BMW M240i xDriveクーペ(4WD/8AT)
間違いない 2022.05.14 試乗記 さまざまな臆測が飛び交っていたものの、新型「BMW 2シリーズ クーペ」ではFRレイアウトが守られた。しかも、守られただけではなく、先代モデルよりも乗り味がグッと洗練されている。直6エンジン搭載の最上級グレード「M240i xDrive」の印象を報告する。2代目も後輪駆動
もはや駆動方式にこだわる人はいない、として現行型「1シリーズ」をFFハッチバックに生まれ変わらせたBMWだが、いっぽうで依然として「駆けぬける歓び」を社是として掲げるからには、ストレートシックスとともに代名詞にしてきた後輪駆動を簡単に諦めるわけにはいかなかったのだろう。
先日国内発売された新型2シリーズ クーペは2シリーズに名前が変わってから2代目だが、このセグメント唯一の後輪駆動の牙城を守った。いや、ほかにもあるだろう、と異論があるかもしれないが、BMWの主張はプレミアムコンパクトセグメントで、ということ。今どき、フロントエンジン・リアドライブ方式もマルチシリンダーの内燃エンジンも高級車専用が当たり前であり、確かに貴重なコンパクトFRクーペである。
同様にBMWによれば、新型2シリーズ クーペは1966年デビューの「02シリーズ」の系譜を継ぐプレミアムコンパクトクーペだというが、さすがにそれはちょっとさかのぼりすぎだろう。02シリーズの本流はご存じのように「3シリーズ」として今に受け継がれており、2シリーズ クーペはやはりE36時代に派生した「3シリーズ コンパクト」(1994年)がご先祖さまだろう。FRコンパクトはその後1シリーズ、「1シリーズ クーペ」を経て現在の2シリーズ クーペにつながっている。日本仕様の新型2シリーズ クーペは2リッター4気筒と3リッター6気筒のターボエンジンを搭載するが、前者は「220i」と「220i Mスポーツ」の2車種、後者はM240i xDriveとなり、「Mパフォーマンスモデル」のM240iはシリーズの最高性能版ということになる。もちろんxDriveの名のとおり、後輪駆動ベースの電子制御4WDで、6気筒モデルは4WDのみである。
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モーターをしのぐ滑らかさ
一見すると外観は細部を除いて先代とあまり変わっていないように思えるが、実はボディーサイズは全体的に少し大きくなっており、横から見るとフロント部分が長いスリークなスタイルがよく分かる。アルミ製となったエンジンフードを開けてみれば、いかにも頑丈そうなストラットドームはキャストアルミ製、ということは最新世代の「CLARプラットフォーム」を採用したハイブリッド素材ボディーである。
従来型「M240iクーペ」(FR)の全長×全幅×全高は4470×1775×1410mmだったが、新型は4560×1825×1405mm(「ファストトラックパッケージ」装着車は全幅1845mm)というもの。ホイールベースは2740mmと従来型より50mm延長されている。ちなみに同じ6気筒エンジンを積む「M340i」のホイールベースは2850mm、全長は4720mmと明確な違いがある。
エンジンは今やBMWの虎の子の直列6気筒、B58型3リッター直噴ターボで387PS/5800rpm(従来型は340PS)と500N・m/1800-5000rpmを発生する。以前のM240iは6段MTも選べたが、新型はすべて8段ATのみとなった。どこからでも滑らかにパワーが湧き出る直6ターボはそれだけで大いに魅力的なのは言うまでもない。一糸乱れず、微妙なスロットル操作にも緻密に応えてくれるエンジンだけでなく、パワートレイン全体の引き締まった剛性感とスムーズさは後輪駆動BMW(このクルマは4WDだが)の最大の美点である。たまたま同じ日に取材した最新の電気自動車から乗り換えても、ひいき目なしにこちらのほうが滑らかだと感じたほど。濃密で滑らかで、しかも透き通ったスープのようなパワーユニットだ。もちろん全開でのスタートダッシュは4WDのおかげもあって強烈だ。欧州仕様の0-100km/h加速は4.3秒というから、ずっとパワフルな「M2コンペティション」より速いぐらいだ。
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乗るほどに妄想が膨らむ
