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メルセデス・ベンツC220d 4MATICオールテレイン(4WD/9AT)

間違いのない選択 2022.04.19 試乗記 渡辺 敏史 「メルセデス・ベンツCクラス」に、悪路走破性を高めた「オールテレイン」が初めて設定された。輸入車の“定番”ともいえるモデルがクロスオーバースタイルと融合して生まれた一台は、どんな人にオススメか? ステアリングホイールを握りながら考えた。

狙いはステーションワゴンの延命?

ステーションワゴンの地上高を高めて四駆を与え、悪路走破性を確保するというクルマづくりの手法は、1980年代のアメリカで生まれた。時のAMC=アメリカンモーターズが発売した「イーグル」がその始祖といえるだろう。

AMCはその後、ラダーフレームからモノコックのユニボディーへと斬新な進化を遂げたXJ型「ジープ・チェロキー」を開発するなど、現在のSUV的なコンセプトを積極的に提示していたわけだが、1987年にはクライスラーに買収され、ジープブランドのみが引き継がれた。ここでイーグルのコンセプトはいったんお蔵入りとなる。

それを掘り返したのが乗用四駆の先駆けでもあるスバルだ。1994年に発売された「レガシィ アウトバック」は、以降6代にわたってスバルの屋台骨である北米市場を代表する車種となっている。その後、同じく四駆をブランドの糧とするアウディや、本拠地が北方にあるボルボなど、同様のコンセプトのモデルは広がりをみせてきた。一方で、仕向け地によっては背高ボディーのSUVに飲み込まれるかたちで、販売をやめる動きもある。

そんななか、メルセデス・ベンツにとっては「Eクラス」に次ぐ第2弾となる、Cクラスのオールテレインが発売された。なぜ今……という疑問も浮かぶが、察するに大きな理由のひとつは、ステーションワゴンという世界的に衰退しているカテゴリーが、メルセデスにとっては長い歴史とともに特別な思い入れのあるものだからだろう。この車型を継承するためにも、新しい魅力を提示する必要がある。加えてライバルのBMWが持たないカテゴリーであることも、新しいオールテレイン投入の一因ではないだろうか。

「Cクラス ステーションワゴン」をベースに高い悪路走破性を付与した「Cクラス オールテレイン」。Cクラスにこうしたキャラクターのモデルが設定されるのは、これが初だ。
「Cクラス ステーションワゴン」をベースに高い悪路走破性を付与した「Cクラス オールテレイン」。Cクラスにこうしたキャラクターのモデルが設定されるのは、これが初だ。拡大
メーターやセンターディスプレイに専用の表示が追加されたことを除けば、インテリアの仕様は「Cクラス セダン/ステーションワゴン」と基本的に同じだ。
メーターやセンターディスプレイに専用の表示が追加されたことを除けば、インテリアの仕様は「Cクラス セダン/ステーションワゴン」と基本的に同じだ。拡大
試乗車には本革シートやサンルーフなどからなるオプション「レザーエクスクルーシブパッケージ」が採用されていた。
試乗車には本革シートやサンルーフなどからなるオプション「レザーエクスクルーシブパッケージ」が採用されていた。拡大
ステーションワゴンから受け継がれた広い荷室も「Cクラス オールテレイン」の特徴。後席は分割可倒式で、荷室側壁のスイッチで倒すことができる。
ステーションワゴンから受け継がれた広い荷室も「Cクラス オールテレイン」の特徴。後席は分割可倒式で、荷室側壁のスイッチで倒すことができる。拡大

オフロードで力を発揮する機能の数々

日本仕様のCクラス オールテレインは「C220d」のみ、搭載されるエンジンは「OM654M」型2リッターディーゼルターボとなる。すでに日本にも上陸しているOM654型のモディファイドバージョンという扱いだが、中身は大きく手が加えられているほか、48VのスタータージェネレーターがBSG=ベルトドリブンから、ミッションハウジング組み込みのISG=インテグレーテッドドリブンへと変更された。エンジン本体のアウトプットは最高出力200PS、最大トルク440N・mで、ISGは最大208N・mのアシスト力を発生する。4WDシステムはフルタイム式となっており、前後45:55の固定駆動配分を採用。トランスミッションはトルクコンバーター式の9段AT「9Gトロニック」が組み合わせられる。

