メルセデスAMG GT53 4MATIC+(後編)

2022.07.14 あの多田哲哉の自動車放談 多田 哲哉 ネガティブな要素が多い直列6気筒エンジンを、名門メルセデスが復活させたのはなぜか? トヨタの開発者だった多田哲哉さんはプロのエンジニアとしての見地から、その理由をこう考える。
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あえてモーターを付けるなら

3リッター直列6気筒ターボにISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を組み合わせた「メルセデスAMG GT53 4MATIC+」から降り立った多田さんは「わが意を得たり」という表情だった。

「世界中の自動車エンジニアは今、いかにエネルギー効率を上げるかということに血眼になっています。でも、エンジンで発生したエネルギーは、最終的にタイヤに伝わるのはざっくり“半分くらい”といわれています」

「みなさんは驚くかもしれませんが、たったの半分なんです。エンジンからタイヤに伝わるまでのロスや無駄を少しでも拾い集めるのがエンジニアの命題であり、その最良の方法といわれているのが、エンジンとモーターを組み合わせるハイブリッドというわけです」

「ただ、個人的にハイブリッドで一番イヤなのは、エンジンからモーターに駆動が切り替わったり、エンジンにモーターが加わったりする瞬間です。あのなんとも言えない“振動の乗り移り”みたいなものが、エンジニアとしてはどうにも気持ち悪い。しかも、体感的にイヤなだけでなく、前回もお話ししたとおり、そうしたパワートレインの振動やトルクの変動は、ハンドリングにも影響があるんです」

「エンジンとモーターは特性がまったく違っていて、そんな相いれない2つを組み合わせるハイブリッドなんて、よくよく考えるとナンセンスといえるかもしれませんね(笑)」と多田さん。クルマというのは、部品一つひとつが密接に連関している機械なのだ。

「それでも、あえてモーターと組み合わせるなら、邪魔な振動がなくてトルク変動も少ない直6が一番いい……とメルセデスは考えたんでしょう。さすが合理的です」

 
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