乗り心地も決して荒々しくはない。というより上々の部類である(以前のM340iも同様に洗練されていた)。アダプティブMサスペンション(「ファストトラックパッケージ」に含まれる)を備えているせいか、M2のように闘志むき出しの硬派というわけではなく、筋肉質ではあるが洗練されている。むしろ低速域などでは、可変ダンパーを持たず街なかなどでやや突き上げが目立った4気筒の220i Mスポーツよりもしなやかに感じられたぐらいである。そのいっぽうで、荒れた山道を突破してもまったく音を上げないタフネスを備え、執拗(しつよう)に路面にかみつきながら踏めば踏むだけ加速していく感覚だ。サスペンション取り付け部やアンダーフロア各所に施された補強とMスポーツディファレンシャル、そしてもちろん4WDのおかげだろうが、これほど強烈なトラクション性能を持つクルマは他にほとんど例がない。4WDゆえに車重は1710kgとやや重いけれども、現行型M2よりも速いかもしれない。これなら日常的にも、たまのサーキット走行にも問題なく使えるんじゃないか、乗るほどにドンドン妄想が膨らんでいく。
インストゥルメントやインフォテインメントシステムも最新世代にアップデートされており、会話型音声コマンドのIPA(インテリジェントパーソナルアシスタント)などを完備するが、ACCには渋滞時の再発進機能は備わらず(モノカメラとレーダーによるシステム)、また一定条件下でのハンズオフ機能が備わらない点が兄貴分の「3/4シリーズ」と異なる。インテリアのあちこちに「M」のロゴやトリコロールのアクセントがちりばめられているのは若干子供っぽくも感じるが、安普請感は見当たらない。
もう一度、とそそのかす
実用上問題になりそうなのはリアシートの居住性だけだろう。膝まわりは何とか我慢できるスペースがあるものの、ルーフが低いために大人では頭がつかえるから(長時間座るなら身長160cmぐらいまでか)、やはり+2シートと割り切る必要があるが、それでも「GR86」などよりはずっと実用的だ。トランクルームは容量390リッターと十分な大きさを持ち、しかも分割可倒式でキャビンとつなげることができるため、こちらも意外に実用性は高そうだ。
それでも、いくつかオプション装備を加えたらあっという間に800万円オーバーでしょ、もう「M」とあまり変わらないじゃないか、という声も聞こえるが、何しろ6気筒の4WDですから、そこはご了承いただくしかない。そのぜいたくなパワートレインをできるだけコンパクトなボディーに詰め込んでいることこそ魅力である。
でもやっぱりちょっと無理、という方には(私自身も同じだ)、ここだけの話、2リッター4気筒ターボ搭載の220iクーペを薦めたい。6気筒ほどの強烈なパワーはなくても、4WDに比べてずっと身軽なぶん(Mスポーツで車重1530kg)実に爽快機敏であり、いかにも後輪駆動車を操っている実感にあふれている。ミニバンやSUVではなく、もう一回、飛ばせるクルマに乗ってみるか、と心が動く同世代のオジサンたちに薦めるに間違いのないクルマである。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
BMW M240i xDriveクーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4560×1825×1405mm
ホイールベース:2740mm
車重:1710kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:387PS(285kW)/5800rpm
最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/1800-5000rpm
タイヤ:(前)245/35ZR19 93Y/(後)255/35ZR19 96Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:10.9km/リッター(WLTCモード)
価格:758万円/テスト車=842万2000円
オプション装備:ボディーカラー<サンダーナイト>(10万円)/ブラックヴァーネスカレザー<ブルーステッチ>(0円)/ファストトラックパッケージ(26万円)/Mスポーツシートパッケージ(28万9000円)/Mスポーツブレーキ<ハイグロスレッドキャリパー>(8万9000円)/アルミニウムテトラゴンインテリアトリム(0円)/Mハイライターズイルミネーテッド(2万8000円)/harman/kardonサラウンドサウンドシステム(7万6000円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:2136km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:244.3km
使用燃料:24.1リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.1km/リッター(満タン法)/10.0km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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