本国のCクラス オールテレインには17~19インチ、3サイズのタイヤが設定されているが、日本仕様はその真ん中にあたる18インチが標準で装着される。サイズ的にはスタッドレスはもとより、オールシーズンも一部の銘柄で設定されており、リプレイスでも選択肢は広い。そのタイヤ径で20mm、コイルサスのキャリブレーションで20mmと、都合40mmかさ上げされた最低地上高は150mmとなる。Eクラス オールテレインとは異なり車高調整機能は持たないが、ドライブモードには走行環境に応じた2つのオフロードモードを追加するなど、悪路走破のためのセットアップは入念だ。加えて、悪路の下り坂では4~18km/hの範囲で速度を任意設定・保持できるほか、悪路の登坂途中から後退で脱出する際にも極低速を保持してドライバーの恐怖心を和らげるなど、ヒルダウン時に働くデバイスも充実している。

ちなみに、本国試乗ではテストコースで15°程度の起伏を含めたオフロードを走る機会もあったが、地面との接触もなく楽々とドライブすることができた。身構えるような場所でもない限り、あらかたのレジャーユースで寄せられる走破性にまつわる期待値は、クリアしていると判断できる。

最低地上高はベース車より40mm高い150mmとなっており、多少路面の荒れた場所でも気兼ねなく踏み込んでいける。駆動方式はフルタイム4WDだ。
最低地上高はベース車より40mm高い150mmとなっており、多少路面の荒れた場所でも気兼ねなく踏み込んでいける。駆動方式はフルタイム4WDだ。拡大
12.3インチの液晶メーターには、前後左右のクルマの傾きやステアリングの舵角などを確認できる表示モードが追加されている。
12.3インチの液晶メーターには、前後左右のクルマの傾きやステアリングの舵角などを確認できる表示モードが追加されている。拡大
走行モード切り替え機構「ダイナミックセレクト」には、「オフロード/オフロード+」の2つのモードを追加。ともに「Gクラス」のエンジニアが開発に携わったという。
走行モード切り替え機構「ダイナミックセレクト」には、「オフロード/オフロード+」の2つのモードを追加。ともに「Gクラス」のエンジニアが開発に携わったという。拡大
悪路走行用のアシスト機能としては、アクセル/ブレーキを自動操作し、登坂路を一定速で低速走行する「ダウンヒルスピードレギュレーション」などが用意されている。
悪路走行用のアシスト機能としては、アクセル/ブレーキを自動操作し、登坂路を一定速で低速走行する「ダウンヒルスピードレギュレーション」などが用意されている。拡大

舗装路で感じるSUVへのアドバンテージ

タウンライドでは「ちょっとコシが強いかな」と感じることもある乗り心地が落ち着いてくるのは、中速域以降だ。この点、エアサス仕立てで全域極上のライドフィールを持つEクラス オールテレインにはさすがに及ばない。が、60km/hを超えたあたりから乗り味にはしっとりと潤いが加わり、高速巡航域に至ればドシンと据わりよくフラットに車線を突き進む。最新世代の運転支援システムを用いるのももったいなく思えるほど、単に高速道路を真っすぐ淡々と走り続けることがごちそうになる、そんなメルセデスライドの濃さでいえば、ベースのステーションワゴンよりも上手かもしれない。

今日び一部のSUVは、ワインディングロードでも目を三角にして走ればスポーツカーもかくやというほどのダイナミクスを魔法のように発揮する。が、まったりモードで延々と高速巡航を続けるロングツーリングにおいて、ふと出くわしたコーナーを、思い描いたヨーやロールで曲がっていけるか? というような点に目を向けると、やはり重心の低いクルマの利が特に際立ってくる。ガンガンにGをかけての運転ならまだしも、車体の動きの過渡的なニュアンスの話になれば、Cクラス オールテレインの物理的優位が走りの上質感につながっていることは間違いない。

