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海の向こうでサービス開始! “バッテリーシェア”時代が見えてきた?

2021.11.08 デイリーコラム

新たな時代はインドから

いわゆる「乾電池」は世界共通のアイテムだ。国際電気標準会議によるIEC60086という規格によって、ワールドワイドな統一が図られている。それを日本国内において標準化するのが、よく知られている「JIS」であり、2017年には日本工業規格あらため「日本産業規格」と、名称変更されていた。知らんかった。ちなみに1回だけの使用で捨ててしまう使い切り電池は「一次電池」と分類され、充電して繰り返し使えるものは「二次電池」というらしい。長いことお世話になっている乾電池だが、知らないことがたくさんある。

そんな乾電池、しかも二次電池の“でっかいバージョン”の本格的な運用をホンダがスタートさせようとしている。それが、新しいモバイルバッテリー「Honda Mobile Power Pack e:(ホンダ モバイルパワーパックイー。以下、モバイルパワーパックe:)」を活用するプロジェクトだ。

2022年前半といわれる事業開始の舞台は、なんとインド。具体的には、「人力車」が語源といわれる現地の三輪タクシー「リキシャ」が対象で、そのEV版たる「E-AUTOリキシャ」を使った事業を始めようというのだ。将来的なエネルギー不足と慢性的な大気汚染が深刻なかの地インドにおいては、大いに期待されるビジネスである。

インドは世界第3位の石油消費国であり、それにともなう貿易赤字もまた深刻。とにもかくにも石油依存を減らしたい思惑が強い。そのような事情があってインドではいま、EV(電気自動車)の導入が急速に進んでいる。現在の40万台程度に対して、来る2027年の年間販売台数の予想はなんと634万台! 重量のある乗用車やバスなどの四輪車を除く二輪車や三輪車、いわゆる「ライトモビリティー」へのニーズが強いインドにおいては比較的EV化が推し進めやすいわけで、そこに商機を見いだすメーカーが多いのも十分にうなずける。

そこでホンダはEV予備軍の一角、リキシャに目をつけた。インドでリキシャは現在800万台以上が保有されており、人々の生活のアシとして大変重宝されている。特に都市部ではCNG(圧縮天然ガス)を燃料とするものが多く、それらをEV化することで実現できる環境負荷の低減(もちろんビジネスチャンスも含めて)を目指して多くのメーカーが参入を試みている現状がある。ホンダも、その列に連なろうというわけだ。しかしそこは世界のホンダ、決して“末席に”とは思っていないだろう。

今回の主役「モバイルパワーパックe:」。これまで開発が進められてきた「モバイルパワーパック」の改良版で、2022年からはインドでのシェアリングサービスに実装される。単体のサイズは298×177.3×156.3mmで、重量は10.3kg。
今回の主役「モバイルパワーパックe:」。これまで開発が進められてきた「モバイルパワーパック」の改良版で、2022年からはインドでのシェアリングサービスに実装される。単体のサイズは298×177.3×156.3mmで、重量は10.3kg。拡大
ホンダの資料から。2050年までに完全なカーボンニュートラルを目指す同社は、FCシステムや大容量バッテリーの活用と並行して、「モバイルパワーパック」と呼ばれるカートリッジ式電源を使ったモビリティーの普及を目指している。
ホンダの資料から。2050年までに完全なカーボンニュートラルを目指す同社は、FCシステムや大容量バッテリーの活用と並行して、「モバイルパワーパック」と呼ばれるカートリッジ式電源を使ったモビリティーの普及を目指している。拡大
自然由来のエネルギーは、日照時間を含め気象条件に左右されるのがネック。例えば太陽光発電では、日中にためた電力を夜間・早朝に使用するなど、エネルギーのピークを平準化することが重要であり、「モバイルパワーパック」もその調整役としての活躍が期待されている。
自然由来のエネルギーは、日照時間を含め気象条件に左右されるのがネック。例えば太陽光発電では、日中にためた電力を夜間・早朝に使用するなど、エネルギーのピークを平準化することが重要であり、「モバイルパワーパック」もその調整役としての活躍が期待されている。拡大
インド国内で使われている電動の三輪タクシー「E-AUTOリキシャ」。奥に見えるのは、ホンダが開発したバッテリー交換ステーション「Honda Mobile Power Pack Exchanger e:」である。
インド国内で使われている電動の三輪タクシー「E-AUTOリキシャ」。奥に見えるのは、ホンダが開発したバッテリー交換ステーション「Honda Mobile Power Pack Exchanger e:」である。拡大
現在、インド国内の三輪タクシーはCNGを燃料とする車両が多数派だが、EV「E-AUTOリキシャ」(写真)への移行が進んでいる。
現在、インド国内の三輪タクシーはCNGを燃料とする車両が多数派だが、EV「E-AUTOリキシャ」(写真)への移行が進んでいる。拡大

「ホンダの電池」は世界標準となるか?

