ポルシェ・ケイマンS(MR/7AT)/ケイマン(MR/6MT)
最も“正しい”ポルシェ 2013.06.18 試乗記 2012年11月のロサンゼルスモーターショーで発表された2代目「ケイマン」がいよいよ日本に上陸。3.4リッターのフラット6を搭載する「ケイマンS」と、2.7リッターの「ケイマン」を試した。ポルシェの術中にはまりそう……
7年ぶりに新しくなった「ポルシェ・ケイマン」。ホイールベースを60mm延ばしつつ、ボディーの大きさは、ほぼ同じ。コンセプトをキープしつつ、安全、環境面での性能向上を果たしたモデルだ。エンジンは、ケイマンが排気量を2.9から2.7リッターに縮小しつつ、パワーは10psアップした275ps。ケイマンSの3.4リッターは、5ps高い325psになった。今後、頃合いを見計らって、チューンの度合いを高めていくのだろう。トランスミッションは、6段MTと7段PDKが用意される。アイドリングストップ機能に加え、PDKモデルには、巡航時などにエンジンとトランスミッションを切り離すコースティング機能が付く。
価格は、以下の通り。
・ケイマン(6MT/PDK):612万円/659万円
・ケイマンS(6MT/PDK):773万円/820万円
いつものことながら……と書くと、なんだかエラそうで申し訳ないのだが、『webCG』スタッフの人が送ってくれたポルシェ・ケイマンとケイマンSの、試乗車オプションリストを見てビックリする。
ケイマン(MT)のオプションは、全部で113万9000円。「これくらいなら、まぁ……」と感じてしまう自分もナンだが、ケイマンS(PDK)に至っては、オプション総額237万4000円! クルマ全体の値段は、1057万4000円にもなる。「ポルシェ911カレラ」の7MTモデルが素で1145万円だから、もう100万円弱出して、ナインイレブンを買ったほうが絶対オトク、かも! でもマニュアルは面倒くさいから、やっぱりPDKで。そうなると、1220万円。せっかく911を買うのだから、アレも欲しいし、コレも付けたい……と、みごと、ポルシェの術中にはまってしまうわけである。
さて、21世紀初頭にシュトゥットガルトの救世主ことSUVの「カイエン」が出てからこっち、ポルシェをして「ピュア・スポーツカー・メーカー」と呼びにくくなったのが残念だが、それでも最も“正しい”ポルシェといえば、ケイマンだろう。あるべき所に収まったエンジン。軽量にして高剛性のクーペボディー。無理なくスタイリッシュなフォルム。仕事を、遊びを、どちらもバリバリやろうという働き盛りが、このクルマに惚(ほ)れなかったらウソである。
2人に心地よい室内空間
新型ケイマンは、いいスポーツカーの常として、斜め後ろからの姿がすてきだ。フェンダーまわりは、やり過ぎの一歩手前で抑揚を抑え、チュートニックに男性的な魅力を発散している。長持ちしそうなデザイン。ハイライトは、コンビネーションランプを切り裂くカタチで左右に伸びたリアスポイラーだろう。120km/hに達すると、組み込まれたウイングが自動で持ち上がる。
ボディーサイズは、全長がわずかに35mmほど延びた。一方、ホイールベースは60mm長い2475mmになったから、計算上は、前後のオーバーハングが短くなったことになる。1800mmの全幅は変わらないが、フロントのトレッドは40mm拡大された。ホイールは、ケイマンが18インチ、ケイマンSは19インチ(!)が標準となる。
ボディー構造には、アルミや超高張力鋼板が多用され、30kg軽量化されたという。欧州仕様では1310kgとされるが、国内のカタログモデルは、ケイマンが1360/1390kg(6MT/PDK)、ケイマンSは1370/1400kg(同)と記載される。市場の要求に応え、安全・環境性能を上げつつ、軽量化を果たしているのだから立派だ。
最初に試乗したのは、ケイマンS。ガーズレッドにペイント(オプション価格+0円)されたケイマンSに乗り込むと、渋めにオシャレな、エスプレッソのレザー内装が待っていた(同75万3000円!)。前席の左右は「ポルシェ918スパイダー」、というより、「カレラGT」由来を思わせる梁(はり)状のセンターコンソールによって分かたれる。試乗車は、内装各部が凝ったオプション仕様になっている。
室内には、本当に小物しか入らない小物入れとドアポケットしかないので少々不便だが、足の短い運転者の場合(自分のことです)、同乗者がいても、取りあえずドライバーズシートの後ろにカバンを置ける。前後のラゲッジスペースは、前150リッター、後275リッターが確保される。フロントのフード下は意外なほど深い荷室。四角くて使いやすそう。リアはハッチゲートを下ろすとキチンとソフトカバーで蓋(ふた)がされ、外から搭載物が見えない。リッチなオーナーにはありがたい心遣いだ。2人の小旅行には十分な荷室容量で、ぜひとも、“2人の小旅行”に行ってみたい。
悩ましい選択
ボクサーエンジンに火を入れて走り始めれば、思わずニンマリ。予想を超える、剛性感。路面からの入力を、強靱なボディーがビン! ビン! と跳ね返す。ポルシェのスポーツカーが持つ“いい物感”の根源である。ニューケイマンは、静的なねじり剛性で旧型比40%のアップを見たという。
3.4リッターフラット6は、最高出力325ps/7400rpm、最大トルク37.7kgm/4500-5800rpm。「ボクスター」より10psアップにして、911より25ps低いパワーだが、それは知識として知っていればいいことだ。ガスペダルに足を軽く載せているだけで、低回転域から十二分に力強い。速度が上がるに従って、PDKがスムーズにギアを渡していく。
