レクサスLC500コンバーチブル(FR/10AT)
ワイルドな美貌 2025.04.22 試乗記 「レクサスLC500コンバーチブル」をドライブ。テストコースで走り込みを重ね、開発コンセプトの「より鋭く、より優雅に」を磨き上げたという最新モデルだ。雨の合間を縫ってルーフを開け、進化のほどを確かめてみた。ブランドを象徴するモデル
まずは写真をじっくりと見てほしい。この華やかであでやかで美麗でゴージャスな姿こそがレクサスLC500コンバーチブルが持つ最も重要な価値なのだ。エンジンやシャシーの秀抜なパフォーマンスと機能は、美しいフォルムから導き出されたものなのかもしれないと感じさせる。レクサスのイメージリーダーとなるオープントップスポーツカーにとって、卓越した美貌は性能である。
試乗と撮影を行った日は春の嵐が吹き荒れていたが、日差しが出たつかの間にこの写真を撮ることができた。天から神々しい光が降りてきて海を照らし、荘厳な光景が立ち現れている。凡庸なクルマならば貫禄負けしそうだが、LC500コンバーチブルはまったく見劣りしない。一幅の絵のようで、カメラマンの腕が鳴る最高の舞台となった。
LC500がデビューしたのは2017年のこと。2012年のデトロイトショーで発表されたコンセプトカー「LF-LC」が5年の歳月をかけて市販化されたのだった。レクサスは性能と品質では高い評価を受けていたものの、まだ欠けている部分があった。プレミアムブランドには単なる高性能を超えた象徴的なモデルが不可欠とされる。LCはレクサスが一段上のステージに移行するために全力で取り組んだプロジェクトだった。開発を主導したのは、現トヨタ社長の佐藤恒治である。
最初に用意されたのはクーペだけで、コンバーチブルの登場にはさらに3年を要した。クーペのルーフラインは明らかにオープンモデルを前提にしているように見えたが、実際に形にするのは簡単ではなかったようだ。2024年の12月にLC500の仕様変更があり、コンバーチブルも内装に手を入れるとともに操縦性の向上が図られたという。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ボディー剛性を強化
春とはいえ雨で気温も上がらない。オープンエアドライブには適さない条件だったが、晴れ間を見つけてルーフを全開にした。横から見ると分かるように、ドライバーはウインドスクリーンの下にすっぽりと収まってしまう。風の巻き込みは最小限に抑えられる構造になっている。後方に装着されているウインドディフレクターが前席乗員への風をブロックする効果もあるようだ。シートヒーターにステアリングヒーター、ネックヒーターまで用意されているから、真冬でもルーフを下ろして走ることはできるだろう。ただ、この日でも手先が冷たくなったので、手袋を使ったほうがいい。
インテリアは高級感にあふれている。手に触れるものはすべて柔らかな感触で、おもてなしされている気分になる。今回の改良ではインパネ素材に「ルーミッシュ」と呼ばれる合成皮革を採用し、さらに質感を高めたという。ボディーカラーはダークなシルバーで地味だが、内装色のダークローズとのコントラストがいい感じだ。「インテリアもエクステリアである」というデザインコンセプトは、オープンカーでは正しい姿勢である。ヘッドレストにロゴをエンボス加工で目立たせるなどしていて芸が細かい。
オープンモデルで課題となるのはボディー剛性だ。構造的に不利なのは仕方のないことで、LC500コンバーチブルはクーペとは異なる専用設計となっている。エンジンルームをのぞくと、いかにも効果のありそうなゴツい補強パーツが見えて頼もしい。見えないところでも、ねじれ変形を抑えるために構造用接着剤やスポット溶接の打点を増やしている。今回はフロントとリアに床下ブレースを追加して操縦安定性を高めたそうだ。
改良前のモデルに乗っていないので比較はできないのだが、オープン状態でも剛性の不足を感じることはなかった。不整路面を走っていても、嫌な振動や不快なきしみに悩まされたりはしない。補強の副作用は重量の増加で、クーペよりも少し重くなった。それでもパワー不足を感じないのは、5リッター自然吸気V8という希少なエンジンのおかげである。
前後からのサウンドが心地よい
見た目の優雅さとは対照的に、搭載されるパワーユニットはダイナミックで豪快だ。アイドリングでも明確なV8的音色が響いていて、アクセルを踏み込むと回転数が上がるに従って勇壮なサウンドが高まっていく。最高出力が7100rpmで発生するのは、存分にぶん回してくれというメッセージだ。クーペでも車内にエンジン音が伝わってきたが、コンバーチブルはもっとダイレクトだ。後方からは排気音が流れてきて、前後のハーモニーが騒々しくも心地よい。静粛性で名をはせたレクサスだが、LCではサウンドがドライバーを高揚させる役割を担っているのだ。
