常勝「ホンダN-BOX」が販売首位から転落! 「スズキ・スペーシア」はなぜ躍進したのか?
2024.06.21 デイリーコラムおよそ2年ぶりの首位陥落
ついに王者陥落! ……なんて表現するといささかセンセーショナルすぎる気もするが、日本の自動車業界にとって大きな話題であるのは間違いない。あの常勝「ホンダN-BOX」が、ついに軽自動車の月間販売台数(軽自動車なので正確に言えば「届出台数」)で1位の座を明け渡したのだから。
N-BOXといえば、軽自動車では不動のベストセラー。登録車を含めての販売台数のランキングでも、年間販売では2021~2023年と3年連続、月間販売では2023年8月から9カ月連続でトップに輝くなど、圧倒的な人気を誇ってきた。そのN-BOXが敗れたのだ。
2024年5月のN-BOXの販売台数は1万4582台。それを超えたのは「スズキ・スペーシア」で、1万5160台だった。わずか500台強の差ではあるが、1位と2位のインパクトの違いは小さくない。2位じゃダメなのだ(本当はダメじゃないどころか、2位でも3位とはダブルスコア以上の差をつけているので十分にスゴい実績なのだが)。
とにもかくにもN-BOXは、年度でいえば「スズキ・ワゴンR」から首位を奪った2012年度以降、2023年度まで11年間連続でトップをキープしているモンスターである。2023年10月にはフルモデルチェンジしているが、モデルチェンジ前でも順調に売れていただけに、今回のトップ交代はまさかの事態だ。
ただ月ごとの統計を振り返ってみると、N-BOXは2022年5月にも1位の座を明け渡していて、そのときも1位を取ったのはスペーシアだった。今回も23カ月ぶりにそれが起こったと考えればいいだろう。
ちなみに23カ月前は、早くもその翌月にはN-BOXがトップを奪い返している。前後の月と比べると2022年5月のN-BOXの数字は明らかに少なく、あのときの首位陥落は生産や納車のタイミングなどが起こした“いたずら”だったと考えられる。
いっぽう、今回はいったいどうなのか? それを測るうえでも、この6月の販売台数データが待たれるところだ。
王者の不振は従来モデルを売りすぎたせい?
ところで、両者のここ数カ月の販売台数の推移をみると、N-BOXは2023年12月が1万9681台で、2024年に入ると1月が1万7446台、2月が1万6542台、3月(決算期なので数が増える傾向になる)は2万0360台、4月は1万4947台、そして5月が1万4582台。対するスペーシア(こちらも2023年11月にモデルチェンジ)は、2023年12月が1万1089台で、2024年に入ると1月が1万1316台、2月が1万5066台、3月は1万7896台、4月は1万2532台、そして5月が1万5160台となっている。
これらの数字を比べると、時間の経過とともに差がジワジワ縮まり、ついに逆転したといったところだろう。面白いのは1年前との比較で、前年同期より販売台数が少ない月が多かったN-BOXに対して、スペーシアはそれを超えている月が多かった。2024年5月の前年同月比は「191.9%」。つまり1年前の約2倍も売れたのである。そりゃあ首位になってもおかしくない。
どうしてN-BOXは元気がないのか? 現時点で決定的な理由はないが、ひとつ考えられるのはフルモデルチェンジ前に従来型を売りまくった反動だ。実はN-BOXは、2023年10月のフルモデルチェンジ前にも販売は衰えず、むしろ増えていた。その理由は「今ならお買い得に乗り換えできますよ」と販売店がN-BOXユーザーに対して乗り換えを積極的に勧めていたからだ。
軽自動車は白物家電化が著しく進行しており、「新型が出るから買い替えるのを待つ」というよりは、「もうすぐ新型が出るとしても、お買い得に買い替えられるならその前に従来型へ買い替える」という人が増えているらしい。だからN-BOXは、新型の登場前にたくさん売れたのである。ただ、その反動として「新型になっても値上げされたのはちょっと……」と買い控え的な動きが起きている可能性がある。N-BOXはフルチェン前に従来型を売りすぎたのは間違いない。
敵失も追い風になった「スペーシア」の躍進
逆にスペーシアは、後席座面に加わった独自のギミックが評価されて人気急上昇……というわけではなく(それもあると思うが)、「スーパーハイトワゴンを安く買いたい人」の受け皿になっていると考えられる。両者のベーシックグレードにおける価格差は約12万円だが、160万円程度の買い物をするのに12万円は小さくない価格差といっていいだろう。
また最近は、ライバルの1台である「ダイハツ・タント」の販売が諸事情によりかなり減っており、スペーシアがそこから流れたユーザーの受け皿になっている可能性も否定できない。タントの価格帯は抑えめであり、その代わりの候補となると価格が高めのN-BOXよりはスペーシアのほうが身近なのだ。
果たして、この先はどうなるのか?
短期的に見れば、2024年6月の販売台数でN-BOXがトップに復帰するかどうかがまず見どころだ。冒頭で触れたとおり、23カ月前に首位を奪われたときも、翌月にはN-BOXが王者復帰を果たしている。いっぽうで、もし6月もスペーシアが首位であれば、流れが大きく変わったという可能性もある。
また、今年の秋ごろには両者ともクロスオーバー仕様の新モデルの登場(N-BOXは新規モデルでスペーシアでは「スペーシア ギア」のモデルチェンジ)がウワサされている。それらが発売され、流れがどうなるかも見ものだ。
筆者個人の見解としては、このままN-BOXがおとなしく引き下がっているとは思えないが……。
(文=工藤貴宏/写真=スズキ、本田技研工業、ダイハツ工業、webCG/編集=堀田剛資)

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
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