メルセデスAMG GT53 4MATIC+(前編)

2022.07.07 あの多田哲哉の自動車放談 多田 哲哉 元トヨタのチーフエンジニア多田哲哉さんが、メルセデスの高性能サルーン「AMG GT53 4MATIC+」に試乗。自動車開発のプロが、そのメカニズムに注目するのはなぜなのか?
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エンジンの揺れと向き合う

今回のメルセデスAMG GT53 4MATIC+は、多田哲哉さんの強い希望で取り上げることになったクルマである。多田さんの希望をもう少し正確に言うと、「メルセデスの直列6気筒(直6)エンジンを積んだハイブリッド車について語りたい」というものだった。

メルセデスは伝統的に直6エンジンを持っていたが、1997年に「衝突安全性や環境性能のどちらでもV6のほうが有利」との理由から、エンジン全長の短いV6エンジンに切り替えた。その影響は自動車業界全体に及んで、それ以降、BMW以外のメーカーがすべて、直6から手を引いた。

そこから20年以上がたった2018年、メルセデスは突如として、3リッター直6をガソリンとディーゼルの両方で復活させた。今では3リッター直6ガソリンターボに48Vマイルドハイブリッドを組み合わせたパワートレインが、このAMG GT 4ドアクーペをはじめ、「Sクラス」「CLS」「Eクラス」「GLE」などに搭載されている。

「クルマというのは、エンジンそのものが走行中に動いたり、エンジンの振動やトルク変動が起点となって、操縦安定性が損なわれたりすることがあります。なので、今は各社とも、ハンドリングのためにエンジンを制御することを普通にやっていて、トヨタはそれを“制振制御”と呼んでいます。トヨタは大々的にアピールしたことはありませんが、マツダは最近、エンジン制御でハンドリングを変えるという技術には熱心ですよね」

「ただ、そういう邪魔な振動がないエンジン形式というのもあって、それが直6と水平対向なんです。私もスポーツカーでエンジンを選ぶ時には、どちらかにしたいと思っていました。『86』に水平対向4気筒、『スープラ』に直6をどうしても積みたかったのは、それも大きな理由なんです」

 
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