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第424回:ついに出現! プリウスミニバン
コイツはもはやハイブリッドファシズムだ!?

2011.03.11 小沢コージの勢いまかせ! 小沢 コージ
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第424回:遂に出現! プリウスミニバンコイツはもはやハイブリッドファシズムだ!?

オマエは「ドラえもん」か?

いやはや恐ろしいものを見てしまった気がしましたね。プリウスミニバン&ワゴン、正確には「プリウス スペース コンセプト」。

既にデトロイトショーやジュネーブショーで発表されてるクルマだけど、日本でもいよいよ4月下旬に発売! って話で、都内のテストコースでチョイノリしてきたんだけど、本気も本気、超本気!
というのも最初は、「プリウス」の後ろにちょっと荷室付けて、拡大したおキラクなヤツだと思ってたわけですよ。それはそれでも十分驚異的だけどね。

と思ったらほとんど作り直しなのよ! まずビックリしたのはインパネで、運転席に座ったとたんに「あれれ?」。
確かにグレーと紺のツートンな感じとか、ステアリングホイールとか、樹脂の素材感は変わらないけど、ビミョーかつ確実に実用的になってる。広々感のあったT字型インパネは、フロアとのつなぎが途切れてフツーにインパネシフト式になってるし、全体に表面が垂直化。薄くてカッコ良さ優先だったセンターメーターは大きく見やすくダサい(!?)ものになってるし、空気吹き出し口も明らかに真四角系。見事、実用的になってます。

そのほか、運転席の足元には物入れありまくりで、ドアポケットまで大きくなってるし、なにより運転席と助手席の間のセンターコンソールには大きなボックスがドドーン! と。
聞けばコイツは、7人乗り仕様のミニバンの場合は新たにリチウムイオン電池が入るそうで、なんともまあ世知辛いこと。最近久しく乗ってないけど、「エスティマハイブリッド」なんかと同じ手法で、正直、エレガントさは感じられない。収納のちまちました拡大もそうだけど、いままで必死に美しくみせていた世界最良のハイブリッドカー=プリウスもなりふりかまってられない! って感じがヒシヒシ。
言わば、今までポケットすら付いてないドレス着てたモデルさんが、オマエはドラえもんか! って感じのオーバーオールでも着ちゃったようでその変貌ぶりはお見事。 

というか、3列シートのミニバンと同時に、2列シートのステーションワゴン版も発表し、そっちは現行プリウス同様、従来型のニッケル水素電池を荷室に配置するという見事な作り分け。この辺の緻密な配慮に驚きましたな。派生車種ともいえど手抜き一切なしで「従来のメカニズムを無駄なく生かそう」といういかにも日本人的な思考に恐れ入る。

2011年4月末の発売が予定される、トヨタの新型ハイブリッド。いまは仮に「プリウス スペース コンセプト」の名で呼ばれる。
2011年4月末の発売が予定される、トヨタの新型ハイブリッド。いまは仮に「プリウス スペース コンセプト」の名で呼ばれる。 拡大
運転席まわりの様子。インテリアのパーツは、ボタン類など細かなものを除き「プリウス」からの流用はなし。ほぼ全てが新たに製作されたという。
運転席まわりの様子。インテリアのパーツは、ボタン類など細かなものを除き「プリウス」からの流用はなし。ほぼ全てが新たに製作されたという。 拡大
運転席と助手席の間には、リチウムイオンバッテリーが収まる(7人乗り仕様車)。ティッシュボックスも入れられる上部の収納スペースにはこだわったとのこと。
運転席と助手席の間には、リチウムイオンバッテリーが収まる(7人乗り仕様車)。ティッシュボックスも入れられる上部の収納スペースにはこだわったとのこと。 拡大

「プリウスの付け足し」じゃない

その上エクステリアですよ。コッチこそリアドアから後ろのみ新作で、前は全然変わってないんだろうなぁ……とか思いきや、聞けばアウターパネルは全部新作! リアドア、リアフェンダーはもちろん、ボンネットからルーフからフロントフェンダーまですべておニューで、勝手に同じだと思い込んでたヘッドライトも、プリウスと並べると絶妙に変わってるのが分かる。

聞いてみたら理由がわかりました。最大のポイントはパッケージの変更で、ミニバン版で200リッター、ワゴン版で535リッターの荷室を確保しているだけでなく、頭回りは1列目が+25mm、2列目が+45mm、新規の3列目も身長170cmクラスの人が座れるスペースが確保されていて、後ろに行くほど見事に座面が高くなる“シアターレイアウト”まで採用。よって外寸はすべて変える必要が生じたし、1列目のシートなんかも流用だと思ったら「2列目の足元を広くするために」背中をえぐった形状に変更。恐ろしいほどのマジメっぷりだ。

