日産ノートAUTECHクロスオーバー(FF)/ノートAUTECHクロスオーバーFOUR(4WD)
変えないことに価値がある 2021.10.07 試乗記 新型「日産ノート」の登場に合わせ、そのドレスアップバージョンを世に問うたオーテック。続くSUVライクな派生モデル「ノートAUTECHクロスオーバー」とはどんなクルマなのか? テストコースでFF車と4WD車に試乗した。人気のノートで多車種展開
日産にとってノートの重要性が高まっているのは確かである。先代モデルがシリーズハイブリッドシステムの「e-POWER」を採用すると販売台数が急増。軽自動車を含む国内販売数で1位を連発するようになり、その後もランキング上位に定着した。2020年末にフルモデルチェンジを行い、それまでは残っていたガソリンエンジン車を廃止してパワーユニットをe-POWERに統一する。思い切った決断は間違っていなかったようで、発売1カ月で月販目標台数8000台の2.5倍にあたる約2万台を受注した。
2021年8月には派生モデルの「ノート オーラ」を発売。全幅を40mm拡大して3ナンバーサイズとし、モーター出力を向上させた。内外装に手を加え、“小さな高級車”という路線を狙っている。こちらも発売から3週間で1万台を超える注文があったというから、順調な滑り出しといっていい。
日産は、軽自動車から高級車までをカバーする幅広いラインナップを持つ。「日産GT-R」や「フェアレディZ」といったスポーツカーがブランドイメージ向上に役立っているが、ビジネスとして収益を上げるためには大衆的なモデルで数を稼ぐ必要がある。人気のノートをベースに多車種展開していくのが、目的達成のためには確実な手法だ。
すでにノートには「AUTECH」、ノート オーラには「NISMO」の名を冠したモデルが加わっている。今回試乗したのは「ノートAUTECHクロスオーバー」。その名のとおり、ノートをベースにクロスオーバーSUVに仕立てた新しい派生モデルである。
ポイントは「上げて」「飾る」
先代ノートにもAUTECHモデルは設定されていたが、クロスオーバータイプは今回が初めてだ。コンセプトとして、3つの要素が掲げられている。1つ目はノートゆずりのハンドリングと乗り心地を持ち、立体駐車場を利用できるサイズであること。2つ目はSUVの悪路走破性と見下ろし運転感覚を備えていること。日産直系のオーテックが手がけるファクトリーカスタムであり、ディーラーで購入することができるのが3つ目の要素である。これらの特徴を組み合わせて、「唯一無二のプレミアムコンパクトクロスオーバー」をつくったというわけだ。トレンドに対応した商品企画である。
ノートの車高が1520mmなのに対し、ノートAUTECHクロスオーバーは1545mm。25mm車高を上げて150mmの最低地上高を確保し、悪路走破性を高めた。全長は変わらず、全幅は5mmアップの1700mm。極端にサイズが変わっているわけではなく、ひと目見て背が高いノートだな、とは思わないだろう。わかりやすい識別点は、フェンダーモールディングとサイドシルプロテクターだ。黒い樹脂製のパーツを使い、SUVの力強さを表現している。ルーフにもモールディングがあり、ホイールはタフなイメージの専用デザインだ。
オーテックデザインのフロントグリルには「AUTECH CROSSOVER」のバッジが付く。ドアミラーカバーがメタルフィニッシュになっているのも目を引く特徴だ。フェンダーにブルーイルミネーションランプが光り、AUTECHモデルであることをアピールする。オーテックのイメージカラーとされているのがブルーなのだ。どのモデルでも、オーテックブルーのボディーカラーを選ぶ人が半数を超えていて、ブランドロイヤルティーの高さがうかがえる。
インテリアはオーテックお得意のブルーステッチが施されたシートやドアトリムが特別感を演出。ダッシュボードやドアに用いられているパネルは、ブルーがかったオーテック専用の素材が用いられている。
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見えないところも専用に
車高を上げたことに関連して、サスペンションには手が入れられている。前後とも車高アップスプリングを使い、前後のショックアブソーバーの減衰力を変更するとともに、フロントにはリバウンドスプリングを追加した。突起を乗り越えたときのショックを軽減することを狙っている。
パワーステアリングのアシスト設定を変更し、適度な重さでどっしり感を持たせることでドライバーに安心感を与える操舵フィールを目指した。高速走行で直進性を高め、ワインディングロードでクルマの挙動を感じやすくしたという。その結果、ハンドリングレスポンスはベース車よりは少し劣るものの、ライバル車よりも上のレベルを確保。ロールの大きさはベース車とほぼ同一に抑えたそうだ。
開発に携わったエンジニアの高沢 仁氏は、ノーマルモデルと運転感覚を極力変えたくなかったと話す。車高を上げたことによって重心も上がり、ハンドリング性能は変化する。わずか25mmの差でも、セッティングはまったく変わるのだそうだ。ロールを抑えるためには、スプリングとショックアブソーバーの設定を変える必要があった。乗り心地が悪化するリスクがあるが、さまざまな組み合わせを試して最適なバランスを追求した。アライメントの変化は少ないので、ジオメトリーの変更はしていない。
試乗はテストコースで行われた。開発で使われるもので、リアルな交通状況を模した設定になっている。低速コーナーと中速コーナーをつなぐストレートがあり、最高速度は100km/h。パイロンを使ったスラローム区間も設けられていた。
味に大きな違いはない
パワーユニットに変更はないが、車重は重くなっている。20kgほどの差であり、発進や加速が鈍くなったようには感じられない。コーナーに進入する際にも、不安を覚えるようなことはなかった。ステアリングを切り込むとクルマは素直に向きを変え、ふらつきは感じない。レーンチェンジやパイロンスラロームも難なくこなす。試乗会場に乗っていったのがたまたまノート オーラだった。あまり時間を置かずにノートAUTECHクロスオーバーに乗り換えたが、さほどの違いは感じられない。車高を上げても乗り味の変化は最小限に抑えられていることを確認できた。
