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シトロエンC3エアクロスSUVシャイン パッケージ(FF/6AT)

痛みが開く記憶の扉 2022.01.17 試乗記 今尾 直樹 もともと個性派ぞろいのフランス車のなかでもシトロエンは別格だ。このほどマイナーチェンジモデルが上陸した「C3エアクロスSUV」でも、その持ち味がいかんなく発揮されている。好きか嫌いかで言うと、もちろん筆者は大好きだ。

「アミ」以来のヘンテコデザイン

シトロエンのコンパクトSUV、C3エアクロスSUVが2017年のデビュー以来、4年目のマイナーチェンジを受けて、よりいっそうブサかわいくなった。以前のカピバラっぽさが消えて、「わさお」になった。という感じでしょうか。

改良ポイントは、まずもってフロントマスクである。中央のシトロエンのマーク「ダブルシェブロン」からサイドにクロームが伸びて、上はデイタイムランニングライトへ、下はLEDヘッドライトへとつながっている。これがシトロエンの新しいアイデンティティーで、すでに改良型「C3」に採用されている。

C3エアクロスSUV、名前が長いので、ここではわさおと呼んでおきますが、わさおが独自なのは、その下のグリル内に設けられた縦方向のルーバーだ。ラッセル車みたいにそり口になっていて、熊手とか『北斗の拳』のニセケンシロウのヘルメットとかを思わせ、これまでよりタフで強そうに見える。

リアは、リアクオーターのガラス部分の装飾をシマシマから、白い「C」の文字を上下に組み合わせたような装飾に変更しているぐらいで、基本的なイメージは変わっていない。

これらエクステリアの変更は、「綿密なリサーチとこれからのシトロエンのデザインコードを高度に両立させることを目標に行われた」そうで、つまり、シトロエンとしては狙ってやっている。個性的なのはよいことである、というフランスならではの土壌に、シトロエンであればなおさら、というこのブランドならではの強迫観念のようなものが積み上げられ、「シトロエン・アミ」以来、といってもいい、ヘンテコなデザインが誕生した、ということだろう。

2021年11月25日に発売された改良型「シトロエンC3エアクロスSUV」。グレードが旧上級グレードの「シャイン」に一本化されている。
2021年11月25日に発売された改良型「シトロエンC3エアクロスSUV」。グレードが旧上級グレードの「シャイン」に一本化されている。拡大
よりSUVらしさを強化したというフロントマスク。グリル内に縦のラインを強調したルーバーが追加された。
よりSUVらしさを強化したというフロントマスク。グリル内に縦のラインを強調したルーバーが追加された。拡大
フロントマスク中央の「ダブルシェブロン」から伸びるラインが二手に分かれ、上のデイタイムランニングライトと下のヘッドランプの両方につながるようになった。
フロントマスク中央の「ダブルシェブロン」から伸びるラインが二手に分かれ、上のデイタイムランニングライトと下のヘッドランプの両方につながるようになった。拡大
リアのクオーターウィンドウに描かれていたストライプ模様は、C字を2つ組み合わせたシンプルな意匠に変更された。
リアのクオーターウィンドウに描かれていたストライプ模様は、C字を2つ組み合わせたシンプルな意匠に変更された。拡大
シトロエン C3エアクロスSUV の中古車

エンジンスペックよりもシートスペック

ライト類が2段構造なら、ルーバーもボディーと同色のバンパー部分をはさんで分割2段構造になっていて、一台の中にもう一台、違うクルマが入っているようにも見える。全長4mちょっとの小型車なので、全体としてちっちゃくて、かわいい。だから私は、「ブサかわ」と申し上げている次第なのですけれど、複雑な要素をブサかわいくまとめている、そのデザイン力は称賛に値する、と私は思う。

内装では、「クラス最高レベルの乗り心地、座り心地を実現する」とうたう「アドバンストコンフォートシート」の採用をハイライトとしている。1.2リッター3気筒エンジンの最高出力が20PSアップしているにもかかわらず、国内ではこのエンジン、2021年4月に発売された特別仕様車「サーフエディション バイ リップカール」ですでに搭載済みだからなのか、あるいは、シトロエンにとってたいした話ではないということなのか、はたまた単に忘れちゃったのか、広報資料では一切触れていない。