それと空力だよね。プリウスミニバン&ワゴンは、やっぱ「プリウス」ってことで超低燃費が至上命題だから、そういう意味でもデザインはイチから作り直し。実際、空気抵抗少なく10・15モード燃費でリッター31kmを達成するそうで、ホント頭が下がります〜。

一方走りに関しては、基本的に1.8リッター直4+モーターのハイブリッドユニットに変更はなく、動力性能はほぼ同じだそうだけど、やっぱ重くなった分、ギア比や制御を微妙に最適化してるそうで、みればみるほどスキなく手抜きもなし! 単なる付け足しカー? だと見くびっててスイマセンでした。

7人乗り仕様車の荷室容量は、フル乗車時で200リッター。写真のように3列目をフラットに畳み、容量を拡大することもできる。
7人乗り仕様車の荷室容量は、フル乗車時で200リッター。写真のように3列目をフラットに畳み、容量を拡大することもできる。 拡大
シートの座面は、1列目から3列目へと45mmずつ高くなる。各シートからの見晴らしのよさを含め、大人7人がしっかり乗れる快適性が自慢。
シートの座面は、1列目から3列目へと45mmずつ高くなる。各シートからの見晴らしのよさを含め、大人7人がしっかり乗れる快適性が自慢。 拡大
パワーユニットは基本的に「プリウス」のそれを譲り受けるが、エンジンやモーターは「プリウス」より大きな車重を考慮しリセッティングされている。
パワーユニットは基本的に「プリウス」のそれを譲り受けるが、エンジンやモーターは「プリウス」より大きな車重を考慮しリセッティングされている。 拡大

プリウス以外は非国民に!?

でも、マジメさが伝わってくれば伝わってくるほど恐ろしく感じたのが、更なるプリウスの蔓延(まんえん)だ。

既に「石を投げればプリウスに当たる」とも言いたくなるほど、日本で流行ってて、休日の高速道路で前後プリウスに挟まれることすら珍しくなく、その上こんなのまで出てきたら、前後どころか、左右まで囲まれること必至。まさに日本は“プリウス大国”になるわけだ。

というか、一番怖いのは“プリウスファシズム”、あるいは“ハイブリッドファシズム”だよね。これだけ出回ってくると、ますます普通の内燃機関カー、いわゆるエンジン車に乗っていることが肩身狭くなり、特に4リッターV8! 6リッターV12車なんかに乗ってると「非国民」呼ばわりされる日も近い……かもしれない。実際プリウス以外に「フィット」もその半分がハイブリッド仕様だそうだし、「レクサスRX」なんかは、売れてる約9割がハイブリッドなんだってね。

そんなオオゲサな……と思う人もいるだろうけど、今のスキャンダル中心のマスコミ報道や、現実にすぐ失脚する政治家、芸能人を見てると、多少でもマイナス面めいたことや、ネガティブイメージを持つことに恐れを抱くようになる。 実際最近、現衆議院議員の田中康夫さんから聞いて驚いたけど、今の政治家って当選したとたん、「クルマを運転するな」って言われるんだってね。直接言われなくても、それに近い制限がなされる。なぜなら事故を起こしたら怖いから。マスコミになに言われるかわからないし、政治家を辞めることにもなりかねないから。

それも分かる気もするが、こんなおかしいこともなくって、運転って国民の正しい権利というか、特に免許を取れば誰でも大手を振って運転できるわけじゃない。となると良くはないけど、事故はどうしても起こす可能性がある。街を歩いてても転ぶ時があるように、クルマを運転してると事故の可能性は決して無くならないわけで、それをことさら恐れるのはおかしいし、正常な価値観の社会ではないと思う。

でも現実にはそうなっているわけで、本当は「ハイブリッドだけがクルマ」なわけではないけど、ここまで出回り、無条件に「良い物」と認識されると、それ以外が「悪い物」と見なされる可能性も出てくると思う。事実、今の日本の価値観、特にクルマに対する価値観はヘンだし、偏っていると俺は感じているのだ。

ってなわけでプリウスミニバン&ワゴンの出来は素晴らしいけど、それ以上にこれ以上の“プリウス主義の台頭”に若干の恐れを感じたのも事実。……考えすぎですかね(苦笑)。

(文と写真=小沢コージ)


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サンルーフは、なんと樹脂製。従来のガラス製に比べて17kgもの軽量化を実現している。
サンルーフは、なんと樹脂製。従来のガラス製に比べて17kgもの軽量化を実現している。 拡大
7人乗り仕様車のリチウムイオンバッテリー。なお、5人乗り仕様車には、ニッケル水素バッテリーが用いられる。
7人乗り仕様車のリチウムイオンバッテリー。なお、5人乗り仕様車には、ニッケル水素バッテリーが用いられる。 拡大
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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』

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