コースにはFF車と4WD車が用意されていて、両方に試乗した。4WD車は車重が120kg重くなるが、最高出力68PSのリアモーターが加わる。加速性能にはほとんど差が感じられなかった。どちらかというと4WD車のほうが落ち着きのある挙動で好感を持ったが、あえて言えばという程度の違いである。
トヨタの「ヤリス クロス」は「ヤリス」より車高が60mm高い。全長と全幅も大幅に拡大されていて、見た目もまるで違う。ノートAUTECHクロスオーバーがノートとの一貫性を保つことを優先しているのとはまったく異なる考え方だ。どちらかが優れているということではなく、戦略の違いである。売れ筋となっているノートに多様な選択肢を与えることで販売拡大を図っていくというのが、日産とオーテックのプランなのだ。
ベースとなっているのは「X」と「X FOUR」。ノートの最上級グレードである。差は35万円ほどで、競争力のある価格設定になっているのではないか。同じ派生モデルのオーラと比べても、お買い得感がある。オーラ以上にオーラをまとっているように見えるノートAUTECHクロスオーバーは、ノーマルのノートに飽き足りないユーザーにとって魅力的な存在になりそうである。
(文=鈴木真人/写真=webCG/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
日産ノートAUTECHクロスオーバー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4045×1700×1545mm
ホイールベース:2580mm
車重:1240kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:82PS(60kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:103N・m(10.5kgf・m)/4800rpm
モーター最高出力:116PS(85kW)/2900-1万0341rpm
モーター最大トルク:280N・m(28.6kgf・m)/0-2900rpm
タイヤ:(前)195/60R16 89H/(後)195/60R16 89H(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:--km/リッター
価格:253万7700円/テスト車=313万5550円
オプション装備:特別塗装色<オーロラフレアブルーパール>(3万8500円)/インテリジェントアラウンドビューモニター+インテリジェント ルームミラー+ステアリングスイッチ+ワイヤレス充電器+総合型インターフェイスディスプレイ+USB電源ソケット+NissanConnectナビゲーションシステム+NissanConnect専用車載通信ユニット+プロパイロット<ナビリンク機能付き>+プロパイロット緊急停止支援システム<SOSコール機能付き>+SOSコール+インテリジェントBSI<後側方衝突防止支援システム>+BSW<後側方車両検知警報>+RCTA<後退時車両検知警報>+ETC2.0ユニット<ビルトインタイプ>(44万2200円)/寒冷地仕様<ホットプラスパッケージ+クリアビューパッケージ+高濃度不凍液プラスPTC素子ヒーター>(7万3700円)/ ※以下、販売店オプション 専用フロアカーペット(2万8050円)/専用ラゲッジカーペット(1万5400円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:723km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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日産ノートAUTECHクロスオーバーFOUR
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4045×1700×1545mm
ホイールベース:2580mm
車重:1360kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:82PS(60kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:103N・m(10.5kgf・m)/4800rpm
フロントモーター最高出力:116PS(85kW)/2900-1万0341rpm
フロントモーター最大トルク:280N・m(28.6kgf・m)/0-2900rpm
リアモーター最高出力:68PS(50kW)/4775-1万0024rpm
リアモーター最大トルク:100N・m(10.2kgf・m)/0-4775pm
タイヤ:(前)195/60R16 89H/(後)195/60R16 89H(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:--km/リッター
価格:279万6200円/テスト車=337万0950円
オプション装備:特別塗装色<プレミアムホライズンオレンジ×ステルスグレー>(8万2500円)/インテリジェントアラウンドビューモニター+インテリジェント ルームミラー+ステアリングスイッチ+ワイヤレス充電器+総合型インターフェイスディスプレイ+USB電源ソケット+NissanConnectナビゲーションシステム+NissanConnect専用車載通信ユニット+プロパイロット<ナビリンク機能付き>+プロパイロット緊急停止支援システム<SOSコール機能付き>+SOSコール+インテリジェントBSI<後側方衝突防止支援システム>+BSW<後側方車両検知警報>+RCTA<後退時車両検知警報>+ETC2.0ユニット<ビルトインタイプ>(44万2200円)/寒冷地仕様<クリアビューパッケージ>(2万2000円)/ ※以下、販売店オプション 専用フロアカーペット(2万8050円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:738km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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