン式の10段AT。セレクターはメタルとレザーで上品に仕立てられる。
トランスミッションはトルコン式の10段AT。セレクターはメタルとレザーで上品に仕立てられる。拡大

お金の有無の問題じゃない

矢沢永吉といえば、『成りあがり』に出てきたおばあちゃんのエピソードを思い出す。矢沢を育てくれたおばあちゃんは貧乏だったけれど、だれにも頼ることなく自立して生きていた……。すいません、ずいぶん前に読んだもので正確ではなくて……。ネットで検索したら、矢沢永吉の名言を紹介するサイトが出てきた。

矢沢永吉の名言には「最終的には自分でドアを開けなきゃ。まわりは開けてくれない、開けられないですよ」「言いたいのは、それひとつだよ。その生き方を人のせいにしちゃダメだ」などがあります。

これですよ、私が申し上げたかったのは。そういう生き方を選んだ人でなければ、レクサスのフラッグシップに、さらに500万円近くも余分に投じて、そのトムス版を手に入れるなんてことは難しいのではあるまいか。単にお金がある/ない、の話ではないと筆者は思う。

同サイトによると、日本のロックスター、矢沢永吉はこんなことも言っている。

「1のリスクしかないことはしない、10のリスクがあることをする。達成すれば10の成果がある」

これって、クルマ選びにも当てはまるのかもしれない……。

(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)

雨が上がったのでソフトトップを開けると、V8サウンドを心ゆくまで楽しめた。
雨が上がったのでソフトトップを開けると、V8サウンドを心ゆくまで楽しめた。拡大
ルーフの開閉スイッチはセンターコンソール部分のフタを開けると姿を現す仕掛け。
ルーフの開閉スイッチはセンターコンソール部分のフタを開けると姿を現す仕掛け。拡大
ルーフの開閉に要する時間はそれぞれ約15秒。動き始めや動作の切り替え時に約0.2秒のタメをつくることで書道の筆運びのような優雅さを追求している。
ルーフの開閉に要する時間はそれぞれ約15秒。動き始めや動作の切り替え時に約0.2秒のタメをつくることで書道の筆運びのような優雅さを追求している。拡大

テスト車のデータ

TOM’SレクサスLC500コンバーチブル

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4770×1970×1350mm
ホイールベース:2870mm
車重:2050kg
駆動方式:FR
エンジン:5リッターV8 DOHC 32バルブ
トランスミッション:10段AT
最高出力:477PS(351kW)/7100rpm
最大トルク:540N・m(55.1kgf・m)/4800rpm
タイヤ:(前)245/40RF21 96Y/(後)275/35RF21 99Y(ブリヂストン・ポテンザS001L)※ランフラットタイヤ
燃費:8.0km/リッター(WLTCモード)
価格:1995万円/テスト車=1995万円
オプション装備:なし

テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1842km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:197.5km
使用燃料:32.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.2km/リッター(満タン法)/6.3km/リッター(車載燃費計計測値)

TOM’SレクサスLC500コンバーチブル
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