20PSアップよりも、シートの生地の下の特別なフォームの厚みを従来の2mmから15mmに増やしたことのほうがシトロエン的には重要なのだ。

う~む。実に興味深い(と福山雅治風につぶやいてみました)。

アドバンストコンフォートシートは「C5エアクロスSUV」で初導入され、続いてC3に採用して好評を博しているコンセプトだそうで、そういえば、昔のシトロエンのシートというのは、1950年代の「DS」から1970年代の「GS」、1980年代の「BX」あたりまでフカフカ、あるいはフワフワだった。

全長は4160mmながら全高は1630mmにも達する。寸詰まりのコロリとしたスタイリングが愛らしい。
全長は4160mmながら全高は1630mmにも達する。寸詰まりのコロリとしたスタイリングが愛らしい。拡大
1.2リッター直3ターボエンジンは最高出力130PS、最大トルク230N・mを発生。従来のカタログモデルよりも20PSと25N・mパワーアップしている。
1.2リッター直3ターボエンジンは最高出力130PS、最大トルク230N・mを発生。従来のカタログモデルよりも20PSと25N・mパワーアップしている。拡大
17インチのアロイホイールとマッド&スノータイヤはパッケージオプションに含まれている。標準装備の16インチともどもホイールデザインが新しくなった。
17インチのアロイホイールとマッド&スノータイヤはパッケージオプションに含まれている。標準装備の16インチともどもホイールデザインが新しくなった。拡大
パノラミックサンルーフもパッケージオプションに含まれている。
パノラミックサンルーフもパッケージオプションに含まれている。拡大

柔ら硬い足まわり

その新しいシートに腰を下ろす。着座位置が高くて、見晴らしがよいのはSUVならではだ。シート自体、GSのみたいに沈み込みはしないけれど、なるほど、モモのあたりのウレタンがこんもりしていて、たまさかドイツ車から乗り換えると、グッとリラックスできる。まるで、おうちに帰ってきたみたい。ホッとする(もっとも、筆者のおうちは散らかってまして、ソファもないから、よそのおうち、ということになるけど)。

エンジンをスタートさせて走りだす。エンジン音がする。ロードノイズや風切り音も聞こえてくる。特にうるさいわけではない。ガソリンエンジンの自動車の走る音がごく自然なフィーリングで聞こえてくる。懐かしいフォークソングのような軽やかさで。

乗り心地は、走行距離が1283kmというド新車だったせいか、サスペンションの動きにちょっとギコチない印象があって、そこに愛嬌(あいきょう)を感じる。基本的にはさすがシトロエン、という感じの柔ら硬い、と書くと、どっちなんだ、ということになりますが、ちょっと硬いけど、バネは柔らかそう。リアはちょっと硬めかも……。でも、もっと走り込んだら、ダンパー、ブッシュとかなじんできて、トロトロになるかも……という期待がふくらむ。

現状でも、石畳みたいな路面はうまいこといなしていくし、うねった路面は、ホイールベース2605mmの小型車なのに、ゆったりとした動きで対応する。

タイヤは前後215/50R17サイズのブリヂストンのオールシーズン(M+S)を履いている。段差では若干ショックを伝えるけれど、それは自動車に乗っていることのライブ感であって、特に気になるわけではない。細めのタイヤでトコトコ走る感じが、いいな、と思う。

ダッシュボードにはシートと同じファブリックが貼られ、明るくカジュアルな雰囲気だ。パーキングブレーキレバーの形状見直しによってセンターコンソールに2つのカップホルダーが用意された。
ダッシュボードにはシートと同じファブリックが貼られ、明るくカジュアルな雰囲気だ。パーキングブレーキレバーの形状見直しによってセンターコンソールに2つのカップホルダーが用意された。拡大
「C5エアクロスSUV」などと同じ「アドバンストコンフォートシート」を新たに採用。フォームの厚みは2mmから15mmへと大幅にアップしている。
「C5エアクロスSUV」などと同じ「アドバンストコンフォートシート」を新たに採用。フォームの厚みは2mmから15mmへと大幅にアップしている。拡大
表皮はハーフレザータイプ。肩まわりにはベージュのアクセントカラーと、シェブロンを並べたような白いステッチがあしらわれる。
表皮はハーフレザータイプ。肩まわりにはベージュのアクセントカラーと、シェブロンを並べたような白いステッチがあしらわれる。拡大
後席は60:40の分割式。前後スライドとリクライニングが個別にできる。
後席は60:40の分割式。前後スライドとリクライニングが個別にできる。拡大

味は薄れたけれど

なお、日本仕様はマイナーチェンジを機に、「SHINE(シャイン)」というモノグレードになっている。発売時の価格は293万5000円。つい先だって価格改定があって、302万2000円になった。このシャインに、パノラミックサンルーフ、グリップコントロール(ヒルディセントコントロール付き)、17インチアロイホイール、HiFiスピーカー、M+Sタイヤなどが、およそ25万円のセットオプションで用意されており、試乗車はそれを装着した「シャイン パッケージ」だった。