電気的にエンジン音をコントロールするサウンドジェネレーターが採用されていて、細かなチューニングが施されているようだ。だからこそ、オーディオで音楽を楽しみながら走ることができるのだろう。静かさを優先したいときは、10段ATの繊細で滑らかな働きの恩恵を受ける。ゆったりとした巡航も可能なのだ。メーターフードの左側に設置されたドライブモードセレクトで「エコ」を選べばいい。「スポーツS」や「スポーツS+」ではキャラクターが一変し、ワイルドな一面が顔を出す。減速時には派手な空ぶかしが入り、効率のためだったはずの仕組みがドライバーの快楽に奉仕する。
クーペには3.5リッターV6を使った「マルチステージハイブリッドシステム」のモデルもあるが、コンバーチブルはV8一択。ハイブリッドのバッテリーを搭載する場所が、ルーフの格納スペースになっているからだ。全自動のソフトトップは15秒で開閉する。走行していても50km/h以下ならば動作可能だ。書の「三折法」にヒントを得たとされる開閉動作は複雑で細やかなのでちょっと不安だったが、やってみると何の問題もなく動作した。走りながらルーフを開けなければならない場面がどれだけあるかは疑問だが、気分がいいことは確かだ。見えと紙一重の特別感が、この種のクルマでは肝要である。
野性味を前面に
グラマラスな造形のせいでバック駐車の際に感覚がつかみにくいなど、不便な面もあった。その程度のことはガマンすべきである。効率や手軽さといったみみっちい考えとは無縁なジャンルのクルマなのだ。後席が設けられていることで、最低限の実用性は担保されている。もちろん大人が快適に座ることはできないが、荷物置き場としては十分だ。持ち物の収容に困るのでは優雅さに陰りが生じる。
LCは2009年に登場したスーパースポーツ「LFA」の開発で得られた成果を生かしている。CFRPを使った軽量化やサウンドのチューニング、メーターパネルのデザインなどはLFA譲りだ。LCのローンチ時に開発者に話を聞いたら、LFAのV10エンジンを搭載する可能性を完全には否定しなかった。今のところ実現していないのは残念だが、今や絶滅危惧種となったV8エンジンも十分に魅力的である。見た目も走りも、日常からかけ離れているほど価値が高まるのがラグジュアリーなモデルというものだ。
ラグジュアリーなオープンモデルということでは、先日「マセラティ・グランカブリオ」に乗る機会があった。2ドア4座なのは同じであるが、乗ってみた印象はかなり違いがある。グランカブリオが典雅なたたずまいだったのに対し、LCコンバーチブルは野性味を前面に出している。気高さと威厳は共通でも、エレガントとワイルドという明確な個性が感じられた。
グランカブリオのエンジンは3リッターV6ターボだが、パワーではLCをしのぐ。操縦性や乗り心地に関しては優劣つけがたい。プレミアムブランドのイメージリーダーとして、いずれも魅力的なモデルに仕上げている。成り立ちが似ていても、大きな違いがあった。LCコンバーチブルはグランカブリオのほぼ半額である。ラグジュアリーモデルで値段のことを言うのがやぼなのは承知しているが、バーゲン価格なのは間違いない。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)
テスト車のデータ
レクサスLC500コンバーチブル
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4770×1920×1350mm
ホイールベース:2870mm
車重:2050kg
駆動方式:FR
エンジン:5リッターV8 DOHC 32バルブ
トランスミッション:10段AT
最高出力:477PS(351kW)/7100rpm
最大トルク:540N・m(55.1kgf・m)/4800rpm
タイヤ:(前)245/40R21 96Y XL/(後)275/35R21 99Y XL(ミシュラン・パイロットスーパースポーツS 5)
燃費:8.0km/リッター(WLTCモード)
価格:1550万円/テスト車=1583万4400円
オプション装備:フロント245/40R21+リア275/35R21タイヤ&鍛造アルミホイール<切削光輝+スーパーグロスブラックメタリック塗装>(11万円)/トルセンLSD(4万4000円)/カラーヘッドアップディスプレイ(8万8000円)/ATオイルクーラー(9万2400円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:758km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:266.4km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.3km/リッター(車載燃費計計測値)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