電気自動車のネックは、長~いチャージ。あくびが出そうなほどロングな充電時間だ。さらに、現在の電動モビリティーには2つの問題点がある。短い航続距離と、高いバッテリーコスト。それらを解決してくれるのが、重さ10.3kgの箱型リチウムイオン電池、モバイルパワーパックe:だというのだ。ではいかにその難題を解決するか?

ホンダはこのサービスを開始するにあたってインドに現地法人を設立。街中にバッテリー交換ステーション「Honda Mobile Power Pack Exchanger e:(モバイルパワーパックエクスチェンジャーイー)」を設置し、モバイルパワーパックe:の充電(ステーション利用時の所要時間は約4時間)と貸し出しを行う。大前提としてバッテリーを“交換式”とし、ユーザー間でシェアすることでそれらのウイークポイントを解消するというのだ。事業化のキーコンセプトは“シェア”。着脱式可搬バッテリーをみんなで共有することにより長時間の充電を回避しようというアイデアだ。

ホンダは事業化検討にあたってフィリピンやインドネシアを皮切りに、2021年2月からインドで実証実験を実施し30台のリキシャによる20万km以上の営業走行を経て、課題の洗い出しや事業性の検証を綿密に行った。「電動化の加速と再生可能エネルギーの活用拡大」というビッグなお題目に応える、持ち運び可能な「みんなのバッテリー」こそ、ホンダが世界標準の夢を託す新しいパワーソース、モバイルパワーパックe:なのである。

普及のメドに、コストの道筋、そして日本での運用開始タイミングは? 筆者の実感としては、ぜんぶ“まだまだ”だ。われわれジャパニーズが「モバイルパワーパック、イー! 最高!」となる日はそれほど近いわけではなさそうだ。しかし経済発展途上のインドでのシェア拡大を起爆剤にホンダは売電でも世界に打って出ようとしているし、その鼻息の荒さにはドキドキしてしまう。世界中に1億台を行き渡らせた「スーパーカブ」の神話もきっと味方になってくれるはず。なんてったって夢の電源、「The Power of Dreams.」ですもの!

(文=宮崎正行/写真=本田技研工業、宮崎正行/編集=関 顕也)

ホンダの映像資料から。「E-AUTOリキシャ」の後部には「モバイルパワーパックe:」が4本搭載されており、残量の少なくなったものは街の交換ステーションで満充電のものと取り換える。このサービスにより、電池切れの心配や充電待ちで利用客を失うリスクが大幅に解消される。
ホンダの映像資料から。「E-AUTOリキシャ」の後部には「モバイルパワーパックe:」が4本搭載されており、残量の少なくなったものは街の交換ステーションで満充電のものと取り換える。このサービスにより、電池切れの心配や充電待ちで利用客を失うリスクが大幅に解消される。拡大
実証実験で使われた、インド国内の充電ステーション。おびただしい数の「モバイルパワーパックe:」が並ぶ。
実証実験で使われた、インド国内の充電ステーション。おびただしい数の「モバイルパワーパックe:」が並ぶ。拡大
こちらは規格化された充電ステーション「Honda Mobile Power Pack Exchanger e:」。いずれ、日本の街なかでもこのスタンドを見かける日がやってくる?
こちらは規格化された充電ステーション「Honda Mobile Power Pack Exchanger e:」。いずれ、日本の街なかでもこのスタンドを見かける日がやってくる?拡大
「モバイルパワーパック」を電源として利用する、電動マイクロショベル(コマツ製)。こうした建設機械のほか、除雪機や船外機などでの利用も考えられている。
「モバイルパワーパック」を電源として利用する、電動マイクロショベル(コマツ製)。こうした建設機械のほか、除雪機や船外機などでの利用も考えられている。拡大
劣化により蓄電容量が低下した「モバイルパワーパック」は、家庭用蓄電池をはじめとするほかの製品に転用。とことん活用できるという。
劣化により蓄電容量が低下した「モバイルパワーパック」は、家庭用蓄電池をはじめとするほかの製品に転用。とことん活用できるという。拡大
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