つまり、本来は16インチの205/60で、そっちだったら、乗り心地はもっとスムーズだった可能性がある。とはいえ、サンルーフとヒルディセントコントロールも魅力的だし、17インチのほうが見栄えはいい。どっちを選ぶか、悩ましいところである。

いずれにしても、コンパクトでボディーの見切りがよく、街なかの移動は、駐車場の出入りも含めてストレスフリー、高速走行は背が高いにもかかわらず、スタビリティー抜群で、乗り心地は快適、という美点は変わらないにちがいない。1.2リッター3気筒ターボは、3気筒特有の、フリクションが少ないような回転感で、20PSアップのおかげか、あるいは今回は山道に行っていないからか、高速道路を含めて、遅いとは一度も感じないのもよかった。

もっとも、遅いというのは、自動車の味、大衆車の味だと私は思っておりますので、そういう意味では、味はちょっと薄れた。でも、多くの方にとっては、確実によくなっている。

アドバンストコンフォートシートも、いい仕事をしている。シトロエンの主張通り、増量されたアンコが微振動を吸収し、なるほど、よりフラットな乗り心地を実現しているように思う。

それと、誤解を招くかもしれませんが、撮影場所からwebCG編集部の駐車場に到着したら、40kmほどの距離にすぎないのに、お尻がちょっぴり痛かった。たぶん、私のお尻のカタチがトンガっていて、フンワカしたシートの座面に沈み込み、先端部分に荷重が集中するのだ。それではあかんではないか。と思われる方もいらっしゃるかもしれない。

でも、私的にはこれがよかった。なぜといって、敬愛する「シトロエン2CV」のハンモックシートもそうだったから。「ブサかわいい」という価値観もあれば、「イタ気持ちいい」という快感もある、ということでしょうか。

中のアンコを増やすだけで、こんなに快適性が上がるとは!? やっぱり、タイヤキも今川焼きもモナカもシートも、アンコは大事だ。明るい生活の相棒車としてオススメしたい。

(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)

試乗車のボディーカラーは「カーキグレー」。「ボルダイックブルー」「ルージュペッパー」とともに追加された新色で、継続設定色と合わせて全5色展開となっている。
試乗車のボディーカラーは「カーキグレー」。「ボルダイックブルー」「ルージュペッパー」とともに追加された新色で、継続設定色と合わせて全5色展開となっている。拡大
スマートフォンのワイヤレス充電器が標準装備される。
スマートフォンのワイヤレス充電器が標準装備される。拡大
路面状況に合わせてパワートレインやブレーキを統合制御する「グリップコントロール」はパッケージオプションに含まれている。
路面状況に合わせてパワートレインやブレーキを統合制御する「グリップコントロール」はパッケージオプションに含まれている。拡大
シフトパドルは用意されないが、シフトセレクターによってマニュアル変速が可能。
シフトパドルは用意されないが、シフトセレクターによってマニュアル変速が可能。拡大
ラゲッジスペースの容量は後席を最も前にスライドさせた状態で520リッター、後席背もたれをすべて倒した状態で1289リッターと公表されている。
ラゲッジスペースの容量は後席を最も前にスライドさせた状態で520リッター、後席背もたれをすべて倒した状態で1289リッターと公表されている。拡大

テスト車のデータ

シトロエンC3エアクロスSUVシャイン パッケージ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4160×1765×1630mm
ホイールベース:2605mm
車重:1320kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:130PS(96kW)/5500rpm
最大トルク:230N・m(23.5kgf・m)/1750rpm
タイヤ:(前)215/50R17 95H/(後)215/50R17 95H(ブリヂストン・ウエザーコントロールA005)
燃費:16.7km/リッター(WLTCモード)
価格:328万6000円/テスト車=359万8780円
オプション装備:ソリッドペイント<カーキグレー>(2万4800円)/ナビゲーションシステム(25万4100円)/ETCユニット(1万0450円)/フロアマット(2万3430円)

テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1177km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:172.4km
使用燃料:12.2リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:14.1km/リッター(満タン法)/12.5km/リッター(車載燃費計計測値)

シトロエンC3エアクロスSUVシャイン パッケージ
シトロエンC3エアクロスSUVシャイン パッケージ拡大
今尾 直樹

今尾 直樹

1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。

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