絶滅危惧種か高根の花か いまこそ! 空冷バイクのすすめ
2021.10.25 デイリーコラム気がつけば、ほぼ消滅
サラッとした表現だったが、まあ、こんなものなのかもしれない。2021年10月8日に発信されたホンダのニュースリリース。「CB1100」の特別仕様車が限定で発売されますよ、のアナウンスは末尾がこう締めくくられていた。「なお、現行のCB1100シリーズは本モデルを持って国内販売向けの生産を終了いたします」。発売から11年余り、空冷直列4気筒エンジンを積んだCB1100が年内にモデルアウトすることが決まったようだ。……さ、寂しいやんけ!
思えばCB1100がデビューした2010年当時、「ホンダがやっと本腰入れて精神的支柱を再建してくれた」と喜んだCBファンは多かった。開発コンセプトは「こだわりを持った大人の価値観に見合うロードスポーツモデル」「“鷹揚(おうよう)” ゆったり乗る・見せる・魅せられる」。CBが先頭を切っていた、かつての馬力競走はもう昔の話。ゆっくりのんびりぜいたくなライドタイムを楽しもうよ、というメッセージを発信してくれたのだ。
セールスの初速もよく、発売からひと月半後には年間販売計画台数4000台の3分の2を超える2700台以上を受注し好調なすべり出しであったとの記録がある。落ち着いたスタンダードバイクを求めるライダーが増えたことや、100万円を切る価格(スタンダードモデル)など理由はいくつもあっただろう。しかしそれもいろいろあって、2021年でひと区切りとなる。いろいろとは排ガス規制のこと、販売台数のこと、いわゆる諸事情というヤツだ。
ところで空冷エンジンの良さって何だ? 説明するのは簡単じゃないけれど、無理やり言葉にしてみる。雑なスロットルワークを受け入れてくれる穏やかさと緩慢さ、豊かなワイルドさ、乾いたサウンド。加えて、冷却フィンが刻まれたフォルムの美しさ。主観の羅列だけど、こんなところかな。空冷であることに価値とアイデンティティーを見いだしていた仲間たちだが、近年だんだんと生存数を減らし、周囲を見渡すと250cc以上で国内販売される空冷バイクは「カワサキ・メグロK3(およびW800)」と「ホンダGB350」の2台しかいなくなってしまった。
うーん、ここまで書いてきてわれに返る。ほとんどが過去形!
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中古車市場も異状アリ
しかし、ここで後ろ向きにノスタルジーに浸っている場合ではない! なぜなら、空冷直列4気筒エンジンのバイクを新車で手に入れるタイミングは今しかないのだ。新車で買うということは、定価で買えるということでもある。当たり前でしょ、というツッコミはこの際無用。なぜならここ数年におけるバイクの中古車相場の高騰には、一過性ではない差し迫った雰囲気を感じるからだ。空冷に限らずかつての人気車はもちろんのこと、もともと数の少ない不人気車でさえ「え? こんなに高いの!?」という状況になっている。
「カワサキ750RS」(あのゼッツーね)の800万円や「ホンダNSR250R」(水冷2ストローク)の300万円はさておき、絶版になって日の浅いヤマハの「SR」や「セロー」は言わずもがな。1980年代後半からのネイキッドブームにいまいち乗れなかった「ホンダCB-1」でさえ50万円前後から取引されている。かわいかった「モトコンポ」、ひゃー、65万円。それでも実感が湧かなければ、ぜひあの中古車サイトやネットオークションをのぞいてみてほしい。不人気車好きの筆者に、とってもツラい“情況”が続いているのだ。……オレの甘酸っぱい青春を返してくれ!
さて、CB1100。中古車のストックはだいぶ薄い。それらの大半が販売開始の2010年から数年間の年式ばかりで、2017年のマイナーチェンジ以降のモデルを入手するなんてほぼ絶望的だ。こうなるとユーズドを狙うのは得策ではなく、新車をチョイスするのがベターだろう。2021年11月30日までの予約期間限定で発売された(※販売計画を上回る予約があったため2021年10月25日の17時で予約受注は終了)、ラストモデルのCB1100は、トラディショナルな「EXファイナルエディション」が136万2900円。スポーティーな「RSファイナルエディション」が140万3600円。もはやリーズナブルと言っても過言ではない気がしてきたぞ。空冷4気筒エンジンのズオォォォッ! という乾いたサウンドとラフなフィーリングを、胸の内でしずかに反復させて……買っちゃえホンダ。買っちゃえCB!
(文=宮崎正行/写真=本田技研工業、ヤマハ発動機、カワサキモータース、ハーレーダビッドソン ジャパン、向後一宏、webCG/編集=関 顕也)
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宮崎 正行
1971年生まれのライター/エディター。『MOTO NAVI』『NAVI CARS』『BICYCLE NAVI』編集部を経てフリーランスに。いろんな国のいろんな娘とお付き合いしたくて2〜3年に1回のペースでクルマを乗り換えるも、バイクはなぜかずーっと同じ空冷4発ナナハンと単気筒250に乗り続ける。本音を言えば雑誌は原稿を書くよりも編集する方が好き。あとシングルスピードの自転車とスティールパンと大盛りが好き。
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