第230回:憧れのデッキバン
2022.04.18 カーマニア人間国宝への道これはシトロエンだ!
わが家に新しい相棒がやってきた。ダイハツの「タントスローパー」だ。タントの車いす仕様車ですね。家族の介護のために買ったのだが、新車なんて買ったの、何年ぶりだろう……。生まれて初めて残価設定ローンを使ったりして、マトモな市民になった気分満点! いやー残価設定ローンっていいね。担当者によると、「通常のローンより有利ですから、ほとんどの方がこちらを使われます」。こうやってなんとか日本経済は回っているんだね!
webCGの読者さまは、タントスローパーにはあまり興味ないと思いますが、個人的にはDNGAとツートンカラーにこだわって選んだ渾身(こんしん)の一撃です。DNGAの剛性、低重心性は魔法だ! タイヤの接地性が抜群で、あんなに背が高いのにコーナリングが超絶安定している! このしなやかなコーナリング感覚は、どことなくフランス車的。プジョーの猫足でしょうか?
加えて、オシャレなツートンカラーはまるでシトロエン! サイドプロテクターはエアバンプ! 介護車両にツートンカラーを用意してくれてるのはタントだけ! ルックス的には、「これはシトロエンだ!」と思って買いました。
電器屋さんのための働くクルマ
タントオーナーの私にとって、新型「アトレー/ハイゼット カーゴ」は身内のライバルである。モデルチェンジ以来の販売台数を見ると、タントが月間約1万台、アトレー/ハイゼット カーゴが約8000台。肉薄されている!
でも、実際乗ってみて安心した。アトレー/ハイゼット カーゴは、タントみたいな猫足じゃないし、シトロエンみたいにオシャレでもない。荷物を積んでナンボの働くクルマだったから。命題は「働くクルマをいかにカイテキにするか?」というもので、コーナリングやカラーリングではタントの敵ではなかった。最近「働くクルマがカッコイイ!」というムーブメントが強烈だけど、個人的にはコーナリングを優先します。
が、アトレー/ハイゼット カーゴのなかに、強烈に気になるクルマがある。「デッキバン」である。
最近、軽トラがブームだが、デッキバンも確実にブームだ。いや、軽トラよりもデッキバンのほうがハイブラウでオシャレ! と認識している。軽トラのドレスアップはよく見るけど、デッキバンはまだ少数派。それだけ前衛的で尖(とが)った存在なのである。それに、デッキバンをつくってるのはダイハツだけ! いわばダイハツ製の特殊車両だ。
私はあのデッキバン、いったい何に使うのかなぁと思っていた。聞くところによれば、電器屋さんが冷蔵庫や洗濯機を配達するために、もっと具体的にはナショナル(現パナソニック)の販売店のためにつくったんだってね! 知らなかった~。あの荷台は冷蔵庫や洗濯機を積むためだったのか! 道理で奥行きがないと思った。
私は昨年軽トラを買いましたが、その際、デッキバンもチラリと頭に浮かんだ。重いのでやめたけど、カタチ的にはデッキバンが先端! と思っていたのです。そのデッキバンも今回フルモデルチェンジ。そして、実物のデッキバンに初めて乗ることができました!
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ファッションは痩せ我慢
まだナンバーがついてなかったので、試乗会場内の駐車場をくるっと走っただけだけど、デッキバンのスペックはアトレー/ハイゼット カーゴとまったく同じ。当然走りは同じで、違うのは形だけだった。
私は生まれて初めてナマのデッキバンに触れたのですが、後席のスライドドアを開けて衝撃。背もたれがほとんど垂直のまま、1mmもリクライニングしない……。前後スライドもないので、軽トラの前席より微妙にキツイ! 考えてみりゃすぐ後ろに荷台があるんだから当たり前だけど、圧迫感強いな~。後席を前に倒せばフラットにはなるけれど、荷台との間に隔壁があるから、全然広くなった感じがしない!
そして荷台。初めてデッキバンの荷台を間近に見、上に乗ってみたりしましたが、狭い~! 冷蔵庫や洗濯機が載りゃいいんだから仕方ないけど、後席と荷台が分断されてると、ユーティリティーが大幅に限定されるなぁ。これをレジャーに使うとしたら何? 3人以上で出かける釣りくらい?
というわけで憧れのデッキバンでしたが、実物に触れてみると、車中泊は絶対ムリだし、大きな荷物や長いものも積めないことを実感。一般ユーザー的には、全然実用性なし! つまり完全にファッションアイテム! 「なんか面白い形でカッコいいじゃん!」という。やっぱりファッションは痩せ我慢なんですね。
(文=清水草一/写真=清水草一、花村英典/編集=櫻井健一)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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