ボディーカラーは、試乗車の「ヒヤシンスレッド」を含む全10色。ただし、「ポーラーホワイト」を除く9色はいずれも有償オプションとなる。
ボディーカラーは、試乗車の「ヒヤシンスレッド」を含む全10色。ただし、「ポーラーホワイト」を除く9色はいずれも有償オプションとなる。拡大
日本仕様のタイヤサイズは245/45R18。履き替えの際に、さまざまな銘柄が選べるサイズとなっているのがうれしい。
日本仕様のタイヤサイズは245/45R18。履き替えの際に、さまざまな銘柄が選べるサイズとなっているのがうれしい。拡大
パワートレインは2リッター直4ディーゼルターボエンジンとマイルドハイブリッド機構の組み合わせ。燃費性能は上々で、高速走行が主体だった今回の試乗では、およそ20km/リッターの実燃費を記録した。
パワートレインは2リッター直4ディーゼルターボエンジンとマイルドハイブリッド機構の組み合わせ。燃費性能は上々で、高速走行が主体だった今回の試乗では、およそ20km/リッターの実燃費を記録した。拡大

アガリの一台にもちょうどいい

抱える上屋の大きさに構えることなく、普通のクルマの感覚で、走る、曲がる、止まるがナチュラルにまとめられる一方で、いざとなればある程度の悪環境にも対処できる。このクルマのようなコンセプトは、平日は都会で暮らして週末は自然との触れ合いに足を延ばすというライフスタイルにぴったりだ。それを狙い澄ましたかのように、Cクラス オールテレインは全幅1850mm以下、全高1550mm以下と、都市部の集合住宅の機械式駐車場にも収めやすい寸法になっている。

街場でも止めるに困らず、近所でも悪目立ちすることなく、でも気の利いたいいモノ……と、そんな生活のパートナーを求めているのか、Cクラス オールテレインは、周囲から「あれ、どうなの?」と尋ねられることが多い。正直、東京くんだりの生活環境であれば、これにオールシーズンタイヤを履かせておけば盤石だろう。でも、そんなド安定すぎる選択肢を示すのもちょっともったいないかなと思う、意地悪な自分もいる。楽は後にとっといたほうがいいわけだし。そういう意味ではこのクルマ、アガリとしての適性も高いのかもしれない。

(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)

ナビゲーションシステムにはメルセデス・ベンツ最新の「ARナビ」を採用。交差点などでは、カメラが読み取った自車前方の映像と方向指示を重ね合わせ、より直感的でわかりやすいルート案内を追求している。
ナビゲーションシステムにはメルセデス・ベンツ最新の「ARナビ」を採用。交差点などでは、カメラが読み取った自車前方の映像と方向指示を重ね合わせ、より直感的でわかりやすいルート案内を追求している。拡大
多彩な表示機能を備えたフルカラーのヘッドアップディスプレイ。こちらにもクルマの斜度や「ダウンヒルスピードレギュレーション」の作動状態といった、オフロード向けの表示が用意されていた。
多彩な表示機能を備えたフルカラーのヘッドアップディスプレイ。こちらにもクルマの斜度や「ダウンヒルスピードレギュレーション」の作動状態といった、オフロード向けの表示が用意されていた。拡大
さまざまな用途に使える懐の深さに加え、悪目立ちしないデザインやキャラクター性も「Cクラス オールテレイン」の魅力といえるだろう。
さまざまな用途に使える懐の深さに加え、悪目立ちしないデザインやキャラクター性も「Cクラス オールテレイン」の魅力といえるだろう。拡大

テスト車のデータ

メルセデス・ベンツC220d 4MATICオールテレイン

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4760×1840×1495mm
ホイールベース:2865mm
車重:1900kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:200PS(147kW)/3600rpm
エンジン最大トルク:440N・m(44.9kgf・m)/1800-2800rpm
モーター最高出力:20PS(15kW)
モーター最大トルク:208N・m(21.2kgf・m)
タイヤ:(前)245/45R18 100Y XL/(後)245/45R18 100Y XL(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック3)
燃費:18.2km/リッター(WLTCモード)
価格:796万円/テスト車=864万6000円
オプション装備:メタリックペイント<ヒヤシンスレッド>(21万7000円)/レザーエクスクルーシブパッケージ<挟み込み防止機能付きパノラミックスライディングルーフを含む>(46万9000円)

テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:945km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:493.4km
使用燃料:24.0リッター(軽油)
参考燃費:20.6km/リッター(満タン法)/19.5km/リッター(車載燃費計計測値)

メルセデス・ベンツC220d 4MATICオールテレイン
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渡辺 敏史

渡辺 敏史

自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。

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