峠道。いざペダルを踏み込むと、回転計の針が12時を超えるあたりから、抜けのよい独特のサウンドを発して、ドライバーを歓(よろこ)ばせる。吸気カムのタイミングのみならず、リフト量をも可変化する「バリオカム・プラス」と、切り替え式レゾネーターを持つ「レゾナンスインテークシステム」のおかげだ。感謝。エンジン、ダンパーともスポーツモードにして、頭を沸騰させながら峠道を行く。右へ、左へ。運転操作がそのまま反映される正直なハンドリング。ときどき、「オッ、決まった!!」と錯覚するコーナリングがある。ケイマンオーナーが、「クーペボディーでヨカッタァ!」と思う瞬間だろう。
興奮して両耳の穴から煙を出しながら(ウソ)、2.7リッターを積むケイマンに乗り換える。3ペダル式の6段MT。興味津々。スポーティーカーまたはスポーツカーは、ベーシックなグレードほど楽しいという経験則がある。絶対的な性能が抑えられるので、“手の内に入った感”を得やすいからだ。
2.7リッター+6MTモデルの車両本体価格は、PDKのSより208万円もお安い612万円。2706ccのフラット6は、最高出力275ps/7400rpm、最大トルク29.6kgm/4500-6500rpm。Sの3436ccより2割以上排気量が小さいわりに、アウトプットは頑張っている。マニュアルギアを駆使して走らせれば、相当に活発に……、アレ?
ケイマンは“正しい”スポーツカーなので、アウトプットは大きい方が楽しいらしい。乗りこなせたわけではまるでないが、急坂を駆け登りながら、「モア・パワー……」とつぶやく自分に、オイオイ、と突っ込みを入れていた。
クルマの成り立ちに惹(ひ)かれてケイマン買うなら、ぜひSを。姿カタチに惚れたなら、ケイマンもあり。でも、スポーツカーライフという視点からは、596万円のボクスターに装備を奢(おご)るという選択肢も残される。
(文=青木禎之/写真=高橋信宏)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
拡大 |
ポルシェ・ケイマンS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4380×1800×1295mm
ホイールベース:2475mm
車重:1400kg
駆動方式:MR
エンジン:3.4リッター水平対向6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:325ps(239kW)/7400rpm
最大トルク:37.7kgm(370Nm)/4500-5800rpm
タイヤ:(前)235/35ZR20 88Y/(後)265/35ZR20 95Y(ピレリPゼロ)
燃費:--km/リッター(JC08モード)
価格:820万円/テスト車=1057万4000円
オプション装備:エスプレッソ/ナチュラルレザーインテリア(75万3000円)/ダイナミックコーナリングライト(12万4000円)/電動ミラー(5万3000円)/ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント(PASM)(25万3000円)/20インチ カレラSホイール(25万3000円)/カラークレストホイールセンターキャップ(2万9000円)/シートヒーター(7万4000円)/シートベンチレーション(16万4000円)/フロアマット(1万9000円)/スポーツシート(18段階、電動、メモリー機能付き)(57万8000円)/スポーツデザインステアリングホイール(7万4000円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1729km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
ポルシェ・ケイマン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4380×1800×1295mm
ホイールベース:2475mm
車重:1360kg
駆動方式:MR
エンジン:2.7リッター水平対向6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:6段MT
エンジン最高出力:275ps(202kW)/7400rpm
エンジン最大トルク:29.6kgm(290Nm)/4500-6500rpm
タイヤ:(前)235/45ZR18 94Y/(後)265/45ZR18 101Y(ダンロップSPスポーツマックスGT)
燃費:--km/リッター(JC08モード)
価格:612万円/テスト車=725万9000円
オプション装備:ダークブルーメタリック(14万5000円)/ブラック/レザーインテリア(54万3000円)/ダイナミックコーナリングライト(27万6000円)/電動ミラー(5万3000円)/カラークレストホイールセンターキャップ(2万9000円)/シートヒーター(7万4000円)/フロアマット(1万9000円)
テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1926km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。































