スバル・レヴォーグSTI Sport R EX(前編)

2022.06.09 あの多田哲哉の自動車放談 多田 哲哉 元トヨタのチーフエンジニア多田哲哉さんが、話題のクルマを本音で評価する新連載。今回取り上げるのは、自身が現役時代に深く関わったメーカーであるスバルの基幹モデル「レヴォーグ」だ。
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損の先のメリット

レヴォーグは現在のスバルが持てる力をすべて注ぎ込んだクルマと言っていい。と同時に、スバルの代名詞でもあるツーリングワゴンの伝統も受け継いでいる。担当した開発陣も「日本国内のフラッグシップのつもりでつくった」と豪語する力作だ。

スバルといえば、多田哲哉さんが開発責任者をつとめた初代「86/BRZ」が、トヨタとの初めての共同開発だった。その後、トヨタとスバルの資本関係はさらに強まり、2代目86/BRZに電気自動車の「bZ4X/ソルテラ」も登場して、両社の距離は縮まるばかりだ。

「86/BRZの仕事は、単独で考えればスバルは大きな損をしたと思います。なにせ、われわれも相当無理なことばかりお願いしましたから(笑)。ただ、86/BRZをつくって以降、スバルのクルマづくりは大きく変わりました……。せんえつながら、86/BRZはスバル全体にとっては大きなメリットがあった仕事だと思います」

「もともとのスバルというのは、王道というより“スバルらしさ”を優先していましたよね。軽自動車でもやけに凝った内容のものをつくっていて、スバルのエンジニアにはすごくポテンシャルがあるのは最初から分かっていました。ただ、軽自動車事業などが経営の足を引っ張っていて、『レガシィ』を何台つくっても企業経営がよくならない……というジレンマに陥っていたんです。エンジニアの人たちもどこか『どうせ、これ以上のことはできない』と諦めているような雰囲気がありました」

「86をつくるときにも、最初はレガシィのフロントシャフトだけを抜いただけみたいなクルマを持ってきたので『これじゃダメ。ここをこうして、あそこをこうしてほしい』とお願いしたら『そんなことをしたら莫大(ばくだい)なコストが……』という答えでした。なので、最終的には『株主のトヨタがお金の責任はとるから』と、すべて新しくやってもらいました。すると、最終的には彼らもはじけてくれたんです」と、多田さんはレヴォーグを前に、初代86/BRZ開発当時のエピソードを語ってくれた。

 
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