-
アストンマーティン・ヴァンキッシュ ヴォランテ(FR/8AT)【試乗記】 2026.3.14 英国の名門、アストンマーティンの旗艦車種「ヴァンキッシュ」に、待望の「ヴォランテ」が登場。5.2リッターV12エンジンを搭載した最上級コンバーチブルは、妥協のないパフォーマンスと爽快なオープンエアのドライブ体験を、完璧に両立した一台となっていた。
-
プジョーE-3008 GTアルカンターラパッケージ(FWD)【試乗記】 2026.3.11 「プジョー3008」の電気自動車版、その名も「E-3008」が日本に上陸。新しいプラットフォームに未来感あふれるボディーをかぶせた意欲作だが、その乗り味はこれまでのプジョーとは明らかに違う。ステランティスのような大所帯で個性を発揮するのは大変だ。
-
ジープ・アベンジャー アップランド4xeハイブリッド スタイルパック装着車(4WD/6AT)【試乗記】 2026.3.10 「ジープ・アベンジャー」のラインナップに、待望の「4xeハイブリッド」が登場。既存の電気自動車バージョンから、パワートレインもリアの足まわりも置き換えられたハイブリッド四駆の新顔は、悪路でもジープの名に恥じないタフネスを披露してくれた。
-
三菱デリカD:5 P(4WD/8AT)【試乗記】 2026.3.9 デビュー19年目を迎えた三菱のオフロードミニバン「デリカD:5」がまたもマイナーチェンジを敢行。お化粧直しに加えて機能装備も強化し、次の10年を見据えた(?)基礎体力の底上げを図っている。スノードライブを目的に冬の信州を目指した。
-
ホンダCB1000F SE(6MT)【レビュー】 2026.3.7 ホンダから満を持して登場した、リッタークラスの4気筒マシン「CB1000F」。往年のCBをほうふつさせるスタイルと、モダンなパフォーマンスを併せ持つネイキッドスポーツは、先行するライバルを追い落とすことができるのか? ホンダ渾身(こんしん)の一台の実力に触れた。
-
NEW
いまこそ、かき回したい! 新車で買えるおすすめMT車はこれだ!
2026.3.16デイリーコラム改良型「トヨタ・ヤリス」に、新たに6段MTモデルが設定された。現実的にMT車はレアであり、消滅する可能性もある時代だが……。これを機に、いま新車で買えるMT車のなかで、特におすすめできるモデルをピックアップしてみよう。 -
NEW
第331回:デカいぞ「ルークス」
2026.3.16カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。首都高で新型「日産ルークス」の自然吸気モデルに試乗した。今、新車で購入される軽ハイトワゴンの8割はターボじゃないほうだと聞く。同じターボなしの愛車「ダイハツ・タント」と比較しつつ、カーマニア目線でチェックした。 -
ポルシェ・タイカンGTS(後編)
2026.3.15思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「ポルシェ・タイカン」に試乗。後編ではコーナリングマシンとしての評価を聞く。山野は最新の「GTS」に、普通のクルマとはだいぶ違う特性を感じているようだ。 -
アストンマーティン・ヴァンキッシュ ヴォランテ(FR/8AT)【試乗記】
2026.3.14試乗記英国の名門、アストンマーティンの旗艦車種「ヴァンキッシュ」に、待望の「ヴォランテ」が登場。5.2リッターV12エンジンを搭載した最上級コンバーチブルは、妥協のないパフォーマンスと爽快なオープンエアのドライブ体験を、完璧に両立した一台となっていた。 -
テスラ・モデルYプレミアム ロングレンジAWD(4WD)
2026.3.13JAIA輸入車試乗会2026電気自動車(BEV)「テスラ・モデルY」の最新モデルは、これまで以上に無駄を省いた潔いまでのシンプルさが特徴だ。JAIA輸入車試乗会に参加し、マイナーチェンジによってより軽くより上質に進化したアメリカンBEVの走りを確かめた。 -
ルノーから新型車「フィランテ」が登場 仏韓中の協業が生んだ新たな旗艦はどんなクルマ?
2026.3.13デイリーコラムルノーが韓国で新型クーペSUV「フィランテ」を世界初公開! 突如発表された新たな旗艦車種(?)は、どのようないきさつで誕生したのか? フランス、韓国、そして中国の協業が生んだニューモデルの概要と、そこに込められたルノーの狙いを解説する。


















































