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【スペック】全長×全幅×全高=4347×1801×1285mm/ホイールベース=2415mm/車重=1295kg/駆動方式=MR/3.4リッター水平対向6DOHC24バルブ(330ps/7400rpm、37.7kgm/4750rpm)(欧州仕様車)

ポルシェ・ケイマンR(MR/6MT)【海外試乗記】

我慢はいらない 2011.03.11 試乗記 河村 康彦 ポルシェ・ケイマンR(MR/6MT)

軽量化とパワーアップが施された「ケイマン」の最強グレード「ケイマンR」が登場。その実力をスペイン・マヨルカ島で試した。
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ミドシップクーペのフラッグシップ

ベースの「S」グレード比で80kgの軽量化と10psのパワーアップ。さらに、20mmのローダウンサス採用などと手が加えられた「ボクスタースパイダー」を初めてドライブした時、まるで厚手のコートを脱ぎ捨てたかのようなあまりの身軽さに、「これこそポルシェが“本当に作りたかったボクスター”なのではないか!?」と、心底そう感じたものだった。あれから1年と少々。今度は同じ軽量版のミドシップポルシェがテーマでも、俎上(そじょう)に乗るのはクーペの「ケイマン」だ。

「ミドシップクーペの新しいフラッグシップ」を合言葉に開発されたという最新のケイマンが選んだ軽量化へのアプローチは、前出ボクスタースパイダーの場合とウリふたつ。ドアパネルのアルミ化や軽量バケットシートの採用、エアコンやオーディオのオプション化などによって手にした減量分は55kg。ボクスタースパイダーの80kgに差をつけられたのは、向こうには手動着脱式のソフトトップという、減量効果がすこぶる大きなアイテムが存在していたからだ。

フロントのリップスポイラーやブラックフレーム付きのヘッドライトなどが専用装備とされる「ケイマンR」だが、エクステリア上の個性をより明確にアピールするのは、フロントのバンパーサイドからドア下部へと伸びたデカールと、リトラクタブル式から固定式へと改められたリアのスポイラー。前者は、そのモデル名に「R」の文字が初めて盛り込まれた1967年式「911R」へのオマージュから採用されたデザインだし、後者は電動機構を省くことで軽量化に貢献するとともに、揚力を40%ダウンさせるという実利面も備えたもの。そんなケイマンRのインテリアは、例の軽量バケットシートの採用やドアポケットの廃止などでよりスパルタンな印象が強められた。メーターフードの廃止やドアオープナーのストラップ化などは、このモデルがこだわった軽量化への取り組みをシンボライズしたものだ。

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55kgの減量で得たものは

エグゾーストシステムやマネージメントシステムの変更などで、7400rpmで330psを発生とS用ユニットよりも10psの最高出力アップが図られた3.4リッターのフラット6ユニットは、短いクランキングと共に一瞬にして目覚める。「ヴァン!」という破裂音と回転が立ち上がるその目覚めのシーンが、Sの場合よりも迫力があるように感じられたのは気のせいか。7段DCTのPDK仕様も用意されるが、前述のような軽量化へのこだわりに敬意を表するのであれば、やはり選ぶは比べて25kgの軽さを誇る6段MT仕様の方だろう。

そんなMT仕様を選んで1速ギアをセレクトし、クラッチミートした際の身軽さは、しかし率直なところボクスタースパイダーほどに鮮烈な印象ではなかった。実は当方がこれまで経験したボクスタースパイダーは、いずれもエアコンレス、ナビ/オーディオレスというスパルタンな仕様ばかり。それに対し、今回国際試乗会が行われたマヨルカ島に用意されたテスト車には、どれもエアコンやナビゲーションシステムが装備されていたのだ。前述の55kgの軽量化からこれらの分を相殺すると、Sグレードに対する重量差は恐らく35〜40kg程度。「80kgの身軽さ」がてきめんに効いたボクスタースパイダーの場合に比べると、その分“感激度”が小さくなるのはやむを得ないと言えるだろう。

やはりMTを選ぶべき

とはいえ、そんなケイマンRの加速の能力に、不満などただの一点も感じられない。なにしろ、MT仕様車で5秒フラットという0-100km/h加速のタイムは、同仕様の「911カレラ」に対してコンマ1秒の遅れしかとらないもの。ただし、絶対的な加速力という点ではもはやMT仕様に勝ち目はない。ローンチコントロール機能が加わる「スポーツクロノパッケージ」をオプション装着したPDK仕様の場合、0-100km/hタイムは4.7秒。7段ゆえ、よりワイドレンジな上に各ギア間のステップ比が小さく、しかも神経をステアリング操作に集中できるPDK仕様車には、サーキット走行ではMT仕様車はとてもかなわないという事実も、そんなシチュエーションが用意された今回の試乗会では、あらためて教えられることになった。一方で、「クルマを自ら操っている」という“征服感”ではMT仕様が圧倒的に上。というわけで、ケイマンRというモデルにはやはりMT仕様の方が似合っていると、少なくとも自分にはそう感じられる事になった。

そんなこのモデルのハンドリングは、もはやこれ以上は望み得ないと思えるほどにシュアで軽快、かつ敏しょうでありながら安定感にも富んだもの。加えて、ポルシェ自慢の電子制御式ダンパーPASMを用意しないのに、望外なしなやかさも実現させ、「街乗りでの我慢も一切必要ナシ!」というところは、ボクスタースパイダーの乗り味をさらに一皮むいたイメージだ。

そんなこんなで、たちまちこのモデルが欲しくてたまらなくなった! というのは、初期型ケイマンSをすでに6万km以上にわたって走り込んできた、今の自分の本心。とはいえ、仮に今乗り換えるとすればもう1〜2年の内には次期型がデビューして、再び悔しい思いをするのも自明というもの。いつになっても「ポルシェ選び」は悩ましいのである。

(文=河村康彦/写真=ポルシェ・ジャパン)

河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

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